食欲魔人日記 03年10月 第2週
10/6 (月)
初挑戦の豚肉のしゃぶしゃぶ風パスタ (夕御飯)
あんぱん
牛乳

「ダイエーホークス優勝セール、ワゴンの全品89円」なんて特売が、昨日近所のスーパーで行われていた。スーパー内にあるパン屋さんも同様で、クリームパンやカレーパン、それにVサインを模したパンとか球団のマーク入りメロンパンなどが全品89円。
「あしたの朝は、あんぱんだなー」
と、あんぱんやクリームパンをいくつか買ってきた。

「あんぱんにはやっぱり牛乳でっしょー」
「うんうん、日本茶よりも牛乳でっしょー」
と、牛乳を傍らにあんぱんをガジガジと囓る。ごくごくフツーの、水飴をたっぷり練りこんだような粒あんがくるまれたあんぱん。すんばらしく美味しい!ってほどのものでもなかったけれど、久しぶりのあんぱんは美味しかった。冬にはホットミルクを傍らに食べるのもいいかもねー。

チョコマーブルパン
2日目のロールキャベツ
ミルクティー

「これは君の分です」
「……くりーむ、はいってないの?」
朝御飯時、私と息子はちょっとばかり言い争いをしていた。息子用にとチョコパンを買ってきたのだけど、息子はチョコクリームが詰まっていない事におおいに不満を抱いているらしい。チョコパンならなんでも良いってわけじゃなく、チョコクリームがみっちり詰められたコロネか、どっぷりとチョココーティングされたツイストパンでなければならないようだ。私が買ってきたものは、チョコ生地と普通のパン生地がマーブル状に混ぜられ、コッペパンサイズにまとめられたものだった。

「くりーむ、ないの?」
「ないんだよー。これしか売ってなかったんだよ」
「じゃあ、ふつうのクリームパンがいいんじゃない?」
「え?チョコじゃなくて普通のクリームパンね。ああ……あるよ、買ってきてある」
息子の朝御飯は、結局クリームパンになった。で、残ったチョコマーブルパンは私のお昼御飯に。

昨晩作ったロールキャベツを温め、深皿に2個、スープと共に盛りつける。今日もケチャップを卓上に皿と共に並べ、「いっただっきまーす」と一人手を合わせてからニョロニョロと盛大に巻きキャベツの上から絞り出した。やっぱり我が家で食べるロールキャベツにケチャップは必須なのだ。キャベツの味がしみこんだ肉に冷たいケチャップかけてべろんと食べるのがたまらない。子供の頃からずっとそうやって食べていたので、もう一生治りそうにない癖のようなものだ。

しゃぶしゃぶ豚の和風パスタ
2日目のロールキャベツ
ビール

ロールキャベツの残りがまだあるけれど、それと御飯じゃ昨夜の食事と一緒で芸がない……と、今晩はスパゲティに。しゃぶしゃぶ用の豚肉の安いのを買ってきてあったので、それを使って何か作れないかと調べたところ、「豚肉のしゃぶしゃぶ風フェットゥチーネ」がみつかった。イタリアンのシェフ、日高良実さんのレシピで、数年前に購入した『パスタ・グラッツェ!』という本に載っていた。以前から気になっていたパスタ料理だったのだけど、調味料がかなり奇抜で、なかなか作れないでいたものだ。

スパゲティを茹で(本当はフェットチーネを使う)、茹であがる30秒前にしゃぶしゃぶ用の豚肉を同じ鍋に放り込む。パスタを茹でている間にソース作り。味噌とマヨネーズを2:3の配合でボウルに入れ(1人前で味噌が大さじ1、マヨネーズが大さじ1と1/2という感じ)、そこに豆板醤を少し入れたらぐりぐり混ぜてペースト状に。刻みトマトもそこに加え、あとは茹でたてパスタ(と肉)と一緒に和えるだけ。仕上げにすり胡麻をパラパラッと散らす。すっごく簡単なんだけど(何しろパスタの鍋に肉入れれば良いというのがなんとも)、
「……味噌と……マヨネーズ?それをスパゲティのソースに?」
と、ちょっと一歩ひいてしまう。イカとか和えて酒のつまみに少々、というのなら美味しそうだけど、その味でパスタ1人前を食べきるのはちょっと個性的すぎる味ではないかなぁ……という気がした。でも、気になっていたので作っちゃう。まずかったらゴメンよ家族。

「おみそと、マヨネーズ、まぜるの?」
今日も息子が調理課程を横で観察している。
彼なりに"野菜や肉は炒めたり煮たりして食べる"ということがわかりつつあるようで、昨日は
「肉を巻いたキャベツを、鍋に入れて水を入れまーす」
とロールキャベツ製作過程を見せた私に、「スープにするの?」と聞いてきた。そうそう、煮込んでね、美味しいスープにするんだよ、と返すと、
「……じゃあ、おみそ入れるの?」
とのこと。彼の中では"スープは水に味噌を入れて作るもの"ということになっているらしい(味噌汁大好きだからこの人……)。そして"味噌はスープにするもの"という理解もあるようで、今日はボウルの中身を眺めた後
「じゃあ、これにお水をいれて、スープにするの?」
と聞いてきた。マヨ味噌スープは……ちょっとイヤかな……。

で、できあがったものは案外と美味しかったのだった。フルーツトマトがたった1個しか手元になくてそれを家族全員分として使うことになったので彩りはいまいち。ちゃんと1人1個くらいでトマトを入れたら、もっと味が柔らかくなったし綺麗な色になったと思う。味噌とマヨネーズという組み合わせも、
「これは……胡麻とマヨネーズ?」
「チーズの味?」
と、だんなや母にはさほどわからなかったようで、ゆえにそれほど不自然な味ではなかった。でも、これはもう少し美味しくすることができるかもしれない……という、やや未完成っぽい味のような気も。醤油入れるといいのかなぁ……マヨネーズをもうちょっと少なめにしてオリーブ油を加えるとか、マヨネーズではなくて味噌味のカルボナーラみたいにしちゃうとか……と、色々考えてしまった。だけれども、人が作ったレシピをあれこれ言うことはできても、私にはゼロから味噌とマヨネーズを組み合わせてパスタソースにするなんて発想はもう全然無理だ。料理を商売にする人が編み出したレシピは、本当にすごい。

10/7 (火)
天橋立で懐石料理をいただく。うまー (夕御飯)
新幹線車内にて
 駅弁(六郷のわたし)
 冷茶
 アイスクリーム

今日から2泊3日の家族旅行。家族といっても行くのは私と私の母と私の息子の3人で、仕事を休めなかっただんなは1人お留守番だ。母がいよいよ来月あたり秋田に帰ることにしたらしいのだけど、
「帰る前に、天橋立を一度見ておかないと、帰るに帰れないわー」
と騒ぎ始めたのだ。他にも「死ぬ前に一度はオーストリアに行ってみないと」とか「シンガポールやベトナムにもあこがれちゃう」とか色々言っていたのだけど、今回はとりあえず天橋立ということになった。

一応親孝行の一環ということで、「そういうことなら旅費は全部娘が出してあげよう」としてあげたかったのだけど現在私は非常な金欠。しかも母が
「いーわよ、誘ったのは私なんだから全部私が出すわよ」
と強情を張り、「いーの、お金ないけど親孝行だから私が出すの!」「いーの、私があんたたちについてきてもらうんだから全部出すの!」と伝票を奪い合う形になり、結局母に出してもらうことになってしまった。せめて食事代とか宿代の一部は私が出そう……。

で、朝6時前に起きて何も食べず何も飲まずに手早く支度して出発。
「新幹線の乗り場、左に行くと新幹線乗り場というところで右手に行くとお弁当売ってるところに出るからねー」
「はーい」
「おにぎり屋さんもあるよ。あそこはけっこう美味しいよ」
「はーい」
東京駅駅弁攻略をだんなに教わりながら、食材処理も洗濯も全部だんなに押しつけて出かけていった。今をときめく「のぞみ」(CMばんばんやってるしね)に乗り、京都から"特急はしだて"に乗って天橋立駅へ。4時間半の、けっこうな長旅だ。

私はサンドイッチくらいでいいわよ、とか、ぼくはからあげが食べたいなー、とか、やっぱりここはそれらしい弁当にそれらしい緑茶をセットにしなければ、とそれぞれが勝手な事を言いつつ東京駅でお弁当を購入する。母はフランスパンを使ったサンドイッチのセット、息子は鶏唐揚げとチキンライスがセットになった「チキン弁当」、私は崎陽軒のシュウマイ弁当にしようかどうしようかしばらく悩んで「六郷のわたし」なるものに。赤飯むすびに稲荷寿司、椎茸寿司にハスカップむすびに野沢菜むすび、それに鶏肉の胡麻揚げやタコ入りさつまあげ、お多福豆に磯巻き卵に根菜の炊き合わせ等々……とあれこれ詰まった弁当らしい弁当だ。旅のお供にはやっぱりあのペナペナのプラスチック容器に入ったティーバッグのあったかいお茶がないと物足りないのよー……と思いつつ、冷たいお茶をがぶがぶ飲みたい気分だったので普通のペットボトルのお茶にした。

駅弁は購入して家で食べてもそれほどの感動はなかったりするのだけど、電車内で食べるとこれが妙に美味しい。
「……やっぱりシューマイ弁当にすべきだったかしら」
と思ってしまいつつ、でも赤飯にぎりや稲荷寿司、味の染みた高野豆腐はしっかりちゃんと旨かった。しっかりと車内販売のアイスクリームなんかも食べちゃったりして。

天橋立 「小田寿司」にて
 私:
   中トロ
   アオリイカ
   カンパチ
   穴子
   ウニ
 母:
   中トロ
   アオリイカ
   カンパチ
   イクラ
   ウニ
 息子:
   玉子×2
を食して、8200円……たか……

お昼12時をちょっと過ぎた頃、無事に天橋立駅に到着。駅前で観光マップを手に入れて、とりあえずは今日の宿を目指してみた。天橋立南端近くにある「智恩寺」のすぐそばにある「対橋楼」という宿が今日の宿泊先。天橋立天橋立と、とにかく天橋立に夢中な母のために、とにかく近くの宿にしてしまえと私が選んだ宿だ。客室も大浴場もそう広くはないけれど、こざっぱりしていて良い感じの宿だった。まだ午後1時にもなっていなかったけれど、もう客室に入れるということで、荷物を入れさせてもらってから昼御飯を求めて外に出る。

「ここらへんの名物料理は"あさり丼"……目新しい料理じゃなさそうだけど、昼御飯はそういうコテコテのが食べたいなぁ……」
と、宿の前の通りが門前町のようになっているので小料理屋や甘味処が居並ぶのを楽しく眺める私。こういうところに来たら、もうコテコテにその空間に浸るのが好きな私。だが、母は違うのである。
「名物料理とかそういうの、興味ないのよねー。海がそばなんだから、お魚が美味しいんじゃない?お寿司とか」
言うなり、門前町に背を向けてずんずん歩き出した。ああん、ママン……。

「あら、"お寿司と一品料理の店"って看板があるわよ。美味しそうじゃない?」
看板をそう力強く(しかし根拠はなく)指さした母は、繁華街から数百メートル離れているらしいその店目指して更に歩く。たどり着いたのは、小さな小さなお寿司屋さんだった。「今日のおすすめ:カンパチ、アオリイカ」と書かれた黒板の下には魚介を使った各種一品料理名(ブリの照り焼きとか甘鯛の煮つけとか……)が並んでいる。

カウンターのみ6席ほどの小さなお店。カウンターの隅にはサランラップがどかっと置かれ、席から目に入るところに「魚の鮮度を保つシート」なんて箱が見えていたりする。ネタケースの中身もあまり良い感じじゃない。なんとなくハズレ……っぽく思えてしまうお店だった。だ、大丈夫かなぁ……。

最初に中トロをいただき、次におすすめのアオリイカとカンパチ、あとは穴子とウニを食べてお店を出た。私と母は5カンずつ、息子は玉子だけを2カン。お会計は8200円だった。1カン800円と思うと、鼻血が出そう。あああ、ほら、お高かった……と青ざめる私をよそに、「うん、そんなもんよね」と母は1万円札をぴらぴらさせて支払いをすませていた。もう母、最初から飛ばす飛ばす。

確かに、中トロもカンパチもウニも、美味しかった。ウニは粒がプリッと花開いたような綺麗な外見だったし、中トロもとろんと舌で溶ける。高いだけあって、魚の味や鮮度は予想以上にものだった。だけど、店主の腕は全然ダメ。御飯をぎゅうぎゅうと固く握りすぎていて少しもネタと調和していない。しかもその御飯、妙にヒヤッと冷たいし。いかにも、元々店をやってたのは彼のお父さん、という感じ。手持ち無沙汰そうに、握りながらちらちらとテレビのモニターばかりを見ているのも気になった。

天橋立「対橋楼」で海の幸懐石
 イクラの醤油漬け
 枝豆のお豆腐
 お造り(マグロ・アオリイカ・カンパチ・甘海老)
 甘鯛の吸い物
 ぼっちゃん南瓜の丸ごと煮
 鰆の味噌焼き 焼き栗・焼き銀杏・芋せんべい添え
 平目、えび芋、海老しんじょ詰め椎茸の天ぷら
 鱈と"くもこ"の蒸しもの
 御飯・赤だしの味噌汁・佃煮・お新香
 マンゴーゼリー
 生ビール・日本酒(〆張鶴純)

天橋立を徒歩で対岸に渡り、対岸に渡ったところでレンタサイクルを借りて「天橋立ワイナリー」というところに行って来た(これまた母のリクエスト)。元の岸には「大人2人と子供さん1人で1000円でいいよー」と声をかけられモーターボートに乗り帰還。だらだらと温泉に浸かってから宿1階の食事処に夕食を摂りに行った。

宿泊予約と同時に、値段が異なる3種類くらいの夕食コースから懐石料理を選んでいたのだけど、魚介尽くしの懐石料理は見た目も美しく量もたっぷりとあって食べ応え充分だった。和食のコースは久しぶりで、ついお酒が進む。母の酒はもっと進む。

母は(絶対本人は否定するし自覚もしていないけれど)あまり良い酔い方をしない。しかも私よりお酒に弱いのに私より飲みたがる。今日も生ビールを取って8割ほど飲んだ後「いらなーい、あとあげる」と私にグラスを押しつけて冷酒を飲み始めた。そのうち酔いが回り、
「あー、美味しいわ、もう一杯飲んじゃおうかしら?もう1杯。ね?」
「……やめときなよー、後でお風呂また入るんでしょ?入れなくなるよ」
「孫よ、飲むかい飲むかい?日本酒飲みなさいよ」
「やーめーてーよー。息子に日本酒なんか飲まさないでっ」
「あー、おいしーねー」
「こらっ息子もそこで飲んでるんじゃないっ」
あああ、だんな、助けて……。

そんな中、料理はそれぞれどれも美味しかった。
小さなかぼちゃの中をくりぬいて松茸や海老を詰め、とろみのあるだしを張った煮物とか、本物みたいな形や色合いに綺麗に揚げた銀杏の葉型の芋せんべいが添えられるサワラの焼き物(焼き栗が添えてあって、これがまた甘くてほくほくで美味しかった)、ほっこほこに柔らかいえび芋の天ぷら、最後に出てきた羊羹のような食感と甘みのマンゴーゼリー、それぞれ工夫が凝らしてあってなかなかのもの。

息子用の幼児用プレートには煮込みハンバーグや大きな海老のフライ、魚の天ぷら、サラダに海老ピラフが盛りつけられていた。息子は揚げ物やハンバーグは綺麗に平らげたけど、御飯には手をつけず。どうして……?と思ってピラフに口をつけたら、間違えようのない見知った味がした。これはもう確実に、100%、冷凍ピラフ。それだけがほんのり悲しかった。

2人も浸かればいっぱい、という感じの小さなお風呂が3つ組合わさった、ちょっと不思議な女風呂のこの宿。息子はすっかり気に入ったようで(幸いお客もそんなにいなくて風呂場はいつも貸し切り状態)、夕食後も
「おふろはいろーよー、ねる前に、じゃぼんって、しようよー」
とせがまれて食後にひとっ風呂浴びたらもう動けなくなってしまった。いつのまにか私も酔っぱらっていたようで……。

10/8 (水)
天橋立名物(?)あさり丼。 (昼御飯)
天橋立 「対橋楼」にて和朝食
 御飯・油揚げと葱の味噌汁
 カレイの一夜干し・卵焼き
 辛子明太子・しめじと菊花のおひたし・佃煮
 おでん(大根・こんにゃく・厚揚げ・がんも)
 ベーコンと白菜の煮物
 サラダ・焼き海苔
 お新香
 ほうじ茶

名付けるなら「母と娘、孫で行く天橋立。三世代わくわくファミリープラン」という感じの旅行2日目。
昨夜は満腹な上に酔っぱらった状態で、しかもとどめに温泉に入ってすっかりぐでぐでで動けない状態になってしまって午後9時前に皆揃って就寝。日記の更新もできなかった。

代わりに今朝起きたのは午前4時。5時に宿の風呂場がオープンするのを待って母は一人温泉にでかけていき、私は息子が目覚めるのを待つ。6時に息子も目覚めたので、宿泊旅館の姉妹店である「文殊荘」という宿の露天風呂に入りましょう、と200mほど先のその別旅館にてこてこ歩いてでかけてみた。宿泊旅館で入浴券(無料)をもらえば、その別旅館の風呂に入ることができる。

「こっちは広いぞー」「露天もあるぞー」と朝からしっかり温泉を堪能し、ついでに宿の目の前にある「智恩寺」の境内をぷらぷらした後、宿の朝御飯。予約時間に食事処に行くと、もう味噌汁椀以外の全てが綺麗にセッティングされていた。ちょっとばかり豪華な、でも絵に描いたような和朝食、という感じ。和朝食のおそろしいところは、どのおかずでも御飯が軽く1膳食べられてしまうことだ。焼き魚で1膳、卵で1膳、海苔で1膳。さすがにそんなに食べられないので、「こ、こうなったら辛子明太子は御飯に乗せずに一口で食べちゃうか……」とか思案しながら盆に並べられた小皿料理を1個1個片づけた。なんでその中におでんが入っているのかが謎なのだけれど、まぁ御飯に合うからいいかな、と思いながら練り辛子をこてこてつけながら食べる。パンに卵料理に紅茶にフルーツに……という洋朝食も大好きだけれど、和朝食の方がなんとなく贅沢な気分がしてしまう。おでんだけど。

天橋立ビューランドにて
 丹後の黒豆ソフトクリーム

9時半過ぎ、宿をチェックアウト。昨日は天橋立を踏破したのだけど、踏破しただけで「……えーと、つまり松並木がずーっと続いていて……両側に海があって……」という印象ばかりでいまいちその全景がわからない。
「やっぱり上から見なきゃ駄目なのよ」
「"股のぞき"っていうの?やってみなきゃ帰れないわよ」
それならと色々調べて、
「こことここならそれが可能なようだけど……で、この宿から近い方が子供用の遊園地があるみたいだから息子が嬉しいかもしれない」
と今日の旅程を組み立てた。

で、宿をチェックアウトしてから南端の高台にあるビューランドへ。見事な"天に架かる橋"の絵を見ることができ、ついでに息子は子供用のSL機関車やゴーカートに乗って大喜びだった。

一休みしましょう、と遊園地内の軽食コーナーで食べたのは「丹波黒豆ソフトクリーム」。
最初は「黒豆ソフトって……くろいの?」「豆なの?」と倦厭してしまい、「バニラ味3つくださーい」と頼んだのだけど、店員さんに
「黒豆ソフトも人気ありますよー。さっぱりしていて……あ、黒くないですよ。全然」
と勧められ、黒豆ソフトにしてみたのだった。皮の黒いところが少しだけ入っているけれど、普通のソフトクリームより少しだけ黄色みがかっただけの、綺麗なクリーム色のソフトクリーム。豆特有のポクポクした食感がある、想像よりもずっと美味しいものだった。この地方は黒豆が名物ということで、黒豆ものの土産物があちこちに売られている。

天橋立 「松吟」にて
 私:
   あさり丼 \850
   丹後地ビールミニグラス入り \350
 母:
   和風とんかつ膳 \1300
   丹後地ビールミニグラス入り \350
 息子:
   ざるうどん \700

土産物屋をひやかしたり、もう一度だけ天橋立を歩いたりしているうちに昼御飯時。お昼は門前町の一番ありがちなコテコテ定食屋に入ることにした。やっぱり観光客相手ではあるし、値段も"相応よりちょっと高め"な気がするけれど、それでも昨日のお昼の12カン8200円よりはずっと良さそう。私が密かに食べたいと思っていたあさり丼もあるみたいだし。

私は懸案のあさり丼、息子は水面下での打ち合わせどおりざるうどん、母は「なんにも食べたいものがないわぁ〜」と言いながら和風とんかつ膳。とんかつに、ソースではなくてポン酢に大根おろしを混ぜたものをつけて食べるというものだ。運河のすぐ脇の店なので、行き交う船や橋を行き来する人たちがよく見える。

あさり丼は、要するに"親子丼から鶏肉抜いて代わりにあさりを入れたもの"という感じ。上から白胡椒がばらばらっと盛大にかけられていて、それがあさりのいそ臭さと案外似合う。三つ葉もたっぷり。この店のが特にそうなのか、かなり汁っぽいしゃばしゃばしたあさり丼だった。このあたりの店にはほとんど全て、この「あさり丼」がメニューに載っているようだ。

フルーツ牛乳

今日の宿に行くために、2時半には1駅となりの宮津駅に行かなければいけない。そのためには2時10分発の電車に乗らなければならず、1時間ちょっとの時間があった。

「駅の前に、外湯の温泉があったよね?多分バスタオルの貸し出しもしてくれると思う。ちょうど1時間くらいだし、温泉に入って待っているというのはどうだろう?」
と、母を誘い、母はもちろん"おおきなお水が好き"(プールでも海でも温泉でも沼でも良いらしい)な息子も依存はない様子。割引券を利用して1人500円、バスタオルのレンタル1枚200円でしばし温泉を堪能した。このあたりの湯は、手触りがちょっとぬるぬるとした重曹入りのもの。わずかに白く濁っていて、肌がつるつるになって良い感じ。しかも、平日の昼過ぎに温泉を求める客はあまりいなかったようで、女湯は終始貸し切り状態だった。

「まっさか、風呂上がりに牛乳が飲める……なんてこた、ないだろうねぇ」
と上がってみれば、ちゃんと休憩室に瓶牛乳、瓶コーヒー牛乳、瓶フルーツ牛乳の自動販売機があった。
「わ、私、私、フルーツ牛乳!」
「私もフルーツ牛乳〜。うっわ、なつかしー」
「ぼくはね、ぼくはね、コーヒーぎゅうにゅう〜」
つい目を血走らせてしまいながら腰に手を当てフルーツ牛乳一気飲み。母も私も御満悦。

天橋立 「宮津ロイヤルホテル」の仏料理コース
 黒豆と松茸のロワイヤル
 ラタトゥイユとオイルサーディンのブルスケッタ
 スモークサーモンのピンクペッパー風味の前菜
 クレソンのスープ
 牛フィレ肉のステーキ マディラ酒ソース
 パン
 ロゼワイン(コート・ド・プロヴァンス)

 バニラアイスクリーム
 洋梨のケーキ
 紅茶

今日の宿は、天橋立を真横から眺める位置にある「宮津ロイヤルホテル」
「ここ、夕暮れの天橋立がすっごく綺麗に見えるんですって。リゾートホテル、ですって。ここがいいわぁ」
との母のおぼしめしに従って私が予約し、そこまでの交通手段(駅から車に乗るしかなく、午後に2便だけ無料のシャトルバスが出ている)もしっかり調べた。今日になって、「あらー、そんなに遠いのー。イヤねー」とか言われたけど、それは聞こえなかったことにする。

たった1両だけの可愛らしい電車に乗り天橋立駅から宮津駅へ。そこから、お客は私たちだけという送迎マイクロバスに乗ってホテルに向かった。高台から天橋立を真横から見下ろす形になっている宿の、部屋は最上階、天橋立側。しかも「癒しの備長炭ルーム」とかいう部屋で、部屋中あちらこちらに備長炭グッズが飾られている。ベッドサイドテーブルの下にまで、隠れキャラのように備長炭が入っていてちょっと笑える。今回の旅行中最大の大浴場と最大の露天風呂があり、温泉宿におなじみのゲームコーナーや卓球台があったりして、割とコテコテで快適な宿だ。風呂上がりに、キーンと冷やされた烏龍茶が脱衣場で無料で飲めるのも嬉しい。

「ファミリーふれあいプラン」という、申し込んだプランは和洋中から選べる夕食つき。
「そこはほら、当然フレンチなわけよー」
という母の「当然」の意味はつかめぬまま、フレンチの夕飯にしてもらった。午後6時半、ひとっ風呂浴びてさっぱりしたところで館内のフレンチレストランに向かう。

調度品はやや安っぽく、けれでも給仕の人たちの応対はすごく丁寧……というレストランだった。10以上のテーブルが並ぶ席、座っているのは私たちだけ。食事の途中でもう1組男女のカップル客がやってきたけれど、どうやら今晩のお客はその2組だけのようだった。同フロアに中華料理レストランもあったけれど、外から見る限りそちらも似たような感じだ。だが、大浴場と同フロアである地階の大宴会場では団体客が計3グループも盛大に宴会を繰り広げていたり……なんだか微妙な雰囲気。うっわー、客は私たちだけか……と思いつつ、だったら子連れでフレンチでもそう臆することはないかなとゆったり食事することができた。プランについてくる食事だったので選択の余地のないものだったけれど、胃袋も味もけっこう満足。

最初の一口前菜は、「西洋風茶碗蒸し」と紹介された黒豆と松茸のロワイヤル、という品。あとはトーストしたフランスパンにラタトゥイユを乗せたものと、オイルサーディンを添えたものの2種のブルスケッタ。香草とスモークサーモンを盛り合わせ、ピンクペッパーを効かせた前菜がもう1つに、表面をふわっと泡立てたクレソンのポタージュスープ。そしてメインディッシュは小ぶりの牛フィレ肉のステーキで、マディラ酒のソースを敷いたもの。カリッと揚げた薄切りの茄子と唐辛子なども添えられ、南瓜のピュレをカレー粉風味に仕立てたソースが更に敷かれている。

何よりも、息子用に出てきた料理がちゃんとコース仕立てだったのに驚き。最初はコーンスープ、続いてミニサイズのミートソーススパゲティ、更にミニサイズのオムライス、そして薄切り牛肉のステーキと海老フライとフライドポテトのメインディッシュ、デザートは大人と同じにケーキとアイスクリームという調子で、ちゃんと1皿1皿やってきた。1皿ずつやってくる料理なんて、息子には初めて。最初のうち
「わー、スープだー」
「わー、スパゲティだー」
などと喜んでがつがつ食べていたものの、オムライスとメインディッシュが出てきたときには
「うわー……これはね、ちょっとね、多いんじゃないかなぁと思うよ……」
と、すっかり腰がひけていた。オムライスにはケチャップで、ちょっといびつなキティの顔が描かれていたりしたのだけど、とても全部は食べられず、私と母に手伝ってもらってようよう平らげていた。手伝っていた私と母はコース料理をぺろりと食べ、デザートも綺麗に平らげてその後温泉へ。

「あらヤダわ、今朝計ったときから3kgも増えてるわ……」
と母が大浴場の体重計に乗りつつ呟いていたけれど、私は恐怖のあまり体重計には乗れなかった。……旅行終わったらせっせと泳いでこよ……。

10/9 (木)
天橋立最後の食事は、花籠弁当 (昼御飯)
天橋立 「宮津ロイヤルホテル」の朝食バイキング
 いんげんとベーコンの炒め物
 タコの酢の物
 鮭の塩焼き
 湯豆腐
 だしまき卵
 釜揚げしらすと大根おろし
 納豆
 煮豆
 サラダ
 味噌汁
 御飯
 イチゴソースかけヨーグルト
 オレンジジュース、牛乳
 などなど

昨日チェックインしてその後大浴場に行き、更に夕食を摂りにレストランに行ったときにも、巨大ホテルなのにぜーんぜん他のお客の姿も気配も感じられなかったんである。

「ぜ、全然お客さんいないね」
「いくら平日だからといっても……」
「これじゃ採算なんて全然取れないわよね」
なんて勝手にホテル経営の心配とかしていたのだけど、ホテルにはお客がごっそり滞在していたのだった。レストランにはやって来ず、階下の巨大宴会場で3グループほどのそれぞれ50人ほどの大人数の団体が大宴会をしていたようで、夕食後にもう1回……と再び大浴場に訪れた私たちは大量のおばちゃんおばあちゃんを目の当たりにすることになったのだった。今朝も今朝で、先に1人起きていた母が入浴しに行くと、やっぱりおばちゃんおばあちゃんの大群に巻き込まれたのだそうだ。

朝食はバイキングだそうだよ、場所は……1階の宴会場??と、ホテルからもらったチケットをぴらぴらさせつつ一抹の不安を抱えながら午前7時、朝食を摂りに行ってみると、ホテル内最大の宴会場と思われる、結婚式の披露宴に使われるような宴会場に大テーブルが50個くらいひしめきあっていた。そして、浴衣姿のお客さんもみっっっちり。うわー、団体旅行に参加しちゃった気分だね、と苦笑いしながら隅っこにあった4人がけテーブルを見つけてあれこれ料理を取ってきた。「朝はなんといってもパン」が心情の我が母は、その内容にすっごく不満そう。
「パンの種類が全然ないわ。食パンの他はクロワッサンと、あとはホットケーキだけだわよ」
フルーツが2種類しかない、サラダの内容もつまらない、それに何?おかずはほとんど和食っぽいものばっかりじゃない!とプリプリしている。

確かに、並んでいる料理は圧倒的に和風だった。他のホテルでは「好みの卵料理を作ります。オムレツでも目玉焼きでも」なんてコーナーを見かけたりするものだけど、このホテルではだし巻き卵を焼く専門の人が次々とそれを焼いては切って皿に盛りつけていたりする。私はさっさと、「あー、こりゃ白い御飯にした方があれこれ食べられそうだわ」と判断して納豆や釜揚げしらすをトレイに並べ始め、だし巻き卵や焼き鮭を皿に盛りつけた。息子は「黒豆のパフ」なるものが入っているミックスコーンフレークに牛乳をかけ、バナナと一緒にトレイに乗せて彼は彼なりに嬉しそうだ。

団体バス旅行に行ったときによくあるような朝御飯だったけれど、丹波産コシヒカリに日本海の魚介、地元の食材をあれこれ使って説明札つきで用意されていた品々は、それぞれ美味しかった。ふわふわの釜揚げしらすが美味しくて、もりもり食べちゃう。だし巻き卵も良い感じだった。

数十分して団体客がどっと去ってしまうと、ホールはすっかり閑散とした雰囲気に。大勢の客のために、同じ料理が2ヶ所に分けられて置かれていたのだけど(「温かいお料理」コーナーが、全く同じ内容で2ヶ所のワゴンに置かれていたりした)、すぐさまそれらも1ヶ所に統合されてしまって、料理台まで侘びしい雰囲気に。まだ個人客はちらちらと食べに来ているのにだし巻き卵担当者も消えてしまい、団体客と一緒に食べていて良かったのね、うるさかったけどね、と妙に納得してしまった私たちだった。

一旦部屋に帰ってから、最後にまた温泉。団体客もチェックアウトした後で、広い広い風呂場は貸し切り状態だった。もう泳げちゃうほどだ。実際ちょっとだけ泳いじゃったのは秘密(いや、顔や頭は湯につけないよ……)。

宮津 「茶六別館」にて花籠弁当
 お造り(イカ・鯛・カンパチ)
 イカの胡麻だれサラダ
 サワラの山かけ風
 炊き合わせ(蓮根・にんじん・筍・ブリ(?)など)
 天ぷら盛り合わせ(さつまいも・鮭・ししとう)
 御飯
 赤だしの味噌汁
 フルーツ(梨・葡萄)

ホテルのチェックアウトタイムは10時半。最寄り駅である宮津駅から出る、帰りの電車の予約は2時。
「チェックアウトしちゃっても、ホテルに残ってお風呂入ったり食事したりしてればいいんじゃない?」という母。
「これ以上ここに留まってもしょうがないし、交通費がかかっちゃうだけだからとにかく駅に出るべきである」という私。
「またおふろ、はいりたいなー」という息子。
ガイドブックなどを見ながら思案して、宮津駅の近くに「入浴+昼食セット」のプランがある宿がいくつかあることに気がついた。これならちょうど、電車が出る時間まであれこれすることができる。「こういうところに行ってみたら良いかと思います」と母に告げると、「ん、いいんじゃない」という軽い言葉とは裏腹に、すごく嬉しそうな口調が返ってきた。母的にも嬉しい選択肢であったらしい。私もこれなら嬉しいし。

行ってみたのは、海辺近くにある「茶六別館」という宿だった。別館というからには、ちゃんと「茶六本館」という宿も別にあるようだ。ランチは3000円から5000円あたりまで各種あり、入湯料は食事をすると500円ということらしかった。宿をチェックアウトする前にちゃんと予約の電話を入れておき、子供連れであることも伝えた上で向かった。

朝食たっぷり摂ってきちゃったんで、軽めでいいです〜、と昼食は一番安い軽めのものにしてもらった。桜や梅のような花の形に籠が編まれ、その中に6つの丸い皿が納められてやってくる、というもの。中には綺麗に刺身や天ぷらが盛りつけられ、一番手軽なコースだったのにしっかり食べ応えのある内容だった。……でも、さすがにこんな感じの、刺身と天ぷらと煮物と焼き物と……という組み合わせの料理を短い期間に食べ続けると、ほんのちょっと食傷気味。淡い味の、いかにも京風といった煮物はそれでも食べ飽きず、「あんまり甘くないのがいいよねー」と皆してもりもり食べた。息子には私や母からちょこちょこおかずをあげつつ、単品のうどんも注文してやった。

最初のうち、客は私たちだけだったのだけど、食事が終わる頃におばちゃんの集団20人以上がバスで乗りつけ、わいわいと広間で宴会を始めた。私たちは宿の中に入って温泉へ。脱衣場は6畳ほど洗い場の蛇口の数は5個という、あまり大きくない規模の温泉だったけれど、清潔な檜風呂と露天風呂で構成されていて居心地の良い風呂場だった。ここも幸い貸し切り状態で、存分に1時間くらいだらだらと入浴する。露天風呂にはすぐ近くの海からの潮の香りが漂ってきて、空にはトンビがピーロロロと鳴いていたりして、なんとも心地良かった。脱衣場にキンキンに冷えた水が詰められた給水器があるのもまた嬉しい。数寄屋造りだという宿の中庭を眺めつつ縁側で十数分休み、「うむ、有意義に時間を使えた!」と全員満足して帰路についた。3日間で5ヶ所、計8回入浴したことになるのだけど、息子は何故か私よりも1回多く、9回。母は更に多く(一体いつ入ってるんだか……)12回。私も息子もママンも御満悦で京都経由で東京に帰った。いや、良かった良かった。

稲毛 「炭焼麦酒屋 サライ」にて
 焼ベーコンと玉子のサライさらだ
 サツマイモのフライドポテト風
 真鯛の上海風お刺身
 三河地鶏のネギ間串
 シシ・ケバブ
 おもちとチーズのだし醤油煮
 たっぷりネギトロの軍艦寿司
 浅漬盛
 ハーフ&ハーフ(ジョッキ)
 生ビール(ジョッキ)  ライチグレープ×2
 コカコーラ
を、母と私と息子で

東京着が午後7時。地元に着いたのは、もう8時を過ぎようとした頃だった。
旅行中だんなとちょこちょこメールをやりとりしていたのだけど、今週はずっと仕事が詰まっていて毎晩帰りが遅かったらしい。今日も遅くまで仕事だよー……ということだったので、
「うー……何か買って家で食べるのもめんどくさいかも」
「なんかもう、一刻も早くビールが飲みたいかも」
と、駅前の居酒屋に行くことにした。だんなともちょっと気になるねぇと言っていた店だったけれど、入るのは今日が初めて。シルクロードがなんちゃらとかシシケバブがなんちゃらといった感じの、焼き鳥やカマ焼きがある割に無国籍な匂い漂う店構えだ。ビルの2階にある店の入り口に行ってみると、細かく個室状に分けられたテーブル席への入り口には透ける布がぺろぺろとかかっている。店内そこら中に布がぴらぴらしていて、友人たちなら
「ああー、せりあちゃんの好きそうなお店ねぇ……」
と言ってくれそうな店だった。

サラダとー、焼き鳥とー、シシケバブとー、と、この数日ちょっとご無沙汰していたような肉っけのあるものとか生野菜とか胡麻油な味のものとかをあれこれ注文。どの料理も300円台だったり500円くらいだったりと手頃な価格なのだけど、その代わりに量は少なめ。息子が「サツマイモのフライドポテト風」の独占状態に入り、私と母は浅漬囓りながらビールを飲んだり、鯛と千切り野菜を和えた刺身サラダをつまみながらライチとグレープフルーツジュースのお酒を飲んだりと、箸はせっせと動かしながらもまたーりと1時間ほどかけて夕食を摂った。

帰宅は9時過ぎ。
母はたっぷり満足したようで何よりだし、温泉好きの私はこれでもかと温泉に入れて幸せだった。息子も、私が思っていた以上に広い風呂場が好きだったようで、一度も文句も言わず「お風呂だ!わーい」とつきあって動いてくれた。
これなら、母の長年の夢の「音楽の都、オーストリアに行きたいのよー」も叶えてあげられるかなぁと思うのだけど、でも海外旅行で、
「私は○○に行きたいんだけど。で、どうしたら良いのかしら?」
と言われてしまったら(しかも事前じゃなくて現地でそう言われそうで……)、さすがに私も「そのくらい自分でちゃんと調べといてよ!がおー!」とか吠えてしまいそうで、こわい。長生きしてね、ママン。私も精神修行しておくから。

10/10 (金)
寒くなると食べたくなる「三下鍋」 (夕御飯)
「ミスタードーナツ」の
 ポン・デ・あずき
 プレーンクルーラー
カフェオレ

3日休んで、今日はちょっと久しぶりの登園になってしまう息子の幼稚園。運動会を明日に控えて連日ダンスだ歌だと練習をしまくっているはずのこの時期に休ませてしまったことに母としてチクチク胸を痛めつつ(旅行を決めたのは息子を幼稚園に入れようと決断する直前で、母もその日程で仕事の休みを入れちゃったからいかんともしがたかったのね……)、登園の準備。幸い、運動会準備ということで今日は午前中保育。ちとめんどうな弁当作成も、今日は不要だった。

朝御飯は、昨夜のうちに買ってきておいたミスドのドーナツ。最近「ハムタマゴパイ」他何種類かの新製品が登場したらしく、だんなはそのハムタマゴに夢中の様子。だんなはハムタマゴとエンゼルクリーム、息子はチョコレート、私はいまいち食べたいものがみつからず、初挑戦の「ポン・デ・あずき」とプレーンクルーラー。いつもオールドファッションじゃ芸がないかなと、コーティングなしクリームなしどっしり系のクルーラーにしてみた。この秋に初めて出てきた「ポン・デ」シリーズは独特のモハモハッとした食感が楽しいけれど、一時期私が愛してやまなかった「きなこボール」ほどのインパクトがない。きなこボールの、あのなんともいえないフカモハ感が好きなのだけど、近所のミスドじゃ最近すっかり見かけなくなってしまった。

でも、ポンデあずきもけっこう美味しいかも。モハモハ生地に粒あんが良く似合ってた。

スーパーの
 卵サンド
牛乳

9時に登園、11時半にはお迎え、という幼稚園の午前中保育は、「連れて行ったのにすぐ帰宅」という感じ。運動会前日は半日保育で、週末に運動会、3日間の連休あけの火曜日は振り替え休日ということで幼稚園は休み。フルタイムの仕事を持つお母さんじゃ絶対やっていけないようなスケジュールだ。ていうか、私も旅行前に「ちょっとお待ちくださーい」とメールして待ってもらっていた仕事がけっこうたまっていたりして。息子が家にいても気にせず仕事はやることにしよう……。

「仕事はあるけど、でも、明日のお弁当は気合い入れて作ろうねー」
と、息子を迎えがてらスーパーで食材の買い出しをして帰ってきた。えらい勢いで消費される牛乳は2パック、ひき肉に生牡蠣に油揚げにほうれん草、梨と葡萄と卵ときゅうり。買い物しながら息子はいつも、
「きゅうり買うの?買ったら、何にするの?」とか「おとうふは、スープつくるの?」などとあれこれ話しかけてくる。お菓子は欲しがらない代わりに、
「また貝が食べたいなー」とか、
「くだものが好きからー。ぶどう買うといいと思うよー」と、
甘いものが大好物な私が産んだ子供とは思えない渋いものを欲しがる。私が子供の頃は、乳製品コーナーや駄菓子コーナーに張り付いて何か買ってくれるまで動かなかった記憶がある。

昼御飯は簡単にラーメンかチャーハンにでもするか……と思っていたところ、「お昼はね、サンドイッチが食べたいなぁ……」と総菜コーナーの卵サンドを眺めて息子がそう呟いたので、ラーメンよりチャーハンより簡単なその出来合いのサンドイッチにしてしまうことにした。午後は弁当の仕込みを始めたいところだし、とサンドイッチつまんでの簡単な昼御飯。弁当作り、メニューを考えていた頃は「あー、大変。あー、めんどくさ」と密かに思っていたのだけど、メニューを決めて買い出ししたら俄然わくわくしてきた。とりあえず、タルタルソース作りから。

三下鍋
ピーマンのひき肉詰め
いぶりがっこ
羽釜御飯
ビール

おにぎりの具の準備をし、油揚げを含め煮し、揚げ物の下ごしらえを"あとは衣つけて揚げるだけ"の段階までやっておく。にんにく風味の味噌床に野菜も漬けておいた。たっぷりめにあれこれおかずの準備をしたけれど、でも炒め玉ねぎを混ぜた牛ひき肉がちょっと余った。
「ケチャップ味のミートボールにしちゃおうかなぁ……それともスープかなぁ……」
と、ちんまり余ったそれを眺め、冷蔵庫にピーマンの残りがあったのを思い出して肉詰めピーマンに。ピーマン2個で、可愛い4個の肉詰めができた。

メインのおかずは「三下鍋」。鶏肉と大根と人参をスープで煮込んだあったかい料理で、寒い時期にはシンプルな味のこの料理がしょっちゅう恋しくなる。どこでこの料理を覚えたんだっけ……と思い出してみたところ、この本で見かけたのが多分最初だったと思う。四川の家庭料理で、なんでも陳建民が得意とするまかない料理だったそうだ。鶏肉じゃなく豚肉を使ったり、味つけも様々あるようだ。

私がよく作るのは、中華鍋に3カップほどの鶏スープ(顆粒鶏ガラスープを湯で溶いただけ)を入れ、紹興酒とサラダ油をちろちろっと垂らし、そこに鶏肉と大根と人参、湯で戻した干し海老を入れて煮込むというもの。味つけは塩と胡椒、そして隠し味に少々の砂糖を入れるくらい。盛りつけた後で刻んだ青葱をパッと散らしてできあがり。本当にシンプルきわまりない味なんだけど、鶏の味がじわっと染みた大根や人参がしみじみ美味しい。肉も野菜も、大体同じくらいのサイズの棒状に切るのが多分コツ。ごろごろっと大きく切るのもそれはそれで美味しいかもしれないけれど。

四川料理とは思えない、辛さのかけらもない優しい味の煮込み料理をスープ代わりにはふはふと食べ、1人1個の肉詰めピーマンをつつきつつ、ちょっと質素な夕御飯だった。なにしろもうもう、弁当作りの方に頭と冷蔵庫が回ってしまっていて、「今はこれが精一杯……」という感じ。明日は御馳走作るわよー。

10/11 (土)
今日は運動会〜
牛乳

本日は朝6時半起き。すぐに米を炊き始め、顔と手を洗ってきてから昨日ある程度まで仕込みをしておいた弁当作りにとりかかった。まずは炒め物から。刻んでおいたほうれん草をベーコンや冷凍コーンと一緒に炒め、成形しておいたハンバーグを焼く。味噌床に漬けておいた野菜を取り出してカットし、更に揚げ物。おにぎり担当のだんなも一緒に台所に立ってくれて、せっせと揚げ物を片づける。御飯が炊けたら、私はいなり寿司を作り、だんなは焼き鮭や胡麻を入れた混ぜ御飯でおにぎりを。

つい色々と気合い入れちゃって品数を豊富にしちゃったせいもあるけど、「これ、一人で作ったら絶対本気泣きしそう」というくらい大変だった。2人でやったからなんとか2時間弱で準備ができたけれど、一人だったら朝5時起きでも間に合わなかったかもしれない。
「ううううう、他の家、お母さん一人でこういうの準備したりするんだよねぇ……しかも運動会に来てくれるおじいちゃんおばあちゃんの分も作ったりして、子供ももっとたくさんいたりして」
自分でこのメニューを考えたくせに、調理を楽しみつつ苦笑いしてしまうのだった。子供が好きなもの沢山作ってあげて、「さー、好きなものたーんとお食べ!」ってやりたいし。でもめんどくさいし。

そうこうしていたら、全然朝御飯を食べる時間がなくなっちゃったのであった。牛乳一杯飲んでから、急いで幼稚園に向かう。

息子の運動会会場で、お弁当
 いなり寿司
 鮭まぶしおにぎり・肉味噌にぎり
 いぶりがっこ
 ポテトコロッケ・牡蠣フライ・ハンバーグ
 揚げウィンナ
 甘い卵焼き
 ほうれん草とベーコンの炒めもの、コーン入り
 にんにく味噌漬けキュウリと人参
 プチトマト
 タルタルソース
 みかん・葡萄
 ほうじ茶

蒸し暑いというほど暑くなく、でも長袖一枚で寒いということもなく、日差しが強すぎて日焼けが心配になるということもなく、良い季候の一日だった。広くはない園庭に子供と父兄がみっちりと入り、午前9時に開会式。4歳児クラスの息子は、かけっこと玉入れとダンスと親子競技の4種目に出るらしい。

運動会直前に何日も休んでしまっていたので少し心配していたのだけど、ダンスも一人面妖な動きをすることなく周囲に溶けこむくらいには動けていて一安心。が、本人は「うんどうかいって、何やってるんだかよくわからなーい」という顔をして特に競争心らしきものを持つことなく、かけっこも友達と一緒にへらへら笑いながら楽しそうにぽてぽてと走っていた。「おさかな天国」の曲に合わせてダンスをする息子の両手には赤い色のポンポンがついて、額にはフグともマンボウともアンコウともつかない謎の生物の絵が描かれている。
「謎の生物が踊っている……」
と、だんなと2人、笑いながら拍手した。お義母さんとお義父さんの2人も午前中の競技を見にきてくれて、息子はしょっちゅう「見てる?ちゃんとそこにいる?」と後ろをちらちら振り返りながら園児席におとなしく座っている。

で、12時ちょうどにお昼休み。園庭や近くにある公園、校舎の中のどこででもお弁当が食べられるようになっていて、息子の教室の中で食べることにした。フローリングの床に持ってきた小さなタオルケットを広げ、重箱を出す。最初は三重構造になっているステンレスのお弁当ケースかタッパーに入れようと思っていたのだけど、おかずのあまりの分量にびっくりして重箱に詰めてきたお弁当だ。
数年前まで我が家には「重箱」というものが存在しておらず、
「正月はともかくとして(←それほどおせち料理に愛情がないので……)、でも、桜の季節にお弁当詰めて花見できるような重箱が欲しいなぁ」
と思い至り、購入した手軽な値段の重箱は、母の郷里にある冨岡商店 という樺細工のお店のもの。桜の季節に、桜の木で作った重箱でお弁当食べるなんて粋じゃなーい?と購入して、以来気に入ってちょこちょこと使っている。調子に乗ってあれこれ詰めたら、3段の重箱がみっちみちになってしまった。絶対余らして帰ることになるけど気にしないことにする。

せっかく重箱に詰めたのに、紙皿に割り箸じゃ風情がないし……と取り皿と箸も持っていった。ペットボトルのお茶よりはあったかいほうじ茶がいいなぁ、と、魔法瓶に熱いほうじ茶も詰めていった。すっかり大荷物になってしまったけど、まぁ、そんなものさー。

御飯は、いなり寿司とおにぎり。息子が大好きなコロッケを揚げ、ついでに大人用にと牡蠣フライを作った。牡蠣フライには当然タルタルソースよねー、と、刻んだゆで卵に刻み玉ねぎと刻みピクルスをマヨネーズで和えて小さな容器に詰めていった。揚げ鍋があるから、と揚げウィンナもついでに作り、コロッケに混ぜたひき肉の消費ついでにミニハンバーグも作っちゃう。あとは野菜の炒め物1品と漬物代わりににんにく味噌漬けの野菜、彩りも兼ねてプチトマト。目新しい料理は特に作らなかったけれど、息子の箸もだんなの箸もなかなか止まらなかったので多分成功だったのだろう。

少子化少子化というけれど、見渡すと"一人っ子"ってのは案外と少ないような感じ。親子3人で弁当を広げているというのは少数派で、親子4人とか、おじいちゃんおばあちゃんも交えて7人くらいとか、大人数のグループが多かった。同じ幼稚園に兄弟が通う人もけっこういるようだ。
この幼稚園の運動会は初めてだけど、以前保育園にも通っていたので運動会自体は三度目くらいの息子。でも、以前は幼児というより乳児だったので、運動会も午前中だけとか、ほんの1種目だけといった具合だった。昼食挟んで午後までというのは今回が初めて。

お弁当の残り
ビール

午後2時過ぎに無事運動会は終了し、砂ぼこりだらけになったので家に帰るなり風呂に入った。風呂上がりにアイス(未だにマイブーム強力続行中のハーゲンダッツ"カスタードプディング"味。もうもう大好き)を食べたら、早起きしたせいか眠くなってしまった。録画してあったアメリカンプロレスをテレビで流しつつ、いつのまにか昼寝。気がついたらだんなと息子もベッドに入って爆睡していた。皆それぞれお疲れだったらしい。

調子にのって作りすぎたおかずが大量にまだ家に残っていたので(特に牡蠣は「残しておいてもしょーがないし」と全部揚げちゃったもんだから)、夕飯はそれを軽くつまむだけに。普段の料理では滅多に揚げ物をしないものだから、私はあまり揚げ物が得意じゃない。「最後に温度をちょっと揚げるとカラッと揚がる」とかなんとか、知識としては知っているけどなかなか実現に至っていない。それでも、牡蠣を2個ずつくっつけて揚げた大きなサイズの牡蠣フライはなかなか美味しかった。自家製のタルタルソースも優しい味で良い感じだし。

「運動会のお弁当、子供と一緒に食べるのも来年が最後なんじゃない?あんたの時は、小学校や中学校は給食が出た記憶があるもの。高校になったらなったで親となんか一緒に食べてくれないでしょー?」
と、母。いや、僕の時は小学校もお弁当だったなぁ、とだんな。
私はあまり運動会が好きな子供ではなかったから、運動会の思い出はかなり希薄だったりする。息子は運動会が好きな子供になるかしら(今はまだ、なんともビミョー)。

10/12 (日)
久しぶりに「高円寺ナイルカレー」の黒いカレー (昼御飯)
「山下」のうどん (ひやひや)
抹茶入り玄米茶

昨夜は運動会であまりに疲れたのか、昼寝した後、夕飯も食べずに息子はまたすぐに寝てしまったのだった。代わりに、今朝はものすごく早起き。7時半頃には
「おなかすいたなー、何か、ないかなー」
と台所を徘徊しはじめた。私もなんとなく早くに目が覚めてしまい、息子と二人で朝からごそごそと活動を始める。だんなは高いびき。

だんなが起きるのを待っての朝御飯は、冷凍の讃岐うどん。毎月届いている名物店のうどん、現在手元にあるのは「山下」という長く長く長い、容易に噛み切れないゴムのような食感のあるうどんで有名なお店のものだ。そうそう、食べに行ったとき、噛み切れなくてうどんにおぼれそうになったんだわ……と、そのお店のロゴを見るだけで思い出してしまう。

「寒いから、あったかくして食べようね」
なんて言っていたのだけど、説明書きに「最初はまず冷やしてぶっかけにして食べていただきたい」みたいな事が書いてあったものだから、
「そうかー、冷やして食べないとダメかー」
「言うとおりにしないとなー、とりあえずなー」
と、仰せのとおり"ひやひや"でいただくことに。夏場は氷をじゃらじゃら混ぜつつ流水でキュッと締めるうどんも、そろそろ水だけでもキーンと冷えるようになってきた。あと1ヶ月もしたら、今度は米研ぎするのに苦痛になり、無洗米のありがたさを噛みしめることになるんだろうなぁ。

「天かすが欲しいね」
「まぁ、今日はネギだけで、ということで」
と、だんなと息子と3人でずるずるずー、とうどんを啜る。

稲毛 「高円寺ナイルカレー」にて
 ハンバーグカレー ゆで卵乗せ

3連休中日の今日、特に出かける予定もなく、撮りだめしてあるビデオを見たり、裁縫したり。週明けから息子の幼稚園の園服は冬服になるのだけれど、下に着るものの着替えを新たに持ってこい、と数日前に連絡があった。
「布の袋に入れていただくのが望ましいですね」
なんて藁半紙に書いてあって、その袋のサイズや名前をつける位置まで指示されている。望ましいですね、と言われてもー……作れというのか?それを?と藁半紙をにらみつつ、それでも最近ミシンを動かすのが億劫じゃなくなってきたこともあり、先日布をけっこうたっぷり買ってきてしまったこともあり、ピカチュウの布で作ってやることにした。ついでだから、と、以前から作ろうと思っていた重箱がすっぽり入れられる和布の巾着袋も作ってしまうことにする。

昼御飯は、今日の夕飯の食材買い物に出るついでに、お気に入りのカレー屋さんに行くことにした。千葉にあるにもかかわらず「高円寺ナイルカレー」という店名の、ちょっと駅から離れたところにある目立たない小さなお店だ。だんなさんが料理のほとんど全てを一人で作り、奥さんかお母さんかのどちらか一人が大抵手伝っている。10人も入ればみっちみちの、本当に可愛いお店だ。ここの黒々としたカレーが、私はもとよりだんなの心を掴んで離さない。そういえばしばらくご無沙汰だったねぇ、と食べに行くことになった。

メニューはカレーのみ。オムライスとかカレーソースがけスパゲティ、2種類ほどのサラダもあったりするけれど、あとはカレー類とドリンク類だけ。基本はポークカレーで、あとはチキンカレーや海老カレーといった具が違うもの、ポークカレーの上にハンバーグやカツや海老フライやゆで卵などがトッピングされたもの、といった種類がある。私はここのハンバーグカレーが大好き。注文してから十分ほどして奥からジュージューと焼く音が聞こえてくるハンバーグは、どっしりみっちりした重量感があるもので、肉汁たっぷり。カレーにすごくよく似合っている。私はハンバーグカレーにゆで卵を追加してもらい、だんなは海老飯(カレーっぽいソースで炒めた御飯)のオムライスにカレーソースをかけてもらっていた。チキンライスにケチャップ、という普通のオムライスも注文できるし、チキンライスにカレーソースをかけて、というのもアリだ。

全ての料理についてくる優しい味のコールスローサラダをぽりぽり食べているうちに、料理がやってくる。満席で入れないということは滅多にないけれど、ひっきりなしにお客さんはやってくる、という感じ。ここのカレーはピリピリするスパイス臭は少しもないので、息子含めて子供のファンも多いようだ。

で、黒々とした、ソースもハンバーグも一体化しちゃってもう写真に撮っても何がなんだか、な皿がやってきた。御飯の上に、ごろんと分厚いハンバーグ。さらりとしたカレーは不思議と深い味がして、確かにカレーなんだけどどこかハヤシライスに似た味もする、ちょっと独特な味だ。最初のうちは
「まだね、おなかがすいてないから、いらないんだよー」
と言っていた息子も、コールスロー食べる食べる、オムライス食べる食べる、茹で卵も食べる食べる、と最初の発言はどこへやら、けっこうもりもりと食べていた。オムライス、大盛にしておいて良かったねぇ、だんな。

鶏肉のスキレット焼き チーズ乗せ
クラムチャウダー
羽釜御飯
ビール

「オランダ家」のアップルパイ
カフェオレ

生クリームのごってりついたケーキとか、バターの匂いぷんぷんの焼き菓子とかが食べたいなぁ……とぼんやり思っていたら、仕事から帰ってきた母が、
「これー、お土産。食べたいなぁと思って買ってきた」
と、駅ビルにあるケーキ屋さんでアップルパイを買ってきてくれた。おおー、ありがとう、ママン。

今日の夕飯は幸い、アップルパイになんとなく似合いそうな洋風のおかず。スーパーに一緒に買い物に行った息子が、
「このあいだは買わなかったから、今日は買いましょー。ね?」
と貝を猛烈に買いたがり、ついでに
「この緑色のものがね、好きなー」
と何故かブロッコリーを欲しがったので、幸い安売りだったそれを両方買ってきた。アサリはにんにく風味の蒸しものとかにしたいけど、母が嫌がりそうだしなぁ……と考え、だんなの顔を見ているうちに「クラムチャウダーにしよう!」と思いついた。クラムチャウダーはだんなの大好物。ブロッコリーは鶏肉と一緒にスキレット焼きにすることにした。

アサリは殻が開くまで水で茹で、殻を全部はずしてスープと身を取っておく。バターでベーコンと玉ねぎを炒め、そこに小麦粉を振り入れて混ぜながら焦がさないようにアサリのスープを加えていく。適当なとろみがついたスープでベーコンと玉ねぎをしばし煮込み(まだ貝の身は入れない)、その間に角切りじゃがいもとにんじんを茹でておく。じゃがいもとにんじんと共に貝の身と牛乳を鍋に足したら、あとは沸騰させすぎない程度に温めるだけ。ただ、ちゃんと火を通さないと明日の朝には「かつてはクラムチャウダーだった怪しい物体」になってしまうので要注意(私は何度もこの失敗を……)。

クラムチャウダーがおおむねできあがり、御飯があと10分で炊きあがる段階になったところでスキレットを火にかける。塩胡椒を強めにした鶏肉を皮目からパリッと焼き、食卓に出す30秒くらい前にとろけるチーズをぺろっと鶏肉にかぶせ、房に分けたブロッコリーも鍋の中に転がして蓋して加熱。あとは鍋敷きを出しておいたテーブルの上にスキレットごと出して、できあがり。適当に作った料理だったけど、思いのほか美味しくできあがってちょっとニヤニヤ。簡単だったし。

4人で鶏肉2枚はほんのりものたりなかったけれど、その分クラムチャウダーをしっかり食べた。そして食後のアップルパイ。
初めて食べたこの店(千葉に本店があるお菓子屋さん)のアップルパイは、紅玉を使った甘酸っぱいもの。リンゴの下にはバニラの香りがぷんぷん漂うクリームが薄く敷かれ、パリッと焼かれたパイ生地がかなり良い感じ。小さいサイズだったとはいえ、1人90度食べてしまったのは……ちょっと食べ過ぎだったかなー、とは思うけど。