Chocolate Croissant 2×$1.59
Almond Croissant $1.59
Raisin Croissant $1.59
2% Reduced Fat Milk 2×$1.69
Coffee (Ritazza) $1.39
あっという間の3日間。今日はワシントンDCを去り、デンバーからレンタカーに乗って北部国立公園巡りに出発だ。
10時過ぎのバルチモア空港発のフライトだったので、8時過ぎにはユニオンステーションからバルチモア空港の最寄り駅に電車で向かい、そこからシャトルバスで空港に向かわなければいけない。朝御飯は駅で食べれば良いね、と7時半にチェックアウトした。
月曜の朝ということもあってかビジネス客で混雑しまくっていたユニオンステーション内のパン屋さん(というかカフェというか)、Au Bon Painで朝御飯。美味しそうなデニッシュがいっぱいあるなぁ……と覗きこみ、チョコクロワッサンやレーズンクロワッサンを牛乳やコーヒーと一緒に買い込み、狭い席に座ってつついた。大きなデニッシュは、甘さもたっぷり。だんなが食べていたアーモンドクロワッサンには、中にアーモンドのクリームがしこたま詰まっていて、それがすごく甘かったらしい。私が食べたチョコクロワッサンも、中にみっちりチョコが詰まっている上に、上からもチップチョコレートが散らされていて大変なことになっていた。1個食べるだけでかなり胃が膨れてしまうパンを齧りつつ牛乳を一杯……。あれ?
私の飲んだ低脂肪牛乳は、何だか変な味がした。微妙に酸っぱい。腐臭は感じられなかったのだけど、飲んだ後に舌にイヤ〜な酸味が残る。が、向かいに座る息子は、別のボトル入りの同じ品をぐびりぐびりと普通の顔をして飲んでいるし、賞味期限もまだまだ先のものだ。低脂肪乳を飲むのは久しぶりだったから「も、もしかしたらいつも微妙に酸味があったとか?」と変な勘ぐりまでしてしまったのだけど、どうやら単に腐っていたらしい。もう電車に乗ってしまってしばらくしてから、
「私の牛乳、何だか酸っぱかったんだけど……」
と、息子の牛乳を味見してみたところ、こちらはごくごく普通の牛乳の味だった。自分の舌を信じないで「まぁいいか」と飲んでしまった牛乳は、200ml以上。おかげでそれから6時間以上、ぐるぐるぴーになっていたのだった。阿呆だわ……。
Baja Chicken Burrito $5.25
Cheese Quesadilla $2.99
Lemon Tea $1.79
今日はひたすら移動の日。1時間の時差があるシカゴ空港に行き、更にそこから1時間の時差があるデンバーへ。今日は1日が26時間ある。
シカゴ空港の1時間半ある乗り換え時間がちょうど昼時だったので、空港飯は高くて不味いものだと知りつつも、ここで食べることになった。フードコートを見渡すと、マクドナルドにスターバックス、ピザ屋に怪しい中華料理屋にメキシコ料理屋。どれが一番マシかとメニューを眺め、チーズケサディーヤに惹かれてメキシカンにすることにした。店頭で紹介されていた"当店の名物!ビッグブリトー!"なんて文字にそそのかされて、私はそのジャンボブリトーに。チーズケサディーヤは息子用に。
炒めた鶏肉が入り、米が入り、豆が入り、更にトマトとレタスとチーズとコーンが入り……と、本当にすごいボリュームだったブリトーは、見かけはとても美味しそうだった。けど、何だかいまいち。豆が原因か鶏が原因かわからないけれど、全体的に辛く、辛いのは一向に構わないのだけど、何だか苦さもある。何が苦いんだろう……と具をあれこれつついてみたところ、どうも皮が苦いらしい。ていうか、炒めている鉄板についている焦げが全てに吸収されているようで、皮も肉も米も、コーンまでもが苦かった。苦いブリトーなんて、美味しくない……と、そちらは美味しかったチーズケサディーヤを息子から分けてもらいつつ、微妙な満腹具合になってデンバーへの飛行機に搭乗した。
中華デリバリー屋の回鍋肉、スープ、春巻
ご飯
ビール(Milwaukee's Best)
デンバーに到着したのは午後2時半頃。レンタカーの手続きをし、最初に目指したのはデンバーのダウンタウンの日本食材屋さんだった。韓国人が経営しているパン屋さんでクリームパンやあんパンを購入し、食材屋でインスタント味噌汁や壷漬け、ほうじ茶ティーバッグやカルピスなどを仕入れた後は北へ北へ。10月に行った西部国立公園旅行で
「町がない!」
「やっと食べもの屋があったと思えばバーガーキングと怪しいファミレスしかない!」
「夕食ときたら、モーテル付属のレストランくらいしかない!」
「どうでもいいから、もうケチャップ味のものはヤだよ……」
という状況にかなり心がすさんだ記憶が割と根強く残っており、今回は電気炊飯器を留学生仲間のMさんから借りて(代わりに我が家の羽釜を預けてきた)、旅行先で米を炊こうということになった。最初は「国立公園でおにぎりを食べられたら最高に気持ち良さそう」から始まった計画だったけれど、だったらおかずもいるよね、炊き込みご飯も美味しいよね、味噌汁も必要だよインスタントカレーとかあっても幸せだよああカップラーメンが安売りしているぅ!……と変な方向に盛り上がってしまい、いつのまにか段ボール箱1杯が食料だらけになってしまった。毎晩日本食でも持ちそうな勢いだ(それはそれでちょっとイヤ……)。
デンバーの町を出たのは、既に5時を過ぎたところだった。途中の大型スーパーで水やビールも仕入れていたら、もうそれほど距離を稼げなくなってしまい、今日のところはデンバーのあるコロラド州からワイオミング州に入ったところにあるCheyenneという大きな町近郊のモーテルに宿泊することになった。日はまだかなり高いところにあるけれど、時計の針は7時を回っている。宿泊したエリアはなんにもないところで、いまいち食指が動かないファミレスとマクドナルドがあるくらい。これは早速ご飯を炊くでしょう!と米の準備をし、ホテルの案内に中華デリバリーの案内が入っていたのでおかずを少しそこから持ってきてもらうことにした。10ドル注文すれば持ってきてくれるとのことで、回鍋肉とスープと春巻を注文。注文した品が届く間に米を炊き、ついでにモーテル内のコインランドリーで3日分の洗濯もしつつ、夜9時近くのちょっと遅めの夕御飯になった。
デリバリー屋から届いた回鍋肉やスープ、春巻は「すごく美味しい!」というほどのものでもないけれど、不味いものでもなかった。ビリッと辛い回鍋肉が炊きたての白いご飯によく似合い、空腹もあいまってがつがつと食べてしまう。黄色味の強い春巻は、なんだかほんのりカレーの風味。色鮮やかなスープには卵と人参と豆腐が入っていた。他の部屋も似たような夕御飯を摂っている人が少なくないようで、近くの部屋にはピザが届けられていた。
残った少しばかりのご飯はおにぎりにして、明日どこかでつまもうということに。
飛行機で行く都市部の旅行も楽しいけど、特に予定をたてず車でひたすら走る旅の方が、何だかわくわくしてしまう。明日は石壁に彫られた歴代大統領の顔を拝みに行くのだ。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
「New York Bakery」のクリームパン
牛乳
ワイオミング州の南にある町、Cheyenneの郊外にあるモーテルに宿泊した昨夜。今日は更に北上してサウスダコタ州に入り、国立公園や歴代大統領の顔が彫られた石壁を拝みに行く予定。無料朝食がついている宿だったけれど、手元には昨日の夕方、デンバーで購入した菓子パンがある。クリームパンやあんパンが旨いと日本人の間でも人気の店らしいと立ち寄ったその店は、「New York Bakery」という名前なのに経営は韓国人。すきっ歯のおっちゃんが
「君たち日本人?え?テネシーから来たの?ラピッドシティに向かうのかぁ……そりゃ大旅行だね。あ、これはね、クリームパン」
などとニコニコしながら色々話しかけてきた。片手にずっしりとくる大きめのクリームパンも、ふわっとした生地のあんパンも美味しそう。つい、あれもこれもと色々購入してきてしまったのだった。そういうわけで、今日の朝御飯はちょっと懐かしい味の菓子パン類。朝食コーナーにパンを持っていき、牛乳やコーヒーをテーブルに並べ、食べた。
ねっとりとしたカスタードクリームは、それほど強い甘さではなく、なじみ深い味。ほんのり甘さのあるパン生地もデニッシュではなくふわんふわん、ちょっとばかりもちもち感のあるもので、これまた日本の菓子パンの味に近いものだった。ほどよい甘さのあんこが詰まったパンも、かなりいける。他にもいくつか購入していたものの、息子が
「いまはね、パンよりカリカリ(=コーンフレーク)が食べたいんだよー」
とコーンフレークをがつがつ食べてしまったのでそのまま荷物と一緒に持っていくことになった。後々、これがものすごく良い空腹癒しになったりして。
麦茶
「New York Bakery」の蒸しパン・チョコレートパン
今日は青空。シュークリームのような形の美味しそうな外見の雲がぷわぷわと浮かび、目の前は一直線真っ平らの道路とひたすら広がる草原や畑。ワイオミング州を北に向かうUSハイウェイは、とんでもなく広大な光景の中を走っていた。1つの町と1つの町の間が軽く50マイルはあり、その間にはなんにもない、ただただ草原や畑だけが広がっている。車の往来も少なく、エンストでもしたら大変なことになりそうな場所だった。時々、道路を茶色いカサカサしたものが横切っていく。枯れた草が絡まっているようなものだけど、西部劇のガンマンの決闘シーンあたりで足元をカサカサ転がっていく"アレ"そのものだった。
「あ!"アレ"だ!」
車内で盛り上がる私たち。西部劇みたいだすごいすごいと、それが転がってくるたびにはしゃいでいる怪しい旅行客と化していた。
「あ〜!また来たよ、枯れマリモ!」
「いや……おゆきさん、アレはマリモじゃなくてね」
「じゃあ、乾燥マリモ!あ〜、また来る〜」
「いや、だから乾燥でも枯れでもいいけどマリモじゃなくて」
と、今日も掛け合い漫才しながら車は走る。しかし"アレ"、いいなぁ。西部旅行のお土産だよん、と持って帰ってしまいたい気分だ。
目的地はまだまだ先だけど、とりあえずお腹が空いたので道路沿いのレストエリアで休憩することにした。幸い、昨夜炊いたご飯が余っていたのをおにぎりにして持ってきている。麦茶もある。パンの残りもある。その気になればサンマ蒲焼缶詰とか昆布巻きとか壷漬けも出せる。それはまぁ、もうちょっと緊急事態になってからということで、麦茶を傍らにおにぎりを齧った。で、それだけじゃ物足りなくて数時間後に今度はパンを分け合いつつ齧る。そんなこんなで適当に凌いだ昼御飯だったけれど、そういえばレストランって道中ほとんど見かけなかったような気がする。ファーストフード店ですら数えるほどしか存在していなかった。
そしてめでたく午後2時過ぎに国立公園、Wind Caveに到着した。その名のとおり、洞窟(Cave)が売りの国立公園だ。なんでもBoxworkと呼ばれる独特な天井や壁の造形や、Popcorn岩なる丸くころころとした小粒の岩だか鍾乳石だか氷だかが見られる、面白い洞窟らしい。洞窟の上の地上は野生動物も多いということで、気になっていた国立公園だった。
折良く数十分後に始まる洞窟ツアーに参加できることになり(洞窟に入るにはツアーに参加するしかないのだった)、1時間半ほどかけて1.6マイルを歩く洞窟探検を楽しんでみた。写真などで見る以上に、薄くなった石がパイ生地のように絡み合うBoxworkの洞窟壁は美しかったし、このツアーでは見られないと思っていたPopcorn岩も少しだけれど見ることができた。
洞窟探検を終え、公園を南から北につっきるようにドライブすれば周囲はプレイリードッグの巣が山のようにあり、視界に入るだけでざっと30匹以上のプレイリードッグがうじゃうじゃと巣の周辺にうずくまっていたり走り回っていたりする。車を止めて道路際から見ようとするとその何十匹ものプレイリードッグが一斉に「キュキキキキキッ」と警戒の意味の鳴き声をあげ、ささっと巣穴に隠れてしまう。
「うっわー、野生のプレイリードッグだよ、生だよ、生」
と、しばらくプレイリードッグを堪能。その後も、道路をふさぐような山羊の群と出くわしたり、野生のバイソンがいたり、鹿が道路の真横にいたりと、ここはサファリパークですか?みたいなドライブになった。息子は後ろの席で
「すごいねー、動物園がいっぱいだねー」
と喜んでいる。いや、これは動物園じゃなくて野生の動物でね……と言っても、まだ難しくてよくわからないらしい。
そして今日の最後に訪れたのは、Mount Rushmore(マウント・ラシュモア)。
「4人の有名な大統領の顔が彫られた岩山がある」ということは子供の頃からなんとなく知っていたけれど、それがこのあたりにあるのだと知ったのはアメリカに来てからのことだ。ニューヨークの近くということはないだろうとは思っていたけれど、有名な観光ポイントでもあることだし、サンフランシスコから車で30分とか、フロリダから車で1時間とか、そういった観光地から行きやすいところにあるのだろうとこれまで勝手に思っていた。が、アメリカの町の中でも決して大きいとは言えないだろうラピッドシティから車で30分くらいかかるところにそれはあった。周囲は深い森と山。Wind Caveから向かった道は、平地だったら30分もかからないだろう距離だったのにひたすら山道だったので1時間以上もかかってしまった。車も少なく、見かけるのは鹿とかバイソンとか山羊とか、人間じゃない生き物ばかりでちょっと不安になったりした道のりだった。想像以上に4人の大統領(ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーン)の彫刻は巨大だった。その岩山の向かいに作られた展望台から眺めるのだけど、ここだけは巨大なおみやげ物屋があり、飲食店もあり、観光地だなぁという感じ。もうこの時点で6時になろうとしていたので、今日はこの近郊で宿を取ることにした。
私:
Rib Eye Steak $17.95
Beer (MGD) $2.25
だんな:
T-bone Steak $16.95
Beer (MGD) $2.25
息子:
Kid's Pasta $6.47
Coke $1.00
マウント・ラシュモアの麓の小さな町がKeystone。適当に宿を決めてチェックインする頃には、朝も昼も比較的軽い食事だったこともあって空腹が空腹と感じられないほどに空腹になっていた。
「なんかこうね、肉!って感じ」
「ステーキが食べたいよぅ〜」
と、ステーキ屋さんを探していたところ、嬉しいことにホテルの目の前にまさにそういう店がある。その店が美味しいのか不味いのかはさっぱりわからなかったけれど、とにかく入ってみることにした。メニューはグリルものばかり。メインディッシュを頼むと、ベイクドポテトかベイクドスィートポテト、サラダとパンがついてくるらしい。私はリブアイ、だんなはTボーン、息子には大人用のメニューのスパゲッティを「子供用に作ってくれる?」と尋ねてみたら半額で用意してくれた。
自家製っぽいさらっとしたマヨネーズに似たドレッシングがかかったレタスのサラダがやってきた後は、大皿に盛られたステーキと巨大なじゃがいも、小ぶりのパン、ロメインレタス1枚の上にオレンジのスライスというメインディッシュ。肉はとびきり旨い!最高の焼け具合!……というほどのものではなかったけれど、強めに胡椒を効かせた肉の焼き加減はかなり好みなものだった。塩気もほどよく、噛みしめると肉汁がじゅくじゅく染み出てくる。そうそうこういう肉っけのあるものが食べたかったんだよね、と12〜13ozくらいあった肉を数分で食べきってしまった。
明日もプレイリードッグがたくさんいるという国立公園に行く予定。今度は警戒鳴き声を出されないように近づけると良いんだけど……(無理、絶対無理……)。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
イングリッシュマフィンのバタートースト
ミニドーナツ
オレンジジュース
牛乳
マウント・ラシュモアの麓の小さな町にあるモーテル、Western Innに宿泊した昨夜。冷蔵庫あり電子レンジありで部屋も広く快適だったけれど、インターネットには接続できなかった。パソコン内臓のモデムが壊れてしまったので先日購入したカードタイプのモデムが、通話カードを使っての長距離通信には弱いらしくさっぱり繋がらない。メール受信できなーい、日記のアップロードもできなーい、と悲しくなりながらとりあえず宿を後にした。ここからしばらく、アクセスポイントのある町には泊まれないかもしれない。私は元気ですよー……と、ここで書いてみても、読んでくれる人がいなきゃ書く意味がないし。とほほほほ。
朝御飯は、モーテルの無料朝食コーナーで。食パンやベーグルの他に、イングリッシュマフィンやドーナツも用意されていた。コーンフレークの他には、フルーツカクテルまであり、少しばかり嬉しい品揃えだった。私はイングリッシュマフィンをトーストしてバターを塗ったものと、小さなドーナツを1個。冷たいオレンジジュースと牛乳をぐびぐびぐーと飲む向かいで、我が息子はコーンフレークとフルーツカクテルを前に嬉しそうにしていた。
ドーナツ $0.65
コーヒー(to go用) $0.19
Keystoneという、ラピッドシティ近郊の町から出発し、今日の目的地はバッドランズ国立公園。ラピッドシティを通り抜けて東を目指せば、Wallというこれまた小さな町にたどり着く。この町の名物は、"Wall Drug"という巨大なお店。なんてことない土産物屋の集合体のようなものだけど、ここの1つの名物なのらしいのだった。高速道路をその町に向けて走っていると、これでもかとそこのCM看板が目に入る。
「レザーグッズあります!Wall Drug」
「ウッドカービングあります!Wall Drug」
「コーヒーは5セント、水はタダです!Wall Drug」
「お子さまも大歓迎!Wall Drug」
「ハネムーナーにはドーナツとコーヒーを無料プレゼント!Wall Drug」
「観光バスも止まります!Wall Drug」
「○○の雑誌に載りました!Wall Drug」
……と、うるさいうるさい。同じような看板はひとつとしてなく、どれもメッセージや色柄、イラストが異なっているのでついつい目に入ってしまって
「またウォールドラッグだよー」
「なんなんだよもー、しつこいなー」
「ていうか、ここ何屋さん?何売ってるとこ?わからないねぇ〜」
と、悪態つきつつ面白がりながら、まんまとWall Drugの策略にはまってそこを目指してしまう私たち。
道路の両側に商店が並ぶWallの町の小さな商店街。その片側全てがその"Wall Drug"という店になっているらしい。中には細かなお土産物屋さんがじゃらじゃらと入っており、ダイナーなどもついている。そこのコーヒーは、その場で飲むものなら1杯5セントだ。テイクアウト用のカップに入れてもらうと、カップ代が足されて19セント。それでも確かにすごく安い。
店の中にはWall Drugのロゴ入りTシャツやその他ロゴ入りグッズもあれこれ売っていて、だんなが
「くだらねぇ〜……おもしれぇ〜」
と嬉しそうにTシャツを物色している。"Hard Rock Cafe"のロゴを真似た"Wall Drug Cafe"なんてロゴのTシャツまであって笑ってしまう。結局だんなは、その柄ではないけれど、別のWall Drugの妙なロゴ入りTシャツを買っていた。
数十分ここをぷらぷらした後、ダイナーでドーナツ1個を紙袋に詰めてもらい、コーヒーを1杯貰ってでてきた。素朴な味のオールドファッションタイプのドーナツは、甘さもそれほど強くなく、表面がサクッとしていてとても美味しい。国立公園を目指す道すがら、車の中で皆でつつきまわした。
昼間近、やっとBadlands National Parkに到着した。どういう国立公園なのか今ひとつ知らないままに北から入場し、南に抜ける道をドライブする。道はひたすら、地平線まで続くんじゃないかと思われるほどの平らな大平原。ところどころにプレイリードッグの巣も見えた。大草原がメインの国立公園なのかしらん……と思いつつ、
「あー、ビューポイント、って書いてあるよ」
と、最初に展望台で車を止める。そこまではひたすら平原で見えなかったのだけど、展望台に近づいて、やっとその向こうが断崖絶壁になっていることに気がつかされた。ここまで走ってきたのはほぼ真っ平らの平原だったのに、そこから向こうがいきなり深い凹凸の奇岩が続く崖になっている。水と風で洗われたような石壁には綺麗に地層がストライプ模様を作っていて、グランドキャニオンほどのスケールはないけれど、周辺がひたすら平原なだけにインパクトのある光景だった。ズドンと落ちくぼんだ底も平らな平原になっていて、平らなところとそうでないところの差がやたらと激しい。
「うっわー、絶景」
「面白い風景だねぇ……少なくとも、私が育った世界じゃない、という感じ……」
と、しばし感動。それからもいくつかある展望ポイントに寄りつつ、食事ができそうなところを目指した。相変わらず、右手は断崖、左手は草原、という奇妙な光景が続いている。彼方には、尖った奇岩が並びそびえる小山も見えた。
「ああ、あれはさ、"奇岩城"って感じだね」
「ラスボスが出そうだよね」
「どんなラスボスだよ……」
「そいでね、あっちの下の平原は"ナギ平原"って感じだよね」
「今度はファイナルファンタジーかよ……」
どうも想像力が今ひとつ貧困っぽい私たちだ。見たことのない景色を見ると、「うぉー、○○ってゲームの世界みたいだ!」などと思ってしまう。
そして、未舗装道路の脇道に入って少し進んだところにあったピクニックエリアで昼御飯。今日はここに昼頃に到着することを予想して、起床と共に御飯を炊いておにぎりを作ってきていた。具も、ごはんですよ入りと、鮭フレーク入りの2種類。海苔はパリパリのが好きなので別袋にちゃんと入れてきた。おかずも欲しかったので、レトルトパック入りのを我が家から持ってきていたたらこの昆布巻きと、デンバーで買ってきた壷漬けを密閉容器(←一昨日の夜にデリバリーした中華屋のスープ入れをリサイクル利用……)に詰めてきた。クーラーボックスには麦茶と氷。
草原にぽこぽことベージュ色の奇岩がそびえているような光景の中のピクニックエリア。私たちのそばでは、キャンピングカーでやってきていた夫妻がベンチでコーラを飲みつつサンドイッチらしきものを食べている。私たちも車からおにぎりと麦茶を取り出し、別のテーブルについた。今日も晴天、美味しそうなぷわぷわの雲が空に浮かんでいて、聞こえるものは鳥の声ばかり。昨日よりも格段に今日は温かく、薄手の長袖1枚でちょうど良く思えるような陽気だった。乾燥してはいるけど見事なピクニック日和で、他では見られないような景色を眺めつつ食べるおにぎりは格別だった。
「うまー!おにぎり、うまー!」
「しかも壷漬けが、けっこう泣かせてくれるよね」
「むぎちゃ、おいしーねー」
三者三様、色々なものに感動しながら昼御飯を食べる。2合の米で作った7個のおにぎりは綺麗になくなってしまい、ミニパックだった昆布巻きもなくなった。さすがに残るかなぁ、と多めに包んだ壷漬けも消え去った。
昨年秋の国立公園旅行で、本人曰く"毎日の食事が辛かったから体調を崩しちゃったんだ"というだんなに、
「で、どう?今回も長旅だけど、体力保ちそう?」
と尋ねてみたところ、
「もう余裕!超余裕!絶好調!もう、おにぎりサイコー!」
と、力強すぎる返事が返ってきた。もう、癒されまくりらしい。
レトルトカレー
インスタント味噌汁
壷漬け
ビール(Milwaukee's Best) 牛乳
バッドランズ国立公園をたっぷり堪能し、2時を過ぎてラピッドシティに戻る道を走った。できれば今日のうちにデビルズ・タワー国立公園までたどり着きたかったのだけど、夕方遅くになってしまいそうだということでそれは断念。明日の朝一番にデビルズ・タワーに向かおうと、最寄りの町Sundanceに宿泊することにした。小さな小さな町で、モーテルは3軒程度しかない。ぐるりと町を一周するようにドライブしたけれど、食事できそうなところも1軒くらいしか見あたらなかった。
「ここで食べられそうなのって、ハンバーガーとかステーキとか、いかにもそんな"アメリカ屋"って感じだよね」
「……うーん、昨日ステーキ食べたばっかだし」
などと家族協議した結果、ホテルの部屋で夕食は済ませることにした。幸い、デンバーの日本食材屋で買ってきたレトルトカレーがある。松茸御飯の素、なんてのもある。カップラーメンなんかも、ちょこちょことある。
「よっしゃ!カレーにしよう!」
と御飯を炊き始める私たち。
ホテル内の朝食コーナーにお湯のポットがあったので、アイスボックスに湯を満たしてレトルトパック入りのカレーを温める。更にコーヒーメーカーのスイッチを入れて湯を温め、味噌汁を溶く。あとは炊飯器の御飯が炊ければできあがり。ビールもあるし、近くのガススタンド脇のコンビニで牛乳も買ってきた。福神漬はないので、壷漬けで代用。ホテルの部屋には幸い2人がけのダイニングセットがあったので、ベッドの脇に机を移動して3人で食卓が囲める体勢も整った。ちまちまとホテルの部屋でこういう作業をするのは、なんとなく楽しい。
インスタント味噌汁はやっぱりインスタント味噌汁の味だったし、レトルトカレーもレトルトカレー以外の何物でもない味がした。それでも、とても美味しく感じられた。旅先で食べる白い御飯は、やっぱり格別の味だ。毎食続くとさすがにげんなりするステーキやハンバーガーも、米の飯の食事を挟めば、また美味しく食べられそうな気がする。明日の昼か夜にはガッチョリとアメリカ飯が食べたいかも、と早くも思いつつ、3合炊いた米が親子3人で綺麗になくなってしまったのだった。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
ジャムバタートースト
牛乳
オレンジジュース
ワイオミング州にあるSundanceという小さな町に泊まった昨夜。宿泊したモーテルには今日も無料朝食がついていたので、朝起きて朝食コーナーに向かった。数種類のパンとシリアルと牛乳とジュースとコーヒー、という最低限のものが揃ったありがちな内容の朝食コーナー。せめてバナナやオレンジなんかのフルーツ類やゆで卵でもあれば最高なんだけど……と思いつつ、そういうものが置いてある宿は宿泊料金も心もち高かったりして、なかなか出会えないのだった。
今日は2枚の食パンをトーストし、バターとストロベリージャムをたっぷり塗ってサンドイッチに。いまひとつ味気ない朝食ではあるけど、とりあえず無料で空腹は癒せるので、昼にガツンと肉でも喰おうと、それで出発。
The Six Dollar Burger $3.95
2/3Lb Double Thickburger $4.59
20oz Drink 2×$1.19
French Fries (S) 2×$0.82
本日最初の目的地は、National MonumentであるDevils Tower。映画「未知との遭遇」のクライマックスシーンでUFOが降り立ったのがこのモニュメントなのだとか。それはいまいち記憶に残っていないけれど、国立公園のガイドブックを眺めていて、「ここ、絶対行きたい!見てみたいぞ!」とずっと思っていた場所だった。森の中、唐突にそれだけが天に向かってそびえている奇妙な岩山がデビルズ・タワー。側面には巨大な爪でひっかいたような筋がざくざくと刻まれていて、頂点は尖っておらず、平らな空間が広がっているらしい。麓からの高低差が867フィートもあるにも関わらず、頂上には草が生え、ネズミなどが生息しているということだ。奇妙な外見にも心を鷲掴みにされるし、名前がこれまたステキだ。楽しみにしてやってきたのに、今日は朝から猛烈な濃霧に周辺は包まれていた。標高が高いらしいホテルの周辺は、10m先もろくに見えないほど真っ白けっけ。
「これじゃ、岩山なんて全然見えないかも……」
「昨日のうちに無理してでも見に行くべきだったかなぁ」
とため息つきつつ、とりあえず向かってみた。……が、やっぱりタワーは真っ白けっけ。土台部分はなんとか確認できるものの、
「頂上のラインは、あのへんですかー?」
と上空を見上げて想像するしかないような状況だった。あああ、楽しみにしてきたのに……残念……。しょうがないので、麓のプレーリードッグタウンでプレーリードッグ探し。が、濃霧の中小雨がちらつくような状況なのでプレーリードッグも巣穴からほとんど出てきていない。ますます悲しい。
悲しみにくれつつも、とにかく先を目指さなければいけないので、そのまま高速道路に乗り西へ西へとイエローストーン国立公園を目指して進む。途中通ったけっこう大きな町Buffaloで昼食を摂ることにした。
「マクドナルドがあるよー?」
「……うーん、マクドナルドはちょっと……」
「タコベルとかウェンディーズもあるよー?」
「……うーん……」
「あ!ハーディーズがあるじゃん!」
「お!それはいい、それ決定!」
と、高速道路出口に並びまくるファーストフードの店からHardee'sを選んで入った。なんでもここ、ファーストフード系の中では格段に美味しいハンバーガー屋さんなのだとか。だんなが一度入ったことがあるそうで、「ここ、美味しかったんだよー!」と報告してくれた店だった。私も一度食べてみたいと思っていたハンバーガー屋さんだ。
1/3ポンド、1/2ポンド、2/3ポンドと肉の大きさを選べるハンバーガーは、注文してから作られるようになっているらしい。ポテトとドリンクをつけたセットにして、しばし席にてハンバーガーが来るのを待つ。だんなは2/3ポンドのハンバーグにレタスやトマト、玉ねぎなどを挟んだバーガーで、私は1/2ポンドのハンバーグにレタスやトマトや玉ねぎを挟んだバーガー"The Six Dollar Burger"。話によると、「このバーガーにはたっぷり肉を使っていて、本当は6ドルくらいの価値があるんだぜい!」という意味の名前なのであるらしい。
やってきたハンバーガーは、確かに美味しかった。アンガスビーフを使っているというハンバーグは肉汁たっぷりでアツアツでボリュームたっぷり、厚切りトマトは2枚も入り、レタスも玉ねぎもたっぷりと入り、パンも大きめ。すごく食べ応えのあるハンバーガーだった。ピクルスも、酸味少なめ甘さも漂う好みの味。
「おおー、ファーストフードにしては……」
「旨いでしょ?けっこう旨いよねぇ」
「でも、それだけ値段は高めなのね」
などと話し合いつつ、がぶがぶとハンバーガーを齧る。肉を食べたいという欲求も満たされ、ついでにファーストフードにしてはかなりまともな味のものを食べられて、元気が出たところで更に先へ。
私:
Dilmonico $12.95
Lemonade $1.25
だんな:
Spare Ribs Dinner $9.25
Lemonade $1.25
息子:
Grilled Cheese Sandwich $3.25
Milk $0.80
ワイオミング州とモンタナ州の州境に近いところで高速道路を降りた後は、US-14という道を150マイルほど走ればCodyというイエローストーン国立公園の東側のゲートシティに辿り着く。マップの上では、途中、山越えをしなければならないらしい。かといって、他の道に行く選択肢もあまりなく、
「雪、降ってないといいねぇ……」
「ていうか、積もってないといいね」
と希望的観測を話しながら車を走らせると、目的地の方向に巨大な雪山が連なっているのが視界にはいってきた。寒いとは聞いていたし、防寒の準備もしていたけれど、これは想像以上だ。
「"雪、降ってないといいけど"どころじゃないじゃん!」
「積もってるじゃん!」
「私たちはスキーしに来たわけじゃないんだぞー」
「ていうか、今は春だぞー……」
「うわぁ、雪山越えか……」
車内騒然。息子一人が「あー、ゆきゆきだー」と妙に楽しそうだ。
で、2時間以上をかけての雪山越え。道路はかろうじて積雪してはいなかったけれど、頂上付近は本当にスキー場のような積もりっぷりだった。除雪車が雪をかきつつ進んでいくところに追いつき、それから数分、積雪がなくなるまで除雪車の後をそろそろと進んでいく。外は吹雪だ。5月なのに5月なのに、テネシーはもうプールの季節なのに、これがここの気候なのね……と、もう苦笑い。
相変わらず、息子は一人ハイテンションだった。
「ゆきー!遊びたいなー。ゆきで遊びたいなー」
と後ろの席でうずうずしている空気が伝わってきて、助手席に座る私がふと後ろを見ると、完璧に上着を着込んで戦闘態勢になっている息子と目があった。
「だから、雪のところで休憩しないって言ってるでしょ〜!」
「今、車止めるとね、エンジンかからなくなるかもしれないんだよ」
必死で説得してみても
「いーやーだー、ゆきゆきであーそーぶー」
と息子は本気で遊びたがっている。結局、根負けした私たちが、雪が比較的少なくなってきた途中の展望ポイントで車を止め、そこに積もった雪で雪合戦することになった。気温は軽く氷点下、しかもまだちらちら雪が降っている。5月だというのに家族で雪合戦。これでもかと雪玉を投げ合って、やっと息子は満足したようだった。息子よ息子、あと2〜3日こんな光景ばっかかもしれないんだぞ。
夕方、なんとか無事にCodyに到着。ここはかなり大きな町。最近オープンしたらしい小綺麗な(でも安普請な)モーテルにチェックインすると、無事にこの町にあるアクセスポイントに繋げてメール送受信やホームページの更新をすることができた。明日の朝にもう一度繋げたら、きっとまたその後2〜3日は音信不通になりそうな予感(そういうわけで、日記の更新が2〜3日途絶えても心配しないでくだされー……)。
夕食は近くにみつけたバーベキュー屋さんに行ってみることにした。大きめの町だけあってファーストフード店は軒並揃っているし、モーテルも10軒以上ある。ファミレス的なお店も多く、地元のバーベキュー屋さんという感じのその店が一番まともなものを食べさせてくれそうだった。
だんながスペアリブのバーベキューを注文するのを見て、私はそれとは別のものにしよう、とステーキに。ガーリックトーストと、数種類の中から選ぶサイドディッシュがついてくる。茹でとうもろこしとポテトサラダをつけてもらい、ビールは置いてないというのでレモネードを。"肉をただ焼いただけ"という感じの、ちと味気ないステーキは、それでも焼き加減も歯触りも悪くない。卓上の塩胡椒をばっばとふりかけ、だんなの元にきたテラテラ光るバーベキューソースたっぷりのスペアリブと交換しつつ食べた。じんわり甘いバーベキューソースが絡まるスペアリブは、さすがバーベキュー専門店だけあって香ばしくて美味しい。骨の回りにみっちりと肉がついていて、バーベキューソースとは別の甘辛い下味もしっかりついている。
「御飯炊くのもいいけど、肉分が足りなくなっちゃうからね」
「そうすると、こういうのがたまらなく美味しいのよねー」
「……で、明日のお弁当はまたおにぎり、と」
明日もおにぎり作成予定。イエローストーンの間欠泉の前でおにぎり弁当を食べるのだ(寒くてそれどころじゃないかもしれないという予感も少々)。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
クリームチーズデニッシュ
クランベリージュース
イエローストーン国立公園の東にある小さなゲートシティ、Codyに泊まった昨夜。朝起きて「お、曇りだけど大丈夫そうじゃない」なんて言っていたのに、そのうちモツモツと雪が降り始めた。もう、寒い寒い寒い。今日は長袖シャツにセーターを重ね着し、更にコートとマフラーと手袋(息子は更に耳当てつき帽子)装着の重装備で出発することになった。一体今日はどれだけ冷え込むのか、見当もつかない。
昨夜泊まったモーテルは、Econo Lodgeという名前の安めのモーテル。外見の綺麗さと、値段のほどほどの安さに惹かれて宿泊したら、設備は良いのに建物はひどい安普請で大変だった。上階で歩く音があますところなく聞こえてくる。テレビの音も会話の声も丸聞こえだったりして、何だか微妙に寝不足な気分。無料の朝食もついているということだったけれど、かつてなく酷い内容のものだった。甘そうなドーナツ類とデニッシュが数種類だけ置かれており、食パンなどの類がないのでバターもジャムもトースターも何もなし。シリアルもないので牛乳もなし。クランベリーとオレンジのジュースの他はコーヒーサーバーだけがあるという、「一体何を食べればいいのー」と嘆きたくなるものだった。ああ、甘そう……とげんなりしながら、クリームチーズデニッシュを1つ。どこかで見たことのあるパッケージだなぁと思った途端、そういえばホテルの近くにあったWAL☆MARTのロゴが輝かしく脳裏に浮かんできた。ああ、あれね、WAL☆MARTのアレね……と、ますますげんなり。
砂糖コーティングどっぷりの甘いねっとりしたパン生地の中央にこれまた甘いクリームチーズベースのペーストが乗っている。それでも何も食べないよりはマシと、喉の奥に突っ込むように食べて、いざイエローストーンに出発。ああ、モーテルの朝食って、かなり虚しい……。
ケンタッキーフライドチキン
ごはんですよおにぎり・塩おにぎり
つぼ漬け
麦茶
40分ほどドライブして、東側ゲートからYellowstone National Parkに午前9時頃突入した。東西南北と北東の方向に合計5個の入口があるこの巨大な国立公園、北の入口以外は冬季期間は閉鎖されており、じわじわと開通し始めるのが4月半ばを過ぎてからのことだ。5月になった現在も、今日になって南口が開通したり宿が営業再開したりと、今になってやっと今年の営業が始まりだしたという感じだ。随分遅くなってから開通するのね、と思っていたのだけど、道中の雪だらけの道をドライブしてなるほど、と思った。道中のみならず、公園内のあちこちも雪だらけだ。東口から入ってしばらく進んだところにある巨大な湖Yellowstone Lakeは、見事にまだ全面凍結していた。雪が積もって白く光る湖は隅から少しずつ溶けつつあったけれど、湖岸でその氷を割って拾ってみるとまだまだ厚さが1cmくらいはある。凍った湖を肉眼で見るのは初めてのことだった。うう、まだまだ寒いのねぇ。
何だかんだと寄り道しているうち、イエローストーン名物の間欠泉が集中しているエリアに到着した頃には、すっかりお昼になっていた。数多くの間欠泉の中でも最も規則正しく噴出しているというOld Faithful Geyserの次の予定時刻だけをビジターセンターで確認して、さっそくお昼御飯。今朝御飯を炊いておにぎりを作ってきたけれど、雪も時折ちらつく曇り空の屋外ではとても食べられそうにはなかった。しょうがなく、車の中からもこもこ煙を上げている間欠泉を遠くに眺めながら食べることに。
ごはんですよ入りのおにぎりと、シンプルな塩おにぎり。つぼ漬けと麦茶。肉っけがあるものが恋しかったので、思わず昨夜のうちにケンタッキーフライドチキンに駆け込んでフライドチキンを数ピース買ってきてしまった。手作り感溢れるおにぎり弁当を目指したはずなのに、微妙にジャンクな味わいに。
外で飲み物を買うとコーラだスプライトだドクターペッパーだ甘い紅茶だというばっかりで、甘くない紅茶や緑茶や烏龍茶とはまず出会えないのがけっこうつらい。息子には牛乳を飲んでもらいたくても、牛乳すら置いてないところが多かったり。1ガロンの水ボトルに水だし麦茶のパックをねじ込んで作った麦茶の存在が、何気なく非常にありがたかった。麦茶、うまー。
私:
French Onion Soup $3.95
Huckleberry Brie Chicken $15.95
Brut Krobel Glass $5.25
Lemon Sorbet $2.75
だんな:
French Onion Soup $3.95
Smoked Pork Loin $16.75
Brut Krobel Glass $5.25
Coffee $1.95
息子:
Macaroni & Cheese $4.25
Ice Cream $1.50
午後はひたすら間欠泉巡り。数十メートルの高さに水と水蒸気を吹き上げるものも2種類ばかり拝めたし、深くえぐれた温泉の池が綺麗なエメラルドグリーン色になっているのを見てうっとりしたりもした。バイソンや鹿はうじゃうじゃいるし、熊やコヨーテも見かけたし、今日一日で何かと盛りだくさんな公園巡りになった。ぶわーっと吹き上がる間欠泉を見られるのは余程タイミングが良くないと見られないものが多いけれど(一応予報はあるけれど、午後1時予定だけど前後1時間のズレがある可能性あり、なんてものが多く、とても待てない……)、どのくらい深さがあるのかわからない、ずどーんと落ちくぼんだ水の底からぷわぷわと泡が浮き上がってくるのを見て歩くだけでも楽しめる。私たちが交わしていた言葉というと
「うぉー、温泉はいりたい〜」
「ちゃぷちゃぷしたい〜」
「ていうか、卵茹でたい〜」
「ああ、あの池なんかパスタ茹でるのにちょうど良さそう〜」
などというものばっかりだったりしたけれど。日本人としては、温泉が沸いているならそこに入りたくなるのが人情というものだ。
今日の宿は、公園の北端にあるMammoth Hot Springsというエリアに建っている公園内の宿。バスタブなし(シャワーあり)、テレビなしコーヒーメーカーなしテーブルもなし、という小さな部屋で一休みした後、ホテルのダイニングレストランで夕御飯を食べた。メニューは、すごく美味しそうに思えた。トラウトやサーモンを使った魚介料理もあるし、バーベキュー料理やステーキもある。ワインリストなんかもあったりして、小綺麗なレストランの内装にもちょっとわくわくしながら席についた。
サラダは、レタスやにんじんや玉ねぎ入りのごくごく普通のもの。追加で頼んだオニオングラタンスープは、ちゃんと炒めた玉ねぎの味がするジャンクな風味が薄いものでとても美味しかった。グラスシャンパンをくぴくぴ飲みながら、ああ、けっこうまともなものが食べられるかも、と期待してメインディッシュを待った。
「……う……うーん……これは……微妙……な味だなぁ」
スープの皿を下げた後、メインディッシュがやってくるタイミングもばっちりだ。楽しそうにナイフを繰って一口スモークポークを食べただんなは、なんともいえない顔をして呻いた。ほのかに燻製臭が漂う、柔らかで美味しい肉だ。肉は美味しい。でも、ソースが「これは一体、ナニ?」という味がした。妙に酸味があり、そのくせ塩気は薄い。マスタード風味のようなそうでないような、とにかく"微妙"な味だった。そして私も私が頼んだ"ブリーチーズを乗せてグリルした鶏肉にハックルベリーソースをかけたもの"を一口。
「……う"……こ、これも……ビミョ〜……」
もう、なんというか美味しい不味いという範疇では語れないような味がした。料理法とか分量とか色々もっと吟味すれば、鶏肉をこっくりしたチーズの風味が包んで、それを爽やかなハックルベリーの酸味で……という料理になるのだと思う。でも、目の前にあるのは臭みの強いブリーチーズに甘さ強めのハックルベリーのソースがデロンと絡んでお互いにお互いを臭くしてしまっているような、かなり最悪な味のものだった。鶏肉を一切れ口に入れると、もやんとしたハックルベリーの風味が口中に漂い、その直後に匂いの強いむわんとしたブリーチーズのインパクトが広がってくる。肉の味など少しもしない。
いかにも食べ物に愛情がない人が作った料理だったら、そこで怒り狂って終わりなのだけど、半端に情熱が感じられるだけ始末が悪い。皿はきちんと温かくされているし、料理が出てくるタイミングも考えられているようだし、添え物だって料理によってピラフをつけたりポレンタをつけたり、と工夫されていた。なのに、ビミョ〜な味しかしない。悲しくなるほどビミョ〜な味の料理だった。
「……なんかさ、"気合い入れすぎて空回りしちゃって、本当は空の上に飛んでいくはずなのに地の下に潜っちゃった"……って味がするよ」
と泣き笑いな顔でだんなに言うと、
「……卿は詩的な表現をするな」
と、誰の真似なんだそれはという口調で厳かに返された。卿って誰だ、卿って。
私もだんなも口の中がもやもやとイヤな匂いで充満してしまい、デザートにレモンソルベをとって食べた。さっぱりとした、普通の味の、それだけにすごく美味しいシャーベットだった。夕食で美味しかったものがスープとシャーベットだったなんて……なんだか悲しい。
私:
Hiker's Special $6.25
Fresh Fruit Salad $2.75
Hot Tea $1.35
だんな
Biscuit and Eggs $6.95
Hot Tea $1.35
息子:
Cereal Cold $1.95
デパ地下でブリの切り身と豆腐とくずきりを買う夢を見た、イエローストーン国立公園内の宿での一泊。狭い部屋ではあったけれど静かで快適な一夜だった。でも、何故にブリと豆腐とくずきりだったんだろう。
「デパ地下でね、美味しそうだなーって買ったんだよ。持って帰る途中で目が覚めちゃった……食べてから目が覚めれば良かったのに、もったいないもったいない」
起きるなりだんなに訴えたら
「君はそんなに日本食が恋しいのかね」
と大笑いされた。別にそんな自覚はないのだけど、思いの外、本能は魚をはじめとした日本の味を恋しがっているらしい。……昨夜の夕食が散々だったせいだったかもしれないけど。
「昨日の夜のはすごい味だったけどね」
「まさか、オムレツまで酷い味ってことは……ないよね」
「……たぶんね」
と、戦々恐々としながらも、そういえば卵料理ってしばらく食べてなかったよねと昨夜と同じホテルダイニングに朝食を摂りに行くことにした。サービスについてくれたのは、昨夜と同じお兄ちゃんだった。
私は好みの卵料理とトースト、ソーセージかベーコンにポテトのフライがセットになったもの。だんなはトーストの代わりにビスケットとグレービーが添えられているものを注文。一品料理1皿と同じくらいの金額でブッフェ朝食も選択できたのだけど、どうしても温かい作りたての卵料理を食べたい気分だった。息子もどうせ食べるだろう、と息子が好物のスクランブルエッグにしてもらい、ついでにフルーツサラダも追加する。案の定、注文するときは
「ぼくはねー、カリカリ(=コーンフレークのこと)だけでいいんだよー」
と言っていた息子が、「たまご、たまごちょうだい。あーん」だの「フルーツ、フルーツもたべたいな。あーん」と欠食児童のように私の皿に押し寄せてくることになった。ああ、私のスクランブルエッグが大量に息子の口に……。メロンと葡萄を盛り合わせたフルーツサラダも大量に息子の口に……。
幸い、卵料理も添え物も、どれひとつ「ビミョ〜な味……」と嘆く必要のあるものはなかった。どれも普通に美味しかったし、久しぶりに食べた温かい卵料理はかなり嬉しいものだった。だんなはトロンと白いグレービーがかかったビスケットを
「そうそう、これが南部の味だよ。懐かしい味だよ〜」
などと言いつつ嬉しそうにビスケットを齧っていた。それぞれが、かなり幸せだった朝御飯。
私:
Cheese Pizza $5.00
Soup du Jour $3.75
16oz Soda $1.39
だんな:
Panino Beef Sandwich $6.95
Hot Coffee $1.50
息子:
Coke $1.19
今日もイエローストーン国立公園内に宿泊する予定になっていたので、一日中公園内巡り。「ここはイエローストーンのグランドキャニオンです!」なんて看板の立ったキャニオンエリアに、
「またまたー、そんなこと言っても大したことないんじゃない?」
と笑いながら向かった直後に、何百メートルも深く切れ込んだ渓谷を崖の上から眺めることになって「どしぇー」とのけぞってみたり、茶色い台地から吹き上がる温泉や湯気を今日も眺めてみたりした。私としては、"Fountain Paint Pot"という名がついた、泥の池の表面が絶えずポコン、ポコンとあちらこちらで泡を吹いている場所がツボに入り、
「あああ〜、泥風呂〜……はいりたい〜」
などと呟きつつしばらく恍惚と眺めていたりした。背後からだんなが
「いや、入ったらね、君、全身大火傷だから。死ぬから」
と丁寧にツッコミを入れてくれたりしたけど、聞いちゃいない私。ああ、どこもかしこも温泉がふんだんに吹き上がっているというのに露天風呂の1つもないのだから悲しいことだ。イエローストーンは楽しいけれど、ちょっとつらい場所でもある。
今日は土曜日ということもあって、園内は昨日よりも圧倒的に多くの人が訪れているようだった。昨日はあんまり人とすれ違うことのなかったトレイルも、今日はざくざく人と会う。飲食店などがあるエリアの駐車場にも多くの車が止まっていた。
昼御飯は、今日の宿泊予定でもあるOld Faithfulという一番賑やかなエリアにあった、土産物屋に隣接したファーストフードっぽい店で。メニューはピザとパニーニと……と、どことなくイタリアン。店名もしっかりイタリアンだった。
既にできあがっているピザが箱に詰められ、棚に置かれている。パニーニも、温かいものなのかと思ったら既にできあがっているものが並んでいるだけだった。スープだけはその場でよそってくれる。陽気な店のおっちゃんは
「チリだよ、チリがあるよ。チリがうまいんだよ」
と、チリが超オススメらしく、チリチリ連呼している。でも、私は"本日のスープ"のクラムチャウダーを注文した。ごめんよおっちゃん。
作り置きの味がしたピザは、4等分にされた直径20cmほどの丸いもの。息子と半分こして齧りつつ、ピザ半量じゃ足りないのでだんなのパニーニも横からお裾分けしてもらった。巨大な缶詰をあけたかのような、ちょっとジャンクな味のクラムチャウダーとレモネード。全体的にジャンクな味の昼御飯だったけれど、空腹は癒されたので午後のトレイル巡りも頑張れそうだ。
私:
Kurant Cocktail $5.00
Prime Rib Au Jus $18.25
Tiramisu
だんな:
Sauvignon Blanc, Kenwood $5.25
Hand Cut New York Strip Steak $20.95
Hot Fadge Sandae
息子:
Jr. Mac & Cheese $4.25
Milk $1.55
今日はせいぜい2〜3個のトレイルを歩くつもりでいたのに、なんだかんだで5個ほどのトレイルを歩きまわり、すっかり疲れ果てて夕方ホテルにチェックイン。本日泊まるのは、"Old Faithful Inn"という古めかしいホテル。なんでもイエローストーンの象徴のようなホテルだそうで、レセプションのある棟は世界最大のログキャビンなのだとか。写真を見てから、いつか泊まってみたいねと言っていたホテルだった。宿泊したのはログキャビンの方ではなく、安めの新館。バストイレつきの綺麗な部屋で、小さな2人がけダイニングテーブルもあった。ホテルの目の前にあるOld Faithful Geyserは残念ながら見えない場所だけど(見えるところはおっそろしく高いらしい)角部屋で、ここは温泉街ですか?的な湯煙はもうもうと見える部屋だった。ベッドカバーの模様はバイソンやヘラジカなどのイラストがちりばめられたものでとても可愛い。
レセプション棟のログキャビンぶりをしばらくぷらぷら歩いて満喫した後、夕食は昨日のうちに予約しておいてあったホテル内のダイニングへ。予約時間は6時半、だけどもうほぼ満席という盛況ぶりだった。このホテルが今シーズンオープンしたのは昨日。今日はオープンして最初の週末ということもあるのかとにかくすごい人だった。なのに、その盛況ぶりにスタッフが全然ついていってない様子。
テーブルに案内され、メニューが渡された後、私たちは20分以上放置プレイされてしまった。食べ物の注文はおろか、飲み物の注文すら取りに来ない。細々とあちこちの雑用をしている係のおっちゃんが水だけはテーブルに置いていったけど、目の前にあるのはメニューだけという状態がしばらく続き、だんなの顔がどんどん険しくなっていく。誰がこのテーブル担当なのかもわからないままじりじりと待たされ、ついにテーブル脇を通りかかったネクタイ着用のフロアの中では偉そうな感じの兄ちゃんをとっつかまえて
「20分も待ってるのに、だ〜れも来ないんだけど!?」
と、語気荒く訴えた。ネクタイ兄ちゃんが去り、すぐにやってきた担当のおねぇちゃん。
「ごめんなさい。わからなかったの」
と言ってはいるけど、彼女はさっき、5分以上もすぐ隣のテーブルでにこやかに雑談していた人だった。いらつきながらも注文を終えると、ネクタイの兄ちゃんが注文した料理についてくるサラダとスープを持ってきた。見ていると担当の彼女は、かなり新米らしい。隣のテーブルでは計算を間違えたらしく、レシートを前に彼女とお客がなんだかんだと話し合っている。私たちのテーブルばかりがサービスが遅いのかと思って周囲を見ると、彼女が担当している周囲のテーブルも同様にてんやわんや状態なのだった。別のテーブルでは、メインディッシュがやってきた10分後くらいにやっとパンがやってくる始末だ。さすがにヤバイと思ったのか、それからはネクタイ兄ちゃんなども彼女と一緒に給仕をしたりしていた。あぁ……新しく来たお客は、ドリンクを出されたっきりサラダもスープも来ないで20分以上も放置プレイされている。
気がついてみると、彼女が担当する以外のテーブルでも似たような状況が展開されていたりしたのだけど、文句を言った私たちにはその後、レセプション担当のおねぇちゃんがそそそそ、とやってきて
「本当にごめんなさいね。デザートをサービスするから、好きなものを食べていってね」
とのこと。ありがたく、最後に無料デザートを頂戴することにしてしまった。
オープン2日目でてんやわんやなのはわからなくもないけど、それにしたってサラダとスープとステーキをカクテルと共に平らげるだけで1時間半以上かかるというのは、なんか違うような気がする。無料デザートも、結局メインディッシュを食べ終えてから15分以上も待たされたりしたのだけど、最後には怒っているというよりは苦笑いしているような感じになってしまった。本来、彼女の仕事じゃないはずのレセプションのおねぇちゃんまで皿を下げたりカトラリーを並べたりし始めている。私たちが入店した時は、まだ笑顔が出ていたテーブル担当のおねぇちゃんも、途中からいっぱいいっぱいで顔もすっかりこわばっちゃって、私たちのテーブルに来るたびに
「遅れてごめんなさい。本当にごめんなさい。キッチンももう、大変なの……」
と脅えた子鹿のような目つきになっている。いや、もう怒ってないし気にしてないから、がんばって、と逆に励ましている私たち。
「知ってるよ。オープン2日目なんだよね。週末だしね」
なんて、だんなが苦笑いしながら言うと、
「ええ、そうなのよ。私もここで働きはじめて2日目なのよ……本当にごめんなさい。遅くてごめんなさい」
と、ぎこちない笑い顔で返してくれた彼女の目は、ますます泣きそうに潤んでいる。
料理の味は、昨夜に比べると至極まともなものだった。あまり奇をてらったようなものは頼まないようにしよう、としたのもあるけれど(何しろ昨夜の宿も今日の宿も経営母体は同じだったりするので)、プライムリブは柔らかで肉汁たっぷり。付け合わせのさやいんげんの炒め物も、レッドポテトのグリルも、ごくごく普通に美味しかった。スープは牛肉と野菜入りの、薄めのビーフシチューといった感じのもの。無料サービスになってしまったデザートにはティラミスを頼んでみたのだけど、これは日本で普通に食べる分量の4倍量くらいのものだった。マスカルポーネチーズはねっとりと濃く、甘く、確かティラミスってのはエスプレッソの風味がするもので普通チョコレートの味はしないはずなのに、上には刻みチョコレートがたっぷりかかっている。チーズ生地の間のはスポンジが挟まっていたりして、一口食べて
「これは"ティラミス"じゃないよ……"アメリカ風ティラミス"だよ」
と、また苦笑い。でも、決して不味いものではなくて、量だけはすごかったけれど美味しく食べられた。
多分、夏には今日の担当の彼女も、きびきび動ける辣腕給仕人になっていると思うのだけど、今日はもう彼女に限らずホテル全体がてんやわんやとしている状態だった。部屋のトイレットペーパーが部屋に入った段階で既になくなりそうな状態だったりして、
「ペーパー、なくなりそうなんだけど」
と言ったら十数分後にレセプションの担当らしき女性がペーパーを2個持ってきて、その更に数分後にハウスキーピングの制服を着た女性が更なるペーパーを2個持ってきてくれちゃったり。1900年代の始めからあるという、古い古い宿の今シーズンの営業開始のどたばたをを垣間見てしまったような感じで、それもある意味貴重な体験かもね、と部屋に帰って笑ってしまったのだった。
明日は楽しかったイエローストーンを後にして、数日かけてデンバーへ戻る予定。早くも米の飯が微妙に恋しくなってきているので、早速炊飯器のタイマーをセットした。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
Breakfast Buffet 2×$8.50
「今日はブリとか豆腐の夢見なかった?」
と、起きるなりだんなに言われた午前7時過ぎ。ここ数日間早起きの日が続いていたので、今日は心ゆくまで寝ていようということになっていた。が、だんなが7時過ぎに起き、私もその直後に目が覚め、息子も8時前にはすっきりと目覚めてしまった。妙な夢も見なかったし、良い朝だ。
朝御飯は、ホテル階下のダイニングにブッフェ朝食を摂りに行った。卵料理はスクランブルエッグと"本日のスクランブルエッグ"の2種類しかなく、パン類もデニッシュやフレンチトーストなどの甘いものが主。ソーセージにベーコン、ポテトフライにフルーツにシリアル……といった感じにかなりささやかな内容のものだった。しかもジュースは飲み放題というわけでなく、オレンジ、アップル、クランベリーから好みのものを1種類1杯だけ。それでもフレンチトーストやフルーツを心ゆくまで食べられるのはまぁ良いことかと、好みのものを盛りつけてきてもりもり食べた。
朝食後、荷物をまとめたらチェックアウトして3日間堪能したイエローストーン国立公園とお別れだ。部屋から近いところにあった裏口から荷物を車に積み込もうと小さなドアを開けたところ、目の前数メートルのところで巨大なバイソンが小川の水を飲んでいる。
「ひゃぁ……」
と小さく悲鳴をあげて荷物を落としそうになりつつもドアの横に積み上げると、小さな小さな小川を隔てた数十メートル先には、更に2頭のバイソンと1頭の子供のバイソンもいるのがわかった。初日に一瞬見かけてから、ずっと近くで見られないかと探していた子バイソンだ。昨日、かなり真剣に窓から外を眺めていたのだけど、ついに1頭も見かけることができなくてすっかり諦めていたのだった。大型犬ほどの大きさで、全身が赤茶色の毛糸玉で覆われたような外見。もこもことしていてぬいぐるみのようだった。母親らしきバイソンの周囲をぴょこぴょこと跳ねていて、やたらめったら可愛い。
「あえたよー見つけたよー」
と、しばし荷物の搬出も忘れて川向こうにいる子バイソンを対岸ぎりぎりのところから眺め倒す私。最後の最後に良いものが見られて幸せだった。
ごはんですよおにぎり・鮭フレークおにぎり
つぼ漬け
さんまの蒲焼き缶
麦茶
今日はイエローストーン公園を南に抜け、デンバーの空港方面に3日かけて戻っていくことになっている。
イエローストーンを越えると、すぐ南にあるのがGrand Teton National Park。イエローストーンに比べると、間欠泉があるわけでも深い渓谷があるわけでもなく、"雄大な自然を楽しみましょう"的なこぢんまりとした公園だ。すぐ脇を雪山の連峰が連なっていて、湖の向こうに見える迫力の光景が楽しめる。最初は晴れ間が覗いていて、
「これならのんびり山を見ながらお弁当を食べられるかもね」
と言っていたのに、山の天気らしい不安定な気候になってしまい、厚い雲がたれ込めたと思ったら雪が降り出してきてしまった。
今日は、昼御飯を食べられる場所に昼時に通れるかどうかわからなかったこともあり、ホテルで御飯を炊いておにぎりを作ってきている。ごはんですよ入りのおにぎりに、鮭フレーク入りのおにぎり。つぼ漬けに麦茶に、それだけじゃ物足りないので"さんまの蒲焼き缶詰"。
「おにぎりにさんま蒲焼き缶ってけっこう合うかもよー」
なんて冗談まじりに、国立公園巡りを始める直前にデンバーの日本食材屋さんで買ってきたものだったけれど、これが冗談じゃなく似合ってくれちゃって、癒されまくってしまった私たち。
国立公園内、目星をつけていたピクニックエリアは雪にすっかり埋もれていたりして、ちょっと途方に暮れながら南に進むと、現在は閉館中(夏の間だけ営業するらしい)の、ビジターセンターの1つに到着した。幸い、屋根のあるところにベンチとテーブルが置かれている場所があり、コートを着込んで寒い寒いと車から降りての昼御飯。とっとと食べてとっとと出発だとばかりに急いでおにぎりを齧りだしたところ、これまた山の天気らしく雪が止んで青空が見えてきた。空を見上げると、日光を浴びていられるのはせいぜい20分というところ。
「陽の当たるところに移ろう!」
「さ、おにぎり持って麦茶持って、行くよー」
と、外のベンチに急いで移動し、日の光のありがたさを噛みしめつつ雪山を眺めての昼食になった。
1人3個のおにぎりに、さんま蒲焼き缶。これ以上ない雄大な自然の風景の中でのパッカン缶詰の光景は微妙にシュールだ。しかも、さんま蒲焼き。微妙に貧乏くさい。
「でもね、私、これ好きなんだわー」
と、おにぎり片手に甘ったるいタレに浸った魚をつつく。
「ああ……さんまの蒲焼き缶って、美味しかったんだねぇ」
と、妙な感動をしているだんなと、
「ぼくもねー、おさかな、好きだなー。これ、おいしいなー」
と、いつもと変わらずご機嫌な我が息子。
この旅行に、2升の米を持ってきていた私たち。いつのまにか、1升が綺麗になくなってしまっていたのだった。
松茸入り炊き込み御飯
インスタント味噌汁
ビール・麦茶
グランドティトン国立公園を南に抜け、ひたすら南下して高速道路にぶつかったところで今度は東に。当初の予定は4時頃に到着するであろうRock Springsという町で今晩の宿をとるはずだったのだけど、
「もうちょっと走ろうか」
「どうせ7時頃まで日も暮れないしね」
と更に200マイル移動してLaramieという町まで行くことになった。その2つの町を選んだ理由は、「その町ならインターネットのアクセスポイントがあるから」ということだったのだけれど、東京と名古屋ほどの距離がある間に1個もアクセスポイントがある町がないというのもちょっとすごい。高速道路を走っていると、ひたすらひたすら牛や馬がいる高原の牧場ばかりの光景が続き、確かに町らしい町はほとんどなく、ああこれは確かにねぇ、と笑ってしまうのだった。
ともあれ、アクセスポイントのある町Laramieに到着したのは午後7時過ぎ。宿泊したホテルは、Motel6。留学生仲間から
「8はね、普通。けっこう良い方かも。でも6はひどかったよ。隣の部屋の音が丸ぎこえだったりしてね。シャンプーもないし」
などと聞いていたモーテルだった。"8"とはMotel8という名前のチェーンで、"6"とはMotel6という名前のチェーンのことだ。似ているけど全く違うチェーンらしい。最初に「今日は部屋、空いてる?」と駆け込んだ目当てのモーテルが思いの外高い宿泊料だったので、めんどくさくてすぐ隣にあった"6"にチェックインしてしまったのだけど、部屋に入ってすぐに「ありゃー」と思うことになった。
バスタブがなく、シャワーだけ。部屋の広さはまぁまぁ普通のサイズだけれど、コーヒーメーカーもなければダイニングセットもない。ホテル周辺には飲食店もほとんどないようなところだったので、部屋で御飯を炊いて食べようと思っていたところにこの設備はつらかった。コーヒーメーカーがないと、お湯を沸かすのも大変になる。
それでも、持ち歩いていた松茸御飯の素を入れた御飯を炊き、御飯が炊ける間に"インスタント味噌汁も飲みたいところだけど、どうやって熱湯を手に入れようか"ということについて話し合う。このモーテル、朝食もついておらず、朝には無料のコーヒーと紅茶だけがサービスされるのであるらしい。お湯だけくれない?と聞いてみたら夜だからダメ、とつれない返事だった。
……で、よく考えてみれば炊飯器で湯も沸かせるんである。炊けた御飯を別の容器に移し、空になった釜に水を入れて炊飯ボタンを押せば、湯は沸かせるはずだった。
「御飯、冷めちゃう」
「いや、氷入れる容器にサランラップ敷いておひつ代わりにしちゃうのはどうだ」
再びあれこれ話し合い、結局、アイスペールをおひつ代わりに使うことにした。炊き込み御飯が炊けたところで急いで御飯を釜から移し、湯を沸かす。思いの外早く湯は沸いて、あったかい御飯とあったかい味噌汁をとりあえず食べることができた。部屋で御飯も楽しいけれど、色々と大変だ。
期待の松茸御飯は、期待が大きすぎたのかごくごく普通な味しかしなかった。「松茸の風味ってこんなだったっけ?」と思いつつ、それ以前に御飯に何だか芯がある。標高が高くて炊き具合が微妙に違ってしまったのか、それとも単に水加減が違ってしまったのか、それともその両方か。期待の松茸御飯よりは、赤だしのインスタント味噌汁の方が妙に美味しく感じられてしまって、少々もにょもにょしてしまった夕御飯だった。
さて、朝食がついていないこのモーテル。明日の朝食はカップ麺かなぁ……。(カップ麺とコーヒーという組み合わせはイヤだなぁ……)