食欲魔人日記 01年05月 第3週
5/14 (月)
パルメザンチーズのリゾット (夕御飯)
ミニビビンバ
大根と油揚げの味噌汁
麦茶

モヤシとぜんまいとほうれん草のナムルが残っている。ナムルがあるならビビンバだ。というわけで、朝御飯にビビンバ。ただし、器は普通の御飯茶碗にしてミニビビンバに。

ご飯は茶碗の半分くらいによそい、そこに3種類のナムルを山盛り乗せる。うずらの卵を1個割り落とし、コチジャンをつけ、あとはうりゃうりゃとかき混ぜた後に食す。にんじんとか大根が入らず、ついでに肉っ気もないのでえらく淡泊な味のビビンバだ。しゃきしゃきしたモヤシが何とも美味しい。

コロッケ丼
牛乳

一人の昼御飯。昨夜のコロッケが3つ残っていたのでうきうきと一人でいただく。パンを買ってきてコロッケパンにしようかご飯に乗せて丼にしようか悩んだ挙げ句、「コロッケ丼」にすることに。カツ丼みたく卵とじにするか、あるいはキャベツを敷いたソース丼にしようかまた思案。残っていた刻みキャベツが「私を食べて」と言っていたので、ソース丼にすることにした。

ご飯の上に千切りキャベツを敷いて、コロッケ乗せてソースをかけるだけ。それだけだけどご飯とコロッケを別々に食べるのとはちょっと違って、案外と美味しい。
コロッケ丼は、何だかお弁当のご飯のようだ。その昔、高校時代に弁当を持って行っていた時分、母は昨夜のメニューがとんかつの時は翌日の弁当をほぼ100%の確率でカツ丼にしてくれていた。普段はおむすびだったので、そのカツ丼が嬉しいの嬉しくないのって。
コロッケ丼を食べながら、そんなことを思い出していたのであった。

パルメザンチーズのリゾット
卵とサラダ菜のサラダ
アイスカフェオレ

シンプルなリゾットが喰いたくなったので、チーズのリゾットを炊いてみた。
オリーブ油とバターで玉ねぎを炒め、そこに米を入れて更に炒める。ワインをふってアルコールを飛ばしてからは、スープを加えながらひたすら炊いていく。水量が多すぎるとうまくいかないので常にヒタヒタにして適宜足せとか、沸騰具合はフツフツと軽く泡立つくらいに、とか色々コツがあるらしい。パスタと同じ、芯がほんのり残るくらいに炊ければ上等だそうだ。最後に塩とおろしたパルメザンチーズと風味付けのバターを落としてできあがり。

作り方だけ見るとそんなに難しそうじゃないのに、結構大変だった。鍋に米がこびりついてくるし。最後にバターを溶かしたところで何だか水分量が増えてぺたぁとした感じになっちゃうし。米の粘り気が出てしまったら、そのリゾットはいまいち成功とは言えない。
サラダ菜とゆで卵を和えてオリーブ油とビネガーで味をつけたサラダも用意して、「軽め」を志した夕食の完成。

チーズの香りがふわふわと漂うリゾットは悪くなかった。生姜を入れた南瓜のリゾットも美味しいし、ホタルイカ入りの魚介のリゾットもイケる。米じゃなくて麦を使った「リゾット」ならぬ「ファロット」も、お店で食べたら眼から鱗がざーざー流れるほど美味しかった。普段イタ飯というとパスタ料理ばかりをついつい食べてしまうけど、リゾットもしみじみと良い感じだ。
15分でできて、米1カップでたっぷり2人分。もうちょっとリゾットが極められたら便利な主食になるのになぁ。

5/15 (火)
回鍋肉 (夕御飯)
卵御飯ビビンバもどき
緑茶

週末、調子に乗って買った卵が2パックが、でかい面して冷蔵庫に鎮座ましましているのである。冷蔵庫内に無ければ無いで、無性に寂しい気分になってしまう卵だが、20個も並ぶと嬉しいの通り越してちょっと困惑してしまう。冷蔵庫開けるたび、「ああ、卵食べなきゃたまごたまご」という気になってしまうのだ。

というわけで、卵御飯の朝。
んが、卵を取り出そうと冷蔵庫を開けたところ、ナムルの残りが入ったボウルとも眼が合ってしまった。にんじんが無くなり、ほうれん草も無くなり、残りはモヤシとぜんまいのナムルのみ。2種類しかないナムルをテーブルに並べ、「卵御飯の〜、ビビンバ!」と全くよく分からない朝食になった。
生卵を溶いたやつを混ぜ込んだ黄色い御飯に、2種類のナムルを乗せてざかざかかき混ぜて食べる。ビビンバとも卵御飯ともつかない珍妙な物体となった黄色い御飯は、でも妙に美味しかった。

「これ、丸くまとめてフライパンで焼いたら美味しいかもなぁ……」
ますます変な考えになっているのであった。
(いや、美味しいと思うんだけど……)

田町 イタメシヤLaPausaにて
 なすとボロネーゼソースのパスタ \530
 +サラダとレモンスカッシュ +\200

本日お仕事。「香港食堂」とかいう名前の気になるお店が駅の近くにあって、ずっとずっと気になっていたのである。名前からして、いかにもマンゴプリンを置いていそうだからというのがその理由。うきうきと12時前、混み合う前の時間を目指してその場所を目指してみたところ、なんと改装中なのであった。退店したのか改装なのかもわからないが、工事しまくっているその店を後にしてとぼとぼと戻り始める。

大学の裏門ほど近いところに怪しいパスタ屋があったので、そこに入ってみることにした。チェーン店らしいけど、パスタ一皿500円程度なのである。学食並に安いその価格がまず怪しい。店内は「イタリアンの風を感じさせるテイストにしてみました、でも失敗」という内装でこれまた怪しい。壁にはいたずら描きのような模様が施され、天井からぶらさがるランプはワインの瓶を加工したものだ。全体的にカジュアルというより安っぽい雰囲気が漂っていた。

530円の「なすとボロネーゼソースのパスタ」を注文。200円足すとサラダとドリンクもついてくる。
刻んだサラミとコーンが乗ったレタスのサラダをつつきながらパスタを待つ。やってきたのは、良い具合にアルデンテを通り越した、やけに水っぽいパスタだった。ミートソースは肉っ気がいまいち少なく水っぽい。1/2本分ほどの茄子が乱切りになって揚げられたものが添えられている。おまけに、パスタのてっぺんには既にたっぷりと粉チーズが。あまり風味のない粉チーズは、しかしテーブルには置かれていなかった。「イタメシヤ」と大きく看板に書いてある割には、その皿とかテーブルとかは和風パスタ屋「壁の穴」よりイタリア色薄いものなのだった。……ま、500円パスタの店だし。期待する方がいけないのかもしれない。

客はおおむね一人客。「良くわからないけど入っちゃったのよね」という顔をしたサラリーマンが多い。大学も昼休みに入ったというのに若いグループ客が皆無なところがこの店の人気を物語っていた。
隣のモスバーガーもミスタードーナツも大盛況なのにねー。とほー。

茹で空豆
回鍋肉
シラスと卵のスープ 酸辣湯風
御飯
モルツ、麦茶

週末に、キャベツが1個50円だったのである。
「キャベツだキャベツだ。」
「回鍋肉だ回鍋肉だ。」
とキャベツと回鍋肉が脳内回路で強くシナプス結合している人物が我が家に一人いる。だんなだ。だんなという人は、キャベツとみたら回鍋肉なのであった。確かに回鍋肉は美味しいよね、うんうん、と豚バラ肉を買ってきた私にも罪があるかもしれないが。

美味しい回鍋肉は、でかい豚バラ肉の塊を茹でることから始まる。30分ほど茹でたところで水揚げしてスライス、それを油通しした野菜と一緒に炒めていく。仕事して疲れた日なぞは薄切り豚肉を使いたくもなるけど、何しろこちらの方が美味しいのでがんばって手間かける。

お供には大量にある卵と豚肉を茹でたスープで酸辣湯もどき。酢とラー油と胡麻油で風味をつけたやつ。
ビールと空豆、回鍋肉の組み合わせは今日も絶品だった。
「ビール、もう1本飲みたいねぇ〜」
「いやいやいや、ここで飲んだら動けなくなるからあとは御飯で回鍋肉だ。」
「御飯にも合うもんねぇ〜」

はぐはぐとひたすらビールと御飯で回鍋肉を消費。
いくつもの種類の皿を量を少なく食べていくのも好きだけど、同じおかずをひったすら食べ続けるというのも何ともシアワセなことだ。
……消費した豚肉は、そういえば400g超のパックではなかったか。いやん。

5/16 (水)
ココナッツミルクと香菜の和えそば (夕御飯)
クリームパン
コーンパン
アイスカフェオレ

今日の朝は、パン。甘い系パンと総菜系パンとを半々ずつ買ってきた。私はクリームパンとコーンパン、だんなはウィンナーロールとチョコレートパン。息子にはクリームパン1個。近所のパン屋だけど、まぁまぁそれなりに美味しい。

だんなはパン食があまり好きではなかった。「朝は御飯に限るよ」と結婚前から繰り返し言われ、それに私は「朝はパンだよやっぱり!」と言い続けていた。結婚後は御飯食をとりあえず基本とし、菓子パンを買ってみたりトーストに目玉焼きを乗せてみたりホットサンドを作ってみたりと、朝のテーブルにあれこれとパンを並べてもみた。そろそろ4年になる。先日初めて
「パンも美味しいなぁ、って思うようになった」
という言葉がだんなの口から出たのであった。ちょっと嬉しい。

だんなのパン嫌いは子供時代に起因している。学生の頃、だんなの実家では「朝御飯はパン」という慣習だったのだとか。トースト、しかもまとめて焼くから冷めてしまっていたことが多かったというトーストばかりが毎日続き、何度も「御飯にしてくれ。昨日の味噌汁の残りでもあればそれで良いから。」と母親に直訴したけれど聞き入れられなかったのだそうだ。そりゃ、毎日毎日トースト食べてりゃ飽きるわな。今もどこか大雑把なお義母さんは昔から大雑把だったということらしい。

そのだんなの実家の食堂のテーブルには、あまり使われてないんじゃないだろうかという自動パン焼き機があるのだ。
「いつか、貰っちゃおうかしら」
とお下がりを狙う嫁がここにいる。うふふふふ。

卵サンド
アイスアールグレイティー

我が家には卵が2パック分ある。それが昨日、3パックに増量した。「卵あげるわー」とお義母さんに言われ、既に2パック冷蔵庫に入っているのをうっかり忘れて、しっかり貰ってきた所為だ。3パックの卵。30個の卵。おお、恐ろしい。

一人の昼御飯、食パンにマヨネーズ和えゆで卵を挟んだ卵サンドを作る。卵2個使って分厚い豪華卵サンドだ。アールグレイのアイスティーを入れて、がばがば飲みながら卵サンドを食べる。卵はまだまだ残っている。……プリンでも作るかな。

ココナッツミルクと香菜の和えそば
シラスと卵のスープ 酸辣湯風
麦茶
クリームバナナ

だんな、今週は激ジョブであるらしい。
「今日と明日はきっと遅くなるよー」
と予告を受けていたので、今日はわくわく香菜料理。だんなのいない日は、彼が嫌いで私が大好きなものを使って料理するに限る。たとえば香菜。たとえばピータン。たとえば納豆。どうも匂いの強い食材に私とだんなの好みが別れてしまうようだ。
余りものの豚ひき肉と、食料庫にあったココナッツミルクの缶詰を使って和えそばを作る。確かレシピはケンタロウさんのもの。

胡麻油でにんにくと生姜と豆板醤を炒め、豚ひき肉を入れて更に炒める。カレー粉少々をふってココナッツミルク缶を1缶ぶちこみ、そこから適度なとろみがつくまで煮ていく。そうしてできたココナッツスープとひき肉の具とざく切りにした香菜、茹でたての中華麺を絡めて皿に盛る。以上。

香菜、好きなのである。更にココナッツミルクも大好物なのである。和えそば系も大好きだ。もう好き好き尽くしの麺料理なのであった。今まで作ったことがないというのが我ながら不思議なほど、ずっと作りたかった料理だった。
ココナッツミルクの甘い匂いと豆板醤の辛さ、カレーの風味。そいでもってたっぷり絡むカメムシの匂いの香草。と書くと不気味だけど、なんともエスニック風味溢れたイカした麺料理になった。ほんのり甘くてピリリと辛くて、いかにもタイ料理という感じの味がする。お、美味しいじゃないか。すばらしい。

昨夜の残りのスープを傍らにずるずると息子と一緒に麺を食べ終え、デザートにクリームバナナ。
「熟したバナナは潰してホイップクリームと混ぜるだけでとても美味しいデザートに」
なんてどこかの本に書いてあったのでやってみた。数日放っておかれて表面が黒っぽくなりはじめたバナナはフォークでざくざくと細かくつぶし、その量の半分ほどの量の固く泡立てた生クリームを混ぜ込む。それだけで、ムースっぽい物体ができた。案外美味しい。味はやっぱり「生クリーム+バナナ」以外の何物でもないけれど、まぁ悪くない。

ああ、でも美味しかったなぁココナッツミルクの和えそば。ココナッツブラボー、香菜ブラボー。

5/17 (木)
アクアパッツァ(青山)にて「完熟トマトのムース」 (昼御飯)
目玉焼き乗っけトースト
カフェオレ
桃入りヨーグルト

食パンがあったので、それで朝御飯。
目玉焼きを半熟で焼いて、それを焼きたてのバタートーストに乗せる。塩をふって胡椒ガリガリふってかぶりつく。軽めの朝御飯は濃厚なお昼御飯のため。今日は一人でおでかけだ。うーふふふふー。

上野松坂屋 アンテノールにて
 季節限定マンゴープリン
 アイスティー

今日の目的地は上野。上野の東京都美術館で開催中の「アール・ヌーヴォー展」が目当てだ。4月末から開催されていて、ずっとずっと行きたかったのだ。ゴールデンウィークで上京していたような人々もさすがにいなくなったであろうこの時期を狙ってみた。

10時。開館1時間後に到着すると、さすがに人はそれほどいなかった。んが、続々と混んでくる。やはりルネ・ラリックの「蜻蛉の精」は大人気で、10人ほどの人がぎっちり詰まりつつそれを見ているのであった。皆さんアール・ヌーヴォーがお好きらしい。私も人のこと言えないけれど。しかし件の「蜻蛉の精」は長さが25cm強もあるのである。そんなもん胸につけて歩いていたら、蜻蛉が付いているというよりも「蜻蛉が憑いている」という状態になりはしないか。

群れ集うおばさま方は「きれいねー、すてきねー、繊細ねー」と繰り返していたけれど、アール・ヌーヴォーって果たして本当に綺麗で素敵で繊細なのだろうか。そういう一面も確かにないではないけど、私は熟した果実が腐臭を放っているような印象の作品に惹き付けられてしまう。どこか「終末」とか「死」を感じさせる作品が、案外とアール・ヌーヴォーには多い。
バナナの皮のようにねっとりした花びらがモチーフの花瓶だとか、水辺に落ちていく蜻蛉がモチーフの暗い色の壺だとか。リアルな昆虫がモチーフのブローチも相当グロテスクだ。いや、それがたまらなく良いんだけど。で、私はそういうものばかりドキドキして眺めていたのだった。
家具やら絵画やらガラス細工やら盛りだくさんの、なかなか充実した展覧会だった。終わる前にもう一回行きたいものだ。

で、お昼御飯は青山のアクアパッツァに予約済みなのである。1時の予約にまだ余裕があったので、上野松坂屋にてマンゴプリン探索。折良く「アンテノール」というケーキ屋に新商品を発見し、しかも横に小さな喫茶コーナーまでついていたので迷わず一休みして喰っていくことにする。
ココナッツプリンが敷かれたマンゴープリンは洋菓子屋らしく生クリームたっぷりのふわりとした柔らかなものだった。ん〜、美味し。

南青山 青山アクアパッツァにて
ランチコース

 前菜盛り合わせ
 完熟トマトのムース
 トマトのファルシーのオイルパスタ
 鴨とズッキーニのリゾット
 金目鯛のカリカリ焼き 野菜のマリネソース添え
 比内鶏の赤米詰め焼き グリーンピースのソース
 グラス白ワイン

 マンゴーのスープ仕立て ココナッツ風味のパンナコッタを浮かべて
 プチフール
 エスプレッソ

さて午後1時。上野から銀座線で新橋へ出て、そこからバスで南青山7丁目に向かって時間通りにお店に到着。お店は大混雑で、テーブルはほぼ全てが埋まっていた。奥まった席に案内して貰って、一人でうきうきと昼御飯。シェフのKさんは、目下私とだんなが一番好きな料理人なのである。先日、だんなと同い年ということが判明して、ますます仲良くなった。嬉しい。

「お腹、ぺこぺこなんです。ガツンと食べたいのです。おまかせしますー。」
と伝えたらば、これでもかと料理を作ってくださった。昼だというのにプリモピアットがパスタとリゾットの2種類、セコンドピアットも魚と肉の2種類。豪華デザートつき。2時間近くかけてのんびりと御飯を食べる。

前菜の盛り合わせは牛肉と玉ねぎ、イタリアのミニアスパラを使った粒マスタード入りのソテー、甘く煮た玉ねぎと鰺をグリルしてアーモンドを散らしたもの、白身魚のサルシッチャ(酸味の利いたマリネ)の3種類。
続く前菜は、トマトのムース。オーブン焼きしたトマトのエキスをゆっくり絞り出して煮詰めてソースにしたという、ソースもムースも濃厚なトマト味の品。一見デザートのように綺麗な見かけだ。
「今、イチオシの前菜なんです。」
とジャニーズ顔のスタッフT代さんが持ってくる。ふわっと柔らかいムースはやっぱり歯ごたえはデザートのようだけれど、甘みも旨味も少々の酸味も全てがぎゅうぎゅうに詰まっている味がした。鼻に抜ける香りもトマトそのものだ。実のところ、幼少の頃から一口も食べられなかったトマト嫌いがここのところ軽減されているとはいえ、未だトマト丸ごとにかぶりつくのには抵抗がある私だ。でも、これは美味しい。本当に美味しい。トマトのどこが嫌いって、青臭くて生臭いところだけれど、それがこれには全くなかった。お、美味しいっす。バケツいっぱいいけそうです。

完熟のプチトマトを使ったさっぱりしたオイルパスタに、チーズがガツンと効いた鴨の旨味が詰まったリゾット、更にふっくら焼かれて表面はパリパリの金目鯛のソテー、と続く。魚には下に柔らかなじゃがいもなぞ敷かれていたりして、更にパプリカやケッパー、オリーブがたっぷりの野菜のソースもついてくる。比内鶏には赤米が詰められていて、こんがり焼かれたその下には半分ピューレのような柔らかさに煮えたグリーンピースがたっぷり敷かれていた。どれもこれも相変わらず美味しいのである。いつの間にか喰ってる客は私一人になっていた。

でも、今日の楽しさは食事の味もさることながら、スタッフTさんに「業界裏話」みたいなことを沢山聞けたことだった。

昨年末、この店に友人らと来たときに、「今日はこれからリストランテHで忘年会なんですよ」とスタッフが帰り際に話してくれたことがある。「千駄ヶ谷店から、おでんを持っていくんです」なんて言っていた。リストランテHと言ったら、この店に負けず劣らず有名な店である。要するに、イタリアンレストラン数店まじえての忘年会なのであったらしい。なのに、持っていくものが「おでん」とは、何だかたまらなく笑える。

「いや、あのとき"おでん持っていくんです"って言われて後で笑ってしまったんです。」
と伝えたらば
「イタリアンレストランの業界忘年会って、ここ2〜3年で始めたことなんですけどね。で、みんなで料理持ち寄るんですが、どうもうちが"おでん担当"みたいな感じで。すごいですよー。その日の厨房は仕込みの時からでっかい鍋を隅っこに据えて、"君がおでん担当ね"って営業中ずっと料理人一人そこに置いてしまうんです。最初、固い大根から煮始めて。」
って、年末のその日、営業中にずっとおでんが煮えていると思うと、結構楽しい。

別の話題は、「なぜ今"まかない"が人気があるのか」ということについて。
「最近何だか"まかない"ものが本屋に並んでいるんですよね……」
と不思議そうに訊かれたので、
「え!?まかない、興味ありますよ!めっちゃありますよ!」
と言ったらば逆に驚かれた。喰ってる本人たちは「なんでこんなものに……!?」と不思議なのであるらしい。でも、話を聞くだに、やはり美味しそうなのだ。

「西麻布店は、案外パスタとかも食べてるみたいですよ。ウチは、和食が多い……かな。千駄ヶ谷店は、どんぶりものが多いです。」
系列3店舗、それぞれ違うらしい。

この店は、料理人がローテーション組んで順番にまかないを作っているらしい。もちろん料理長のKさんも作っているということだ。Kさんはおかずも御飯も一つの皿に乗せるスタイルが好き、カレーも作る。ある人は妙に凝り性で"箸休め"を必ず作る、とか、ある人はエスニックに凝っていて、"まかない箱"なる調味料入れにナンプラーから何から常備されている、とか。
「でね、でね、雑誌とかに最近載るわけですよ、"この店のまかない"とかって。でも、雑誌用にそれなりに綺麗に作っちゃうわけじゃないですか。それを俺らは"あんなに綺麗じゃないよなー""サラダ、あんなに綺麗に盛りつけたの見たことないぞー"とか言いながら食べてるんです。」
と笑っていた。ああ、面白すぎる。

さて、そうこうしているうちにデザートだ。
スペシャルデザート、「マンゴーのスープ仕立て ココナッツ風味のパンナコッタを浮かべて」、だ。
本来のメニューには載っていない、いわゆる「裏メニュー」らしいけど、今はコース料理の最後に出しているということだ。
甘い甘いマンゴーをパッションフルーツと合わせてソースにし、その中にプルンとしたココナッツ味のパンナコッタが盛られている。夏の味のデザートだ。甘いマンゴーとパッションフルーツの独特の酸味が絡んで、そこに大好物のココナッツの味が広がる。いやーん、美味しい。やっぱり美味しい。

ココナッツのムース類というのは、私が作るとどうも2層になってしまう。上に水っぽいゼリー層ができて、クリーム層が下に沈んでしまうのだ。
そのことを帰り際、Kさんに相談すると濃度の問題とかゼラチンの分量だとか、生クリームを合わせるときの秘訣について教えてくれた。タンパク質分解酵素が入っているパイナップルを扱う時はくず粉を使ったりと、試行錯誤が裏ではたっぷりあるらしかった。料理人は、やっぱりすごい。

残り物のチャーシュー
ビール

午後5時、帰宅。もう腹一杯。ついでにアルコールも程良く回って、やる気ゼロ。
だんなが遅いのを良いことに、夕食は冷蔵庫で「僕、そろそろヤバイです」と訴えていた残りもののチャーシューを刻んで、ビールを飲んで終わらせることにした。息子には、「すまん!ほんっとに、すまん!」と謝りつつ月見うどんを出す。「おいちー」と言って食べてくれる息子に対して、後ろめたさで背中がむずむずする。すまん、手抜きな上に私は今日美味しいものをたらふく喰ってきてしまったよ。

5/18 (金)
ひつまぶしで、うな茶! (夕御飯)
砂糖がけグレープフルーツ
麦茶

昨夜、激ジョブ中のだんなが帰宅したのは午前1時だった。私も本を読みながら起きていて、風呂あがりのだんなと「今日のできごと」をごにょごにょと語らい合って結局寝たのは1時半を回っていた頃だろうか。ああ眠い眠い。睡眠時間が7時間を切った翌日はどうにもだるくてたまらない私。

どろーんとした気分で起き、そういや御飯も味噌汁も何も無かったよなと思い出す。冷凍庫にはこういう時の救世主「そばめし」が眠っている。
「そばめし、炒めましょうか」
とだんなに尋ねると、
「ん〜、カップ焼きそばと御飯、ていう感じ〜」
と彼もどろーんとした感じで湯を沸かし始めた。だんなの朝御飯は、カップ焼きそばと御飯。

昨日の昼にかなり充実したコースを食べてしまった充実感がまだちょっと腹に残っていて、私はグレープフルーツ半個で済ませることにした。
ざくっと横に両断し、白砂糖をばっばっとかけてグレープフルーツスプーンでシャクシャクすくって食べる。昨日の夕方、突発的に我が家に立ち寄ったお義母さんがメロンと一緒に置いていってくれたグレープフルーツだった。甘くて美味しい。グレープフルーツはどこか夏の味。オレンジなどと一緒に赤ワインに漬け込んでサングリア、ってのも美味しいのよねぇ〜。

ピーナッツバターサンド
とろけるココナッツプリンにやわらかクリーム(オハヨー乳業)
ウーロン茶

仕事の日。10時半、大学前に来た私は、やはり猛烈な空腹感にさいなまれているのであった。やはりグレープフルーツ半個で労働しろというのは私には無理だったようだ。部屋に教授が未だ来ていなかったら研究室で速攻喰ってやる、とローソンでちょこちょこ買い物して大学に向かった。
食パンの間にピーナッツクリームが挟まったやつと、「とろけるココナッツプリンにやわらかクリーム」なる面容な名前のデザートを1つ。500mlのウーロン茶1本。それらを抱えて空腹でよろよろしながら辿り着くと、今日に限って教授は部屋で作業中なのであった。い、いつもはあと30分は来ないのに。

かくして、「遅めの朝御飯」対応だったはずの食物はすべて昼休みに持ち越された。ちょっと悲しい。
だが、ココナッツミルクをこよなく愛する私に「とろけるココナッツプリンにやわらかクリーム」は久しぶりのヒットデザートだった。素晴らしいぞオハヨー乳業。しかしそのまどろっこしいネーミングは何とかならないものか。思わず正式名称を検索してしまったではないか。

ツルンプリンと柔らかいココナッツ風味の生地に、傾けるとだばだばとこぼれてくる柔らかいクリームがたっぷり入っている。そのココナッツ具合もそれほどくどくなくて丁度良い。いやー、しばらく買い続けてしまいそうだ。ありがとうオハヨー乳業。

うまき
ひつまぶし(もどき)
鶏肉と牛蒡の吸い物
モルツ、ほうじ茶

メロン

ここ2週間ほど激ジョブ気味だっただんなの仕事が一段落したらしい。今日は早めに帰ってきた。私も帰宅してからダッシュで御飯の用意。

昨月に行った名古屋の影響が未だ色濃く残っていたりする我が家なので、本日のメインディッシュはひつまぶし(もどき)。実際のだしの取り方とかはいまいち分からないので、喰ったあの味を思い出しつつ買ってきた鰻を使って適当にひつまぶしチックなものを作る。
炊きたて御飯に鰻のタレをしっかりまぶし、器に詰めていく。「おひつ」などは無いので、我が家で一番巨大なサラダ用ココット型に登場していただいた。御飯の半量をそれに詰め、その上に短冊切りにした鰻を乗せ、更にまぶし御飯を積み上げて、一番上に更に鰻。ぺたぺたと平らにならして、食べる前に軽くレンジで温める。

その御飯をかき混ぜかき混ぜ茶碗によそい、まずはそのまま1膳。万能葱の刻みと海苔とワサビを混ぜて、更に1膳。最後は鰹と昆布でとっただし汁をかけて、うな茶漬。当然これにも葱と海苔とワサビをたっぷりかける。

付け合わせに、更なるうなぎ料理、「うまき」を用意。鰻のざく切り入りのだし巻き卵だ。だしを入れてゆるくなった卵液はいまいち固まりにくかったけど、フライパンでせっせとパタンパタンと焼いていく。適当にやった割には、なかなか美味しいビールの肴になった。

で、「ひつまぶし」。これがもう、涙ちょちょ切れるほど美味しかった。魚屋の安売りの1尾450円の鰻でも全然問題ない。
実際名古屋で食べるまでは、「うなぎの茶漬け?そんなの、鰻重の方が美味しいに決まってんじゃん」とぼんやり思っていた自分が恥ずかしい。うなぎの茶漬けは、美味しい。鰻重もそりゃ美味しいけど、それとはまた次元の違った美味しさだ。葱と海苔の香りと、ワサビのとんがった辛さでもういくらでも食べられそうな感じ。コンロにかけたままのだし汁の鍋とテーブルを行ったり来たりしながら、うな茶を味わいつくす。

一応、たっぷり食べられるようにと2合分以上の御飯で用意したひつまぶしだったけど、かくして綺麗に無くなった。
いやぁ、美味しいなぁ。またやらなければ。安い鰻を買ってきたときはこれに限る。もうもう、最高。
すっかり「ひつまぶし」の虜になっている一同なのであった。

5/19 (土)
マカロニグラタン (夕御飯)
卵丼
麦茶

だんな、本日は同僚の結婚式に出席だそうである。礼服を着て白いネクタイ締めて、彼は9時過ぎに出ていってしまった。私と息子はだんなの出かける間際に起きてお見送り。いってらっしゃーい。

残り20個(賞味期限はあと7日)の卵を前に、今日も「卵消費対策」の朝御飯。息子と2人分で2個の卵を使ってミニ卵丼。
丼鍋にだし張って醤油と味醂と酒と砂糖を落として溶き卵を流し、蓋をしないで30秒、蓋をして20秒。半熟に固まったところをどんぶり飯にどかっと流す。ほの甘い卵丼は「生卵ぶっかけ飯」より手間かけた分美味しくて良い感じ。

食後は本日の新聞チェック。どっかデパートでも行ってマンゴプリン探索でもしてこようかという予定だったけど、なんと近所のマーケットで牛乳98円、鶏肉100g38円等々の大セールが開催中であるらしい。そういえば手持ちのお金もあんまりなかったのよね、と安売り品を大量入手しにマーケットに向かう私たちなのであった。

ツナと玉ねぎのサンドイッチ
バタージャムサンド
アイスカフェオレ

息子と2人、のんびり昼御飯。
「パン食べる?」
と息子に伺いをたてたところ
「食べゆ」
という答えが返ってきた。

「バター塗りますかジャム塗りますかハチミツつけますかツナでも挟みますか?」
と続けて聞くと
「ジャム!ツナ!」
という答えが返ってきた。……いやー、ジャムとツナを両方挟むのは止めた方が良いと思うよ。未知なる味の世界へ旅立つ息子はあまり見たくない。

それでも「ジャム!ツナ!」と連呼していたので、しょうがなく2種類のサンドを作成。1つは刻み玉ねぎとツナを混ぜたマヨネーズ味のもの、もう1つはバター塗って苺ジャムもたっぷり挟んだバタージャムサンド。バターだけにはない甘さとジャムにはないコクがバタージャムサンドにはある。実は大好物。

マカロニグラタン
サンチュのシーザーズサラダ
アサリの香草ガーリックバター
玉ねぎのスープ
モルツ

午後5時過ぎに帰ってきただんなは、披露宴主席者ならではの引き出物袋をぶら下げていた。早速バリバリと開け始める私。
「おお!プチケーキ!おお!和菓子!おお!ヨックモックの焼き菓子!紅茶まで!」
何が入っているかわからない包み紙をバリバリ破るのは楽しい。今日の披露宴は、なんと和食のコースだったらしい。おこわが出たり稲庭うどんが出たりしなのだそうだ。

披露宴と言ったらこってり系フレンチなのだろうと思っていたので、実は「チヂミ」(←韓国のお好み焼き)を作る材料を揃えていたのだ。内心は「マカロニグラタンが食べたい……」と思いつつ、フレンチ喰った後にグラタンは酷だろうと予想して。んが、喰ってきたのは和食だというので方向転換。いそいそとマカロニグラタンを作り出した。チヂミ用のアサリは急遽ガーリックバター焼きに決定。

バターと小麦粉と牛乳でせっせとベシャメルソースを作り、そこへ茹でた鶏肉と茹でたペンネとマッシュルームスライスのミニ缶を投入。ざくざく混ぜ込んでからグラタン皿にぺたぺたと入れる。我が家最大級のグラタン皿に登場願って(深さが10cm以上あるグラタン皿は果たしてグラタン皿と言って良いのかどうかわからないけど)、その中にたっぷりグラタン生地を詰めこむ。残り物だったグリュイエールチーズとバターを散らし、パン粉とパルメザンチーズもたっぷりかけてオーブンで20分。

サンチュの残りは卵の黄身入りの濃厚なチーズドレッシングを作ってシーザーズサラダもどきにし、アサリはニンニクで炒めて口を開かせてから最後に香草とバターを投入。ベランダで栽培中のローズマリーとイタリアンパセリとディルを刻んでうりゃうりゃと混ぜてみた。チヂミ用のアサリは、洋食の香りの肴になった。

お疲れのだんなの健闘を称えてビールで乾杯。 優しい味のマカロニグラタンは上々の出来だった。手作りのベシャメルソースはバターとミルクの香りがもわんと漂って何とも美味しい。正直言って、作ってる間に「ダマ」になるのもしょっちゅうだけど、そんなものは泡立て器でガッシャガッシャとかき混ぜて粉砕しちゃえば良いのである。だから、ベシャメルソース作りは案外簡単。

今日の帰り際、だんなは美味しそうなにごり酒と今半の牛すじ肉を買ってきてくれた。明日は牛すじ料理で一杯、だろうか。むふふふふー。

5/20 (日)
牛すじ葱スパ〜♪ (夕御飯)
ミスタードーナツにて
 カスタードクリーム
 ゴールデンチョコレート
 パラダイス・トロピカルティ

「ややや、今日でプレゼント交換期限が来てしまうではないか」
「せっかく10点貯めたのに、これはいけない」
と、朝御飯はミスタードーナツ。

キャンペーン中に買い物をする
→4点ばかりたまる
→景品が欲しくなってくるので、もう1回行く
→今度は12点になる
→景品を取り替えに行くついでに、更にもう1回行く
と、ミスタードーナツの思惑通りの行動を取っている私たち。しかも、今日の買い物で6点溜まって、今度は18点になるという有様だ。さすがに「あと300円買ってカードをもう1枚貰おうか……」という行動は辞めて、余りカードは店に来た子供連れの見知らぬ女性にあげてしまった。で、10点分でレジャーシートゲット。
昔は店で出してる陶器の器なんかをプレゼントしていたように思うんだけど。分厚いぽってりしたマグカップやスープボールは案外と使いやすくて好きだったのに、もう長いことそういうプレゼントは見ていない。

だんなはいつもの「エビグラタン」及び「エンゼルクリーム」の組み合わせ。彼の目にはミスタードーナツのショーケースにはその2種類しか商品が並んでいないのかもしれない。私は、いつもとちょっと趣向を変えてエンゼルクリームのカスタードクリーム版と、チョコドーナツにバターの粒々がまぶされたやつを選択。ついでに新発売のトロピカルティーも。

御飯の朝御飯もパンの朝御飯も、ついでに中華粥やうどんなどの朝御飯も美味しいけれど、ドーナツもかなり好きだ。砂糖と油のオンパレードで何ともバタくさいハイカロリーな食事だけど、いいじゃないかドーナツ。ハニーディップにくらいついている息子も手と口をべったべたにして嬉しそうに笑っていた。

稲毛 旨麺(ういめん)にて
 排骨麺パイタンスープ
 杏仁豆腐セット

稲毛の駅近く、バス通りからちょっと裏通りに入ったところに、ちょっと気になるラーメン屋があった。「旨麺」と書いて「ういめん」と読むらしい。「熟成らあめん」などと共に、醤油味・パイタン味・担々味から選べるチャーシュー麺や排骨麺もある。排骨飯セットもあり、杏仁豆腐もあるらしい。手書き風のメニューが「いまどき」の感じで、外から覗かれる内装も小洒落た感じ。
「相田みつを風の手書きメニューの店は、ハズレが多い」
という格言もある(←ありません)。「ここ、美味しいかなぁ」「いや、ハズレ率40%くらいじゃない?」とずっと言っていた店だ。

午後2時、小腹が空いたので「あのラーメン屋、行ってみる?」と出かけてみることにした。
何でも内装はアメリカ西部の時代劇風なのだそうである。店頭やら中の壁やらに、掲載されたらしい「ChibaWalker」の切り抜きがちらほらと。
「雑誌切り抜きをそこかしこに張る店は、ハズレが多い」
という定理もある(←ありません)。ちょっと不安が高まる。

が、とりあえず注文。だんなは担々麺の排骨飯セット、私は排骨麺のパイタンスープの杏仁豆腐セット。普通のラーメンは1杯600円、担々麺だと700円、排骨麺だと900円。値段はあんまり安くない。
一つだけ子供用の椅子が入口そばにあったのでそれを借りて息子を座らせたところ、店主らしいおっちゃんが出てきて
「ありゃ!ちょっと高さが足りないねぇ。ウチの子供に使ってたの、今日持ってきてみたんだけどねぇ。すまないねぇ〜」
とにこにことおっしゃっる。あり?良い感じだ。相田みつを風なのに。雑誌切り抜きペタペタなのに。

やってきた排骨麺は綺麗に白い白濁スープ。ほうれん草と刻み葱、それに100円追加でトッピングしてもらった味付け卵をついている。そして、豚肉の唐揚げ(排骨)がどかんとたっぷり。
博多で食べてきた、あの豚骨の匂いが壁にまで染みついたような濃厚なケダモノ臭さはないものの、それなりに濃厚なスープ。麺はちょっと太めのちぢれ麺。うむ、けっこうイケる。こってり系が好みな私にはちょっと物足りない感じもしないではないけれど、半熟ゆで卵を半割にした味付け卵の具合も丁度良い。
おお〜、案外美味しいぞ。きっとまたこれは来てしまうぞ。

で、デザートの杏仁豆腐もこれまた良い感じだったのだ。水分が多くてゼラチンが少ない杏仁豆腐はぎりぎりの固まり具合を保っているような感じ。舌に乗せるとツルーンと滑って溶けていく感じは、熱いラーメンを食べた後には嬉しい限りの口当たりだった。杏仁の風味もきちんとあるし、しかもココナッツミルクと牛乳の味まで漂ってくる。メロンとライチと缶詰のミカン付きで、それが目鼻のように飾られていた。

店を出たのは3時前、続々とお客さんがやってきて、席はいつも満席だった。人気あるのね、ここ。相田みつをなのに(←しつこい)。

だんな特製牛すじ葱スパ

昨日、だんなは牛すじ肉を700g買ってきた。デパートに入っていた浅草今半の肉店で買ってきたそうな。肉もたっぷりついたすじ肉は、軟骨までついていてとっても美味しそう。
「牛すじ葱スパをするぞぅ〜」
とだんなは昼過ぎからせっせと仕込みをしていたのであった。

一度下茹でした塊の牛すじ肉は、ざっと洗って一口大に切ってから山のような焼酎と水で炊いていく。調味料も加えてことことと煮込むこと4時間くらい、筋肉のコリコリしたところが全てゼラチン状になれば、仕込みの完成だ。プルプルつやつやしていて、すごい美味しそうに煮えあがった。

にんにくをオリーブ油で炒めて煮えた牛すじを合わせ軽く煮詰める。万能葱を混ぜ込んで茹でたパスタを炒め合わせる。皿に盛りつけて、更に刻み万能葱をふって、七味唐辛子をぶわっとかけたらできあがり。(詳しい作り方はこのへんに)

今日の牛すじは絶品の煮上がりだった。素材も良いし、やや薄めの甘辛い味付けも良い具合。ゼラチン質と化したプルプルの肉の口当たりもバッチリだ。太めのスパゲッティが甘辛い肉と絡まって、ついでにゼラチンも絡まってそこかしこがテラテラと光っている。口の周りも口の中も、ギトギトしまくってしまう濃厚きわまりないパスタだけど、私たちはこれが大好物なのであった。

「む、金、取れるかなこのパスタ。」
「……取れるんじゃない?」
「でも、よく考えたらそれだけの量仕込みするのがイヤだわ、俺……。」
「そうね、寸胴鍋にたっぷりの牛すじ見続けるのもちょっとイヤだわ、私……。」
こういう料理はたまーに作るから美味しいし楽しいのよね。もっきゅもっきゅと食べながら、そんなことを話していたのだった。