食欲魔人日記 03年01月 第1週
1/1 (水)
肉まん、初挑戦 (夕御飯)
お雑煮 (餅2ヶ)
磯辺巻き (餅1ヶ)
蟹の湯葉巻 わかさぎの佃煮
シュリンプカクテル
ワイン(La Crema '00 Chardonnay)

朝10時、まったりと起床。
「おはよーございます」
「おはよーございます」
「あけましておめでとうございます」
「今年もよろしくお願いします」
と挨拶したあと、朝御飯。

うちの雑煮は、私の母の郷里である秋田のものが基本だ。醤油味の吸い物で、鶏肉と大根と人参とゴボウ、舞茸、豆腐などが入る(←きりたんぽ鍋のきりたんぽ抜き、みたいな)。家によってはうっすらとろみをつけてみたり、更に大根おろしも入れたりするらしい。秋田の同じ地域に住む親戚の家でも、それぞれ色々だった。
結婚した当初、
「お雑煮って、私が食べてきたみたいなのでいいの?"その家の味"とか"おふくろの味"とかって、ないの?この味に執着があるわけじゃないから食べたい味のがあったら合わせるけど……」
と言ったことがあるような気がするけど、だんなからは、
「いや、君ん家の雑煮の味、好きだし(←雑煮としてではなく吸い物としてしょっちゅう作っていた味だった)。ウチの雑煮の味とか言ってもなぁ……なんというか"ごった煮"という感じだったから」
などという淡泊な返事が返ってきたのだった。

残念ながら、私の住むところでは舞茸はどんなに探しても見つからない。舞茸のあの香りは他のきのこじゃ代用できなさそうだったので、舞茸の存在は無視して作る。これでゴボウが無かったら諦めるところだけど、ゴボウはなんとか入手可能なのだった。15cmほどの長さにぶった切られてパック詰めされたそれは今ひとつスカスカな印象があるけど、味は一応ゴボウだ。
雑煮でお餅を2個。昨夜の残りのシュリンプカクテルに、昨日日本から届いただんなの実家からの荷物に入っていた佃煮。私の母が先日送ってくれた荷物に入っていた蟹肉の湯葉巻。なんとなく「正月だからおとっとき食材を出しちゃいましょう」という感じになった。何しろ餅ですら、購入することは不可能ではないけれど安くはない買い物なので、貴重品なのだ。

「でもお正月だし」
「雑煮で2個食べちゃったけど、磯辺焼きでもう1個食べちゃおう……」
「まぁ、なんて贅沢な」
などと言いつつ、ワイン飲みながら3個目の餅を。あ、あんこ作ってあんころ餅もしよう。

Sちゃんお土産 どらやき
豆おかき
抹茶入り玄米茶

デレデレのんびり過ごすお正月。周囲の家も客が来るわけでなく、慌ただしく出かけるわけでなく、やたらと静か。

午後には朝に続いて「日本からの救助物資大放出」といった感じにあれこれ出して飲み食いした。お義母さんが送ってくれた抹茶入り玄米茶をいれて豆おかきを囓り、友人Sちゃんがお土産に持ってきてくれたどら焼きも平らげる。豆おかきもどら焼きも稀少品なのに立て続けに食べてしまって、まぁなんて贅沢な、という気分に。

自家製肉まん
ローストポークの幽庵漬け
ペリエ(レモン味)

特に見たいテレビがあるわけでもなく、なんとなく暇なので
「豚まんでも作ってみる?」
ということに。以前"中華まんを作るならこのパウダーミックスがお勧めですよ"と教えてもらったことがあり、アジア食材屋で「大包粉」なるケーキミックスのような粉を買ってきてみていた。幸い、豚肉や玉ねぎなどの材料もある。具はこれ以上なくシンプルな感じがいいよね、と、豚肉と玉ねぎを基本とすることに。あれこれ検索してみたところ干し椎茸や筍なども入れたりするようだけれど、構わず豚肉と玉ねぎ。干し貝柱だけちょっと入れることにした。

そして、生地。ミックス粉は小麦粉にベーキングパウダーなどが混ぜられているらしく、「牛乳と砂糖とサラダ油入れてこねてください」などと書いてある。だんなと一緒に台所で準備準備、作業作業。
「えっと……砂糖が"one half"だから、1カップ半、と……」
「え?ちょっと、ちょっと待ってよ。多分そんなに砂糖入らない……。"one and half"なら1カップ半だけど、"one half"だから、多分カップ半分」
「あぁ?……そうかそうか。危うく"シャア専用豚まんの皮"になっちゃうところだった」
「……砂糖3倍入れたら赤くなるんかい、豚まんの皮が……」
いや、性能3倍だから味が3倍なのだ、やだなぁそれ、などと元旦早々くだらないことを言いつつ、なんとか生地はできあがった。12等分にせよ、というところ、12等分にしたらけっこう巨大になってしまったので16等分に勝手に変更。包み方もよくわからないまま、ひき肉の生地を中央に乗せて適当にそれっぽく成形した。1個1個が"小龍包よりちょっと大きい"くらいな大きさなんだけど、本当にこれ、ちゃんと膨れるのかしらん。

蒸すこと15分ちょい。蒸籠の蓋を開けてみると、ちゃんと手の平サイズにぷわぷわと膨張していた。おお、色々あちこち不格好だけど、ちゃんとそれっぽい饅頭になっている。
夕飯に豚まんってのもちょっと妙な感じだねぇ、と、ふかしたてのそれを1人1個から3個。昨夜の残りのローストポークもテーブルに出すと、全体的に豚肉料理になってしまった。さっぱりとペリエを飲みつつ、ほのかに甘さのある肉まんを食べる。皮も具も、肉まんって甘さがあるのよねぇと常々思っていたけれど、皮にも具にも砂糖がけっこうな量含まれている事を知ってしまった。具は1個の豚まんに精々1つまみくらいだけれど、皮には大さじ1以上入っている。

食後、おもむろに小豆を煮始める。
明日はあんころ餅を食べるのよー♪と歌いつつ、でも昨日のうちに小豆を煮ておけば"あんまん"も作成可能だったのだと気がついてしまい、ちょっと残念な気分。

1/2 (木)
小豆を煮たので、あんころ餅 (朝御飯)
だんな特製手打ちうどん(冷やしかけ)
鶏天ぷら
あんころ餅
冷茶

昨夜、小豆を煮てみた。
本来は一晩水に浸しておくところ、6時間ほど浸したところで小豆を火にかける。何度かあく抜きに茹でこぼしてから柔らかく煮ていき、最後に小豆と同量の(!!)砂糖を入れて更に軽く煮たらできあがり。こんがり焼いた餅を入れて、更には手打ちうどんなども準備しつつ、ボリュームのある朝御飯になってしまった。

私は、おはぎだろうが饅頭だろうがどら焼きだろうが、圧倒的に"こしあんより粒あん派"だ。甘味屋さんに入ってもトロトロさらさらな"御前汁粉"はまず頼まず、大抵粒あんの"田舎汁粉"を注文してしまう。こしあんの美味しさもわかっちゃいるけど、「どっちがいい?」と選べる状況ならば、やっぱり粒あんが好きなのよねぇ。
というわけで、出来上がった小豆煮も、当然粒あん。
「もうちょっと汁気が多かったら"田舎汁粉"と言って良いんかもしれないけど……これはどっちかというと"小倉白玉"の餅版……?」
と作った自分が困惑しつつ、「まぁ、これは"あんころ餅"ってことで」と食卓に出した。

ちなみに、関東で言う"御前汁粉"は関西では"汁粉"、"田舎汁粉"は"ぜんざい"と言われるらしい。"ぜんざい"ってのがなかなか難しく、関東では"汁気のない餡に餅や白玉を添えたもの"となるらしい。私が想像していた"ぜんざい"は"こしあんの汁粉"だったりしたので、自分でもわけがわからなくなってくる。
小豆と砂糖だけで作った餡は、ちょっとだけ砂糖控えめ。煮くずれるほど柔らかくなっていない小豆が、それはそれで旨かった。
ちゃんと保存しておかないと、実は毎回作るたびに最後にカビを生やしてしまっているので気をつけないとー。

クッキー&クリーム アイスクリーム

アメリカには「正月休み」なんてものはない。元旦はさすがに休みのところが多いけれど(それでも一部の飲食店は休まずやっていたりして)、今日からはごく普通に皆、働き始める。ニューヨーク在住のY(現在日本に帰省中)が、
「もうねー、毎年毎年"大和民族は1月3日までは休むものなんですっ!休みます!って休ませてもらうのがねー……めんどくさくて」
と言っている理由がよくわかった。もうだって、今日から普通に平日なのだから。

だんなは大学の研究室に出かけて行った。遅い朝食だったので、だんなが夕方帰ってきてからおやつ代わりにアイスクリーム。開いた冷凍庫の前で息子が
「お菓子のアイスクリームがいいなー!お菓子のがいいなー!」
と言っているから一体なんだと思ったらオレオ入りのアイスを指さしていたのだった。……確かにお菓子のアイスクリームだ。

鮭御飯
鶏とごぼうの吸い物(雑煮の残り)
ローストポークの幽庵漬け
グリーンサラダ
わかさぎの佃煮

確か私が子供の頃には、ゴールデンタイムにプロレス番組が放映されていたような気がする……けど、いつからか放映されなくなったよなぁ……と思い返している私。私の目の前にあるテレビでは毎週恒例の、木曜日午後7時から2時間枠で放映されているアメリカンプロレスが流れている。
私はさっぱりプロレスには詳しくなかったのだけど、だんなは大の格闘技(特にプロレス)好き。
「この、ゴールデンタイムにプロレスが毎週見られる悦びがわかるかね?おゆきさん!」
と満悦しながら私に色々解説してくれるものだから、覚えてきてしまった。あの人はコスい技を使うとか、あの人の得意技はこれこれとか、美しいDDTとはどういうものなのか、とか。でも、なんで、プロレス番組なのにリングの上で結婚式とかしてますかー?(←それがアメリカンプロレスのドラマ性というやつらしい)

コテコテギトギトなアメリカンプロレスを見つつ、食卓はさっぱりと超和風。こんがり焼いた鮭を胡麻と共に混ぜ御飯にしたものと、雑煮で食べた残りの吸い物。ローストポークの余りに、グリーンサラダ。御飯炊いて鮭焼くだけでたいした準備も必要なく、非常にらくちんな夕御飯となった。

さっぱりした夕食後、再びコテコテプロレス観戦。
た、確かにエッジはカッコイイかもしんないやねー……(気のないふりしながらも一生懸命見ていたり)。

1/3 (金)
OUTBACK(Nashville)にて、「Ayers Rock Strip」14oz (夕御飯)
鮭御飯おむすび
抹茶入り玄米茶

「残った御飯は冷凍、もしくはおむすびに」
が我が家の家訓。昨夜の鮭おむすびは、私がせっせとおむすびにしておいてみた。炊き込み御飯や混ぜ御飯のおむすびは、ポロポロ崩れてしまいがちで(ましてやカリフォルニア米となると……)、なかなか難しい。鮭の大きな塊のところからモロモロと崩れてしまいそうなそれをぎゅうぎゅう握って海苔を巻いておいた。

今朝、お湯が沸く音で目が覚めると、だんなはその1時間ほど前に起きていた様子。お腹が空いたので朝食の準備をしようと、お茶をいれる準備をしていてくれたのだった。"コーヒーの香りでの目覚め"とは良く聞くけど"日本茶の香りでの目覚め"というのは、また、何というか……いや、起きるなりあったかいお茶が目の前に出てくるというのは凄くシアワセな事だ。どうもありがとう、だんな。

やけに寒いと思ったら、昨夜は雪が降ったらしい。
「外、白いよ」
とだんなが言うので窓から見ると、階段やら手すりやらのあたりにうっすら白いものが残っていた。おおー、"積もった"という意味でなら、今日が初雪かもしれない(ちらちら舞うことはあったようだけど)。寒い寒い。

Nashville 「OUTBACK」にて
 Ayers Rock Strip 14oz
 (Onion soup, Baked Potato)
 ビール(Foster Draft)
 Cheesecake Olivia
 Iced Tea

今日は"肉を、がっちょり"な気分。
研究室に出かけていっただんなにその旨を伝え、「それでは昼飯を抜いて夜に備え、早めの夕食にしましょう」ということに。安くて旨い肉ということであれば、「OUTBACK」が良いよねぇ、と満場一致でOUTBACKを目指すことになった。

5時過ぎに到着したOUTBACKは、既にやや混雑。席の半分くらいはお客さんで埋まっていた。
「今ねぇ、ハッピーアワーだから1杯分の値段でもう1杯飲めるわよん♪」
とテーブル担当のモリィちゃん(金髪美人)に言われ、同じビールを2つ注文。「シェアするのね?」と言われ、うんうんと頷く。こっちのレストランは何かと「OKですかぁ〜?」「飲み物のお代わり、持ってきましょうかぁ〜?」「美味しいですかぁ〜?」などと声をかけられる事が多く、周囲のお客はというとそれに対して軽妙な会話を楽しんでいるようでもあり、毎回何を言ったらいいんだかなぁ、と困ってしまうのだ。
「Everything OK?」
に対して
「OK!」
と答えてしまっては、「ん〜まぁ、いーんじゃなーい?不都合はないけど?」くらいの消極的な意味になってしまい、本当に満足しているなら
「Very good!」とか
「Excellent!」などと答えるべきである、らしい。大抵必死に喰ってるときに「OK?」と言われてしまうので、いつも目を白黒させながら親指をグッと突き出していたりするのだった。

で、とにかく"がっちょり肉"なんである。私は14oz(400g弱)のニューヨークストリップ、だんなは20oz(560g)のTボーンステーキ。ステーキを頼むと、もれなくスープかサラダ、芋料理(もしくは野菜)、パンがついてくる。前菜は取らず、スープを飲みサラダを食べつつ肉を待った。私はクリームオニオンスープ、だんなはハウスサラダ。互いのものを交換して食べていて丁度よいくらい、サラダはボリュームがある。

そして、やってきた巨大な皿。私の皿も巨大だけど、だんなの皿は更に巨大だ。私の円形の皿には私の握り拳よりも遙かに大きなベイクドポテトに、厚さ2.5cmはありそうなステーキ。だんなの楕円の皿には溢れるほどのフライドポテトと、皿からはみ出るほどのTボーンステーキ(さすが560g……)がどどどーんと盛られていた。
「肉!」
「肉ぅ〜」
「肉を喰うぞー」
とナイフとフォークを構え、端からわしわしと食べていく。塩胡椒がこってりまぶされた肉の、味付けはただそれだけ。肉汁滴る肉は硬さもそこそこあり、フォークで押さえつつナイフで切る両手がだんだん疲れてくるほどだ。でも少しもカサカサパサパサなんてことはなく、肉の味がこってりと濃い感じ。そのくせそれほど油っこくもない。1〜2cmほどの幅に塊肉から切り分けても厚みがあるためそのサイズでは口に収まらず、更に2〜3切れにしなければ食べられない。ざくざく切っては口に運ぶ、切っては口に運ぶ、としているうち、すっかり肉が無くなった。ああ、いくら空腹だったとはいえ、いつのまにか400gサイズの肉が食べられるようになっていたとは、私ったら……と前を見ると、だんなも同じく560gサイズの肉を食べ切っているのであった。

でも今日は、とにかく空腹だったこともあり、前菜を取らなかったこともあり、念願だった「アメリカ飯を普通に食ってデザートも食べる」ということもできそうだ。気になっていたニューヨークチーズケーキを注文し、ベリーソース、チョコソース、カラメルソースと選べる中からカラメルソースをかけてもらった。
でかいだろうなぁと覚悟はしていたけれど、やってきたのは半径20cm弱に中心角30℃ほどの扇形、高さ12cmという物体。大きな皿に盛られるチーズに、たっぷりとカラメルソース。「皆で食べるんでしょう?」とスプーンが3本やってきた。3本のスプーンをありがたく思いつつ、家族皆でチーズケーキをつつきまわす。ねっとりした口当たりのチーズケーキは、重すぎず軽すぎずな味わいでごくごく普通に美味しかった。カラメルソースが案外とよく似合う。
料理を綺麗に平らげた挙げ句デザートも堪能できて、渡米6ヶ月目にしてやっと胃袋がアメリカンになってきたかと喜ばしいような不安なような。
これだけがっちょり肉食べてデザート食べてビールまで飲んで、お会計は60ドル(チップ込み)。安いかも。

1/4 (土)
Grand China(Bellevue)にて「芙蓉雉粟」 (昼御飯)
あんころ餅
抹茶入り玄米茶

今日はお買い物。
「トイザラスで息子のおもちゃ用のACアダプター買って〜」
「WAL☆MARTであれこれ買い物して〜」
「そっち方面行くなら、ついでにAlpha Bakeryでカレーパンも購入して〜」
と、ささやかなお買い物リストができあがっていた。

朝御飯は、一昨日甘く煮た小豆であんころ餅。年末、だんなが打った手打ちうどんがなかなかの出来だったので
「よろしければ年越し蕎麦……ならぬ年越しうどんなんですけど」
と、研究所スタッフMさんにお裾分けしたところ、お礼にと毎年自宅で正月に作っているというお餅をいただいたのだった。角切りの餅をじくじく中まで焼いてあっためてから小豆と共に。やっぱり真空パックの餅より断然美味しい〜。

Bellevue 「Grand China」にて
 焼き餃子
 芙蓉雉粟
 五目炒飯

クリスマスシーズンも終わり(正確には終わってないみたいだけど、終わったようなもの)、クリスマス関連商品は現在投げ売り状態。プレゼント用の子供向け商品なども同様に安売り状態で、息子にあげたクリスマスプレゼントのシリーズ商品が半額以下になっていたりしてちょっとばかり悔しい気分。クリスマスツリー用のライトなどは100個1.6ドル程度で買っていたものが今は更に40セントなんて値下がり具合で、思わず2つばかり購入してしまう。来年のクリスマスツリーは一層キラキラピカピカな演出ができそうだ。これだけライトが揃えばベランダだって光らせることが可能だ(でも、それはちょっとやめておく)。

昼御飯は、先日忘年会で食事した「Grand China」に食べに。あの時出してもらった料理は、どれもアメリカーンな味がしない完璧な中華料理だった。"アメリカ飯"は好きだけど、"アメリカン中華"というものになると少々つらいものがある。酢豚系の料理はジャムみたいな甘さのテラテラしたタレにまぶされていて、八宝菜系の料理もまた妙にねっとりした味に。ブッフェともなれば、中華料理店なのに海苔巻きが置かれているのは普通の光景になってしまう。そういう中華料理事情だったので、この店のこの料理が稀少な存在に思えてしまう。

そういうわけで、すごくすごく美味しかったので改めて家族で行き、通常供しているらしいブッフェ料理には目もくれず(ご主人のチェンさん曰く、"ブッフェの中華なんてなぁ、あれは中華料理じゃねぇ、アメリカンフードだ!"だそうなので……でも、他の中華料理店のブッフェよりは余程美味しそうではあった)、「チャイニーズメニューをくれる?」と中国語メニューを出してもらう。
忘年会のメニューをチェンさんと話し合って組み立てたのがだんなだったこともあり、店員さんにもチェンさんにもだんなの顔はしっかり覚えられていたらしい。入店するなり「おお!よう来たよう来た!」とチェンさんとだんながいきなり握手。その後も何人かの店員さんが「また来たね〜」という感じにテーブルのそばにやってきて「これがオススメ、美味しいよ」などとメニューを指さしてくる。

「これ、これ、美味しそう!」
と漢字がメインのメニューを眺め、「芙蓉雉粟」なるものに。鶏肉と卵白を炒め"rich white sauce"と共に、といった説明がされていて"なんだか旨そう!"とこれをメインに持ってくることに。あとは4個1皿の焼き餃子を2皿、五目炒飯を1つ。ふらっと来てアラカルトメニューなど頼む人はいないのか、餃子の準備に時間がかかっていたらしい。焼きたての餃子がやって来た後は、それを食べ終えた後に芙蓉雉粟と炒飯がすぐさまやってきた。
「ごめんねごめんね、時間かかっちゃったよ」
という言葉と共にやってきた餃子は、確か1皿に4個だったはずなのに1皿に6個、合計12個乗っている。どうもオマケしてくれたらしい。
小龍包のようにプリプリした皮は、どうやら自家製っぽい。一度蒸してからこんがりと焼き色をつけているようなそれは1個1個がけっこうでかい。ほんのり辛い酢醤油タレが添えられていて、家族3人で餃子を山分けして食べた。皮も具もブリブリと歯ごたえがあり、肉汁たっぷり。「焼き餃子」で想像するそれとはちょっと違うものだけど、これはこれですごく美味しい。水餃子をスープに入れずに焼き付けたような、そんな感じ。

そして芙蓉雉粟。どれが鶏やらどれが卵白やら、とすっかりわからないほどに鶏と卵が一体となってふわふわと炒められ、グリンピースとにんじんが散らされている。ベースは塩味、スープの味がしっかりとする馴染みのある味だ。シンプルな味だけど、いくらでも食べられそう。「ミックスミートでいいのね?」と言われて頷いた炒飯は、焼き豚やら牛肉やら腸詰やらが入ったボリュームたっぷりなもの。香ばしくてパラパラ、モヤシや卵もたっぷり入っている。ディナーサイズでたっぷりやってきた炒飯は、軽く3人前ほどはあったのにたったの6ドルだ。さすがに全部は食べきれずドギーバッグに詰めてもらい、全部で30ドルちょっとの昼食を終えて会計を済ませると、奥からチェンさんが出てきて、「これあげる」と。手の平サイズの焼き饅頭のようなそれを差し出し、
「これね、ウチのファミリーオンリーなお饅頭」
と言って紙ナプキンにくるんだそれを渡してくれた。
予期せぬお土産までもらってしまい、うきうきと店を後にした。

スパゲッティ アルフレッド
ペリエ(レモン)

ボリュームのある昼御飯を食べてきたので、夕御飯は軽く軽く済ませることに。
「瓶詰のスパゲッティソースがあるけどー?」
「うーん、それでいいかなー……」
と、瓶詰ソースを使ってのアルフレッドスパゲティ。

「Fettuccine Alfredo」といった料理名(スパゲッティよりフェットチーネやリングイネなどの幅広パスタと合わせるのが基本らしい)でアメリカの数多のレストランで見かける"アルフレッドソース"なるもの、日本では聞いたことがなかった。なんでもローマが発祥ではあるものの、イタリアよりもなぜかアメリカで多く食べられているソースらしい。味は「クリーム味」以外に形容しようがないのだけれど、Williams-Sonomaのレシピを見ても材料は「生クリーム、バター、チーズ、以上!」という感じだったので本当にそれで良いらしい。つまり、カルボナーラの卵抜き……みたいな感じで良いのだろうか。

作り方を見てしまうと、瓶詰ソースなど買ったりせずとも3分くらいで作ってしまえそうなものだけど、面白半分に数週間前に買ってきた瓶詰があるのだった。瓶の裏の"作り方"を見ると、「チキンアルフレッドは、ソースに卵を混ぜて焼いたチキンを絡めまーす」みたいな事が書いてある。卵入れたら、まんまカルボナーラでは……?と内心ツッコミを入れつつ、コクが欲しいので卵も混ぜてパスタと絡めて食べてしまった。

白胡椒の辛さがほんのり感じられるソースはグラタンの生地(ベシャメルソース)の味に似た、確かにアルフレッドソースそのもの。ねっとりこってりしていて、カルボナーラとは微妙に違う。この粘度の強い食感が、きっとスニッカーズやヌガーを愛する国民にうけているのね、と分析してみたり。

1/5 (日)
ひじきと鶏肉の治部煮 (夕御飯)
「Alpha Bakery」の
 カレーパン
 グリーンオニオン&ハムロール
牛乳

昨日買ってきた「Alpha Bakery」の総菜パンの朝御飯。定番のカレーパンに、最近お気に入りのグリーンオニオン&ハムロール。ほんのり甘いパン生地の中央に、マヨネーズ和えしたハムとたっぷりの刻み葱が乗せられているものだ。カレーパンも葱ハムパンもアメリカの総菜パンとは思えないどこか懐かしい味。いつもながら旨い。

自家製肉まん
「Grand China」の  五目炒飯
 焼餅
プーアル茶

今日は家でだらだらだら。昼御飯は、昨日の昼食で持ち帰ってきた炒飯と、店のご主人が帰り際にくれた焼餅(シャーピン)、それに自家製の肉まん、と中華な光景になった。作りたての炒飯が当然一番美味しいのだけど、時間が経ってもそこそこ美味しいのがありがたく、嬉しい。焼餅は、小龍包の皮に似たもちもちした(そしてちょっとパンっぽくもある)生地に餃子のタネに似た具が少量詰められたものだ。厚み1.5cmほど、直径8cmほどの円盤状のころりとしたもの。1個のそれを4等分して分け合って食べた。お供にはプーアル茶。
「うむ、中華だ」
「とっても中華だ」
と納得しあいながら口に運ぶ。

ひじきと鶏肉の治部煮
蟹の湯葉巻
わかさぎの佃煮
つぼ漬け
海苔
羽釜御飯
わかめの味噌汁
ビール(MICHELOB)
抹茶入り玄米茶

昼の中華な食卓に続き、夜は純和食な食卓。
「あ〜……米をわしわしと食べたい気分」
とだんなが言い、稀少品(実母が日本から数kgだけ送ってくれた)のあきたこまちを研ぎ始めた。では、と私はそれに合わせて味噌汁の準備と、「ひじきと鶏肉の治部煮」の作成に。ひじきは戻して軽く茹でただけで皿に盛り、小麦粉をはたいた鶏肉を醤油と味醂の味付けで甘辛く煮付ける。小麦粉でとろんとなったそれを煮汁ごとひじきの上からかけて完成。ひじきを食べるのは久しぶり。大好物というほど好物ではないけれど、時々無性に恋しくなる。ご飯の友に、と焼き海苔やら佃煮やらつぼ漬けやらを並べたところ、まるで民宿の朝御飯のような光景になった。すべてのベクトルがご飯に向いているような晩ご飯。

ビールは早めに飲み干して、左手からご飯茶碗を離さない勢いではふはふと食べる。
「佃煮とご飯、うまー!」
「こう、焼き海苔に醤油をつけてご飯をくるんで……うまー!」
「もう、つぼ漬けだけでご飯3杯くらいいけちゃうよねぇ」
などと、2合の米はすぐになくなった。息子までもが
「おのりとご飯、食べるよー」
「つくだに、ちょーだい」
「とりにくも、ちゃんと食べたよー」
と私たちにつられたように食べる食べる食べる。息子もご飯茶碗に2杯の米の飯をしっかりと平らげてしまったため、「今後"米の飯をわしわし食べたい"場合は3合炊くことにしよう……」という合意が我が家の中でできあがったのだった。