食欲魔人日記 04年12月 第2週
12月6日 月曜日
母が来たりて、カプレーゼ
イクラとしらす乗せ御飯 with 韓国海苔
鶏味噌乗せ ふろふき大根
麦茶

だんな、今日から泊まりがけの研修にお出かけ。
「……だいこん、全部食べてから行ってくれなきゃだよ。私の母は、多分食べたがらない」
「んじゃ、朝御飯だな」
と、冷凍御飯をチンして、あったかいふろふき大根と共に楽しむ朝御飯。味噌汁がわりにふろふき大根の煮汁をツルーッと飲んでみたりしつつ、御飯にはしらす(息子のリクエストで昨日買ってきた)とイクラ(息子のリクエストでお義母さんがお裾分けしてくれた)をトッピング。韓国海苔を添えて、海苔で御飯をくるみながら朝からわしわしとよく食べた。

近所のスーパーのフードコートで
 チョコカスタードクレープ
 コーヒー

「今日は母が来るからー……ドラクエにけりをつけておかないと、罵られる……あしざまに言われる……」
目の前でテレビゲームなんかやっていたら、絶〜っ対に
「あんた、いい年してまだそんなものやって」とか、
「いい加減に卒業しなさい」とか、
「そんなことより掃除しなさい運動しなさい」とか、
いろんな言葉が飛んできそうで、母が来る前にとせっせとドラクエ。努力の甲斐あってめでたくラスボスを倒し、クリア後のイベント(主人公の出生秘話がらみ)も一気に片づけた。……さー、それじゃ、2周目を始めるかな……(ダメじゃん)。すごい集中力で一気に片づけたので、当然のように昼飯抜き。

午後3時、先週行けなかった分の振り替えにと息子をスポーツジムに連れて行こうとしていたところで母、秋田より上京。
「はぁ〜、やっぱりこっちはいいわねぇ。なんでもあるわねぇ。……あ、明日のパン買いましょ、あとねぇ、靴も欲しかった……あぁ、マツキヨも……」
母、到着するなり楽しそう。母とほぼ同時に届いた秋田からの宅急便からは、"いぶりがっこ"が4パックも出てきたり、大根が2本出てきたり。ジムの時間に遅れそうになったので、慌てて荷物持ってスポーツジムに向かった。自転車貸すよと言ったのだけれど、母も後から徒歩で追いかけてきて、「これが息子の通うジムでーす」と案内してみたり、買い物してみたり。

「クレープ!これもねぇ、秋田にないのよねぇ〜」
という母と一緒に、息子のジムが終わった後にスーパー地下のフードコートで一休み。私はチョコカスタードのクレープ、息子はイチゴチョコ生クリームのクレープ、母は
「じゃあ私ねぇ、この、カフェモカジェラートクレープ」
……そんな重そうなものを。

久しぶりに食べたクレープ、果物なしのシンプルめなものにしたのだけれど、美味しかったわぁ。

燻製比内鶏
カプレーゼ
鶏肉とブナピーとブロッコリーのクリームソースパスタ
発泡酒(サントリー ダイエット生)

母は秋田で、母にとっての"育ての母"というか"育ての姉"というかな存在の、血縁で言えば従姉妹にあたるおばちゃんと一つ屋根で暮らしている。秋田から一歩も出ることなく暮らしてきたおばとの生活はなかなか大変らしく、「肉は極力避ける、基本は魚」「焼き魚は体に悪いから、基本的に煮魚」「バターや生クリームなんて、そんな体に悪そうなものは使わないし買わない」という食生活なのであるらしい。ワイン大好き、ドレッシングたっぷりのサラダ大好き、チーズ大好き肉料理大好きな母には、けっこうなストレスみたいだ(だったらこっちで一緒に暮らそうとも言ってるんだけど、そうもいかないらしく……)。

だから、こちらに出てくると反動のようにそういう洋食じみたものを喜んで食べている母。皮つきの鶏もも肉なんて、秋田に帰ってから一度も食べてないかも……なんていう母のために、生クリームをしっかり使ったクリームスパゲティを作ることにした。具は皮つきの鶏もも肉と、あとはブロッコリーとブナピー。

チーズもあると嬉しいかなぁ……と、買い置きしてあったモッツァレラチーズをスライストマトとバジルの葉と共に美しく並べて、"カプレーゼ"。にんにくが苦手な母なので、いつもは塩胡椒して薄くおろしにんにくを塗って数分おいておくトマトを、塩胡椒だけにしておく。上から風味の良いオリーブ油をたらたら〜んとかけて、できあがり。母が持ってきてくれた燻製比内鶏をつまみつつ、カプレーゼ食べながらクリームこってり味パスタをちゅるちゅると。狙いばっちりで、母にはおおいにうけた。良かった良かった。

愚痴も色々と聞いたけれど、やっぱり食生活の好みが異なる人との同居生活は大変なものなのであるなぁ……と、つくづくと。紅茶とスコーンとクロテッドクリームが大好きな母と、明後日からシンガポール旅行だからして、おおいにそれ系のものを楽しんでこようと思ったのだった。……でも、屋台飯も食べるのよ(←それは母、苦手)。

12月7日 火曜日
母が買ってきたのに母は食べられなかったサラダ
「アンデルセン」の
 アップルパイ
濃厚こってりミルクティー
ヨーグルト

昨日、秋田からやってきた母。口を開くと「いいわねぇ、いいわねぇ、なんでもあるわねぇ」と喜んでいて、こちらの滞在を満喫中。
「今日はミルクティーよ。美味しいの入れて頂戴ね」
とリクエストいただいたので、それに応じて棚からミルクティーに似合うお茶をがさがさと発掘。鍋に100ccほどの水を入れて沸騰させ、いつもよりちょっと茶葉を多めに入れてとろ火でじっくり煮出す。あとは美味しそうな色になるまで牛乳をだばだばだばと加えて温めればできあがり。

そして、「田舎じゃこんなの、ぜったい買えないのよねぇ」というデニッシュを。母はアップルパイとダークチェリーデニッシュ、私はアップルパイ1つ。久しぶりにバターとミルクてんこ盛りといった風の朝食を前にした母はやたらと嬉しそうで、何より何より。私も、そういえばミルクティーをちゃんと準備して飲むのは久しぶりだなぁと、しみじみ美味しくいただいた。

今日は息子のクリスマス会。

稲毛 「高円寺ナイルカレー」にて
 ポークカレー ゆで卵トッピング

午前10時から12時過ぎまで、幼稚園でクリスマス会。各クラスの教室で「劇ごっこ」なるものが催され、息子のクラスの題材は「ねずみの嫁入り」。青いマントつけて手にヒラヒラと青い飾りをつけた息子が
「ぼくはかぜさんだよぅ〜」
とかけずり回っていた。その後は講堂に集まってクリスマスコンサート。トライアングルの係になった息子は、そこそこうまいことチンチンリンリンシャララララと三角形の金属をかきならしていた。去年も「なかなかやるなぁ」と眺めていたのだけれど、あれから1年経った子供達は皆みごとに成長していて驚くばかりだ。もうすぐ小学校なんだものねぇ。

ひととおり会を楽しんだ後は、迎えの時間までまだ数時間あるしと、母と昼御飯。
「ハンバーガーでも食べる?そういうのも久しぶりでしょ?あとは……ラーメンとか」
提案したら、
「あのねぇ、私ねぇ、オムライスが食べたいわぁ」
だそうで。じゃあ、オムライスもあるし、私もカレーが食べられて嬉しいしということで、近所の「高円寺ナイルカレー」に向かった。基本はカレーのお店だけれど、御飯が「えびめし」か「チキンライス」、ソースが「ケチャップ」か「カレーソース」から選択できる(だから組み合わせのバリエーションは4種類)のオムライスがメニューに載っている。私はこのお店に来たらカレーを頼んでしまうのでオムライスを注文したことはないのだけれど、たまに頼んでいるだんなから味見させてもらったところによると、これまたけっこう美味いのだ。えびめしとケチャップの組み合わせなんかも、なかなかぐっとくる。

「普通のでいいのよ。普通ので。だから、チキンライスにケチャップかけてね」
という母の前には、いかにもな風の正統派オムライス。上に乗った卵からはバターの香りがふわんと漂い、しっとりと炒められたチキンライスには鶏肉や玉ねぎがどっさり入っていた。私はポークカレーにゆで卵を乗せてもらって。お馴染みの真っ黒なカレーを御飯にコテコテ絡めながら食べる私に、
「はい、あと、食べて。ちょっと多いわ」
と1/4ほど残ったオムライスを押し出してくる母だった。……私はポリバケツじゃないのよ、ママン……。

「R 1/F」の   きのこのサラダ
 ポテトコロッケ
「アンデルセン」の
 エピ
 長期熟成パン
レタスとリンゴのサラダ
カプレーゼ(昨夜の残り)
燻製比内鶏(昨夜の残り)
ビール(モルツ)

全然用意が進んでないけど、明日から旅行。冷蔵庫の中にあまりあれこれ残していきたくないし、今日は外食?と思っていたのだけれど、寒いしたるいし、家で適当に済ませちゃうことにした。

「じゃあ、じゃあ私、駅ビル行って何か見てくるわね♪」
心なしか嬉しそうに駅ビルの総菜屋目指して消えていった母は、お気に入りの「R 1/F」でサラダとコロッケを買ってきた。それと、「アンデルセン」の、"エピ"なる名前の、ベーコンを巻き込んだフランスパンと、ふわふわの食パンと。
「こないだおばちゃんが送ったりんご、食べたの?あーらぁ、まだこんなにあるじゃない、早く食べないとムサムサになっちゃうわよ」
と、レタスと玉ねぎのサラダに、玉ねぎと同量くらいのやたらとたっぷりな薄切りりんごを混ぜて出してくれた。……グリーンサラダやポテトサラダにりんご混ぜるのは、ほんの添え物程度の分量だから美味しいんだと思うのよ、ママン……。

パンあれこれと、サラダとビールの夕御飯。昨日の残りのカプレーゼと燻製の鶏肉。母は昔っからこういう夕御飯が大好きで、そういえば結婚する直前5年くらいは毎日のようにこんな夕飯食べてたなぁと思い出す。コロッケも久しぶりなのよ〜、と、ほのかに甘いポテトコロッケをつつきまわしていた母、でも、自分が選んで買ってきたのにきのこのサラダにあまり箸をつけようとしていない。一口食べて、すぐに理由がわかった。

「……もしかして、このサラダ、"しまった!"って思ってるでしょ?あんまり食べたくないって思ってるでしょ?」
「……うん……」
母は、にんにくが大嫌い。幼き頃から、我が家ににんにく製品が置かれた事は一度としてなかった。私は社会人になってあれこれ外食するようになってからにんにくの美味しさに目覚め、今の我が家には生のにんにくはもちろん、おろしにんにくとかローストガーリックの瓶詰めなんかまで必需品として揃えられているのだけれど、母はとにかくにんにくがダメ。……で、きのこのサラダには、にんにくがガッチョリ効いているのであった。そんなに嫌いなら、「これ、にんにく使われていますか?」と聞いてみれば良いのにねぇ。各種きのこを茹でた根菜と一緒にオイルで和えられたようなそのサラダは、見ただけで「あ、これ、にんにくの味がしそう」とほのかに感じられるものなのだけれど、母は気づかずに買ってきてしまったのだった。

「……きのこ美味しいのに……なんでもうちょっとさっぱりとした味付けにできないかしらねぇ……」
と、悲しそうにモソモソときのこサラダをつつく母。……シンガポールって、にんにくガッチョリ料理が多いかしら。大丈夫かしら……(今頃になって不安が少々……)。

12月8日 水曜日
空港で食べたイタリアン(?)定食。うーん、冷凍の味〜……
バタートースト
ミルクティー
ヨーグルト
柿・りんご

「朝は絶対絶対パンがいい」の母の嗜好のもと、今日も昨日に引き続きパン朝食。ふわふわの食パンが懐かしいのよと母が買ってきた「アンデルセン」の厚切りされた長期熟成パンにバターたっぷり乗せてこんがり焼いて、その間にミルクティーの準備をした。今日はミルク多めの濃厚な煮出しミルクティーじゃなく、濃いめに淹れたアッサムティーにそれと同量ほどの牛乳を注いで作るちょっとさっぱりめミルクティー。

「この、昨日買ってきたヨーグルトも食べなきゃね、あとー、あらあら、このりんごも柿も食べちゃわなきゃダメじゃない。帰ったらドロドロになってるわよ」
私がパンと紅茶の準備をしている脇で、母はおそろしい分量のりんごと柿の皮を剥きまくっている。一体それ、誰がいつ食べるの〜?と聞いてみたら、
「ん、食べきれなかったら、パックに入れて飛行機で食べるのよ。……ダメ?」
とのこと。……果物持ち込んで食べるのは大丈夫かと思うけれど、でも金属製のフォークとか持ち込んだらきっとダメだと思うよ……。

成田空港ターミナル内「PAUSE」にて
 Bランチ \980
 おつまみBセット \1280

今回、けっこう急にバタバタと決まった旅行だったので余裕がなく、さらにお金もなく、久しぶりに旅行会社のエアー&ホテルの観光抜きのパッケージを使うことになった。予定の便の離陸は4時半で、旅行会社のカウンターには2時半に来いとある。

なら、1時過ぎに出れば余裕よね大丈夫よね……と思っていたのだけれど、母は
「なら、せっかくだから空港で美味しいもの食べてから行かなーい?」
と言うのだった。……空港に美味しいものって、あるのかしら……と若干不安に思いながら、11時半に家を出る。服持った。半袖メインだけれど冷房対策にちゃんと長袖も持った。一応水着も持った。ノートパソコン機材、メイク道具に日焼け止め、息子はゲームボーイを自分の鞄に入れて、いざいざいざ。

で、12時半、空港到着。
「さっぱりしたもので、いいんじゃなーい?」
「……天丼とか?」
「なに言ってるのよ、天丼なんて全然さっぱりしてないじゃないよ。……ピザとか?」
「お母様、ピザも全然さっぱりしてないです」
やいのやいの言いながら、結局「洋食が良いわねー」と、空港ターミナル内のイタリアン(風)レストランに。メニュー見ていてムラムラときてしまい、ついビールも注文してしまった。

ビールと枝豆とフライドポテトのセットに、母はそのほかにドリア、私は「B定食」、息子はハムとチーズのホットサンド。日替わりの定食、本日は海老フライと"豚フィレ肉"だそうで、ライスとサラダとスープつきで980円。

店頭見本とかメニューの写真はそこそこ美味しそうだったのだけれど、どれもちょっと泣けちゃうほどに美味しくない料理の数々で、ほんのりショック。

いかにも「冷凍ものをチンしてそのまま持ってきました」みたいな枝豆に、同じくいかにも冷凍ものみたいな、不自然な形状と衣のつきかたをした海老フライ。これまた「焼いた」というより「チンした」だけじゃないかという風の、豚肉のベーコン巻きドミグラスソースかけ……といった風のちょっと怪しい味の肉料理。つけあわせのポテトとにんじんは、これまた冷凍ものをチンしただけみたいな、外側がベシャッと水っぽくて味気ない、「どうやったら、にんじんをこんなに美味しくなく加工できるんだ」という味がした。もう、笑っちゃうほどに美味しくなくて、それでも3人で食べた結果、5000円弱に。空港飯って……空港飯って……。

機内食
 サーモンとチキンサラダとマカロニサラダの前菜
 サーモンのクリーム煮とタリアテッレ
 パン
 チョコレートケーキ
 スプライト、コーヒー

予定通り、全日空便のシンガポール行きが4時半に出発。各席1つずつテレビ画面つき、10種類以上あるテレビゲームが遊び放題という、息子にとってこのうえなく幸せな機体だった。ひたすらひたすらスーパーマリオ(2とか3とか)で遊んでいる。

離陸してすぐに出てきた夕食は、シンガポール時間(日本時間マイナス1時間)ではまだ5時半という時間帯。鶏の照り焼きとそぼろが乗った鶏御飯か、サーモンのクリーム煮の選択で、私はサーモン、母は鶏御飯。息子のチャイルドミールはグラタンとチキンライスと唐揚げ、海老フライ、かぼちゃのテリーヌにツナサラダにクリームのケーキと、今回もなんだかとても美味しそうだ。グラタンとチキンライスと揚げ物の組み合わせなんて、お子さまランチそのままで、いいないいなという感じ。

「……いいなぁ……」
「おかあさん、ぼくのごはん、欲しいの?じゃあねぇ、スパゲティくれたなんだらねぇ、えびフライあげるよ」
「……うん、もらうもらうー」
自分の分のタリアテッレをごそごそと息子の皿に移す代わりに、海老フライタルタルソースつきを1本ゲット。いかにもーな機内食の味ではあったけれど、美味しうございました。空港で食べた昼御飯よりも美味しかったりして……。

機内にて
 トロピカーナ ムースシャーベット オレンジ味

結局、ずーっと息子はゲームに熱中し続けて、一睡もしないまま現地時間午後11時にシンガポールのチャンギ空港に到着。到着直前に「軽食が出ます」と言われていたのだけれど、出されたのはお茶と小さなシャーベット1個。うとうと眠り続けていた後のひんやりしたシャーベットは美味しかったけれど、いまいち物足りなさもあって、明日のホテルの朝食を楽しみにすることに。

送迎つきのプランだったので、現地係員さんの運転によるバンでホテルに。「お客さんタチ、ツアーないの?観光ないの?ナイトツアー、いいねー。ライトアップ、きれいネー」というサービストークに揉まれながら見る夜景は、思った以上に整然としていてどこもかしこも小綺麗で、街路樹がうっそうと繁っていた。深夜12時をまわろうというのに、屋台街と思われるあたりは大盛況。明日から、がんばって歩くぞー。

12月9日 木曜日
初めての、本場海南飯。うーまー。
ホテルの朝食ブッフェ
 パンケーキ
 目玉焼きwithケチャップ
 カリカリベーコン、フライドポテト
 炒麺(平麺の)
 チキンマカロニスープ
 缶詰の桃と梨入りのヨーグルト
 アップルジュール、牛乳
 紅茶

昨夜寝たのはもう1時もまわった頃だったのだけれど、今日はやっぱり6時頃には目覚めてしまう私(旅行に行くといっつもこうよ……)。母は旅行中に限らず早起きなので、2人して6時頃から「ヒマー」と窓の外を眺めてみたり。息子はよく寝てるし、どこかに出かけるわけにも行かず、そしてパソコンは3ツ口コンセントに日本式コンセントが刺さってくれなくて充電できずにとっくにバッテリーがあがってしまい、メールチェックも日記書きもできない始末。今日はどこか電器屋さんに行ってアダプター買ってこなきゃ……(ホテルで当然借りられると思っていたら、"全て出払っちゃったわー"だそうで……)。

で、幸い、息子が7時過ぎに起きてきてくれたので、さっそく朝御飯に。宿泊プランには3日分の朝食がついてきていて、1階のカフェテリアでブッフェ式の朝食が摂れるらしい。私は「1日くらい、外で食べようよ朝御飯〜」と言っているのだけれど、母は「いいじゃない3日ちゃんとついてくるなら、それで」と、しょっぱなから意見が割れている私たちだった。……ま、内容が充実してれば3日同じ朝食でも良いんだけど……。

私にとっては幸いなことに、ホテルの朝食はいまひとつだった。南国なのに南国らしい果物が全くなくて、フルーツコーナーには缶詰の桃とか梨が。パンは薄切り食パンの他にはいかにもくどそうなクロワッサンとチェリーデニッシュ、そして妙にバサついた小さめのホットケーキ。卵を焼く担当の人が中央でせっせと鉄板上でヘラを動かしているのだけれど、オムレツなどは頼めないようで、ただひたすらに半熟の目玉焼きを作っているのだった。鶏肉入りのマカロニスープと、ぺったりとした平べったい平麺をオイスターソースで炒めたような麺料理がほんのりローカル風味。

「ママンママン……満足?」
「……ぜんぜん……」
新鮮な生野菜のサラダと、生のフルーツを何より愛する母には、ちょっと悲しい朝御飯だった模様。私が提案するまでもなく、「明日の朝は別のところに食べに行こう」ということになった。

でも、全体的にイマイチではあったのだけれど、スープが素朴な味で(ジャンクな味とも言えるかも……)、これだけはなかなか。シェルマカロニが浮かぶスープには裂いた鶏むね肉が入っていて、上から好みで刻み葱とフライドガーリックをバラッとかけて食べる。葱とにんにくてんこ盛りで、うまうまー。

シンガポール アラブストリート近くの軽食屋にて
 アイスコピ $1.00

今日の予定は、午後3時半にラッフルズホテルに行くことだけ。
「じゃあ、アラブストリート行って、リトルインディア行って、余裕があったらマーライオン見て船乗って、で、ラッフルズに向かうのはどうでしょう」
と、布が大好きな母と一緒に布が大好きな私はそれが売ってそうなエリアをまず目指すのだった。布があんまり好きじゃない息子はちょっと不満そう。

道路がババーンと広々しているところが多いシンガポール。街路樹は「もうちょっと育ったらラピュタの木になれるんじゃないか」と思えるほどに巨大化していて、どこもかしこも花だらけ。数メートルごとに「この花、なんて花かしらー」と上を見上げたり、下を見て立ち止まる母と一緒にのんびりとあれこれ散策してきた。アラブストリートではとにかく布屋さんが列をなしていて、1つの店で母はソファーカバーになりそうな青い布をお買い上げ。私はいまいちツボに入るものがなく、何も買わずに店を眺めまくっていた。

疲れたところで、適当に目についた軽食屋さんで一休み。カウンターだけの店の周囲に適当にオープンエア状態で椅子とテーブルが並んでいる、ごくありきたりな風の店で、上に掲げられたメニューを見て「……さっぱり、わからん……」と絶句する。冷蔵ケースに入っているソフトドリンクを買う分には不自由しないけれど、あとはもうさっぱりわからない名前ばかり。

「あ!ひとつわかったわよ!ネスカフェ!」
「あとねぇ、あの"コピ"ってのは、コーヒーなんだよ、練乳入りの」
「ママはティーも読めるわよー」
他にお客の姿がないのを良いことにやいのやいの相談して、母はアイスライムティー、私はアイスコピ、息子は
「これ!これ飲む!」
と、綺麗なピンク色をした、冷蔵マシンでグルグルかき混ぜられていた怪しげな飲み物を注文していた。……なにこれー?と、お店のおっちゃんに聞いてみたのだけれど、わからない。「シロップ、シロップ」とか言っていたけど、何味のシロップなのー?

「……よく、わかんなかったね……」
とか言いながら飲んだアイスコピは、期待通りの甘さで幸せだった。カウンターの奥を眺めていたら、グラスに氷をどかすか入れ、そこに熱いコーヒーをどばどばと注ぎ、そして缶入りの練乳をどぼどばばーと垂らしてからよーくよーくかき混ぜていた。おそろしい分量の練乳が入っている模様だけれど、それが疲れた足に優しくフィット。

シンガポール リトルインディアエリア 「コマラ・ヴィラス」にて
 私:Onion Rama Masala Dosai $2.6
 母:Bhattura $2,8
 子:Paper Dosai $2.2

アラブ人街をおおむね歩き、そのまま徒歩でインド人街に向かってみたら、これがなかなか遠くてヘバる。ちょうど昼時ということもあり、ともかくどこかで休まなきゃという気分になっていた。……このへんの美味しいお店とかって、実は全然チェックしていなかったりして(母が、スパイシーすぎる料理が苦手ということもあり)、ちょっと途方にくれる。適当なところに入っちゃうかなー……と、ガイドブックから切り抜いて色々書き込みして持ってきたマップを出して、最初から印刷されていたレストランの記述に目が留まる。……えーと、野菜料理が美味しいカレー屋……だったかな?

他に特に選択肢もなく、結局ここに入ってみたのだけれど、メニュー見てもまたもや何がなんだかさっぱりわからない。初めてメキシコ料理屋に足を踏み入れた時なみに、いや、それ以上にわからない。壁に写真入りのメニューがあるのだけれど、その写真を見ても何が何やら状態で、お店のおっちゃんに
「何が、何が美味しい?オススメ?」
と聞いてみた。そだなー、12番と14番だな。子供さんには9番はどうだい、という返事をいただき、そのとおりに注文してみる。1皿3ドル(200円弱)という価格だし、まぁたいした分量でもないだろうなと思ったのだけれど、これがこれが大変なものが。

ちょっとトイレに行って帰ってくると、息子の席にはクリスマスツリーかと思われるような、クレープ状の生地のタワーがそびえていた。直径50cmはあろうかという、薄いクレープ生地(ほんのりチーズ味)が円錐形に巻かれて息子の前にそびえている。で、3種類の野菜料理(オカラみたいな口当たりと風味のちょっと酸味のある和え物と、野菜のカレー、ちょっと辛いトマト味の煮物)が、ボン!ボン!ボン!と。私の前には玉ねぎ入りのバボーンと大きな具なしのお好み焼きのような生地が出てきて、そしてやっぱり3種類の野菜料理。お好み焼きの下にはカレー味のじゃがいもと玉ねぎとコーンの和え物が隠れていた。母の前には、ンプーッと膨れた薄くパリパリのパン。つつくとプシュ〜と小さくなったけれど、それだってけっこうな大きさだ。やっぱり野菜料理が3種類。

「うっひゃー……」
「……ぜんぶ、食べられるかしら」
「ぼくはねぇ、無理とおもうよー」
それぞれ勝手な事を言いながらせっせとそのパン的食べ物をカレーなどに絡めながら、周囲の人の真似してせっせと右手を使って食べてみたのだけれど、味は確かになかなかのもの。野菜料理はどれも素朴な味で、パン類はどれも香ばしくて味が違っていてすばらしい。息子の食べたチーズ味のクレープが一番好みな味だった。でも、案外とパンがオイリーで、割とすぐにおなかが一杯になってきてしまう。暑さのせいで、ずっと水分をしっかり摂取してきていたのもいけなかった。腹の中でぐんぐんパンが膨れよる。

「……うう、美味しいのに食べられない……」
「私はもうダメね。由紀ちゃん、残り食べる?」
「無茶言うなー」
「ぼくも、もうダメー。おかあさん、食べて?」
「お前まで無茶言うなー」
結局、私が一番、空に近くなるまで頑張ったとはいえ、全員料理を残すに至ってしまった。こんなに美味しいのに、ごめんなさいすみません……と周囲を見渡せば、インド人のお客たちはそりゃもう美味しそうに全員綺麗に平らげて帰っていくし。「これが旨いよ」と教えてくれたおっちゃんは、
「美味しくなかったかい?」
と、ほんのり悲しそうな顔になっていた。あああああ、ごめんなさいごめんなさい……。

シンガポール ラッフルズホテル 「Tiffin Room」にて
 ハイティー 2×$63
 ハイティー (子供) $18
 オレンジジュース $8.5
 シンガポールスリング $16

昼食後、引き続き散策していたインド人街で見つけてしまったヘナ屋さんで、以前から一度やってみたいと思っていたヘナ・タトゥーに挑戦してしまう。ヘナという染料を使って肌を染める、簡易入れ墨のようなもの。簡単には落ちないらしいけれど、でも2週間もすれば自然に消えてしまうのだそうだ。
「やる!やってみる!手首から人差し指にかけてニョロニョロするみたいなのがいいな」
「やめなさいよ、由紀ちゃんったら」
「やめなさいよー、おかあさんってばー」

母と息子に非難囂々浴びながら、$40(2400円くらい)払って、両手にニョロニョロと描いていただいてしまう。泥状のを小さな絞り袋で絞り出して いくので、できあがりは腕に泥の模様を描いたみたいな、大変に美しくない感じ。
「んとー、これって、どのくらいこのままでおくの?洗うの?」
聞いてみたらば、「3時間はこのままで。洗わないで」とのこと。まだ泥がしっとりと濡れている状態なので、こすったりするのも厳禁なのだそうで、もう大変。

「ママンママン、私の代わりに財布出して……マップ持って……」
「まったく、だから言ったのに。イヤよ、そんな怪しい呪術娘」
「おかーさん、きもちわるいよ、それ」
更に身内にクソミソに言われつつ、このまま買い物を続けるわけにもいかなくなって、タクシーに乗ってベイサイドに。せっかくだから、シンガポール名物「マーライオン」くらい見ておかなきゃねと、ラッフルズホテルにもほど近いそのあたりに行ってみたのだった。

なんでもマーライオン、「世界三大がっかり」のひとつらしい。確かにそれもわからないではなく、
「あー、マーライオンだねー、どっかで見た写真と同じだねー。はい、おしまい」
という感もある。でも、なんとなく悔しいからあれこれ写真を撮ってみたり。……その頃には、腕のヘナはすっかり乾いて、カサカサポロポロとゴミのようにそこここが崩れ落ちるようになっていた。ちょっと触るとモソモソとどんどん取れていき、下には見事に茶色に染まった模様が見えてなかなか綺麗。

その後、しっかりシンガポール川周遊ボートなどにも乗り、3時過ぎにラッフルズホテルに。あまりに汗みどろでヨレヨレの格好なので正面玄関から入る度胸がなく、裏のショッピング街方面からこっそり入ってトイレに直行し、顔と髪を必死に整えて、もってきた上着をはおって、日本から予約を入れておいたティフィン・ルームに向かった。ここでは毎日、シンガポールスタイル(……おかずっぽいものも食べられるブッフェ式の午後のお茶という感じ?)のアフタヌーンティーが楽しめる。
「シンガポールって言ったらラッフルズよね。行ってみたいわぁ、お茶くらいしてみたいわぁ」
とずっと母が言っていたので、では母の好きなブッフェなら文句はあるまい、と予約してみていたのだった。日本人の人気も絶大なようで、時期によっては客の90%が日本人で埋め尽くされる時もあるのだとか。

時期が時期なので(12月の今頃なんて、普通の会社員は忙しい……)、満席にもならず、日本人も1割くらいしかおらず、ちょっと聞いていたような酷い雰囲気(日本人いっぱいでわやくちゃで学食みたいな、っていう……)じゃなかった。こちらが席を立つ度にささっと皿とカトラリーを下げて新しいカトラリーをセットし、椅子にくちゃっと置いたナプキンは綺麗に畳んで椅子のひじにかけ、落ちてしまったナプキンは新しいものと取り替えて……という見事なサービスは心地よく、種類豊富な料理も「……昼飯、食べるんじゃなかった……」と全力で後悔するほど豪華なものだった。お茶を選ぶ余地がなく、「ティーメニューってあるの?」と聞いてみれば「イングリッシュなんちゃらだけでーす」と、どぼどぼどぼと1種類を入れてくれるだけ(しかもティーバッグだ、それ……)というのが悲しかったけれど、せっかくだからと頼んでみた、この店発祥のカクテル、シンガポールスリングが美味しくてちょっと幸せ。

並ぶ料理は、まずは普通のアフタヌーンティーでお馴染みのスコーンとクロテッドクリーム、ジャム類、フィンガーサンドと言うのはちょっと大きめな各種サンドイッチ、ブリオッシュ生地を使ったような丸っこいサンドイッチ類、クッキーや生ケーキ。そして案外と多い中華系点心、チャーシューパイとか焼売とか焼き餃子とかチキンカレーパイなどなど。そしてスターフルーツやドラゴンフルーツといったちょっと珍しい南国の果物も並ぶ、スイカやパイナップル、イチゴやメロンなどの果物類。大変に食べ応えがあった。つい点心に手を出してしまったら、もうお腹ぱんぱんに。

どれも洗練された美味しさではあったけれど、でも「さすがラッフルズ!」という程でもなかったのが正直なところ。スコーンもチャーシューパイも、もっと美味しいものを知ってるなぁ……という思いを感じてしまったし、サンドイッチ類は美味しかったけれど、何も必死に予約してここでブッフェ式で食べなくても、と。

一番美味しかったのが「Buh Buh Cha Cha」という料理で、キャンドルで温められていた小さなポットに入った白いお汁粉みたいなものに
「……なんだこれ?」
と説明札を見ようとした私に、すぐそばに立っていたスタッフが
「ぶぶちゃちゃ」
と。
「ぶぶちゃちゃ?」
「イェース、ぶぶちゃちゃ」
「……甘いの?……ココナッツ味かな、もしかして?」
「そうそう、あったかいココナッツにあれとこれを入れて甘くしてねー」
その説明を最初に聞きたかったのだけれど、いきなり「ぶぶちゃちゃ」と言われてしまって私はちょっとびっくりだったよ。

ココナッツミルクのお汁粉みたいなそれ、中にはタピオカとかぼちゃとお芋とナタデココが入っていた。甘すぎず、ほわんと優しい自然な甘さ。すごくすごく美味しかった。

シンガポール マンダリンホテル内「チャーターボックス」にて
 名物チキンライス

腹が破れそうなほどラッフルズホテルで飲み食いしてしまい、そのまま「もう帰ろうよー」という気分のままに、
「でもせっかく来たんだから写真撮らなきゃ!由紀ちゃん、そこ立って!」
「ヤダよー……恥ずかしいよ、ホテルで記念撮影……」
「じゃあ私を撮って!」
「……いいよー……」
なんて、ラッフルズホテルをうろうろうろうろ歩き回り、その横のショッピングモールもうろうろうろうろ歩き回り、そしてタクシー使ってホテルに帰ったのはもう6時過ぎ。このまま腰を落ち着けたらもう二度と今日は出かけられなくなってしまう、と、慌ててひとっ風呂浴びてから最寄りの繁華街、オーチャードロード目指してホテルを抜け出した。

この季節、シンガポールはどこもかしこもキラキラキラキラとイルミネーションがすさまじい。シンガポール版銀座という感じのオーチャードロード周辺は、もう大変なことになっていた。その通り全体でひとつのコンセプトでイルミネーションをつけているようでいて、でも結局各々のお店で出来る限り精一杯のイルミネーションを展開しているものだから、町全体がエレクトリカルパレード状態。平日の夜なのに人通りもおそろしく多かった。

「すっごーい!クリスマス、すっごーいねー!」
「こらこら息子、手を離すなぁ!」
「由紀ちゃん、ほらほら向こうに立って」
「こんな混雑してるところで通行止めて写真撮ろうとしないでよママン!」
色々と、もう大変。じわじわと遠回りをしながら夕食にと向かったのは通りに面したマンダリンホテル内の、ファミレスチックなカジュアルレストラン。シンガポールといえば、名物は「海南飯」(チキンライス)だけれど、このお店はそれがなかなか美味しいらしい。一度は食べたい海南飯、でも、母は汚らしいお店とか屋台がすこぶる苦手だしなぁ……とあれこれあれこれ調べて、「絶対ここなら大丈夫!」と出発前から目星をつけていたお店のひとつだった。ここなら、海南飯が苦手かもしれない(にんにく使ってたりするから……)母でも、別に食べるものがあるだろうし。

で、生野菜が恋しかったらしい母は、チキントッピングのシーザーサラダを、息子はスパゲッティボロネーゼを、私は念願の名物チキンライスを。ビール1杯いただいて、その美味しさに喉をふるわせながら(疲れて、風呂入った後のビールよ!)、念願のチキンライスにありついた。

鶏肉を蒸したり茹でたり(店によって違うらしい)したものに、オイスターソースベースのタレ、ねぎにんにくチックなタレ、チリソース系のピリ辛タレが3種類小皿に添えられる。そして鶏のスープで炊いた御飯に、鶏のスープ。御飯もスープもおかずもとにかく全体的に鶏!なのが、海南飯だ。他のお店と比べられるほど食べつけていないからわからないのだけれど、確かにすごーく美味しい海南飯だった。

日本の中華料理店で、時々とんでもなく美味しい蒸し鶏の前菜とか棒棒鶏を食べることがあるけれど、ここの鶏肉はまさにそんな感じ。ふくふくと柔らかく、しかもジューシー。皮がプリッと光っていて、少しも固さのない肉は臭みもなくてほのか〜な塩加減も心地良い。ここに甘さ控えめなオイスターソース系の黒いタレをつけても似合うし、コテコテとにんにくがっちょり系のタレをつけても似合うし、ちと苦手ではあるけれどピリ辛タレもこれまた似合うし。3種のタレを均等にまぶしてみても、これがまた複雑な味わいになって美味しい。タレの味で変化をつけて食べるたんなる蒸し鶏、という感じではあるのだけれど、不思議と美味しい。ホロッと優しい食感に炊けている鶏風味の御飯とスープがまたこのおかずに似合うんだな。

「うまいわ、うまいわ。海南飯、うまいわ」
がっつがっつと初めてのシンガポール海南飯を満喫する私に、
「よく食べるわねぇ。大体あなた、どこ行ってもとんでもない量食べてるわよねぇ」
どこ行っても「これ、食べる?」「これ、食べて」と私の前に色々出してくるのに、母はそんな事を言うのだった。……だったらラッフルズで「クッキー食べる?」とかって持ってくるのやめてよ、ママン。

12月10日 金曜日
甘くて美味しいカヤトースト
シンガポール チャイナタウン 「Ya Kun Kaya Toast」にて
 カヤトースト 2人分
 半熟卵 2個
 アイス・コピ 3杯
 ……で、$6.8

明日は絶対カヤトースト。シンガポール名物カヤトーストの朝御飯を食べるんだもんね!と宣言していて、ホテルの朝食はパスの私。それでも、
「私、朝にヨーグルト食べないと調子でないのよねぇ」
「ぼくはぁ、カリカリのあさごはんのほうが、好きなんだなぁ」
と、母と息子は2人して階下のブッフェ開催中カフェテリアに行ってしまった。私は、行ったらなにがしか食べてしまいそうなので部屋で待機。2人が戻ってくるのを待ってから、ホテルからタクシー乗ってチャイナタウンに向かってみた。

シンガポール名物「カヤトースト」とは、甘いペーストをこってり乗せた薄切りパンのトースト。ペーストの材料はココナッツミルクと卵と砂糖なのだそうで、店によってそれぞれレシピが異なるらしい。トーストしたパンにそれをこってりと塗り、バターも一緒に挟んでサンドイッチのようにして食べる……らしい。それにシンガポールのコーヒー「コピ」(練乳を入れた甘くミルキーなコーヒー)をあわせるのが最高なのだそうだ。

「……で、なんでわざわざタクシー乗って食べにいかなきゃいけないのよ」
「えー、だって、まだチャイナタウン歩いてないし、丁度いいし。この店、まぁいくつかあるんだけど、そこの店のが雰囲気良いらしいからさ」
"食事のために移動する"という事にいまいち理解を示してくれない母を宥めつつ、タクシー乗ってどんどことチャイナタウンへ。タイル張りの床の、香港の粥麺屋みたいな雰囲気の店の外にもテーブルと椅子が並んでいて、屋外でも食べられるようになっていた。

……席に座っちゃっていいのかしら?と入店してキョロキョロしていたら、お店のおっちゃんが
「コッチコッチ、外、キモチイイヨー」
と外の席に連れていってくれた。
「トースト、1人ヒトツ?コーヒーコウチャ?エッグは?」
座るなりまくしたててくる。あわただしく、トースト2人分、卵も2つ、そしてアイスのコピは3つ注文。数分後に深皿に入れられた半熟卵がやってきた。ほんの数分茹でたゆで卵みたいなもので、同時にテーブルに醤油と胡椒がやってきて「好きなようにかけて喰え」だそうで。

ぷるぷる優しい食感のゆで卵をツルツル食べた後、甘いコーヒーと共に念願のカヤトーストが。茶色いパンはこんがりと焼かれてカリサクッとした食感で、2枚の間に"カヤジャム"がたっぷりと。バターも「厚切り」といった風のがジャムと共にババーンと挟まっていた。甘い。甘いんだけれど、それほどコッテリした味じゃないので案外とばくばく食べられる。ほんわか漂うココナッツの味がなんともステキだ。練乳味のコーヒーもたまらなく私の好みだし、この朝食は最高だなぁ。

「ほら、ほら、美味しいでしょ?どうよ?」
「うん、美味しいわね。でも、ちょっと多いわ。あと食べてね、由紀ちゃん」
私のカヤトーストは、通常の1.3倍くらいの分量になってしまった。

シンガポール チャイナタウン「東典」にて
 エッグタルト $1×3
 杏仁茶・コカコーラ
全部で$6.2でした

朝食後はチャイナタウンの散策。いかにも中華なしつらえの、カヤトースト屋にほど近い「ティアン・ホッケン寺院」を訪れ、カラフルな建物が並ぶ町並みを楽しみながら歩く歩く。中華街とは言うけれど、日本のみたいにただひたすらレストランが並んでいるという風じゃなく、お土産物屋さんと寺院が多いという印象。
「この布、ステキステキ……って、布じゃなくてショールだわね。……え?1枚$15が$14?」
「あらぁ、いいわぁ由紀ちゃん、1枚ずつ買いましょう」
「じゃあ、えっとー、2枚買うから、もっとディスカウントしてくださーい。……ダメ?」
交渉しながら、ショールを2枚買ってみたり、母は怪しい骨董屋で七宝焼きみたいな焼き物のブレスレットを買ってみたり。

しばし歩いた後は、「ここのが美味しい」とどこかで読んだ「東典」(トン・ヘン)というお店で休憩して名物のエッグタルトを1人1個楽しんだ。
「杏仁豆腐ってないのかしら?私好きなのに。……あらぁ、杏仁茶ってあるじゃない、これ飲むわ」
「あのねぇ……それ、甘いよ、けっこう、きっと。それにけっこうくどいと思うから、喉乾いた時には逆につらいかもよ」
「いいのよ、杏仁味なんでしょ。これくださぁーい」
一応脇からアドバイスしてみるのだけれど、やっぱり聞いちゃいない私のママン。こりゃ、私の分の飲み物は貰わない方がいいかもな……と、息子のリクエストでコーラを1本頼むにとどめておいたのだけれど、やっぱり数分後に
「由紀ちゃん、これいらない」
と言い出した。……だから言ったのにー。

冷蔵ケースに収められて売られていた冷たい杏仁茶はちょっと粉っぽいところはあるけれど、甘さは思ったよりも少なくて案外と飲みやすいのが有り難かった。エッグタルト(蛋撻)は、珍しい菱形の形状(普通は丸い)。卵たっぷりのプルンとした黄色い生地が中央に収まっていて、そのプリプリ感もステキなら、パイ生地のサクサクパリパリ感もすごく良い感じ。中華のパイみたいにモロモロと崩れるタイプよりも洋風のものにちょっと近い、洋菓子みたいなエッグタルトだった。美味しいなー。

シンガポール チャイナタウン 「Maxwell Food Centre」にて
 中華蒸しパン $0.8
 Hong Kong Mee $3
 Bah Kut Tea $4
 フルーツ盛り合わせ $3
 テイクアウトマンゴー $2.4
 ストロベリーバナナシェイク $3
 水 $1

蛋撻休憩後も中華街をてくてく。気になっていた中国茶屋さんを目指したのだけれど、
「お茶、ちょっと飲んで行かれます?」
の誘いにどっしり腰を落ち着けてあれこれあれこれいただいてしまう。渋い風合いの、ちょっと昔臭い感じの茶器がずらりと並び、お茶は中国と台湾からのものだそうで。2種類目にいただいたお茶があまりに美味しくて、"金なんとか"なる名前の、ちょっとお高いそれを買ってみてしまった。母もうきうきと茶器のセットを買っている。

昼食は、中華街内にあるホーカーズ(屋台街)に。台湾の夜市にもちょっと似た感じの料理が並ぶシンガポールのホーカーズ、一度くらいは行ってみたいと思っていたのだけれど、今日の昼にたまたま通りかかりそうだったので
「お昼は屋台!どうどう?けっこう綺麗だよ。安全よ」
と母を引っ張って行ってみてしまった。
「ほらほら、いっぱいお店があるでしょ?好きそうなの言ってくれれば、私が買ってきてあげるから。にんにくも抜いてって、ちゃんと言ってあげるから」
と、元々そういう屋台ものは好きじゃない母にあれこれ声かけて、母、多分人生初めての屋台飯。カウンターだけの店がずらーりと100店舗くらい、麺料理あり、お粥あり、デザート専門店あり、という感じ。周囲には適当にテーブルと椅子が並んでいるので、好きなものを好きなように買ってきて、好きなように食べる。

「焼きそばだったら良いかしらね。……うん、この焼きそばなら」
"Hong Kong Mee"と記された、写真つきのメニューが並ぶ1つの屋台の前で母が立ち止まり、「ぼくもー」と息子。じゃあ、とりあえず1つもらって、2人で分けて食べてもらって、食べきれるようなら別の品も考えよう……と、それを1つ。蒸しパン(馬拉[米羔])も別の店でみつけたので、手のひらサイズのそれも1つ。フレッシュジュース屋さんでストロベリーバナナシェイクも1つ。

「よーしよーし、これで母と息子の分はなんとかなったぞー」
と、最後は私の分よとじっくり各店を見比べ、念願の「Bah Kut Tea」(バクテー)を。豚のスペアリブを漢方入りのスープで煮込んだものなのだとかで、店によってはかなりにんにくが効いていたりもするらしい。母に絶対何か言われそう……と思いつつ、3店舗くらいで売られていたそれを、一番美味しそうに見える店で頼んでみた。ごろーりごろーりと5本くらいのスペアリブが沈んだ、たっぷりの茶褐色のスープは、それで250円くらい。

「うわー、由紀ちゃん、なにそれ」
「……バクテー。豚スープ」
「いやーだー、にんにくくさーい」
「いいじゃん、私が食べるんだから」
案の定、母にブーブー言われてしまいながら、「もし母も息子も麺を食べなかったら」の保険のために私は御飯とかつけずに、肉入りスープをいただいた。思った通り
「ぼく、パンたべたから、おそばは少しでいい」
「私も焼きそば、このくらいでいいわぁ」
と焼きそばが1/3くらい残されて私の元にやってきたので、焼きそばチュルチュル啜りながらしょうゆ味ベースのスープをゴブゴブと飲む。ほんのりオイスターソースの味がついた、適度に塩気のついた焼きそばは固めの細い細い蕎麦。青菜やもやしがたっぷり入って、素朴な味がした。170円くらいしかしなくせに、しっかり海老まで入っている。

そして、バクテーも思ったよりもずっと馴染み深い味。もっと漢方臭いものかと思っていたけれど、このお店のはほのかーににんにくの匂いがする、見知った味のスープになっていた。骨からモロッと肉が外れ、それがとろけるように柔らかくて、見かけのそっけなさとは裏腹にすごく美味しい。最後に白い御飯を入れてかき混ぜて食べたいような、そんな味だった。

「食後にフルーツ、食べたいわぁ」
と、カットフルーツが並ぶフルーツジュース屋台を眺めている母に、
「あの店、多分頼めばジュースじゃなくてフルーツのまま出してくれると思うよ。……買ってみれば?」
と言い置いて私は手を洗いに洗面所に行ったのだけれど、戻ってくるとそのフルーツ屋の屋台の前で
「これ、ドリアン?ドリアンじゃないの?マンゴー?マンゴー?」
と、日本語でまくしたてている日本人のおばちゃんがいる。……私の身内のおばちゃんだった……。でも、なんとか、キウイと梨とマンゴーのカットフルーツのプレートを作ってもらったようで、やけに華やかな模様のついたプラスチックプレートに盛り合わせてもらって持ってきた。

母曰く、キウイと梨は甘さが少なくてイマイチだったとか。マンゴーの味は最高で、
「ほら、食べてみなさいよ由紀ちゃん、このマンゴー」
とお裾分けしてもらったそれは、これまで食べたどんなフィリピンマンゴーより甘く感じるフィリピンマンゴーだった。今年の夏に何度か食べた国産のアップルマンゴーも相当に甘かったけれど、それよりも甘いかもしれない、黄色いマンゴー。とろけるように柔らかく、独特の花のような匂いが口の中にふわぁと広がって、へたなケーキよりもずっとずっと美味しい果物だった。うわぁ美味しい美味しいどうしよう、すごく美味しい!と、お土産に包んでもらうことに。

「えっとー、持って帰りたいの。このマンゴー。カットちょうだいな」
先ほど、母に日本語でまくしたてられて困惑しまくっていたお店のお兄ちゃんのところに行き、今度は私が身振り手振りで要求を伝えてみた。ビニールにカットマンゴーを丸1個分入れてもらって、ちゃんと竹串(フォーク代わり)を添えてもらって何より何より。

とりあえず、今日は夜にお出かけするので昼食後はそのままタクシー拾ってホテルに帰ってきたのだった。

シンガポール 高島屋内「翡翠拉面小龍包」にて
 南京金陵鹽水鴨 $6
 白灼香港油菜 $8
 上海小龍包 2×$3.20
 北京水餃 $4.0
 糖醋鶏球 $9.5
 清[火屯]鶏湯 $6.0
 三鮮炒飯 $10.00
 龍眼杏仁豆腐 2×$3
 銀桂糖水 $3
 ビール 2×$7
 スプライト $1.8

午後はちょっと休みましょうかと、ホテルのプールでだらだらだら。広いとは言えないけれど、子供用の浅いプールもついている、適度に泳げる広さのプールがビルの谷間におさまるようについていて、息子はそれを見てからずっとずっと「プール入りたいなー、プール好きなー」と言っていたのだった。こうなることを予想して水着も持ってきていたので、2時間ほどプールでだらだら。シャワー浴びて着替えて、午後4時頃に夕方の町に繰りだした。今日は一日中暑くて暑くて、夕方にスコールがあったのにそれでも暑い。

「普通の中華が食べたいわ」
と母に言われたので、ホテル最寄りの町「オーチャード」のあたりを歩き、ひときわ目立つ高島屋デパートの中をぷらぷら。その中に、なかなか美味しい中華料理屋さんがあると聞いていたので「翡翠拉面小龍包(Crystal Jade La Mian Xiao Long Bao)に行ってみた。同じ高島屋内にもっと高級バージョンの店を構え、更に地下食料品売り場近くにも気軽に入れるカジュアル店を持つ、シンガポール内にいくつも展開している中華料理屋さんということだ。私たちが入ったのは、店名通り「拉面(ラーメン)」と「小龍包」がウリの店。

点心類と一般的なおかず類、そして麺類があれこれ写真入りのメニューに載っている。卓上の注文用紙に欲しい料理のチェックを入れて、渡すだけ。全員の胃袋をみながらちょこちょこ追加注文したのだけれど、これが最後にちょっとした悲劇を招くことになってしまった。

まずはお店のオススメという小龍包を。あとは香港野菜を茹でたものと、塩漬けダックの前菜。「北京風水餃子」なるものも注文してみて、あとは母のお好みの「鶏版酢豚」みたいなもの。スープも飲みたいねと「清[火屯]鶏湯」もひとつ。

どれもなかなかに洗練された味の、安心して食べられるものばかりだった。全体的にほんのり塩気が強めかなという印象もあったけれど、シャキッと歯ごたえの残る状態に火の通った野菜(空心菜のようで、でも茎に空洞のない野菜……どっかで食べたけど、なんて名前だったかなこれ……)も、ふくふくと柔らかい塩漬けダックも、カラッと揚げられた鶏団子を食べやすい味の甘酢あんで絡めた"酢鶏"も、どれもとても良い感じ。肝心の小龍包も、モチッと厚めの皮の中にたっぷりのスープとごろりと柔らかな肉あんがしっかりと詰まり、噛むなりタプタプとあふれ出すスープが嬉しかった。あまり小龍包を食べたことがなかった母、大喜びでもう1セイロ追加注文(1セイロは4個入り)。

「……まだいける?炒飯くらいは取りたいよね」
「うん、じゃあこの三鮮炒飯を」
と、小龍包の追加と一緒に頼んだのだけれど、先にやってきた小龍包を食べ終わってすぐに、お店の人がテーブルに敷いていた紙と一緒に箸やレンゲを全部さらって持っていってしまった。紙を相当汚しちゃったから替えてくれるのかしら?なんて思っていたら、なーんにもないテーブルの中央に、炒飯がやってきてしまった。……あれ?

数分待っても取り皿や箸が来る気配がなく、店員さんをつかまえて
「箸くださいな」
と英語で伝えてみる。あと皿も……と言おうとすると、それを遮るように
「Go Away?」
と返事が。そうそう、色々全部持ってかれちゃったのよー、という意味にとってしまって頷くと、店員さん、炒飯をGo Awayしてしまった。炒飯を持っていってしまい、それを3人分に取り分けてでもくれるのかと思ったら、持ち帰り用のプラスチックタッパーに入れて袋詰めして持ってきてくれちゃって……違う違うそうじゃなくて、という気力もなくなってしまった。うう、アツアツの炒飯食べたかったのになぁ。しょぼん。

ともあれ、この炒飯は次の目的地のところで食べちゃうことにして、デザートを1人1つ。母と息子はロンガン(ライチに似た、ちょっと大きな果物)入りの杏仁豆腐を、私はそのロンガンを干したものをシロップで煮込んだというものを。ねっとりした食感の、ちょっと不思議な感じの杏仁豆腐はしっかりと杏仁の香りが漂う本格的なもので、私の「銀桂糖水」は香りの良いシロップに白きくらげとクコの実がたっぷり入ったものだった。干して戻したロンガンは、「……これなら、生のほうがちょっと美味しいかも?」という味だったりして。

で、予定外の炒飯の袋をぶらぶらさせつつ、食後に目指したのはナイトサファリ。シンガポール動物園が日没から深夜まで運営している夜の動物園で、園内をトラムに乗ってぐるぐる回るようになっている。到着後すぐに日本語ガイドのトラムを予約し、数十分後に始まる30分のアニマルショーを見てからそのトラムに乗るように手はずを調える。で、アニマルショーまでの数十分に、フードコートの席について先ほどの炒飯をもりもりと。海老とチャーシューと鶏肉入りの炒飯、さらっとしたタイ米を使ったもので葱と卵たっぷり、美味しかったんだけど、やっぱりあったかいうちに食べたかったなぁ、と……(なんでこうなっちゃったんだろ、しくしくしく)。

夜の動物園なんて、初めて。早口の英語でほとんど聞き取れなかったけれどアニマルショーも皆で楽しめたし(頭上をフクロウが飛んだり、席の下から巨大な大蛇が出てきたり、カワウソが分別ゴミをゴミ箱に片づけたり、ヤマネコがジャンプしたり……)、その後のトラムでの遊覧もあれこれよく見えて楽しかった。トラムに乗った後はトレイルを一周したのだけれど、どの動物も昼とは違った動きを見せていて面白い。特にネコ系の動物は皆さん元気で、フィッシングキャットが川の中の魚を狙って構えたり飛び込んだりしていたのに釘付けだった。息子も夜10時半まで
「じゃあジャングルのぼうけんに出発だぁ!」
と最後まで元気に歩いてくれたし。

そんなこんなで、ホテルの部屋に帰還したのは11時過ぎ。夕食前にお風呂入ったから良いわよねと、そのまま着替えてベッドに沈み込んだ。
……明日はもう、帰国。早いなぁ……。

12月11日 土曜日
種類いーっぱい、ブッフェ式ハイティー
ホテルのブッフェ朝食  目玉焼き乗せ炒飯
 お粥
 カリカリベーコン、フライドポテト
 レタスのサラダ
 パパイヤ、スイカ、パイナップル
 オレンジジュース、牛乳

旅行中にしては珍しく、気を失うように寝て寝て寝まくって、目覚めれば7時。8時間ほども寝てしまったらしい。旅行中は4時間睡眠くらいで活動してしまう私には珍しいほど、どうやら疲れているらしかった。

今日の予定は、お昼にシャングリラホテルに向かうことだけ。それ以外には特に決めておらず、あれこれ考えながら1階のカフェテリアに向かい、ホテルプランについてきた無料のブッフェで簡単に朝は済ませることにした。一応連泊する人のことを考えているのか、内容は微妙に一昨日と代わっている。炒麺の代わりに炒飯、スープの代わりにお粥。あとはカリカリベーコンとか、スタッフが無表情にひたすら焼いていく目玉焼きとか、こってりくどそうなデニッシュなんかは変わりない。
「……今日もフルーツはいまいちだなぁ……」
と思いつつ、それでもレタスのサラダの存在がちょっとだけ嬉しかった。

昼にもブッフェなので、それに備えて極力軽めにほんのり中華な朝御飯。皿に炒飯を盛りつけ、それを目玉焼き担当に差し出して「ここに乗せてちょーだい」とアピール。上から葱ふって醤油ひとたらしして、脇にカリカリベーコンとポテトを添えてみたりして。お粥はなんてことのない味だったけれど、炒飯がなかなか美味しくて、なんだかんだと朝からしっかり食べてしまった。

今日は、午後にお買い物に行きたいエリアが1ヶ所あるくらいで、午前中にやりたいことが今ひとつみつからない。ホテルに籠もってるのもつまらないし、かといって午後の目的地以外にショッピングしたいエリアがあるわけじゃないし。
「あー……植物園でも行ってみる?なんか、豪華なラン園があるらしいよ」
ガイドブックを開いて何気なく呟いたら、その言葉におおいに母が乗った。
「花!いいわね、花。それにしましょう!」

ホテルからタクシーに乗って、突然行ってみた、シンガポール植物園。植物園自体は無料だけれど、奥にあるラン園に入るには大人1人5ドル(シンガポールドル)の入場料がかかる。植物園を全て歩くほどの時間的余裕はなかったので、早足でパタパタとラン園を目指し、軽く一周して1時間ほどであわただしく園を後にした。

ラン園はなかなか広く、歩いて30分以上はかかる、適度に高低差のある程良い散歩コースという感じ。道の両側、あるいはアーチに絡まるようにひたすらランが咲き誇っていて、なんともゴージャスな一角だった。ランと言えば紫がかったやけに華やかなピンク色をしたものばかりが脳裏に浮かんでしまうのだけれど、繊細な淡いピンクのランとか、ベージュがかった色合いのスモーキーなものとか、初めてみるものも多かった。大人も子供も大満足。

シンガポール Shangri-La Hotel 内 「Rose Veranda」にて
 ウィークエンドハイティー(大人) 2×$34
 ウィークエンドハイティー(子供) $20
 マンゴージュース 2×$13
 グラスワイン(白) 2×$13

そして12時を待って向かったのがシャングリラホテル。ブッフェ式のハイティーが12時から供されるということで、最終日のお昼御飯にはぴったりじゃないかと日本から予約していった。シンガポール到着後にホテルまで送ってくれた現地係員のジョニーさん(でも顔は波平)が、
「ハイティー行くならね、シャングリラがオススメねー。美味しいネー」
とか言っていたっけ。宿泊ホテルに近いということと、週末に早い時間からやっているという2つのポイントだけで選択したハイティーだったけれど、けっこうあたりだったみたい。

……で、確かに「当たり」で、料理の内容は申し分なかったし、空いた皿をすぐに下げてくれたりあれこれ細やかに気を遣ってくれるお店の人の態度も申し分なかったのだけれど、ただ、なぜか予約が入っておらず。日本からE-Mailで予約して、ちゃんと「OKですよ」という返事も貰っていたのに、予約帳には私たちの名前は入っていなかった。開店直後で私たちが第一号のお客だったので結局は簡単に座らせてもらえたのだけれど、
「予約?入ってないわね。ほんとにここ?ローズベランダ?今日?」
ときつい口調でまくしたてて、「ホントだってば」とプリントアウトして持っていったメールの文面を見て「……チッ」と舌打ちする始末。しかも、交渉している最中に次の予約客がやってきたら、こっちをうっちゃらかしてさっさと次のお客を席に案内していたりして、その対応に更に腹が立ってしまった。「ごめんなさいね、こちらの手違いで」なんて一言も、当然のようになし。「しょうがないわね」といった風に案内されて、何だかとっても悔しかった。悔しいので、何があってもシンガポールのシャングリラだけは宿泊しないぞ、と心に決める。

そんなイヤな事が最初にあったのだけれど、でも料理の内容はすこぶる素晴らしいものだった。一昨日のラッフルズと同じく、おかず系の料理も種類が多い。サンドイッチ類、カレーパイなどの塩気のある点心もそこそこあるし、スパイシーな数種類のカレーにはサフランライスとナンまで用意されている。クリスマスシーズンということで、ブッシュドノエルやシュトーレンなどのクリスマス系のお菓子と共に、ケーキも10種類近く。さりげなーくクッキーやチョコレートもふんだんに置かれ、ウォーマーで温められた銀色の容器の中にはうやうやしく干しぶどうの入ったスコーンが収まっていた。おっそろしい数の紅茶が用意され、それがティーバッグじゃなくちゃんとお茶っ葉で、1人1つの大きなポットでやってくるのも嬉しいところ(だって、ラッフルズでさえティーバッグだったの……悲しかったの……)。しかもそのお茶、「他の種類も飲んでいい?」とお代わりしてみたら、レシートに追加料金などが記されていなかったのもまたすてき。

私は「シャングリラ」というそのものの名前のお茶を、母はアッサムを、息子はマンゴージュースをそれぞれ注文。最初に塩辛いものをちょこちょこつまんでいたら、無性にお酒が恋しくなってしまい、ついグラスの白ワインを母と1杯ずつ追加注文。酒をくっぴくっぴとやりながら
「こうなると、チーズが恋しくなるわよねぇ」
「あっちにあったよ」
と、アフタヌーンティーがいつしか酒盛りになってしまっている。チーズコーナーには塊の各種チーズとフォーク、ナイフが置かれていて、ちょっと緊張しながらカマンベールやブリーやエメンタールなどをショリショリ削ってみたりして。クラッカー添えて、一緒に干しあんずや葡萄を持ってきてワイン片手にひょいひょいと食べた。

適当に酒と肴を楽しんだ後で、いよいよ甘いもの。スコーンのすぐ脇にはクロテッドクリームとストロベリージャムが用意されていて、ジャムの選択肢は他になかったのだけれど、クロテッドクリームが初めて食べる味。日本でお馴染みのナカザワ製のものと異なり、色はこってりと卵の黄身色がかった黄色みを帯びていて、ふわんと柔らかく、とろりと優しい口溶けと舌触り。生クリームほど舌にもたれず、でもバターに近い濃厚さ。ほんのり塩気のある、モソパサした食感のスコーンにこってりつけて口に入れると、なんともステキにお互いが似合ってくれる。クロテッドクリームとジャムをコテコテつけてはスコーンを食べる、を2度ばかり繰り返したら、もう他のケーキは1個も食べられない状態になってしまった。ブッシュドノエルなんかとっても美味しそうなのだけれど、全然無理そう……。

「あらぁ、あんた、もう食べないの?」
「むーりー……ぜんぜん、むーりー」
母がトドメとばかりにチョコケーキにかぶりつく脇で、パパイヤとスイカとドラゴンフルーツを囓るのがやっとの私は、昼からこれ以上なく腹一杯になってしまったのだった。甘いものだけじゃないバイキングだってのが、ヤバいのよね。

シンガポール Marriott Hotel内 「Marriott Cafe」にて
 クリスマスブッフェディナー(大人) 2×$48.00
 クリスマスブッフェディナー(子供) $28.00
 ビール(Kilkenny) 2×$10.95
 オレンジジュース $8.00

午後は、予定通りに買い物スポット、「ホランド・ビレッジ」なるところに行ってみる。ここ数年にお洒落な雑貨ショップがオープンし続けているエリアなのだとか。中央にあるショッピングセンターに、けっこうな数の雑貨屋さんが集中しているのだそうだ。雑貨に飢えた母と私で、気合い入れてセンターに臨む。

……で、いきなり、雑貨じゃなくてフルーツを購入。ショッピングセンターの脇には市場があって、カラフルな南国の花とか、中華野菜を多く扱う八百屋さんなんかが並んでいたのだった。んで、当然フルーツ屋さんも。
「あ〜!マンゴスチン発見!」
「ライチもあるわよ!」
「あのマンゴーがまた、オイシソー!」
いくつかのフルーツ屋さんを見たうえで、一番果物が光り輝いて見える美味しそうなお店で買ってみた。お店のお兄ちゃん、"ヨン様"を粘土べらで伸ばして四角くしたような顔をしている。

「マンゴー好きなの。赤いの1個と黄色いの2個。美味しそうなの選んでくれる?」
「もちろん!あ、ライチもいるの?ならこの袋に好きなだけ入れてね」
「あとねあとね、マンゴスチンも欲しいの」
「もちろん!」
結局、1500円分ほどの果物をお買い上げ。……この、フルーツは、日本に持って帰っちゃいけないことになっている。……だから、このあとホテルで全部食べるのよー……(と言っておこう……)。

最初にアホみたいに重い買い物をしてしまい、よろよろしながら雑貨屋巡り。先日歩いたアラブ街もインド街も中華街も、思ったより雑貨屋さんは見つからなくてほんのりフラストレーションがたまっていたものだから、
「布〜!」
「クリスマス飾り〜!」
「ステキな食器〜!」
と母と2人で大白熱してしまう。以前から欲しかった、アタで編んだ四角いランチョンマットも買っちゃった(日本で買うのの半分か2/3くらいの値段だったよ……)し、アジアな布もいっぱい買った。密かに収集しているマンゴスチングッズで、ちょっと色鮮やかな木彫りのオブジェを購入。

あっけなく
「……あはは、あと7ドルになっちゃった……」
「私も、あと20ドルあるかないかだわ……」
という状態になってしまい、予定より30分以上も早くホテルに戻った。嬉しいことに、本日チェックアウトしてロビーに集合せよと言われている午後6時ギリギリまでチェックアウトを待ってくれるという。部屋に入ると、今日チェックアウトなのにベッドが綺麗に調えられ、タオルなども全部替えてくれていたので、「ごめん、部屋をまた汚してごめん」と思いつつシャワーを浴びてのんべんだらりとさせてもらってしまった。出発ギリギリまでホテルを使えるのは本当に便利。たとえ最後に数十分寄ることになってしまっても、「いつでも帰れる」と思うと最終日も全力で遊べるというもので。

で、チェックアウトは午後6時。飛行機の出発は午前0時近く。その間何をさせられるかと思えば、問答無用で免税店に連れていかれ、問答無用で「会員登録」だか何だかをされ、問答無用で「1000円オフチケット」なるものを手渡されて
「ここからフリーです。集合は2時間半後の9時ネ」
と放り出されたのだった。毎回海外に来て(何らかの理由でDFSに足を踏み入れて)思うのだけれど、そういうところの人たち(DFSで働く人たち、旅行会社の人たち)は日本人が揃いも揃ってブランドものや免税品が大好きと信じて疑ってないところが腹立たしい。嫌いだよ、余程の理由がなければ足を踏み入れたくないスポットだよ……と、私も母も、とっととDFSを退散して他のデパートやショッピングモールに駆け込んだ。

幸い、立ち寄ったDFSは繁華街のど真ん中。ちょっと歩けば伊勢丹があり、高島屋があり、地元の各種ショッピングセンターもある。
「……でも、現金はもうほとんどないからカード使わなきゃいけないんだよね。……伊勢丹とかなら、JCB使えるかな?」
昨日立ち寄った高島屋はとても大きくて、食べるところもいくらでもあって……という感じだったので、じゃあ伊勢丹はどうかなと行ってみる。通りを挟んで2ヶ所にある伊勢丹、どちらにも行ってみたのだけれど、食べたいと思うお店が今ひとつない。中華料理は昨夜食べちゃったし、今日はちょっと違うものを食べたい気分。

「じゃあ、デパ地下のフードコートみたいなところとか……?でも最終日の夜に、それもねぇ」
「そうよそうよ、うるさいところは、もうイヤよ」
「だよねぇ……」
シンガポールの「銀座」とも言える華やかなエリアをうろうろうろうろした挙げ句、DFS近くにあるマリオットホテルにたどり着いた。1階の軽食レストランではクリスマスブッフェを開催中。ちょっと高かったけれど、ちらりと覗いてきた母が
「お寿司があるわよ、あと生牡蠣なんかも」
と言ったものだから、
「なんですって!?ナマガキ!?」
と私が反応しちゃったのだった。よく見たら、刺身まであるしー。

かくして、今日の昼も1万円以上の豪華食事をしちゃったのに、夕飯も豪華食事になってしまったのだった。クリスマスディナーブッフェということで、料理はなかなか豪華。マグロとサーモンの刺身や、なんだかちょっと怪しいお寿司(ほうれん草のナムルみたいなのを乗せたのとか、中華のクラゲサラダを乗せたようなものがあったぞ……)をはじめ、カレーからイタリアンなサラダから、インターナショナルな料理が並んでいる。隅っこでは、でっかいローストビーフと、丸のままこんがり焼いたターキーをスライスしてくれるサービスも。わーいわーいターキーターキーと、数分前まで
「えー、またブッフェ〜?」
と、母の提案に対してゴネていた私が、もうすっかり喜んでいるのだった。スライスしたターキーのむね肉にラズベリーソースを添えて、そばにあるホイル焼きじゃがいもを添えてみる。生牡蠣コーナーにはちゃんとカクテルソース(ケチャップとホースラディッシュがベースのちょっと辛めのトマトソース)も添えられ、脇にはシュリンプカクテルと蒸した小ぶりのロブスターも。1皿目はこちゃこちゃと刺身やカプレーゼ、スモークサーモンなどの前菜を楽しみ、2皿目にこれでもかと生牡蠣や海老をつつき、3皿目にローストビーフとターキーをつつきまわし、そしてパンも口にしてないのに腹一杯になってしまった。息子は息子で、
「御飯あるし、マグロもあるから、鉄火丼作ってあげようか?」
の提案に「たべるー!」と大喜びで、スープカップに御飯よそってマグロどっさりトッピングして、醤油をピャーッとかけた即席鉄火丼に御満悦。

デザートもなかなか豪華で、ライチのシャルロットとか杏仁豆腐とか豆腐花とかクレームブリュレとか各種生ケーキやクッキー、チョコレートがどっさりと。昼食もあんな状態だったのに、つい
「あ、ゼリーやババロアって、昼に見かけなかったわね」
とあれこれつまんでしまい、そしてこれから飛行機に乗るってのに全力で後悔する羽目になっちゃったのだった(キモチワルイ……)。

そして午後9時半、空港へ。11時半頃の飛行機だったはずなのだけれど、40分の遅れがあって離陸は日付が変わってからだった。座るなり爆睡しちゃって、飲み物と軽食(サンドイッチだったらしい)がやってきたことなんか全然覚えていやしない……。

12月12日 日曜日
だんなが作ってくれた、角煮。うーまー。
機内食
 白身魚のフライとイカのクリームソース煮込み マカロニ添え
 パンとバター
 カットフルーツ(スイカ、メロン、ドラゴンフルーツ、パイナップル)
 チョコレートムース
 オレンジジュース、烏龍茶

昨夜、飛行機に乗るなり気を失うように眠ってしまい、途中ペットボトル入りの水が配られた事にも気が付かなかった。で、眠りはじめて4時間半頃たったところで
「おはようございます。朝食の準備が整いました」
と半ば強制的に起こされる。あくびが止まらないけれど、喉も乾いたしととりあえず起きて、でも機内食はほとんど口にできなかった。ねーむーいー。

深夜に現地の空港を出て、まだまだ寝不足といった体には不自然に、コッテリとした朝御飯。輪切りにしたイカとフライにした白身魚がチーズ入りのクリームソースで和えられ、脇にはマカロニがどっさりと。デザートには、少しは軽めの口当たりとはいえ「朝からこんなの食べられないよ……」という感想しか抱けない、大きなチョコレートムースが深皿におさめられていた。せめてこのくらいはと口にできたのは、温かいパンに少しのバターを塗ったものと、ドラゴンフルーツも入っていたカットフルーツの盛り合わせ。息子のプレートにはワッフルやクリームコーン、そしてやはりカットフルーツとケーキが添えられていたけれど、息子もほとんど食べられなかったようだ。

成田に無事到着したのは日本時間で8時近くになってから。重い重いスーツケースを回収して、
「だんなちゃーんだんなちゃーん、荷物が重すぎて駅の階段が下りられそうにありません」
とメールを入れて、だんなに最寄り駅まで迎えに来ていただいた。行きにスカスカだった私のスーツケース、帰りには28kgという重さになっていて、持ち上げると吐き気を感じるほど重くなっていた。……なんでこんなに重くなっちゃったんだか。

「Bread Talk」の
 Fire Flosss $1.4
 Flosss $1.4
 Chicken Curry Bun $1.2
 Panattone $3.8
カフェオレ
 

昨日の夕方、シンガポールの「ホランド・ヴィレッジ」というエリアで、旅行中に何度か見かけたパン屋さん「Bread Talk」の支店を発見。ガイドブックによると、
「国内で14店舗展開するベーカリー。ダントツ人気は台湾風パンのコッペパンに自家製エッグクリームをはさみ、ポークフロスをトッピングした特製パン」
「クリームとポークフロスの不思議なハーモニーが地元では評判」
なのだとか。機会があれば買ってみようと思っていたのだけれど、1日くらいなら持ち歩けるかしらと買ってきてみた。

「Flosss」なるものが、紹介されていた自家製エッグクリームのポークフロストッピングのパンであるらしい。「Fie Flosss」が、基本形を辛くしたバージョン。店内には他にも何十種類も菓子パン総菜パンが売られていて、「フジサンにインスパイアされました」なんて紹介文のついていた「Fuji」なる三角形のパンがあったりもした。美味しそうだったのでチキンカレーパンを1つと、ドライフルーツ入りのクリスマスのパン、パネトーネの片手に乗るサイズの可愛いそれも1個購入。潰さないように、手提げ袋に入れて持ち帰ってきた。

だんなが淹れて待っていてくれたコーヒーをいただきつつ、その噂のパンを適当にざくざくと切ってテーブルに。"ポークフロス"は台湾で言うところの「肉髭」と思われる。酒の肴になりそうな、サキイカを肉で作ったような、そんな感じのカサカサパサパサしたもの。塩気がじゅわっと柔らかいパンに染みていて、挟まっているはずのエッグクリームは、すっかりパンに溶け込んじゃったようになっていた。うーん……「不思議なハーモニー」って、本当に不思議なハーモニー。好きかどうかと尋ねられると……うーん、という感じ。買いたてだったらもっときっと美味しかったのだろうなと思う。

「Flosss」はちょっと相互理解に時間のかかりそうな味だったのだけれど、さりげなく買ってきたチキンカレーパンがなかなか。揚げていない、クリームパンみたいな外見のカレーパンで、中には比較的マイルドな、でも異国の味が漂うカレーが詰まっていた。じゃがいもごろごろで美味しい。
「うぉー、異国の味がするカレーパンだー」
とか言いながら、もりもり。

稲毛 「銚子丸」にて
 季節の5カン握り
 あんこう鍋
 サーモンカルパッチョ
 中とろあぶり
 ぶり
 あわび
 うずらとろろ
 穴子・ウニ
 本たらばがに  なめろう
 中落ち手巻き
 生ビール・お茶
などなど。適当にわけっこして食べました。

金曜日に泊まり込みの研修を終え、土曜日は一人ですごしていただんな。生魚が食べたくなって、あれこれ買ってきて大根の味噌汁作って食べたらしい。「一人を満喫できた?」と聞いたら、「でも、ちょっとさびしかった……」だそうで。確かに、さぞ家が静かだったことだろうなぁ。

だんなも寿司が恋しかったらしく、私も寿司に飢えていたので、昼食にはちょっと遅めの昼過ぎにバスに乗って皆で銚子丸に行ってみた。母もお寿司は久しぶりとのことで、皆であれこれあれこれ食べて、4人で1万円を平らげた。

最初は、すっかり定番化しつつある「季節の5カン盛り」から。今日はイクラとぼたん海老、イワシとタイとカツオという組み合わせで、たっぷりの生姜を添えたイワシとカツオが特に良い感じ。ちょっと下品に感じるほどにタネが大きく、どの魚も脂が乗っていて今日も何食べても美味しかった。
「私、中とろのあぶりって、食べてみようかしら?美味しい?」
「ああ、それね、すっごく美味しい」
「じゃあいただくわ。……1個食べる?」
「うん、食べる食べる」

「俺、穴子取るけど……おゆきさんも1個食べる?」
「うん、食べる食べる」
「じゃあはい、どうぞ」

母からとだんなからと、「これ食べる?」「これも食べる?」と1カンずつお裾分けしてもらい、何だか私1人ですごく沢山食べているような気分になってくる。今日はあまりの寒さに「あんこう鍋」なるものも注文してしまい、卓上に旅館の夕御飯で出てきそうな小さな鍋をセットして、ぐつぐつと数分煮込んでふうふうして食べる。ありきたりな濃縮の鍋用だしを使ったような味付けだったけれど、でも骨つきのあんこうの身が肝と一緒にごろごろ入っていて、1つ500円にしてはなかなかゴージャスだった。白菜とねぎ、きのこなんかも入っている。

全員がたっぷりとたらふく食べて、会計の時にだんなと母がレジでもめている。
「ボーナス出ましたし!俺が払います!」
「いーのよ、私に払わせてよ。こっちは旅行して楽しんできたんだから〜」
僕が僕が、いや、私が私がとレシートを奪い合っていて、私はちょっと離れたところで「どっちにしても、私はタダ〜♪」と踊っていた。おばちゃん気質のだんなは、正真正銘のおばちゃんな私の母には勝てなかったらしい。ありがたーくゴチになったのだった。

ビールも飲んじゃって、ゆえに家に帰ってくるころにはヨレヨレに眠くなってしまっていた。母やだんなも含め、全員が倒れ伏してそのまま夜まで爆睡。おつかれさまでしたー。

「R 1/F」の30品目バランスサラダ
大根と帆立のサラダ
だんな特製 豚の角煮 with 和辛子
羽釜御飯
ビール(モルツ)、麦茶、ほうじ茶

かなり遅めの昼食を、しかも腹一杯摂ったあとに昼寝なんかしちゃったものだから、夜になってもいまいちお腹が空かない。先に入浴済ませちゃって、あとはビール飲みながら適当につまむくらいで良いですかねー……と、ちょこちょこと準備した。

だんなは、角煮を作ってくれた。既に昨日の午後に仕込んでいたようで、今日の午前中に帰ってみればもう飴色の豚バラ肉が美味しそうに煮えている。今日の午後にまたちょっと煮込んで、こっくりと"2日目の角煮"に仕上げてくれた。和辛子をちょっと添えて食べる。

母は、旅行の写真を現像しに出かけたついでに「R 1/F」でミックス野菜のサラダを買ってきた。レタスがベースではあるけれど、30品目なんちゃらサラダは、家じゃとても作れないほどに色々な野菜が混ざっていて、とても好きなサラダ。母の好きな梅味ノンオイルドレッシングと、私とだんなは絶対こっち!のガーリックドレッシングの両方をちゃんとつけてもらってきてくれたので、各々皿によそってから好みのドレッシングをシャバシャバかけていただいた。

そして私は、大根と帆立のサラダを作成。帆立の缶詰を汁ごとボウルに入れ、そこに千切りにした大根と、彩りに刻み万能葱、そしてマヨネーズとレモン汁少々とおろし生姜少々を加えて、ざっかざっかと混ぜ、適当に塩気を足してできあがり。3者3様、得意なものを用意して、ビール片手につまみまくった。トローンと柔らかに煮えた角煮も美味しいし、シャキシャキしたサラダもなかなかシンガポールじゃ食べられないものだったので嬉しい。帆立のサラダも箸休めにちょうど良かったし。

これからしばらく、ちょっとは胃を休めた生活にしようと思いつつ、でもよく考えたらクリスマスまであと少しなのねー。あと数日は母もこちらに滞在するみたいだし、バイキングから逃れられない運命なのかもしれないわー(多分数日後に幕張とか行っちゃうんだ……)。