食欲魔人日記 01年11月 第5週
11/26 (月)
夕飯は、しゃぶしゃぶ〜♪ (夕御飯)
豚味噌鍋の翌日なので、味噌おじや
アイスウーロン茶

豚味噌鍋の翌日は、余程のことがない限り「味噌おじや」にすると決まっている。冷凍保存してある御飯を茶碗2杯分ほど、温めた昨夜の残りのスープに放り込んでぐでんぐでんになるまで煮詰めるのだ。水っぽさがなくなり、御飯粒がパンパンに汁気を含んだらできあがり。刻み万能葱と七味唐辛子をた〜っぷりふって、ハフハフ言いながら食べる。

今日はちょっと油断してしまったらしく、鍋の底を焦がしてしまった。味噌の焦げる匂いが台所中にもえ〜んと広がって、その匂いがまた心地よかったりして。

バナナケーキ with ホイップクリーム
ミルクティー

2切れ分ほど残っている手製のバナナケーキ。「喰っちまおう、喰っちまおう」とニヤニヤしながら一人バナナケーキ昼飯。誰も見てないので、ホイップクリーム特盛。ケーキが見えないほどのホイップクリームをうず高く盛りつけて、お供にはミルクティー。フォートナム&メイソンのロイヤルブレンドを思い切り濃いめに入れて、温めた牛乳をだばだ〜とマグカップ半量分ほどの量入れる。砂糖もたっぷり。余った生クリームを紅茶に浮かべちゃったりなんかして。うへへへ。

確か10代の頃は生クリームが大嫌いだった。子供の頃、上野駅構内の喫茶店で食べたパフェが元凶だ。パフェグラスの半分が不味い不味いクリームで満たされているようなやつで、いかにもな植物性油脂の、味もそっけもないサラダ油みたいな味の生クリームは子供心にも地獄的に不味かった。あれから、生クリームはまずいものだと思い続けて生きてきてしまったのだ。こんなに美味しいのに、ねぇ。

しゃぶしゃぶ
 (すきやき用和牛・豚ももしゃぶしゃぶ用・春菊・せり・えのきだけ・焼き豆腐)
羽釜御飯
モルツ、アイスウーロン茶

あれやこれやで、またもや牛肉値が大暴落している模様だ。週末のスーパーでは、和牛のすき焼き用牛肉が半額セールになっていた。500gほど買って1000円ほどの見事な霜降り。
「……すき焼きっすかね?」
「いやぁ、しゃぶしゃぶがいいなぁ」
「……すき焼き肉で?」
「そこはまぁ、気にせずに」
と、しゃぶしゃぶにするにはちょっと分厚いんじゃないかい?という肉でしゃぶしゃぶ。ついでに今日は、こちらはしゃぶしゃぶ用の豚肉を買ってきた。野菜は春菊、せり、えのきとちょっと少なめ。

ポン酢は市販の「味ぽん」で、胡麻ダレだけは自作してみた。へんこ山田(←どう調味しようともこれを使えばプロの味!……かもしれない、という優秀な胡麻油屋さん)の炒り胡麻をゴーリゴーリとすり鉢ですり、そこへ練り胡麻も投入し、醤油と砂糖と味醂、少々の酢をそこに加える。淡めの酸味、じんわりと甘味、それだけじゃちょっと濃いのでちょいと水で薄める。本当はだし汁を加えるんだよな、きっと、と呟きつつ顆粒だしをちょっとだけふる。すっごい適当な割にはそれっぽい胡麻ダレになった。

「やっぱり豚しゃぶには胡麻ダレでぇ〜」
「いやでも案外牛肉と胡麻の組合せもぉ〜」
「春菊に胡麻!んもぅサイコー!」
などと言いつつ帰宅しただんなと囲むしゃぶしゃぶ鍋。本当は箸でお上品に具をつまみ、湯の中で"しゃぶしゃぶ"とさせるのがお作法のはずだ。だが、土鍋の中には「火が通るまでホラ、時間かかるし」と豆腐は沈んでる春菊は浮遊している。しゃぶしゃぶしているのは、肉だけだ。その肉だって"しゃぶしゃぶ"というよりは"じゃぶじゃぶ"という感じだし。

すき焼きとか豚味噌鍋とかに比べると、さっぱりさっぱりしすぎている感もあるしゃぶしゃぶだけど、肉の脂の旨味だとかがじんわりと味わえて、これまたやっぱり美味しい鍋料理なのだった。ビールも進むし御飯も進む。ここ1ヶ月ほどの羽釜フィーバーのおかげで我が家の15kgあったはずの米はもうじき底をつきそうで、そんな折、いつもお米を買っている花咲農園からメールが届いた。

なんでも先日催された「第三回 おいしい米づくり日本一大会」(←公式案内ページらしいけど、ネスケだと表示が崩れまくりになりまする……)において、花咲農園のお米が「優秀賞」になったのだそうだ。84の生産者のうち、「最優秀賞」に続く第二位の成績なのだとか。審査員が山本益博に服部幸應、小林カツ代、小山裕久だというのが何だかすごい。「うまい!うますぎ!」と密かに騒いでいたけれど、こういう賞がくっついてきたりすると騒ぐ側もちょっと力が入るというか。ふっくらモチモチのあきたこまち、うちはもうこれ以外は買えそうにないのでございます……。

11/27 (火)
牡蠣御飯 (夕御飯)
カレーパン
ツイストドーナツ
カフェオレ

昨日の夕方、マーケットに行くと木村屋のツイストドーナツが特売セールになっていた。
「……あさごはん♪」
と3本セットのそれを買い、それだけじゃ足らないよなと会計を済ませた直後にカレーパン屋と目があった。商品はカレーパンだけという気合いの入ったその店のカレーパンは、実際なかなかに美味しい。で、買った後に気がつくのだ、「なんか全体的に油っぽーい」ということに。でも、気にしない。

コーヒーを入れている間にカレーパンをオーブンで温めて、ドーナツと並べる朝ご飯。カレーパンはほんのり甘くピリッと辛く、じゃがいもやらにんじんやらの細かな具がペースト状になる寸前の固形物となって詰まっている。もっさりした感じの、いかにもなカレーパンだ。ざくっとした金色の衣が良い感じ。

文化祭開けの大学へと、今日は1週間ぶりの出勤だ。
寒いので冬用のコートにくるまって行く。なんだか茶色の熊になった気分。

「い和多」のお弁当
 ハニー野菜コロッケ 千切りキャベツ
 オムレツ舞茸ソース
 チキンオリーブオイルソテー
 キャロットグラッセ
 ポテトサラダ
 キスのマリネ
 漬け物
 御飯

いっつも「たまには別のもの食べに行こう」と思いつつ、このお弁当屋の前を通って「今日のお弁当」の看板を見てしまうとふらふらとお財布を鞄から出してしまうのだ。今日は「ハニー野菜コロッケ」がいけなかった。「キスのマリネ」も相当危険だった。「おむすび食べようよ、専門店のあの店の」といつも自分で自分に言い聞かせながら最近出勤しているのに、どうも仕事場に着くときには大きな弁当を抱えてしまっているのだ。とほほ。

先週休みだった分いろいろ仕事はあるはずで、ちょっとばかり気合い入れて研究室にたどり着いたところ、先生が「ほら、ほら」と本を一冊取り出した。
『ZAGAT SURVEY』2002年東京版。(←"ミシュラン"みたいなレストランガイドですじゃ)。
「これ、買ったんですよ。今日お暇な時にでも、どうぞご覧なってください」
って、私の今日の仕事は「ZAGAT SURVEY読破」ということでよろしいんでしょうか、先生(しかも研究室にそんな本が何冊もあるし)。

さて、そんなこんなで今日の昼飯のメインは南瓜とさつまいもの味がするコロッケであるらしい。横にはシンプルな塩味の鶏肉の焼いたの。蟹肉入りのポテトサラダに、甘酢に絡んだきのこソースがかかるオムレツ。アルミの容器には玉葱やにんじんがたっぷり絡まったフライのキスが2匹入っていた。560円にしては天晴れなご馳走だ。

何しろ、見えないところにも手抜きがないのである。適当にレタスのくちゃくちゃの葉1枚でごまかしているところが多いであろうコロッケの脇には山盛りの刻みキャベツがしっかり詰められている。鶏肉の陰になっているところは入ってようが入ってなかろうが、買う側はわかりゃしないのに、それでもしっかりとキャベツが山盛りになっている。漬け物もありがちな決まり切った柴漬けじゃなくて、キュウリの浅漬けであったり大根であったりするのがまた嬉しい。

でも、次こそは外に食べに行くのだ……たぶん(←そんな弱気な)。

牡蠣御飯
鶏肉と舞茸の吸い物
冷茶

今日のだんなは飲み会であるらしい。冷蔵庫には「牡蠣御飯にするんだ〜♪」と買ってきた牡蠣のパックが入っており、これは今日あたり喰っちまわなければいけなさそうだ。で、息子と二人で牡蠣御飯。もちろん羽釜で炊く。

2.5合分のお米、水に醤油と酒を垂らして牡蠣を乗せて針生姜を散らして、炊く。しょっちゅう炊いているから「焦げ」の感じもつかめてきた。茶色く光る焦げも美しき牡蠣御飯。牡蠣独特の苦さもあるけど、旬の味という感じがする。

私の母は牡蠣が大嫌いで(しかもオイスターソースなんかの牡蠣ものを食べただけでアレルギーのように体調が悪くなる)、独身時代に牡蠣を家で食べることは皆無だった。母親が嫌いなものは子供も好きになるタイミングがつかめなかったりして、私も長いこと「自分は牡蠣が嫌いなんだ」と思いこんでいた。それが、あなた、美味しいじゃないですか、牡蠣。生牡蠣サイコー、牡蠣フライもサイコー、牡蠣の土手鍋なんてのも捨てがたい。あの磯臭さとほんのちょっとの苦さと、甘さというか旨さというかが微妙に漂う味は、もう冬には欠かせないものになった。

今日はとにかく「牡蠣御飯を腹一杯食べる」のが夕飯のテーマだったので、他に用意したものは吸い物だけ。ごぼうと舞茸を入れた吸い物にこれでもかと鶏肉を放り込んで具沢山にし、煮えたところにセリをどばっと散らして食卓に。御飯と吸い物だけだけど、色々と栄養のありそうな夕飯になった。
ぷりぷりの牡蠣が入る御飯は、米粒一つ一つがほんわか磯の匂いがついていた。生姜の香りも適当にただよって良い感じ。なんでも柚子の皮をぱらっと散らしても美味しいらしく、フリーズドライの柚子の皮(←便利そうだなぁと思って買ったはいいけど、使うのはじめてだったりして)をちょっと乗せてみた。おお〜、これもまた美味しかったりなんかして。

11/28 (水)
ひっさしぶりにケンタのチキン (夕御飯)
牡蠣御飯
鶏肉と舞茸の吸い物

だんな、ここ数週間はほんっとに忙しかったらしい。先週末くらいから、ちょっと燃え尽きかけていた。
「僕ね、もうね、明日と明後日、休むの」
と昨日あたり宣言し、そういうわけで今日と明日はだんな、お休み。幸いなことに明日は息子の健康診断だったりして、「私が仕事休むかずらすかしなきゃな〜」と悩んでいたところだったので、丁度良いと言えば丁度良い。

そういうわけでいつもより1時間寝坊して、息子にバナナなぞ喰わせて保育園に連れて行っている間、だんなは洗濯物を干したりしてくれていた。落ち着いたところで二人で朝御飯。昨夜炊いた牡蠣御飯を温め直し、吸い物もアツアツに。食卓に出す間際にセリを吸い物に山盛り散らし、いただきます。
炊きたての魅力にはちょっと負けるけど、一夜明けの牡蠣御飯もふくふくの磯の香りでやっぱり美味しかったのだった。

ところで、昨日あたりからウィルス付きメールがえらい勢いでやってくる。メーラーがOutlookの場合、プレビュー画面を見ただけでも感染してしまうものらしい。私のお仕事先にも恐ろしい数が向かっている感じだ。
「気をつけてくださいねー」
と警告のメールを一応送信しておいた途端に、当の某オーナー氏のアドレスからウィルスメールが飛んできた。あ、遅かったみたい……。

復旧方法を調べたところレジストリをいじくらなきゃいけないらしく、結局だんなが派遣SEとして明後日オーナー氏のところに行くことになった。
「ウィルスばらまいて他の人に迷惑かけちゃいますから、オーナーは直るまでネットに繋がないでくださいね!ね!」
と念を押し、いつもはメールのやりとりで終わる仕事がファックスのやりとりに。ウィルスのばか……。

稲毛 太閤園にて
 茄子野菜炒め定食
 焼き餃子

確か具合が悪くて休んでいるはずのだんなが、
「お昼はさ、太閤園に行こう、太閤園♪」
とわくわくしているのである。全然具合悪くなさそうだ。まぁ、いい。お気に入りのカレー屋2店は水曜定休、残りのお気に入りの店といえば中華定食やの「太閤園」なのだった。地元民に愛されている若干怪しい小さな店だ。店頭にメニューもショーケースもない。いや、どころか店内にすらメニューがない。壁にぺろぺろと貼ってある紙札のメニューはほとんど貼り替えられてなく、たま〜に「新メニュー」なる真新しい札が1枚増える。鍋をふるうのは白髪のオヤジ一人。席は少なく、回転も悪い。料理が出てくるまで30分待つこともある。それでもみんな、この店を愛しているのだった。

だんな曰く、「炒飯と茄子野菜と、回鍋肉あたりが一番美味しいな、うん」なのだそうである。素直に私はそればっか喰っている。ていうか、これ喰ったら他を喰う余裕がなくなった。そのくらい、美味しい。
"茄子野菜"(正式名称:茄子野菜炒め)は、「野菜」「肉野菜」「茄子野菜」と活用される炒めメニューの最高峰だ。最初はキャベツとにんじんなどの野菜だけ、それに肉が加わり、最後に茄子も加わる。"茄子野菜"の文字の中には「肉」の一文字は入ってないけれど、きっちり肉も入っている豪華炒め物なのだった。これの、味がさっぱりわからない。醤油の味はする。あとは味噌なのかオイスターソースなのかいまひとつわからない。甘辛いコッテリとしたタレが油膜を作ってテラテラ光る野菜と肉に絡まって出てくる。皿の底に油が輪を描いて広がっているほど油は大量に入っているのに、油っこさは不思議と感じない。御飯が美味しく進んでしまう、イカした炒め物なのだった。中華料理とは、なんか違うような気がしないでもないけれど。

だんなの大盛り炒飯を奪いつつ皿を交換しつつの昼御飯。ここの大盛り炒飯は、米1合以上入ってんじゃないかというくらい大量だ。自家製らしきチャーシューと卵と葱、何故かなるとの刻みもざくざく入っている。
だんな、もしや太閤園食べたさに仕事を休んだとか?……まさか、ねぇ。

ケンタッキーの
 チキン
 ツイスター
 フライドポテト
 ビスケット
 コーンサラダ
よなよなエール、ジンジャーエール

ここ数日、無性にケンタッキーのチキンが食べたくて食べたくて食べたかったのだ。
油ギットギトの食べにくい鶏肉をモリモリ食べたかった。ついでに発売されてから食べたことのなかった「ツイスター」への欲望も極まっていた。
我が家には、最寄りのケンタッキーが宅配サービスをしてくれる。宅配用のメニューしか選べないけど、ピザのようにケンタがやってきてくれるのはとても便利。初めて注文してみた。

「わたし、わたしツイスターね〜」
「あとねあとね、チキンはチキンで食べたいの」
「それとね、それとね、ビスケットも捨てがたい……」
騒いでいたら
「いーから全部取りなよ、おゆきさん」
と呆れ声が返ってきた。おぅ、取るぞ、ぜんぶ、取るぞ。

かくして、大きなトレイに入ったチキン4個はじめ、ビスケットやらポテトやらツイスターやらサンドやらがやってきた。テーブル中ジャンク味溢れる夕飯だ。そうそう、この得体のしれないスパイス味のチキンが食べたかったのだ。細かい骨をしゃぶりつくしてちょっとパサつく肉を囓ったりして。
「ぽてとーぽてとー」「コーン、コーン」「おにくー」「パン〜(←ビスケットのこと)」
と息子も御満悦。それほど喰わせたつもりはないのに(いや、そんなことないか、けっこう喰ってきているか)、息子もすっかり今時の子供よろしくジャンクフードが大好きになってしまった。

指先をテカテカ光らせながら食べるケンタの夕食。バリにも香港にもあったケンタ、どこで食べても同じ味なのかしらん(いやでも御飯とのセットなんてのもあってちょっと不思議なメニューだったけど)。

11/29 (木)
だんな特製アーリオオーリオペペロンチーノ・リベンジ (夕御飯)
コーンハムロール
クリームチーズデニッシュ
カップスープ(コーンクリーム)
牛乳

昨日の夕方、だんながほてほてとパン屋に行って、朝飯用のパンを買ってきてくれたのである。何を買ってきたのかは、私は知らない。
「んー、んーんんー♪」
と今朝になってシャリシャリとビニール袋からパンを取り出そうとしたところ、だんなが
「さて、レベル2の問題です。どれが誰のパンでしょう?」
とのたまった。

中身は、チョコレートがけのドーナツ(←当然チョコレートラヴァーの息子用)、ツイストドーナツ(←これはわからん、みんな好き)、ソーセージロール(←文句なしにだんなの好み)、クリームチーズデニッシュ(←間違いなく私の好物)、コーンハムロール(←コーンが乗っている時点で私のものに決定)、という感じ。
悩みどころの品は1つしかなく、他のものが全て「これはこの人のに決まってるじゃん」というものばかりだから、消去法でツイストドーナツは、だんなのものだ。簡単すぎる。

「……簡単すぎるじゃないか」
とパンを配り終わったら、
「だから"レベル2だ"って言っただろう。ちなみにレベル1でないのは、ツイストドーナツの存在があるからだな、ふふん」
と返された。私の好物、ちゃんと買ってきてくれてありがとう、だんな。

だんな、今日もお仕事休みである。本日息子は三歳児健康診断のため保健所へつれて行かなければならず、だんなが代わりに行ってくれるそうだ。
子供だらけ母親だらけ、しかもなんか得意気な保健所おばちゃんがいたりするあの空間は、実は私は極めて苦手だったりして、「すまんだんな、ありがとうだんな」とぺこぺこしながらの本日の出勤。

三田 華都飯店(シャトーハンテン)にて
 担々麺
 ライチのシャーベット

ここのところ、毎回お弁当を買っていくばかりだったので「今日こそ外食」と何も買わずに出勤した。……ら、最高のタイミングで良き事はやってくるもので。
「今日の午後は珍しく会議も何もないんですよ……どこかに食べに行きます?それとも何か買ってきてしまいました?」
教授のお誘いだ。断るはずがない。食い道楽の教授が連れて行ってくれるならば、不味い店であるわけがないからだ。

大学を出て数分歩いたところにある「華都飯店」。これで"シャトーハンテン"と読むそうだ。出る前に研究室の『ZAGAT SURVEY』を開いたところ、アボガドとフカヒレのスープが名物らしく、「料理の鉄人」で鉄人を破った店であるらしかった。しかも、夜に行くとすげぇ高い店らしい。さらに道すがら、教授がぽつりぽつりと色々教えてくれた。

「でもね、料理の鉄人は、なんだかその、ズルかったんですね。食材がワタリガニで……相手は道場さん、だったかしら。圧倒的にこっちのお店が優位だったんですねぇ……だってワタリガニ料理の得意な人なんですから……」
「あとね、高い高いって書かれてるんですけど、そんなことないんですよ。なんと言いますか、このあたりは大使館が多いでしょ、だからちょっと周りと評価がズレてくるって言いますか……」
だ、そうなのだ。
ともあれ、ビルの地階にあるその店に入る。正午間近にして客席の6割が埋まっており、12時を過ぎた途端に行列になった。人気のある店なのだった。

メニューを開き、目に留まった「担担麺」の文字に惹かれてそれを注文。教授は涼麺。
「あ、ここのですね、デザートがまた……"ライチシャーベット"というんですが、それもなかなか美味しいですよ。召し上がります?」
「はい!はい、もちろんいただきます〜」(←遠慮のカケラもない人)
デザートまでつくことになった。

すり胡麻のザラッとした舌触りのものが上に漂うスープは、スープそのものは水っぽささえ感じる淡泊なもの。表層は胡麻が浮かび、赤いラー油が輪を描いて広がっている。縮れの少ない黄色い麺がとぷんと入っていて、飾りは厚切りチャーシューと青梗菜、そしてザーサイ。

甘さはあまりなく、カーッと辛い中に胡麻のねっとりさがほわんと漂ってくるスープは後味が軽い。私は「胡麻!ひったすら胡麻!ラー油!ラー油もたっぷり!」みたいなとにかくコッテリしたものが好きなのだけどこういうちょっと軽めの担担麺もそれはそれで美味しい。バランスが良いなと思う。
周囲を見渡すと、どうも担担麺を注文する人が妙に多く、「……もしかして、これ名物?」とそのときは思っていたのだった。

で、最後に教授おすすめライチのシャーベット。
さくさくっとした、粒子の細かい純白のシャーベットは舌に乗せるなりホロンと溶けた。控えめな甘さの中にライチ特有の花のような香りがする。おおー、美味しいっす。これ、美味しいっす教授!一気に食べた。

このお店の料理長、馬遅伯昌さんという人は、清朝最後の皇帝の末裔なんだとか。同じ親族が経営する料理店が、他にも「留園」「随園別館」などとして存在しているらしい。食事を終えた後にそんな事を教授から聞き、ちょっとびっくりしたんだった。皇帝の末裔ですか……。

で、「なぜ皆、担担麺なのか」の謎も解けた。
この店、以前「どっちの料理ショー」で「担担麺のおいしい応援団」として登場しており、しかも「チューボーですよ!」の「担担麺の町の巨匠」としてテレビ に出ていたらしいのだ。担担麺の有名店であったのだった。
んー、でも私は龍天門の方が好き、かな。私個人の好みではありますが。

このお店、定食もすんごく美味しそうだったから今後1人で行ってみようと思う。
教授、ごっつぁんでした。また連れていってください、今度は「コートドール」(←同じく近くにあるらしい、フランス料理の超高級店)あたりがいいなぁ……(←思い上がってます)。

だんな特製アーリオオーリオペペロンチーノ・リベンジ
牛肉とほうれん草の胡麻ダレサラダ
よなよなエール、アイスウーロン茶

ただいまー、と帰宅すると夫と息子が出迎えてくれるというのはとてもシアワセなことだ。
「まーまーまー、おゆきさんは座ってなさい」と食事の支度も片付けも、風呂の準備もしてくれた。大名気分。

なんでも夕方、息子を保育園に迎えに行って「今日は何が食べたいの?」と聞いたら「おそば!」と言われたのだとか。「じゃ、じゃあ、うどんと蕎麦とラーメンと、スパゲッティ、どれがいいの?」と更に聞いたらば「すぱげってぃ!」と即答されたのだとか。本当は買い置きしてある牛肉を牛丼にでも……とだんなは思っていたらしいけど、息子の熱烈なリクエストに応えてスパゲッティとあいなった。しょうがないので牛肉は生のほうれん草と一緒にサラダに。

最近だんな、「旨いアーリオオーリオペペロンチーノを作るには」に燃えているらしい。数週間前に作ったそれは、美味しかったけどちょっとばかり油っこかった。今日もたっぷりの刻みにんにくをオリーブ油でじくじくと炒めている。今回は赤唐辛子ちょっと多めのしっかりピリ辛味に、油っこさも少なくなって、かなり理想のそれに近づいたっぽい。

刻みほうれん草に、サッとゆがいた牛肉薄切りを乗せ、しゃぶしゃぶの時に余った自家製胡麻だれをたっぷりかけたサラダをつまみつつ、だんなのリベンジパスタを食べる。まだまだ美味しくなる余地がありそうだけど、黄金色のにんにくも塩気も適度なピリ辛加減も良い感じだった。もぐもぐ。

11/30 (金)
しぐれ丼 (夕御飯)
ミスタードーナツの
 アップルパイ
 エンゼルクリーム
カフェオレ

出勤帰りにミスタードーナツに寄ってきた昨日。夜も7時半を過ぎるとエンゼルクリームやエンゼルフレンチなんかは軒並み売り切れてしまうけれど、午後6時にはまだまだまだまだ好物の品が残っているのであった。エンゼルクリームやアップルパイ、フランクロールなどを首尾良く買い込み、帰宅した。

ドーナツの朝御飯は何となくシアワセ。息子もチョコパン喰ってる時よりチョコドーナツ喰ってる時の方が心持ちシアワセそうだ。今日も
「どーなつ、たべるよー?」
と宣言するやいなや、私とだんなが1個食べ終わった直後くらいに彼も1個のエンゼルフレンチを食べ終えていた。いつもは一番最後までのんびり食事しているくせに、チョコドーナツだと早い。非常に何というか……わかりやすい奴。

コンビニおむすび
 イクラ
 塩ダレ豚カルビ
アイスウーロン茶

今日は一日自宅で仕事。「12月までに上げます」と言った原稿を11/30に書いているのはどういうことだろう。とりあえず必死にやる。

昼御飯は、こうある事を予想してコンビニおむすびを買ってきてある。好物のイクラおむすび、そして怪しい光を放っていた「塩ダレ豚カルビ」おむすび。「韓国海苔使用」なんて書いてあってますます怪しい豚カルビむすびだ。冷蔵庫からアイスウーロン茶をコップに注ぎ、居間にぺたりと座り込んで10分ほどの昼御飯。

塩気強めのイクラが詰まったイクラおむすびはともかく、やはり「塩ダレ豚カルビ」はちょっと奇妙だった。確かに塩ダレで豚カルビだ。そして表面に塩をふいたような味の強い海苔は韓国海苔だ。御飯には胡麻がまぶされており、全体的には悪くないけど微妙に食べにくいし微妙に不気味だ。手で塩がショワショワしてくるし。

「ぐるナイ」見ながら
 しぐれ丼
 アイスウーロン茶

今日は、だんな、遅いらしい。
「じゃー、おかーさんが牛丼作ってあげよー」
と米を炊き、そろそろ炊きあがるという頃、つけっぱなしの日本テレビで「ぐるナイ」が始まった。妙に聞き慣れた声がする。「マネージャーの○○さんでぇす!」というアナウンサーに紹介されたマネージャー氏の名前にも猛烈に聞き覚えがある。「超高級イタリア料理店」なんて紹介されていた店はマンジャペッシェだ。

グループ総料理長の位置づけにある日高良実さんはテレビでも見慣れているけれど、マネージャーYさんや料理長のOさん、見知ったスタッフの方々がテレビ画面に映ると、妙に感慨深い。
「どっしぇえぇぇぇぇぇぇぇ〜」
とテレビの前に正座してしまったのであった。あ、ビデオビデオ、録画録画。
しかし、「超高級料理店」なんて言ってるけど、あそこはトラットリアだ(←リストランテよりもカジュアルな店のランク)。御一人様23000円を目指してゴチバトルなんてやってるけど、本当は2万円あれば2人で美味しく食べられる店だ。なんだかなぁ。

で、バタバタしてたら羽釜の飯が焦げてしまった。焦げてしまった飯に思いを馳せつつ目だけはテレビに向けつつ「しぐれ丼」を作り、テレビを見ながら夕御飯。あ、キャビアのパスタなんて喰ってる。羨ましい、猛烈に。
これまで「ゴチになります!」は結構好きで見ていたのだ。でも、見知った店が出てくると、いろんな事が分かったり疑問が出てきたりもするもので。

いつも、同じようなセットのスタジオじみたところで収録されているけど、あれは全部そのお店なのだということがまず判明。本来はテーブルと椅子が並んでいる空間が「どこに片付けたんだ」というくらいに広いフロアになっており、その背景は本来は大きなガラス窓になっているところ、特設壁が作られていた。壁の前には生花の飾りがぼん、ぼん、と。画面の左側に、これだけはいつも通りの魚用冷蔵ケースが映っていて、「あ、これお店なんだ」と理解できた。収録中に流れてくる笑い声は、収録スタッフの声というよりお店の人たちの声のようだ。「あ、この笑い声○○さん?」と思えたりする声が聞こえたりして。

で、出てくる料理はその店のスタンダードなメニューじゃない、ということもしっかり判明。
多分リクエストすれば同じようなものは作ってくれるのだろうけど、「それ、メニューで見たことないよ?」というような品もざくざく出てくる。値段だって大違いだ。「美味しい野菜のバーニャカウダ」は本来は一人分で1400円、大きなサイズでも1900円。でも画面には「2,400円」の文字が光っている。ということは、あれはロケ価格というやつなのだったのね。今回も、これまでも。

そしてそして、解消されなかった疑問は「注文したもの、全部食べるんでしょうね?」ということだった。
マグロの大トロの料理なんて、普通じゃ出してもらえない。他にも、「いいな、いいな、それいいな」と思う料理がけっこうあって、しかし決まった金額分を目指して食べなきゃいけない彼らの注文は、いつもそうだけどめちゃめちゃだ。パスタにリゾット、肉喰って魚喰って、次に何故か野菜料理喰ってパスタ2品にドルチェ、とか。画面に映ってない注文は、注文だけして作ってはいないのかもしれない。そう思っても、画面に出てくるだけでも相当な量だ。大食らいの私とだんなでも、その注文を食べられるかどうかわからない。

「収録後にスタッフで食べるのかな?包んでもらったりして持って帰ったり?」
と思い、そう思わなきゃ報われない、とも思う。良い素材集めて、収録用に一生懸命作って、「じゃ、撮影終わったから片付けといて」なんて残された日には、私が作った人だったら「二度と来るな!」と思ってしまう。……でも、料理雑誌の撮影なんかは鍋の具を底上げするために(そのままじゃ汁に具が沈んじゃうから)粘土で鍋底に上げ底のための台を作るとか、汁気を綺麗に撮影するために片栗粉を溶かしてとろみをつけちゃう、なんてこともあるのだと聞いている。当然、その料理は食べられない。雑誌やテレビの取材収録に応対するということは、あるいはそういうことなのかもしれない。

「岡村さんの二連敗〜!」
なんて言葉をテレビから聞きながら、何だか最後は悶々とした気分になってしまったのだった。
2万円分の料理をそんなやり方で食べるより、私は3千円分の料理でも一緒に食べて楽しい人と美味しく食べたいと思う。あれってやっぱり食材が可哀想。金額のバランスだけで選ばれたバーニャカウダの存在ってどうよ。あんなに美味しいのにさ、確かに「うんめぇぇ〜」なんて言われてたけどさ。でも、あれを見て「あ、バーニャカウダって美味しそう、食べに行きたい」とは今ひとつ思えない。広告としての効果はほとんど無いんじゃないかとすら思える。

いや、でも、緊張しまくっていたマネージャーさんの顔が楽しく眺められたから、まぁいいかなと。
焦げた御飯そっちのけで「今!ぐるナイ見てるんですけど!!!!」なんてメールをオーナーやらお店やらに投げてしまう私だった。あー、なんかもー、びっくりしちゃったわぁ。