食欲魔人日記 02年04月07日特別版
− 逍遙自在区 春季茶宴 −
於 : 横浜某所Andyさん宅

麻醤拌海[折虫]
クラゲのねり胡麻マヨネーズ和え

一般的な醤油ベースの味のものに加え、練り胡麻とマヨネーズのタレで和えられたクラゲの2色盛り。シャキッと茹でたもやしがすごく似合う。胡麻とマヨネーズの主張は強すぎず弱すぎず、僅かに漂う酸味が全体をひきしめて、良い感じ。いきなり旨い。すごく旨い。
綺麗に薄切りにしたキュウリはともかく、その奥には花のようにカットされたキュウリが。こういうものが"お家のもてなし"で出てくると、うっとりしちゃう。良い。

鹵味香[又鳥]珍
砂肝の紹興風味五香スパイス煮

言われなかったら「砂肝」とは気付かないような、独特の臭みは全くないコリコリとした食感の前菜。八角やシナモンなどのスパイスが口から鼻にふわふわと抜けていく。てんこもりの白髪葱と、香菜が添えられて、酒でもあった日にはエンドレスで喰えちゃいそう。
見ためで感じるよりも塩気はなくて、香りは強いけど薄味。
聞いた話によると、この煮汁は冷蔵庫で1年くらい保存できて、どんどん使い回していくとか。使い回すたびに美味しくなる、そうな。

黒猪小龍包
黒豚入りショーロンポー

美味絶品だった小龍包。
「やっぱり点心は難しいよ」
なんておっしゃってたけど、これが、今まで食べた小龍包の中で3本の指に入っちゃうくらい美味しかった。皮はモチモチ、中はムチムチ、皮を囓ると中からスープがじゅわ〜と大量に溢れてくる。肉の臭みはまったくなく、これまた薄味ではあるけれど調味料はいらない、という味になっていた。
ちなみに、点心類の中でも「蝦餃」系の浮き粉の皮が一番難しいのだとか。じゃあ、小龍包は私にも作れるかしら……うーむむむ。

鮮帯[火畏]腐竹
帆立貝とゆばの金華ハムシャンタン煮

軽い味付けの、なごみの一皿。
千切りにされた金華ハム(←中国のハム。すごく固くて旨味がこれでもかと詰まっている。上湯(シャンタン)の味のかなめ)がこれでもかと入り、その旨味たっぷりのスープがぷりぷりの帆立と、分厚い湯葉に絡んでいる。シャキシャキした青梗菜つき。レンゲでゾルゾルと、食べちゃう。

熱灼生菜
レタスの湯引き香港風タレかけ

レタスを湯引きし、香菜と合わせて盛り合わせ、タレをかけただけ……ということだ。でも、これがどうして「是非真似させてください」というほどイケた。適度な油の絡みと、僅かに酸味のある甘辛いタレ。控えめにショリショリとした食感のレタスと香菜の香りがふわふわと口の中で一緒になって、口中全体的にシアワセになる。
「たまり醤油みたいな丸い味がしますね……」
と言ったらば、「そうそう、たまり醤油、使ってます」と返ってきた。本来の「香港風タレ」はオイスターソースがガンガンに効いて甘ったるいらしい。「それはイヤだから」と、ちょっと薄味を目指しているそうだけど、それがまた日本人の口には似合う、らしい。

梅菜[火屯]猪肉
温州特産漬け物と豚肉の蒸し煮

だんなの中で(私の中でもかなり)、一番のヒットだったもの。
青菜を干して漬けた(漬けてから干した?だったかもしれない)、真っ黒な漬物を使った料理。甘さのあるナッツと、肉汁たっぷりの豚バラ肉が黒々と煮えている。が、見た目ほど強い味はなくて、噛みしめるとじんわりと甘さとか旨みとかがじわじわと肉の間から染み出てくる感じ。ビーフシチューに似た濃厚な香りが漂い、口にするとこの漬物独特の発酵臭もふわっと優しく漂ってくる。
これだけで、御飯1升喰えそうだ。ビールも旨く飲めそうだ。酒もきっと旨いだろう。とても危険な味がした。

冬菜炒飯
天津白菜のニンニク漬け入り炒飯

作成光景をずっと横で眺めていた炒飯。
「この天津白菜の漬物があると、料理にぐっと幅が出るよ」
と教えてくれた。瓶入りのこの漬物を最初にじっくり炒めて、卵と御飯を炒め合わせたところに葱と共に加えて炒めていく。見て覚えた事はさほど難しいことじゃなさそうだったけど、実践するのは大変そうだ。
強めの塩気のある独特な風味の漬物は、色々な料理の味を深めてくれそう。淡白な味の野菜全般、一緒に炒めたら美味しそうだ。近々購入しに行くことを決意する。
で、なんで家庭のコンロの火力で、こんなにパラッと、全体的に油が綺麗に回ったアッツアツのパラッパラの炒飯ができるのか。横でずっと貼り付いて見てたけど(腕の動きも覚えたけど)、こればっかりは修行をつまないと実現できそうにないのであった。悔しい。

芒果布丁
マンゴプリン

以前クール宅急便で送ってくれたものを食べたことがあったけど、その2倍も3倍も美味しかった。口に入れるとプルプルプルルンと柔らかくスッと溶けていき、果肉もたっぷり。色は綺麗な白みがかったオレンジ色。エバミルクも上からたっぷりかかっている。酸味はほとんどなく、柔らかい甘さがマンゴーの濃厚な風味をひきたてている感じ。
果肉がこれまた美味しかった。なんか、ずるい、美味しくて(←何がずるいんだか)。

豆腐花
トウフファー

「天然にがり」を丁寧に計量して作ってくれた「豆腐花」。温かいそれに、メープルシロップのような、黒蜜のような、優しい甘さの薄い味のシロップがさっとかかっている。食感も味も、まさに「豆腐」そのまんまなんだけど、ぐずぐずくしゃっと口の中で崩れていく儚い食感が素敵な口当たり。胃腸の弱っているときにバケツいっぱい食べたい味だ。あったかいのも良いけど、キンキンに冷やしたのも美味しいのよね。
なんでもAndyさんの、一番試行錯誤し続けた料理なんだとか。にがりの量が、それはそれは難しいらしい。

阿媽糖醋排骨
Andyお母さんのスペアリブの煮込み

デザート食し中に、いきなり届いた「母からの宅急便」。
「あなたたち、運がいいよ。一緒に食べよう」
と、ここでいきなりスペアリブを囓ることになった私たち。黒酢入りのタレで煮込んだ、と聞いたときには「酸っぱいの?肉が、酸っぱいの?」と想像もつかなかったけど、これが酢豚よりも柔らかい酸味と甘さで、なのにこってりとまとわりつくような濃厚な味がした。シンプルすぎる料理だけど、これを作ってくれるなら、いくらでも帰省したくなってしまうような、お母さんの味だ。骨つき肉が、もう柔らかすぎるほど柔らかくトロントロンになっている。これまた御飯1升いけそうな味。骨までしゃぶってしまった。

雪耳老眼
白キクラゲと龍眼のココナッツミルク煮

「おおおおおお、おいしいぃぃぃぃぃぃ」
と悶えてしまい、Andyさんが笑いながらお土産に持たせてくれたほど、私の心を鷲掴みにしたのがこの逸品。
ココナッツミルクに牛乳とエバミルクを加えてまろやかにトロンとさせ、更に白キクラゲとロンガンを入れて煮込むらしい(いや、調理の順番は定かでないけど)。キクラゲを煮込むと、トロンとした独特のとろみがつくのだそうだ。トローンとしてて、ツルーンとしてて、牛乳よりもこってりとしたミルクの風味が漂って、しっかりとしたココナッツの風味がぽわんぽわんと口や鼻に漂ってくる。ありがちな、水っぽいだけのタピオカ入りココナッツミルクが悲しく思えてくるような、一口喰ったら脳味噌がつむじからすっぽ抜けてふわふわ漂ってしまいそうな味。大きな容器に入っていたそれを、強奪しようと本気で思ってしまった、いや、Andyさんを拉致して帰って毎日これを作らせようかしら、と思ってしまったほどの、私の心にヒットした品。

杏仁豆腐
アンニン豆腐

そして最後の杏仁豆腐。「北杏」「南杏」を駆使して作ったという自信作のコレも、口の中でグズグズクシャクシャと崩れてしまう絶妙の柔らかさのものだった。生クリームをたっぷり使って、とってもクリーミーな風味。
そして、若干の酸味のあるシロップが独特で良い感じだった。レモンの風味の、ライチ酒やアマレットが入っているという、花のような強い香りのある爽やかなシロップだった。
これもね……バケツ一杯いけそうで……(そんなんばっかだ、とほほ)。