食欲魔人日記 02年05月 第1週
5/1 (水)
フォートナム&メイソン(日本橋高島屋)にて、ビーフシチューランチ (昼御飯)
チョコブレッド
アイスティー

ゴールデンウィーク合間の平日3日間の中日。
今日はだんなは仕事で、母は休み。私は何となくやることがあるような、ないようなの微妙な状況。息子の保育園も、どうせ誰かは家にいて一緒に出かけることもあるだろうということで、休みの届けを事前に出してある。

だんなを送り出した後、母と息子も起きてきて、そういえば何も朝御飯食べていなかったねと買い置きのチョコブレッドなど出してみた。確か流行の発端はJohanだと思うけど、ここ数年は色々な店で似たようなチョコブレッドが売られるようになってしまった。「いや、でも本家のJohanが一番旨いでしょう」と思いつつ、電車乗って買いに行くのはめんどくさく(しかも旨くてついつい食べ過ぎちゃうもんで)、そのへんの店の"もどき"チョコブレッドを買ってしまう私や母だったりした。うん、でも、案外と美味しいのよ。

日本橋三越内「フォートナム&メイソン」にて
 ビーフシチューランチセット
 (ビーフシチュー&ライス、サラダ、紅茶、デザート)

今日はあまり出かけるつもりのなかった私。だが、母はやる気だった。
「ねぇねぇ、千葉三越の屋上あたりに"チェルシーガーデン"って、あったかしら?」
「……いや、記憶にない」
「そのねー、チェルシーガーデンにしかない、花の栄養剤があってねー」
「……は?」
「これがね、効くのよ。買いたいわぁ」
「はぁ」
で、今日は母と息子と連れだって「ほいじゃ、日本橋の三越にでも行こうか……」と家を出たのであった。

本当は、
「丸善のハヤシライスはどうだ、いや、ひっさしぶりの、たいめいけんでも。いやいや、ここは奮発してドンピエールのカレー……」
などと昼食プランを道中練りに練っていたんだけど、三越前に到着した時点で既にやたらと空腹だった私たち。
「ここ、紅茶屋さんがあったわよねぇ、そうそう、フォートナムメイソンフォートナムメイソン」
と、婦人服売り場の隅にある紅茶屋に駆け込むことになってしまった。確か前回に来た時も母と一緒だったような。母はこのお店が大好きだ。

ここに来たからには、なんとなく「三段重ねのアレ」を食べねば、と思ってしまう。サンドイッチだのスコーンだのケーキだのがどかんどかんと三段重ねの皿でやってくるアフタヌーンティーセットだ。だが、正午過ぎた今、アフタヌーンティーセットは当然供されていないのであった。
「私ねー、この、パンにシチューが詰まってるやつ。食べたかったのよぉ」
「んー、私は腹が減ったのでこのビーフシチューがいいなぁ」
「ぼくはねー、ぼくはねー、コーラとポテト!」
……息子よ、紅茶屋にコーラとポテトは置いていないのだ。ごめんよ。

で、私はドーナツ型にバターライス、その中央に牛肉ごろごろというビーフシチューランチをいただいた。ビーフシチューと書いてはあるけど、そのシチューの色は白っぽいベージュ色で、クリームたっぷりという感じ。あの赤ワイン系の煮込んで煮込んだどす黒い色じゃなくてミルク感いっぱいの食べやすいものだった。肉もほろんほろんに柔らかいし。

ひつまぶし
筍の煮物
日本橋高島屋「福臨門魚翅海鮮酒家」の
 酔鶏
 叉焼
ビール、麦茶

日本橋高島屋「LA VIE DOUCE」の
 バナナタルト
コーヒー

母の念願の花の肥料も無事に買え(なんでもイギリス製の肥料だか何だか)、あとは三越と高島屋をぷらぷらぷらと。
「赤坂サンフルーツ」のマンゴプリンを買い、「ito」(←総菜屋)のマンゴプリンを買い、「モロゾフ」のマンゴプリンを買い、「資生堂パーラー」のマンゴプリンを買い、母にかなり呆れられながら帰途についた。いや、マンゴプリンだけじゃないのよ。「クラブハリエ」のバームクーヘンも買ったし、「福臨門」の総菜も買ったし、とどめに高島屋の「7cakes」でケーキも人数分買ったし(←だから尚更呆れられるという話も)。
何だか全体的に食べ物にまみれて、日本橋から自宅へ甘いものばかりを輸送するような状態で、午後5時過ぎに家に帰ってきたのだった。

そして、今日のメインディッシュは"ひつまぶし"。
名古屋で食べてからこっち、すっかり「家での鰻は"ひつまぶし"」という文化になってしまった我が家。「ひつまぶしって美味しいよね」と言い合っていたところ、とうとう"ひつまぶし"は全国デビューしてしまったらしい。というか一体なんなんだ「浅草ひつまぶし」とは。嬉しいような悲しいような。

ともあれ、"ひつまぶし"。我が家には"ひつまぶし"用のおひつはないので(普段使いのを使ってしまったら最後、タレで茶色く染まってしまう)、仕方なく巨大なココットケースの中に御飯と鰻を突っ込むことにしている。器の底に御飯を少量敷き、ざく切りにした鰻を散らしてタレを少量かけ、再び御飯を乗せたら鰻を散らし……と数段の層にしていき、食べ際にえっさえっさとかき混ぜて、皆でよってたかってよそって食べる。そんな感じだ。

1膳目は普通に食べて、2膳目は刻み万能葱と刻み海苔とワサビをたっぷり乗せてわしわしとかっこみ、3膳目は塩味濃いめに調味した鰹だしをたっぷり注いで薬味も散らしてさらさらと食べる。大体、3膳では終わらないので、1膳そのまま2膳薬味、3、4、5膳は茶漬けで、などとなったりする。私はとにかくこの鰻茶漬けが大好きで大好きで大好きなのだ。もう最初から最後まで鰻茶でかまわない、と思うほど。

今日の鰻は、5串600円というとても謎なブツだった。鰻は小ぶりで歯ごたえもガチガチに悪く、「そりゃ5串で600円だよ……」と頷きたくなるようなシロモノで、でもひつまぶしにすると案外美味しく食べられるのが嬉しいところだ。鰻は良いものじゃなくても、本物のわさびを買ってきておろして使ったりするとそれだけで5段階くらい旨くなる感じ。

"ひつまぶし"だけで充分美味しかったけど、今日は色々お土産もあって食卓が豪華だった。
銀座の中華料理店「福臨門」の唯一の総菜店が日本橋高島屋にあって、1500円のお弁当を買うともれなく定価700円のマンゴプリン(季節によってはマンゴプリンじゃなくなるけど)がついてくるという嬉しいものがあったりする。今日は弁当じゃなくて酒の肴にと叉焼(チャーシュー)と酔鶏(酔っぱらい鶏)だけをちょっとだけ買ってきた。甘いタレがじっくり染みこんだ叉焼に、ふわんふわんに柔らかくて紹興酒の良い香りが漂う酔鶏。

そして食後は「LA VIE DOUCE」のケーキ。
日本橋高島屋地下の「7cakes」というコーナーには、1週間毎日日替わりで7軒のケーキ屋さんが入れ替わり立ち替わり出店していて(で、それは大体本店以外にはどこにも進出していないようなケーキ屋さんで)、ついつい寄ると眺めてしまう。水曜日は「LA VIE DOUCE」という新宿曙橋のケーキ屋さんだった。小ぶりなケーキは1個400円前後。シンプルなチーズケーキなんかがとても美味しそうで、ついついあれこれと買ってきてしまった。母にはブルーベリーがたっぷり乗ったタルト、私はバナナのタルト、だんなはチーズケーキで、息子はチーズムースにルバーブとラズベリーのソースが敷かれたもの。
息子が選んだそれは、どう見ても大人向けのものだったけど、強硬に「これ食べたい!」と主張されて買ってきたものだ。

皆で適当につつきまわしつつ、あれこれ味わった。
甘いバナナの周りには更に濃厚な甘いバナナのクリームがまとわりついているような感じのタルトは、底辺の生地がビスケットのようにサクサクでとても良い食感だった。バターの濃厚な香りに、ふわんふわんの生クリーム。久しぶりに痺れそうなほど美味しいケーキだった。バナナのケーキ、大好きだから尚のこと、シアワセ。でもちょっと食べ過ぎ。

5/2 (木)
牛角(稲毛)にて、信玄餅味アイスクリーム。旨いんだこれが…… (夕御飯)
だんな特製チリドッグ
アイスカフェオレ

ゴールデンウィークは「寝だめ習慣」と化しているかの今日、やっぱり起床は午前10時頃。
「チリドッグ、食べる?」
と、だんなは台所でざくざくとキャベツを刻み始めた。

ソーセージを炒めて、キャベツもバターで炒めて、月曜日にだんなが作ったミートソースの残りも温めてチリパウダー混ぜて。残りもののミートソース処分も兼ねて、山盛りのそれを乗せたホットドッグは何だかやたらとゴージャスな外見になっていた。こぼれそうなほどのミートソースの上にチーズがとろけて大変なことになっている。

チリパウダーがしっかり混ぜ込まれたミートソースはじんわりと辛く、表面がシャクッと香ばしいソーセージやバター風味のキャベツとすてきに馴染む。いつものホットドッグも絶品だけど、残りものミートソースを使って作るチリドッグはまた格別だ。

「いいね、チリドッグ」
「これじゃ毎回、わざと余るようにミートソース作りたくなっちゃうよね」
などと言いつつはぐはぐと囓る。

たらこスパゲッティ
冷茶

今日は1日かけて、6月結婚の友人Tさんの二次会招待状作り。どうせだったら楽しくしたいと、新郎がお医者なことをネタにして、「二次会招待錠」なる、薬の処方箋のパロディの招待状を作ってみた。「使用上の注意、用法用量を守って正しくお越しください」とか書いてみたりして。会場までのマップ作って、注射器のイラストまで作って、かなり壮大な招待状作成になってしまった。

で、モニターの前で一人サルになって「うき?うきき?」とマウスを駆使している後ろで、昼御飯もだんなにお願いしてしまうことに。今日は久しぶりのたらこスパゲッティ。たらこをほぐして昆布茶と酒少々で和えておき、常温で柔らかくしたバターと一緒に皿の上で練り混ぜて"たらこバター"状にしておく。あとは茹でたてのスパゲティをその"たらこバター"の上に一気に盛り、各々フォークとスプーンを両手に構えてわっせわっせと全体をくまなく和えればできあがり。いつもはパスタ料理にスプーンは添えないけど、たらこスパゲッティばかりはこの"混ぜ"の工程にスプーンが必須だったりした。最後に揉み海苔をぶわーっと散らせばできあがり。

ピンク色をした優しい色合いのパスタは、バターの匂いがぷんぷんを漂ってくる。シンプルな味だけどいくらでも食べられてしまう危険な料理だ。今日も親子してもくもくとたらこたっぷりのパスタを平らげてしまったのだった。イクラ乗せたりスモークサーモン乗せたり、ってのも美味しいとは思うけど、ついついいつも、たらこ一辺倒のものばかり作ってしまう。何しろそれだけで美味しいもんだから。

「クラブハリエ」の
 バームクーヘン
アイスティー

夕方、母が仕事から帰ってきたところで、昨日買ってきた「クラブハリエ」のバームクーヘンでおやつにする。

「クラブハリエ」は、日本橋高島屋の地下鉄改札から地下入り口に入ってすぐに目にできるバームクーヘン屋さんだ。横に何本も渡した棒にいくつもいくつも巨大なバームクーヘンが刺さって並べられているのですごく目立つ。厚切りにしたそれを4等分にしたやつが500円。箱入りのものは800円から数千円まで。安くはないけど、それなりに食べ応えがあるし、なかなか美味しい。

ホームページを見るまでは知らなかったけど、元は明治時代から続く「たねや」という和菓子屋さんなのだそうだ。今も和菓子部門はしっかり残っていて、洋菓子部門が「クラブハリエ」として別会社になっている。1996年という早い時代にホームページを設立し、99年からは早々にホームページ通販を開始。「老舗」から受けるイメージとは遠く、先進的な経営をしている会社なのだった。

それはそれとして、ふわんと柔らかいバームクーヘンはとても好みな感じ。表面にはうっすらと砂糖のコーティングがされていて、バターの風味濃厚な生地はしっとりとしている。
私はついつい、バームクーヘンは年輪を剥がすようにぺろぺりと剥ぎつつ食べてしまうのだ。どれだけ薄く剥げるかどうか、ついつい力を入れちゃったりして。
「あのさ、こうやってさ、剥がして食べるよねぇ?」
とだんなと母に尋ねてみたら
「やらないわよ、いやねぇ」
「やらないよ、おゆきさん……」
と同時に否定された。そ、そうか、剥がないのか……。

稲毛「牛角」にて
 牛角サラダ
 ネギタン塩
 ねぎ味噌タン塩
 ボンチリ
 ハラミ 塩ダレ
 熟成カルビ 塩ダレ
 ピートロ わさび醤油
 ぎあら 塩ダレ
 ピートロソーセージ
 チヂミ
 サンチュ
 にんにくホイル焼き
 御飯 小サイズ
 盛岡冷麺 ハーフサイズ
 クッパ ハーフサイズ
 牛角アイス
 バニラもなか
 バニラアイス
 杏仁豆腐
 サングリアグレープフルーツ
 生ビール×3
 コカコーラ
……を、4人でがつがつと。

何だか今日は焼き肉気分。夕方まで招待状作成に熱中していたこともあり、夕飯は
「よっしゃ、焼き肉行くぞ、がつがつ喰うぞ」
という気分になっていた。で、ちょっと遠くに行ってみようかとも思いつつ、ついつい御近所焼き肉屋「牛角」にまたもや行ってしまうことに。電車に乗って行かなきゃいけないのだったら多分それほどは行かないであろうこのお店、近いばかりに1ヶ月に1度くらいの割合でちょこちょこと来てしまう。

初めてこの店に来る母のためにサラダだのチヂミだのといったサイドメニューもしっかり注文しつつ、牛肉も豚肉も鶏肉もホルモンも、今日も良く食べた。最近はタンを「ネギ」と「ネギ味噌」の両方注文し、小皿に山になって出てくる刻み葱や葱味噌を他の肉にもつけつつ食べていくのがお気に入り。塩ダレで注文した肉の焼き上がりにレモンをキュッと絞って葱と一緒に口に入れたりするのがさっぱりしていて良い感じ。

「ま、まだ食べるの……?」
と母に呆れられつつ7種類ほどの肉を今日も平らげ、最後はクッパと冷麺のハーフサイズをつるりと食べてシメ。淡い甘さがあって、キムチの辛さもそれほど強くないここの冷麺は食べやすく、私はけっこう好きだったりした。温泉玉子が1個、ころんと入っているのがまたちょっと嬉しい。途中で酢をだばだばだ〜と入れて風味を変えつつぺろりと食べて、最後はアイスクリーム。

「牛角アイス」なる品名のそれは、バニラアイスに黒蜜ときなこをかけたもので、まんま「信玄餅」な味がする。初めてメニューで見たときは、「……え?バニラのアイスに黒蜜?で、きなこ?」と半分不安に思いつつ注文したものだったけど、焼き肉の後のこのアイスがまた妙に美味しいのだった。バニラアイスなのに、口の中は全面的に信玄餅。

5/3 (金)
高円寺ナイルカレー(稲毛)にて「チキンカレー大盛り」 (昼御飯)
パン、いろいろ
アイスティー

午前9時過ぎ。もうちょっと早く起きるつもりだったのに、すっかり寝こけていた自分を後悔しつつ、起きるなり家中の掃除。今日は友人Sちゃんが遊びに来る予定なのだ。高校2年の時に出会ってからもう10年以上のつきあいになる友人Sちゃんは、今の職場がだんなの勤め先のすぐそばということもあって、だんなともメールやりとりしたりなぞして、なんとなく全体的に仲良しさんだ。遊びに来るのは久しぶり。

畳の居間も含めて家中の床を雑巾がけし、2割ほど部屋の整頓度をアップしようと、あれこれ物を動かしてみた。洗濯して、ベランダの花に水やりして、と色々やっているうちにすっかり10時半に。

11時半の待ち合わせまであと1時間。わたわたしながら買い置きのパンを適当に切って盛りつけて、さぁ食べろと大皿に盛りつけてテーブルに出した。日本橋高島屋の「ペック」という名のパン屋さんのそれは、全てがイタリアパン。イタリアのある地方の伝統菓子というふわふわのドーナツとか、板チョコが中央に入る小さな小さなチョコパンだとか、干し葡萄がたっぷり入った固い食感のパンだとか。名前はどれも忘れてしまったけれど、そのパンはどれもちょっとばかり独特だ。固いパンはモチモチとあまりみない食感だし、チョコパンもデニッシュよりもどっしりした生地。なのにドーナツは頼りないほどふわんふわんで、表面にまぶされた粉砂糖が良い感じに似合っていた。

Sちゃん来たりて、稲毛「高円寺ナイルカレー」にて
 チキンカレー 大盛り 辛口

11時半、最寄り駅の改札でSちゃんを家族みんなでお出迎え。そのまま
「稲毛2大カレー屋の1店に案内するよー」
と「高円寺ナイルカレー」に連れていった。

11時半開店のこのお店には、まだ客はおらず、久しぶりに6人がけのテーブル席につくことができた。このテーブル席の他はカウンターが7席分ほどしかなく、狭い店はすぐにいっぱいになってしまう。
だんなとSちゃんはエッグカレー、私はチキンカレー。ほどなくテーブルには小皿に入った福神漬とコールスローサラダが運ばれてきて、素朴な焼きのカレー皿に盛られた黒々としたカレーもやってきた。

チキンカレーには、玉ねぎがたっぷり入っている。親指の先ほどの鶏肉もころころと混ざり、それが黒々としたルーとまみれて御飯にサラリとかかっている。「辛口で」と言わなければ、その味はとてもマイルドで、後口に少しだけじんわりと辛さが染み出てくるような感じ。「辛口で」と言ったところでも、ビリビリと強烈な辛さにはならず、あくまでも柔らかく優しい味のカレーなのだった。相変わらず、美味しい。

Sちゃんも、気に入ってくれたらしい。
「お土産もやってくれるの?妹のRに買っていこうかなぁ……」
と食後に聞いてきて、最後には我が家からタッパーを持っていって2人分のルーを包んで貰って帰っていった。Rちゃんの今日の夕飯、カレーになったのかな。

功夫茶
 台湾凍頂茶 四季春
 「トゥーランドット游仙境」の「特選烏龍の極上茶葉あまい香り」
 東方美人
「IL PINOLO」の焼き菓子
「クラブハリエ」のバームクーヘン
ドライマンゴー
笹饅頭・苺大福

せっかく客人だし、とそれほど頻繁に使っていない功夫茶(くんふーちゃ)セットを出して、わちゃわちゃと中国茶を飲むことにした。コンロに湯を沸かしておいて、まず茶器に湯を入れて軽く温める。その湯は捨てた後に茶壺に茶葉を入れてから湯を溢れるほど注ぎ、その湯は茶葉を洗う意味ですぐに茶海に移して、それは捨てる。再び茶壺に湯を注いだら数分蒸らし、茶壺の中のお茶を茶海に全て注ぎ入れた後に、それを改めて茶杯に注ぐ……って、本当に"わちゃわちゃ"とした感じだ。

本当は茶葉を「茶荷」に入れよ、とか、「聞香杯」で香りも楽しめ、とか、より本格にしようと思ったらいくらでも深くなっていきそうだけど、そこまでの道具は我が家にないのだった。「茶海」すらないものだから、ミルクピッチャーで代用してみたりして。

それでも、台湾凍頂茶は甘い香りで深い味があり、突き抜けるような強い香りのある「東方美人」もとても美味しい。
テーブルの上には、Sちゃんがお土産にと持ってきてくれた、銀座三越にショップがあるという「IL PINOLO」というお店の焼き菓子セットとか、私が数日前に買ってきたバームクーヘンとか、中国茶に似合う茶うけにとドライマンゴーとか。だんなの実家からお裾分けしてもらった笹饅頭とか苺大福も出したら、なんだかテーブルの上は甘いものだらけになった。そのままだらだらと3時間ほどおしゃべり。

素敵なプレゼントも貰った。
もぐら庵」さんの「もぐら庵遊びの印 第12集」。
もぐら庵さんは篆刻家で、何度か銀座松屋の個展を見たことがあり、学生時代から密かに好きだった人だ。数年前、Sちゃんから
「誕生日プレゼントに何が欲しい?」
と言われた時に、「もぐら庵さんの判子が欲しいぞ!せりあ、って名前入りのやつ!」と宣言したのだった。安い買い物じゃなかったはずだけどSちゃんはそのリクエストを叶えてくれて、そしてその印の図案はこのホームページも飾ってくれている(このページの上のほうにある、猫がフライパン持ってるやつ、あれです)。

この印は、作成者のもぐら庵さん御本人も気に入ったようで、自費出版している「遊びの印」なる作品集の12号に掲載してくれたのだった。発売はつい数週間前。で、それを知ったSちゃんが購入し、持ってきてくれたのだ。なんと、サイン入り。
掲載された1つ1つの印にはちゃんとコメントがついていて、私の印のところには

せりあさんは料理好き。猫大好き。他に好きなものはビール、星、月、ショートケーキ、マンゴプリンと次々。この人のホームページの食事日記を見ると、食べるは食べるは…。もォ読んでいるだけでおなかがはちきれそうです。

とのことだった。す、すんません食べてばっかで……。
親の欲目(?)で、他のどの印よりも自分の印が愛しく見えた。印はどれも優しく味わい深く、どこかシュールなところもある。これからも大切します。どうもありがとう。

鶏肉の生姜焼き with 千切りキャベツ
もやしの広東冬菜炒め
スナップエンドウの味噌汁
羽釜御飯
ビール、抹茶入り玄米茶

午後5時半、Sちゃんを駅まで送り、そして中国茶でお腹がいっぱいなったまま夕食の準備。その割に準備している肉は大量にあるような感じだけど、まぁ気にしない。

何だか白い御飯をわしわしと食べたいような気がして、しかも千切りキャベツもわしわし食べたいような気分。
「だったら豚肉の生姜焼きとか……?」
と思い、「いや、鶏肉を生姜焼きにしちゃえ」と、生姜焼きを鶏肉でやっちゃうことに。鶏肉も案外と生姜に似合う。

鶏肉は一口大に切ってこんがりと焼き付け、山盛りのおろし生姜を使って醤油と味醂で甘辛く味付け。千切りキャベツは山盛りで。
生姜焼きの何が嬉しいって、千切りキャベツが美味しく食べられることだ。肉の脂が溶けた生姜醤油の熱いタレがキャベツの千切りに染みたものは笑っちゃうほど美味しいのだ。火の通りまくったキャベツとは違う、シャキシャキしながらしんなり感のあるキャベツが、なんとも。

1/3個分ほどもあった大量の刻みキャベツは、私とだんなと母と息子がよってたかって食べまくり、呆れるほど綺麗になくなった。たっぷりあった生姜味の鶏肉も。そしてだんなが残りもやしで作ってくれた広東冬菜(中国漬物)入りの炒め物も、これまたビールと御飯が進む良いおかず。
明日はちょこっと横浜に行って遊ぶ予定だ。中華街で遅めの夕方に早めの夕飯を食べて帰る予定。晴れるといいなぁ。

5/4 (土)
鯵のたたき丼 (夕御飯)
フレンチトースト
炒めウィンナー
アイスカフェオレ

本当は本日、中華街に行く予定だったのである。雲白肉が美味しいお気に入りのお店「鳳林」に予約までしていたのである。だが、すっかり忘れていた。昨日の午前中に今日午前中着で魚を注文していたことを。そいでもって、家族全員風邪気味だったことを。

5月1日、ゴールデンウィーク中のだんなが唯一出勤したこの日、この日にだんなは職場で風邪を伝染されて帰ってきたようだ。その日には「喉が痛い、だるい、早く寝る」と風呂も入らずに寝てしまっただんなだったが、その翌日には息子が鼻水を垂らし始めた。息子も微熱が少々出ていて、そして昨夜、とうとう私の喉まで痛くなってきた。どころか私の母まで「喉が痛いわー」なんつっている。もう一家全員風邪ひき状態なのだった。しかも今朝になって一番具合が悪いのは私ときた。もう外出なんてムリ、全然ムリ、というくらいに。ああもう、なんでゴールデンウィークどまんなかに体調崩すかなぁ。情けない。

というわけで、本日の外出は取りやめとなった。
体調は悪いけど魚は捌けるぞ、と、午前中にクック&ダインから届いた鮮魚セットをがさがさと開封する。鯵5尾、かます2尾、飛び魚1尾、甲イカ1杯。ゴールデンウィーク特別価格ということで、お買い得な値段だった。

朝御飯は、先日買ったイタリアパンでフレンチトースト。名前は覚えていないそのフランスパンチックな硬めのパンは気泡がいっぱいでフレンチトーストにはちょうど良いパンだった。卵液がほどよく染み込み、中は半熟、表面はこんがりふわっと焼き上がる。本当はカリカリベーコンでも添えたいところ、買い置きのウィンナーなぞ炒めてみたりして、ちょっと遅めの朝御飯。うー、喉が痛いぜ、ベイベ。

ケンタの
 フライドチキン
 ビスケット
 コーンサラダ

昼過ぎ、だんなと息子は2人とも風邪気味なのに
「こいのぼり、買いに行こう〜!」
とおもちゃ屋に買い物に行ってしまった。

私は一人、
「ダースベイダーは〜くさい〜♪」
などと歌いながら二人の帰宅を家で待つ。
そもそもは昨日放映されていた「スターウォーズ特別編」だ。久しぶりにハリソンフォードの若かりし姿を見てしまって、私はものすごく体調が悪いにもかかわらず半纏にくるまってテレビにかじりついていた。ハリソンフォード、大好きじゃけぇ。

で。あの、ダースベイダーが出てくる時に必ず流れる「帝国マーチ」なる曲。あれにはぴったりの歌詞が存在しているのだと、何度となくだんなが口ずさむものだから、私まで何かにつけて歌うようになってしまった。
曰く、
「帝国は〜とても強い〜♪帝国は〜とても強い〜♪ダースベイダーは黒い♪戦闘員は白い♪デススター丸い〜♪」
これが私の教わった全文。しかし、別の説もあるらしいということが本日判明した。ロングバージョンまであるらしい。恐るべし帝国。

そして、更にそれを替え歌にして遊ぶ私たち。
「帝国は〜とても臭い〜♪帝国は〜とても臭い〜♪ダースベイダーは臭い♪戦闘員は臭い♪デススター臭い〜♪」
「帝国は〜とてもキモい〜♪帝国は〜とてもキモい〜♪ダースベイダーはキモい♪戦闘員はキモい♪デススターキモい〜♪」

「そーかそーか、臭いから負けたんだな帝国は」
「そうそうキモいから負けたのよ帝国は」
昨夜、帝国軍は散々な言われようだった。

午後2時半、
「今から帰るけど、ケンタのサンドでも買っていこうか?」
とだんなから嬉しい申し出があり、
「あ、じゃあじゃあ、ビスケットが食べたいのでビスケットと肉、お願いします」
と買ってきていただいた。ケンタな味のチキンにケンタな味のビスケット、ケンタな味の(いや、缶詰開けただけみたいな味の)コーンサラダ。たま〜に食べると、やっぱり美味しいんである。「はぁ〜、ケンタの味ぃ〜」とどこかうっとりしながら食べてしまう。

飛び魚のたたき
鯵のたたき
甲イカの刺身
ゲソフライ
オニオンリング
鯵の骨煎餅
グリーンサラダ
スナップエンドウの味噌汁
羽釜御飯
ペールエール、麦茶

山のようなお魚、かますは、開きにして自家製干物に加工した。甲イカは、その名のとおり、身の中に大きな甲羅が入っていて、その硬さとでかさに驚きつつ捌いて刺身にする。墨をいっぱい抱えたイカだからイカ墨スパゲッティも可能、とは言われていたけれど、イカ解体がまだヘタクソな私は、あっというまに墨袋を破壊して手を真っ黒にしてしまったのだった。イカ墨スパゲッティ道はかなり険しそうだ。

そして飛び魚はたたきに、鯵もたたきに。私もだんなもまだまだ魚裁きに不慣れだったりして、刺身にして見劣りしないだけの三枚おろしが綺麗にできない、というのが理由の1つ。「いや、でも、新鮮な魚なればこそ、たたきにすると美味しいのよね!」というのが理由のもう1つ。どっちの理由が大きいかどうかは、あまり気にしないでおく。
そして、イカのゲソが余ったので、フライにしようと油を熱する。じゃあついでにと鯵の中骨も揚げることにし、更にオニオンリングなんかも作っちゃったりして食卓は何だか食べ物だらけになった。

実のところ、体調不良最高潮で、あんまり食欲はなかったりした。
でも新鮮なイカの刺身はプリプリとして甘く、鯵のたたきもムチムチとした食感ですごく良い感じ。刻み葱と刻み生姜を多めに混ぜ込んだたたきに粗塩をガリガリと混ぜ、胡麻油をほんのひとたらしして混ぜてから御飯の上に乗せて食べる。これだけでもう、御飯3杯くらいいけちゃいそうに旨かった。小さめの鯵を捌いていくのは大変だけど(おかげで鯵の三枚おろしだけはそこそこ上手くなってきた……)、塩焼きでも丸揚げでも味わえない美味しさがある。時間をかけてじっくり揚げた骨煎餅も、中骨までサクサクと崩れるほどによく揚がっていて、ビールの良い肴になった。

外出予定がなくなってちょっとばかり残念だけど、こんなに御馳走食べられたんだから、まぁ、いっか。

5/5 (日)
中むら(稲毛)の鴨南蛮そば (夕御飯)
いかの刺身
オニオンリングとゲソフライ
かますの一夜干し
スナップえんどうの味噌汁
御飯
麦茶

数日前から一家一同風邪ひきの私たち。
昨夜私は、甘草湯(喉痛に効く漢方薬)を飲み、キョーレオピン(にんにく成分入りの滋養強壮剤)を飲み、アスコルビン散(ビタミンC粉末)を飲み、氷枕をして寝たのだった。少しは体調が戻ってきたような気もする。だんなは……昨日より体調が悪くなった模様。「喉、いてぇ、身体、だりぃ」と朝から顔色が悪かった。

11時過ぎの遅めの朝御飯は、昼御飯も兼ねてしまって何だか豪華だ。昨日からベランダで干していた、かますの自家製干物と、昨夜の残りのおかず類。御飯に味噌汁。
新鮮な魚をあえて干物にするというのも、なかなか美味しいものなのである。生で食べても良いくらいの魚を干すので、焼くときも表面をこんがりと、くらいで美味しく焼き上がる。表面はパリパリ、中はふくふくと食感の違いも楽しく、旨味が凝縮したようなその味は御飯のおかずにぴったりだ。
ちょっとしんなりしてしまったフライ類にはとんかつソースなどつけて食べてみたりして。

サッポロ一番 塩カルビ味焼きそば
麦茶

半端な時間にたっぷりの食事をしたせいで、午後になっても当然空腹になることはなく、代わりに午後4時を過ぎて妙にお腹がすいてきてしまった。
「おやつ〜。……焼きそば?」
とよろよろと台所をあさっていただんなが、インスタント焼きそばの封を開け始めた。あ、いいな私も、僕も、と私と息子もテーブルにつく。
「我が家はさー、俺が焼きそば食べようとすると寄ってくるのが2人くらいいるんだよな」
と笑いながら分けてくれようとする我が夫。あまり奪っては申し訳ないので、私も私の分の焼きそばを用意することにした。

インスタント焼きそば愛好家のだんなの論では「ソース焼きそばはUFOが一番だな、うむ」ということらしい。で、彼が最近はまっているのが「サッポロ一番 塩カルビ味焼きそば」なのだった。ソース味じゃなく塩味の顆粒調味料と油ダレをかけて絡め、胡麻ふりかけをかけて食べるタイプのものだ。近所のスーパーで安売りしていた折、だんなは嬉々としてそれを買い込んでいた。

ソース味焼きそばと変わらず、たまらなくジャンクな味の焼きそばだ。調味料はちょっと舌にザラザラとするし、後で化学調味料独特のピリピリ感が口中をかけめぐるし、カルビの肉の旨味なんかは思い切り合成しまくりました、みたいな味だったりするけど、確かに妙に旨いことは旨いのだった。怪しいキャベツとか葱とか肉もどきなんかが混ざっている。
「ジャンクだわぁ」
などと言いつつ、それでもがふがふと食べる私たち。息子に至っては「ちょうだい、ちょうだい」と騒ぎまくって小さな器にお代わりしまくり、結局私やだんなと変わらない量を食べてしまったのだった。うう、ジャンクなのに。

稲毛「中むら」の
 鴨南蛮そば
麦茶

学生時代からこの地に住んでいただんなは、学生時代に駅近くでアルバイトをしていたらしい。昔っからあるような佇まいのその店の前を通る度に
「昼飯にここのね、冷やしタヌキそばを何度も食べたよ。この店、冷やしタヌキがすっごく美味しいんだ」
と言っているお店があって、家の近くということもあって「出前してくれるかな」と、先日、出前用のメニューをいただいてきた。だんなが食べていたのは10年以上も前の話だ。その店は相変わらずそこにあって、しかもメニューも変わっていないような感じだった。

「でも、蕎麦屋の出前は体調悪い時くらいしか使わないよね」
と1週間ほど前に言っていたのだけど、今日、しっかり活用するチャンスがやってきた。全体的に夕食の支度をするほどの気力体力はなく、幸い母も今日は古くからの友人の家に泊まりに行くということで朝から外出していたので、これ幸いと店屋物の夕御飯。出前をしてくれる"街のお蕎麦屋さん"が美味しいということは、ちょっとした幸せだと思う。

かつ丼あり、カレー丼あり、鍋焼きうどんあり、と"街のお蕎麦屋さん"ならではのイカしたメニューの中から、だんなは件の「冷やしタヌキそば」を注文。私は「鴨南蛮そば」を注文。20分ほどで店のオヤジ自らスーパーカブをすっ飛ばして届けてくれた。

冷やしタヌキは、浅めの大きめの器に盛られている。濃いめのだしが少な目に張られ、上には刻みなるとと刻みキュウリがたっぷり。揚げ玉もたっぷり。そしてまだ温かい大きめの南瓜の天ぷらが1個、ころりと乗っていた。
私の鴨南蛮は、たっぷりの葱と肉がちょっと濃いめの茶色いだしの上に浮かんでいる。

鴨肉は
「え?鴨肉?鶏肉とのハーフ、いやクォーター、いやその更に半分くらいじゃなくて?」
というくらいに鴨肉感の少ない、なんだか鶏肉みたいな食感と味の肉だったけど、蕎麦とつゆはなかなか美味しかった。ちゃんと蕎麦の香りのする蕎麦に、ちょっと甘く濃いめのだし汁。1杯700円ほどの蕎麦はそれで満足できるもので、冷やしタヌキはもっと旨かった。キュウリやナルトを絡めて食べる揚げ玉たっぷりの冷たい蕎麦は、確かにかなり良い感じ。

「やっぱ風邪には蕎麦屋の店屋物だよね」
「うん、蕎麦屋万歳」
「そして冬には鍋焼きうどんになるのだ」
「うむ」
街のお蕎麦屋さん、どうもありがとう、な夜だった。もぐもぐ。