食欲魔人日記 03年11月 第1週
11/1 (土)
ランチはなつかしの学校給食(もどき)
「551蓬莱」の豚まん
アイスコーン茶

ここ2日出歩いて「週末は寝ていたい感じなのよね」という心境だったのだけど、本日土曜日は先週に行けなかった合羽橋に行く予定なのである。えいやっと早起きして洗濯機を回した。朝のうちは小雨模様だったけれど、予報では「曇り」ということだったので、「晴れたまえー晴れたまえー」と空に願かけをしておいてみる。私は雨女な傾向があり、私が楽しみにしているイベントほど雨になる確率が高い。「べ、べつに、そんなに楽しみにしてるわけじゃないんですー、だから、晴れてくださいー」と、よくわからない願かけをしたのであった。

だんなも9時前に起きてきて、昨夜は9時半過ぎに布団に入った息子もほどなく起きてきた。ちゃちゃっと食べた朝御飯は、「551蓬莱」の豚まん。なんでも日本橋のデパートのイベントに現在出店しているらしく、だんなは先日わざわざ昼休みにデパートに赴いて買ってきてくれたのであるらしい。豚まん4個と焼売とちまきの入った袋を渋谷で渡された私は、スーツやハイヒールなどの荷物と一緒に必死に昨日持ち帰ってきたのだった。今日の豚まんには、私の汗と苦労が吸い込まれている。夫よ息子よ、心して食べるように(でも蒸してくれたのはだんな、買ってくれたのもだんな……)。

お供には、アイスコーン茶。とうもろこしを黒く炒ったもので淹れるお茶は、韓国のものだ。アメリカにいたときに、馴染みの韓国料理屋のおばちゃんが何度も出してくれ、その味が妙に好きになってしまった。先々月に駅前にオープンしたちょっと高級めなスーパーにコーン茶が置かれているのを発見し、うきうきとその大袋を買ってきた。温かくして飲むのが通常のようだけど、冷たくしてもほんわかと甘くて美味しい。熱湯で数分煮出してから自然に冷まさなければいけないようなので、なかなか面倒なお茶ではある。ポップコーンの味がして、くせになる。

稲荷町 「ブラッセリー給食当番」にて
 給食セット(カレーシチュー・揚げパン・冷凍ミカン)
 ミルメーク牛乳(ココア味)

午前10時半過ぎに家を出て、まず向かったのは赤坂にあるホテルのスィートルーム。先日パーティーに出たときの主役、A先生が今日アメリカに帰ってしまうのだけど、先生、「八つ橋」がいたく気に入ってしまったらしい。だんなに、「どこで買えますか?空港でも買えますか?」と聞いてきたということだけど、成田空港に八つ橋はないんじゃないかなぁ……と、東京駅の全国土産コーナーで購入してホテルまで届けてあげることにしたのだった。荷造りでバタバタしている部屋にお邪魔してしまい、
「これはノーマルなタイプ、で、あと、マロン味と抹茶味もセットになってまーす」
と、2箱の八つ橋を無事手渡すことができた。アメリカ滞在中にこれでもかとお世話になってしまったA先生夫妻なので、せめて日本にいらした時にはせっせと恩返ししなければ。

午後1時近くなり、すっかり空腹になってしまった胃袋を抱えて向かった昼御飯には「ブラッセリー給食当番」。前回やってきたのは、もう3年も前のことだ。以前は稲荷町の駅からてくてく歩かなければならなかったのだけど、今は大江戸線の「新御徒町駅」で降りれば、すぐ目の前に店がある。非常に行きやすい状態になっていた。ホームページのクーポンページをプリントアウトすれば、揚げパン1個がタダになる。「息子の分はこれだな」「うむ、息子の昼御飯はこれだ」と、揚げパンは息子に。私は前回も食べた「給食セット」、だんなは「本日の給食」という日替わりもの。200円足して、ミルメークつきの牛乳もセットにしてもらった。創作系の料理も出すお店だけど、店名のとおり、名物は給食的な料理だ。店内も、どこか学校の教室のようなしつらえになっていてちょっと面白い。

私のは、カレーシチューと揚げパン(砂糖、きなこ、抹茶、ティーオレ、なんて味から選べる)、冷凍ミカンのセット。無料で御飯もつけてもらえる。だんなのは、蓮根入りのハンバーグとカニクリームコロッケ、千切りキャベツ、それにたらこスパゲティのセット。味噌汁と御飯がついてくる。先割れスプーンに、アルマイトの食器類。牛乳もちゃんと瓶に入って出てきて、「いかにも」な光景が広がった。

きなこ味の揚げパンには、たっぷりとグラニュー糖ときなこがまぶされ、じゅわっと染み出る油が懐かしさぷんぷん。じわっと辛さもあるけど甘くトロンとしたカレーシチューに、最初はガチガチに固くてそのうちやわやわと溶けてくる冷凍ミカン。どれもこれも、「そうそう、これが給食って感じ」とうるうるしたくなるものだったけれど、どれも思い出のその味よりも4割増しくらい美味しいという印象。
「揚げパンおいしー。美味しいけど、思い出より美味しい」
「カレーシチューもうまー。旨いけど、思い出よりかなり美味しい」
とニヤニヤしながら"給食"を楽しんだ。

給食セットには他にもソフト麺とミートソースの組み合わせなどもあり、これもまたたまらないものがある。このお店、ビミョ〜に「ちょっとイヤな感じのウケ狙い」な匂いも感じられるのだけど(せっかくの学校風の内装なのに芸能人の色紙をべったべたと並べてあったり、「マスコミに大人気!」なあおり文句が多かったり……)、充実した給食風の定食は食べ応えがあり充実しているし、近所にあったらもっともっと通ってしまうだろうなぁという感じだ。

錦糸町「つばめグリル」にて
 つばめ風ハンブルグステーキ
 セット(コーンスープ・サラダ・パン)
 生ビール

昼食後はいざいざ、と合羽橋道具街に。数百メートルの道路沿い、両側にずらずらずらーっと、ひたすらひたすら食器や調理器具、料理のサンプル専門店に厨房機器、のれんや椅子や看板や食材……と、料理好きな人にはもうたまらないショップが並んでいる魅惑の街だ。もう大好き。大好きだけど、一度行ったら倒れそうになるまで歩き回ってしまって疲れ果ててしまうあげくに大枚はたいて買い物をしてしまうので、あまり行けない街でもある。行くたびに、我が家には怪しい調理器具が増えて行ってしまうのだ。

今日の目的物はほんの数点だったにも関わらず、やっぱり今日もビニール袋や紙袋を何個も何個も盛大にシャラシャラさせながら帰宅することになってしまった。
「まえ田」という陶器を扱う店で平皿を購入し、業務用食材を扱う「本間商店」で市価の4割引ほどの価格の"カルピス特撰バター"やら呆れるほど巨大な顆粒鶏ガラスープ、ケチャップかマヨネーズかというサイズのコンデンスミルクなども購入。

サンプル屋の「まいづる」(サンプルショップはいくつもあるけど、ここが一番好き〜)では、「合羽橋に来たら、毎回1個、買って帰ろう」と決めているレンゲシリーズのうち、今回はオムライスを購入。中指ほどのサイズのレンゲにラーメン(ちゃんと刻み葱やナルトが乗っている)だのチャーハンだのエビチリだのたぬきそばだのが乗っているこのシリーズは、本当に精巧で本当に美味しそう。オムライスは、薄焼き卵のヒラヒラも再現されていて、めちゃめちゃ美味しそうなものだった。行くたびに、大抵外人さんたちが数人お店に入っていて、アメージングだのワンダフォーだのと感動していたりする。

ケーキ屋さんの「銀のぶどう」と同じ母体が経営している食器屋さんもある。和食器専門の「田窯」、洋食器専門の「キャニオン」という店だけれど、どちらも価格は若干高めに感じるけれどなかなか素敵なものが多い。
「うはー、このお皿、使い勝手良さそう……色もステキ……」
と涎を流しつつ、吟味して吟味して本当に欲しいものだけ買ってきた。その割になんでこんなに荷物が多いのか。

前回合羽橋に来たとき、私は赤と緑で唐辛子の絵柄を配した和皿が欲しくてしょうがなかった(結局一枚も買わなかった)。今回、ときめいてしまった柄は「たこ唐草」(こんなの)。たこの足が唐草模様になったような、ペイズリーに似た青い柄の和食器だ。別に目新しい柄なわけじゃないのに、妙に気になる皿があちこちにあり、思わず平皿1枚、小さな角皿4枚を買ってきてしまった。一度気になり出すと止まらなくなるもので、
「あ、ここにもタコが……」
「あ、あれもタコ……」
と、脳裏はたこ唐草一色に。同じような柄の同じような皿でも青のにじみ具合などが微妙に異なり、見ていると飽きない。ああ、徳利やお猪口にまでタコ模様……。

欲しかったサンマ皿(いつも足と頭が皿からはみ出る皿を使っていたので、なんとかしたかった……)も買えたし、先日欠いてしまったスープ皿の代わりのものも買えたし、大満足。

これまで何度も何度も合羽橋を訪れていたのに、ホームページを見つけるまでその存在を知らず、今回初めて訪れた店もある。「三宝園」という、台湾茶と茶器を扱う店がそれなのだけど、小さな店には良い感じの茶器がぎっしり並べられ、店主のおじさんがにこやかに阿里山のお茶(後で見たら50gで2000円ほどもするお茶だったりして……)を淹れてくれた。ガラス製の茶海とステンレスの茶こし、お茶も1パック購入。
「こんなにお店があるのに、案外と中国茶器を扱うお店ってないんですよね」
などと話しつつ、疲れた足も休ませることができて本当に助かった。

で、6時前に合羽橋を出る頃には(3時間半以上もほとんど座らずに店を巡っていたらしい……)、よれよれ。
錦糸町の駅前にある「つばめグリル」でハンバーグを食べてから帰宅した。銀座の本店も割とざわついた店だけれど、錦糸町のこの店はなんだか一層ファミレス感が漂っている感じ。それでも、アルミホイルにくるまれて焼かれた、ビーフシチュー入りのハンバーグステーキは銀座のものとさほど変わらない懐かしい味がした。
で、でも、あまりの疲れにその味もなんだか記憶に残らなかったりして……ごめんつばめグリル……。

11/2 (日)
かぼちゃのプリンを作ってみました
「やまうち」のうどん ひやひや

今日はそれほど遅い時間に起きたにも関わらず、気がつくともう9時半を過ぎている。
「たいへんたいへん、あまり時間がないじゃなーい」
と焦りながら、私はかぼちゃの皮を剥き始めた。約束まで2時間、そのうち1時間近くオーブンを動かしていなければならなかったので、あまり時間はなかったりする。

私がきゃーきゃー言いながら砂糖をテフロンフライパンで熱したり生クリームを計量したりする間、だんなが朝御飯の準備をしてくれた。朝御飯は冷たいうどん。冷凍うどんと濃縮だしではあるけれど、愛してやまない"宮武系"のシコシコ感やいりこだしの香りが感じられる美味しいうどんだ。刻い万能葱をたっぷり散らし、冷凍保存してあった揚げ玉をかけつつ1人1玉綺麗に食べた。

そして友人との待ち合わせの前にせっせと私が作っていたのはかぼちゃのプリン。
数カ月ぶりに会う高校来の友人Sちゃんが今日は遊びに来るのだけど、おやつに何か手製のものを用意しようと以前から考えていたのだった。タイミングよく仕事で「かぼちゃのプリン」のレシピを扱い、「これはいい!これにしよう!」と決めてみた。レンジで柔らかくしたかぼちゃをフードプロセッサーに入れ、砂糖や卵や牛乳や生クリームやスパイス類を次々に加えていくだけの簡単なもの。あとはオーブンでじっくり50分かけて焼いていけばできあがりだ。

待ち合わせ前にはめでたく焼き上がり粗熱も取れたプリンを冷蔵庫にしまい、駅の改札に出発。今日は一緒に我が町稲毛が誇る「2大カレー店」の1つにSちゃんを案内するのだ。

稲毛 「Shiba」にて
 組み合わせカリー
 (ベジタブル・ビーフ)
 マサラチャイ(アイス)

めでたくSちゃんと合流し、目指したのは駅近くにある「Shiba」(シバ)。カレー好きの間ではかなり有名なお店なようで、週末ともなると店頭にかなりの行列ができていたりする。今日も開店の12時にならないうちに店頭に行こう、とちょっと早めに向かうことになったのだった。ちょっと早く開店していたようで、11時50分にはすでに数組の客が中に入って席についていた。私たちが注文を済ませ、カレーを待っている間にもお客は続々とやってきたて、ほどなく満席に。

この店の名物は、なんといっても「サービスターリ」という名の混ぜ混ぜカレー。でも、つい毎回のようにこれを頼んでしまうので、私とだんなは2種類のカレーが楽しめる「組み合わせカリー」にしてみた。ベジタブルカリーは固定で、あとはチキンやマトン、ビーフなどから1種類を選択することができる。Sちゃんは初めてということで、サービスターリを。

この店のカレーは、インド系(正確にはネパール)のもの。小麦粉たっぷりもっさりタイプではなく、スパイスがこれでもかと効いたものだ。でもそれほど辛いものはなく(ものによってはかなり辛い)、ターメリックやチリパウダーよりもクローブが強く香る。ちょっと独特な味なので人の好みを選ぶ味で、私の母などはこの店が嫌いであるらしい。私は「大好き、もうサイコー」というほどにはツボではないのだけど、でも2ヶ月に一度くらいはこの店のカレーが猛烈に恋しくなる。風邪のひき始めにここのカレーを食べれば風邪がふっとぶし、胃腸が弱っている時にもここのカレーは薬代わりになってくれる。ある意味便利なお店だったりする。ドリンク類がまた、好みな味なんだな。

今日注文した飲み物はアイスのマサラチャイ。スパイス各種の他、生姜がものすごくたっぷり入ったアイスミルクティーで、飲むと辛さと甘さが同時に舌に広がってくる。生姜のじわ辛感が、とても好み。それを口直しにちょこちょこ飲みつつ、今日もスパイシーなカレーを楽しんだ。トマトの酸味が色濃く感じられるベジタブルカレーには、ごろりとしたピーマンと茄子が入り、ビーフカレーにはほろほろに崩れつつある肉がたっぷりと褐色のサラサラソースに沈んでいる。鮮やかな黄色のサフランライスに、それらを単品でかけてみたり、混ぜてかけてみたりしながらばくばくと平らげた。相変わらず「クローブウゥゥゥゥ〜」という甘辛いような独特の芳香がぷわりぷわりと強く漂うカレーだった。やっぱりここのカレーは美味しい。

以前は料理がテーブルに出てくるまで、ものすごく待たされた記憶があったのだけど、スタッフが増えたからか手際が良くなったからか、さして待たずに料理がテーブルに並んだ。いつもは「混んでるからちょっとダメです〜」と断られたチャパティも息子用に注文することができて(で、いつもダメだったので代わりに「パッパル」という薄焼き煎餅のようなものを頼むのが通例だった)、ちょっと得した感のある今回の食事だった。チャパティについてくる、甘じょっぱいチャツネがまた好みな味。

「Sweet Sanctuary ISO」の抹茶ロールケーキ
自家製かぼちゃプリン with アイスクリーム
台湾茶(阿里山2003春茶 明前)

昼食を終えて家に帰ってきた頃には、かぼちゃプリンも良い感じに冷えつつあった。Sちゃんがお土産に持ってきてくれたのは、「Sweet Sanctuary ISO」(スイート サンクチュアリ イソ)というお店のロールケーキとたっぷりの焼き菓子類。東向島のケーキショップだそうで、つい最近浅草にもオープンしたお店であるらしい。パッケージがちょっと洒落た雰囲気で、焼き菓子はいかにも美味しそうにつやつやと光っている。

「台湾でこんなお茶器を買ってきたよー。あと、これは数日前に買って、こっちは昨日買って……」
と、ここ数ヶ月で呆れるほど増えてしまったお茶器を披露しながら、昨日合羽橋の「三宝園」で買ってきた台湾茶を淹れてくぴくぴと飲む。台湾の阿里山の烏龍茶で「明前 春」とラベルに書かれたそのお茶は、お店の主人が試飲にとふるまってくれたものと同じお茶だ。50gで2000円くらい。贅沢かなぁと思いつつ、喫茶店の美味しいコーヒーが1杯500円とかすることを思えば安いものだとも思う。茶葉の形はとても美しく、丁寧に丁寧に丸められていた。

小皿に薄切りにしたロールケーキと、小さく切ったかぼちゃのプリン、プリンの脇にひとすくいのバニラアイスクリームを添えておやつにした。甘く煮た小豆がクリームに混ぜられたロールケーキは、抹茶入りの生地。シンプルな生クリームがメインになっていて、好みな具合のシンプルさだった。お茶が進んでお菓子も進んで、楽しい時間。
でもでも、息子よ、Sちゃんは君のお友達じゃなくて私のお友達なのだ。
「SちゃんSちゃん、一緒にパソコンで遊ぼうよ〜ほらほらー」
などと誘惑しまくって連れ歩くのはやめて……おかーさんとお話させて……。

だんな特製 天津丼
枝豆
ピータン豆腐
菊花のおひたし
茄子のおろし醤油
ビール

かぼちゃのプリンwithアイスクリーム
カフェオレ

今日の夕飯は、今ひとつやる気がない。やる気がないままに駅ビルで総菜でも買ってこようと思ったのだけど、今ひとつ「これ!」という総菜も見つからない。ありもので適当に準備しよう……と家に帰り、だんなと相談した。

「肉とか、何があるの?」
「豚と……あと鶏も少々。野菜はね、白菜もキャベツも大根も、けっこう何でもある」
「中華丼とか作ったげようか?」
「おぉ〜いいねぇ〜」
「いや……中華丼というより……卵ある?蟹の缶詰もあったっけ?天津丼はどうだろう?」
「あぁー、いいね、天津丼は久しぶりだね。筍の水煮パックも買い置きのがあるよ」
「長ねぎもあったよね?じゃあ天津丼ができるじゃない」

だんながリードしてくれて、夕飯の算段ができた。我が家の天津丼担当は、我が夫。「よっしゃ、やるかぁ!」の声に、私も一緒に台所に立ち、私は副菜類の準備を始めた。「551蓬莱」の焼売を温める準備をし、秋田の親戚が送ってくれた枝豆を茹でる。同じく親戚が送ってくれた菊花もおひたしにしてテーブルに。残りものの豆腐はざく切りにしたピータンと共に皿に盛りつけ、かつおぶしとだし醤油を添える。ちまちまとそういう作業をしていたらけっこうやる気が出てきてしまって、茄子を軽く素揚げして大根おろしも添えてみたりした。汁物は作らなかったけれど、けっこう食べ応えのある華やかな食卓に。

この季節に枝豆というのもちょっとすごいけれど、秋田のおばちゃんが育てたのだという枝豆は、とても濃い「豆」の味がぷんぷんとした。外見は不揃いだけれど、この夏に食べたどの枝豆よりも美味しく感じた。菊花は花びらをほぐしてから酢水でさっと茹でる。だし醤油をかけると、菊の花独特のツンとした香りが感じられ、黄色の花びらは見た目も鮮やか。春菊は確かに菊の仲間なんだなぁ……と、そんな事を考えてしまう。

そしてそして、だんなが作ってくれた天津丼は、久しぶりだったにも関わらず見事なできばえだった。炒めた蟹肉と長ねぎと筍をざっくり卵生地に合わせ、中華鍋で1枚ずつこんがりと焼いていく。両面とも綺麗な焦げ色がついているのに中はしっかり半熟。外で食べる天津丼は、時折ケチャップの下品な甘さがベチャーッとするものがあったりするけれど、だんなが作ってくれるそれは酢と醤油と砂糖で作る上品なもの。焼き加減もも具と卵のバランスも、あんの味も絶妙な天津丼だった。

食後は、
「ほらほら、これ、私が作ったんだよー」
と母に自慢しながら本日二度目のかぼちゃのプリン。母にも大好評で、私はちょっと鼻高々だった(でもこういうものの出来映えというのは、往々にして"作り手の技術"じゃなくて"レシピの完成度の高さ"によるものなのだと自分に言い聞かせ)。

11/3 (月)
白菜と鶏肉のクリーム煮、中華風 (夕御飯)
冷凍カニピラフ
アイスコーン茶

今日は一日雨模様。今ひとつやる気なく、私が洗濯物を干したりなどしている間に、だんなが冷凍ピラフを炒めてくれた。「もしものときに」と冷凍ピラフは常時ちょこちょこっと冷凍庫に入れてあるのだけど、その「もしものとき」は案外訪れてくれなかったりする。で、思い出したようにこういう時に食べるのだけど、それはそれでけっこう美味しく思えちゃったりするのだった。カニだかなんだかわからない怪しく白赤い物体がちょこちょこ入っているけれど、カニかなー、それともカマボコかなー、みたいな。

「モスバーガー」の
 モスライスバーガー ハヤシ
 モスチキン
 ミネストローネ
ジンジャーエール

だらりだらりと平日に録画してあったビデオを見たり、衛星放送で鋭意放送中の「X-FILES」を見たり。見ても見ても終わらないX-FILES(そりゃ、9年に渡って放送していたのを2〜3ヶ月で見ようってんだから)、12月一杯はX-FILES漬けになりそうな予感。DVDのメディア代も、なかなか大変な事になっていたりする。

「お昼御飯は、モスバーガーが食べとうございます」
「……あー、ハヤシね?ハヤシでしょ?」
「そうそうハヤシ。私、それ」
「ダメ。僕がハヤシ食べるから」
「いーじゃん、同じもの食べたって。どこに問題が?」
「いや……ないけど……」

やる気がない割にはあれこれ口論をまじえ、注文内容を決める。私はその新製品のモスライスバーガーハヤシに、モスチキン、先日始まったばかりのミネストローネ。
「今の時間食べちゃうとなぁ……夜までお腹空かないかも」
とか言っていただんなは、その割にハヤシの他に海鮮かきあげライスバーガーも併せて注文していたりする。しかもクラムチャウダーまで。息子はチーズバーガー。「今から20分くらいしたら取りに行きまーす」と電話注文しておいて、だんながちゃらっと買いに行ってくれた。道中、スーパーで夕飯の食材やバーガーと一緒に飲むジュースも買ってきてくれる。

お店に行ったのは、ちょうど2時頃。最寄りのモスバーガーでは、毎日恒例の「匠味」バーガー限定10個が販売開始する時間だった事をすっかり失念していたのだけど、店はそれはそれはすごい人だったらしい。
「昨日テレビで放映したらしいよ。で、お客さんがいっぱい……たまたま2時ちょっと前にレジに行ったからすぐ受け取れたけど、2時なったと同時にずらずらずらーっと……」
帰ってきただんなはちょっとおびえていた。

新発売のそのハヤシバーガー、なかなかすごいブツだった。袋を開けた途端、半熟卵の黄色とハヤシソースの茶色と、カツのオレンジ色が御飯とともにまみれて眼前に広がり、ちょっとばかりギョッとする。そりゃ、パッケージしたバーガーはCMやホームぺージなどで見るような美しい外見にはならないのはわかってはいるのだけど、それにしても「ぐっちゃぁ〜」な光景に少々びびってしまった。手も顔も汚してしまいそうになりながらおそるおそるかぶりつく。

御飯やカツや卵に染みる分、ハヤシの味がちょっとばかり薄いかなぁという印象。この手の味は「何もハンバーガー仕立てにしなくても、ミニ丼で食べれば充分なんじゃないか」と思わなくもなかったりするのだけど、両手で持ってがふっと食べられる醍醐味のようなものが良いのよね。前から焼き肉バーガーなどの密かなファンだったので、今回のライスバーガーも楽しく美味しく食べられた。
「ライスバーガー、不味い不味いって人いるけどさぁ……僕は大好きなんだよね」
と、だんなは2個目のライスバーガーにかぶりついている。いや、でも、午後2時に食べる昼御飯にライスバーガー2個はちょっと多いんじゃないかなぁ……と。

鶏肉と白菜の中華風クリーム煮
台湾からすみのあぶり焼き 白髪葱の胡麻油まぶし添え
茹で枝豆
菊花のおひたし
羽釜御飯(あきたこまち新米)
ビール

「Sweet Sanctuary ISO」の抹茶ロールケーキ
自家製かぼちゃプリン
カフェオレ

夕飯は「白菜を食べましょう」キャンペーン。安いわぁと先日買ってきて、そのまま何も調理せずに放置プレイされていた可哀想な白菜。かぼちゃのプリンを作った余りの生クリームがあったので、「ミルク煮にしてみましょう」と思い立った。白菜のクリーム煮は中華料理でよく見かける料理だ。ハムやベーコンと煮ても良いし、水煮缶の帆立と一緒にしても美味しい。今日は残りものの鶏肉があったので、それと一緒に煮てしまうことにした。

中華鍋に2〜3カップほどの水を入れ、顆粒鶏ガラスープと塩ひとつまみを加えて煮立てる。そこに鶏肉と白菜(軸だけ先に入れ、葉先は後から入れて煮すぎないようにするといい感じ)と入れ、適当に火が通ったら最後に生クリームとか牛乳を入れて沸騰直前まで熱し、片栗粉でとろみをつければできあがり。本当は生クリームや牛乳ではなく、エバミルクを使うのが本来であるらしい。でも、エバミルクなんてそうしょっちゅう使うものではないので、だいたい私はお菓子に使った残りの生クリームとか、普通に牛乳とかを使ってしまうのだった。

「スープ代わりになるけど、でもおかずがこれだけじゃなぁ……」
と冷蔵庫内を眺めながら考え、からすみのパックを開けることに。9月の台湾旅行の際のおみやげだけど、なんとなくもったいなくて今まで開けずに冷蔵庫に突っ込んでいたのだ。2房つながった1ハラから1房切り取り、薄皮剥いてから日本酒をまぶしてフライパンでじんわりと焼いていく。白髪葱も準備して、それは胡麻油で軽くまぶしておく。
あとは、ここ連日の定番となっている枝豆と菊花。秋田のおばちゃんが自家栽培した枝豆は、豆の濃い味がむわむわと漂ってきて、本当の本当に美味しい。これまた「もったいねぇ〜」とか言いながら、毎日ちびちび食べている。

「これ、牛乳で煮るの?……ふーん、スープで煮るの……生クリーム入れるの?とろみは勝手につくの?あぁ、片栗粉……」
と、今日も母はしげしげと料理を観察しながらつついていた。料理は苦手、というか、「前向きに嫌い」という母。「娘に教えてもらうなんて、普通と逆よねぇ〜」と笑っているけど、でも私は母の料理が不味いと思ったことは一度もなかったりする。あんまり私は料理作れないしね、とその代わりにか母は一人娘の私をそれはしょっちゅう外食に連れ出してくれていたし、思い返すと、私は美味しいものを食べて育ってきたんだなぁという感じ。

「しちゅー?シチューだぁ〜うれしい〜」
と、息子は白くとろみのあるクリーム煮を見て、嬉しそうだった。シチューっていうか……じゃがいもとかは入ってないよ?白菜と鶏肉だけだよ?と器によそってやったのだけど、彼にとってはなんの問題もなかったようで、がつがつと食べたあげくにお代わりまでしている。

そして、今日の夕飯でなんといっても幸せだったのは新米のあきたこまち。枝豆や菊花と共に親戚が送ってくれた10kgのあきたこまち、他に無洗米やちょっと前の米も余っていたのだけど、辛抱たまらず開封して炊いてしまった。水分を多く含んだ、ピカッとしたいかにもツヤのある新米。今年はあまり良い出来ではないという噂は聞いていたけれど、手持ちの米よりあからさまに美味しかった。それにカラスミと白髪葱乗せてかっこむと、もうそれだけで5膳くらいいけてしまいそうな危険な美味しさ。

「おかわりしたら、ふりかけかけてくれる?」
 (我が家では、「一膳目の御飯はふりかけをかけてはいけない」という決まりがある)
「あー、いいね、ふりかけ」
「私もお代わりしよ……」
「僕ももう一口食べよ……」
と、いつにも増して大人気の白米だった。玄米や麦飯の美味しさもわかるけど、やっぱり白い御飯は格別だ。

11/4 (火)
大根とツナのサラダ。簡単な割に旨かったー (夕御飯)
おばあちゃんの赤飯
抹茶入り玄米茶

昨夜、お義母さんが
「はい、これ。あんたたちに〜」
とおばあちゃん手製のお赤飯を渡しに来てくれた。昨日はだんなのおばあちゃんの誕生日。でも今週末には息子の七五三のお参りも控えているしということで、今年はお祝いに行かなかったのである。
ああおばあちゃん、今年は不義理してスミマセン……と良心がちくちくしながらも、今日の朝御飯は遠慮なくそのお赤飯をいただくことに。

冷えた赤飯は、蒸籠で蒸すに限る。でも蒸籠にそのまま御飯を詰めると粘ついて洗うのが大変だし、さらしの布などを使うのも、衛生面でほんのり不安が漂う。ここはテフロン加工のようになっているオーブンペーパーに出てきてもらい、蒸籠に敷いて赤飯を盛り、コンロにかけた。赤飯が温まる間に、今日の弁当も準備完了。

特におかずの類を用意しなかったので、ただただ赤飯だけをもりもり食べる。だんなのおばあちゃんは齢80を軽く超えているのに、今でもレシピを変えて料理を続けているすっごい人だ。ここ数年の赤飯の定番は、「小豆を甘く煮て加える」というものだったのだけど、今回は久しぶりに普通の塩味に戻っていた。でも、よくみると小豆の他にも緑色の小さな豆が入っていたりする。ま、また新バージョン……?

おうちで弁当
 ふりかけ御飯 いぶりがっこ
 豚肉の生姜焼き
 ブロッコリーとベーコンの塩炒め
 キュウリの味噌漬け
アイスコーン茶

今日は親子3人お弁当。定番的な味の組み合わせにしよう、と、おかずは豚肉と玉ねぎの生姜焼き。調子に乗っておろし生姜をた〜っぷりと加えたら、子供に食べさせるには少々不向きな辛口になってしまった。副菜にはベーコンと炒めたブロッコリー、にんにく味噌床に一晩漬けておいたキュウリ。
「しまったよ、副菜がどっちも緑色だよ……」
と、そのいまいちな配色に内心ショックを受けつつ、あれこれ詰めた。御飯の上に卵のふりかけをかけ、にんじんのいぶりがっこを乗せたら、そこそこ華やかに。

我が家の、いや、我が息子の「いぶりがっこ好き好き」ぶりは、秋田の親戚もよーく知ることとなっているのだけど、先日新米や野菜を送っていただいた中にはいつもの大根のいぶりがっこではなく、代わりににんじんのいぶりがっこが入っていた。なんでも、ちょうど今頃は店頭からいぶりがっこが消え去ってしまうのだそうである。
「12月に入るとナ、今年(ことス)のいぶりがっこサ、出てくっから、まぁた送ってやるべった」
と、電話先でおばちゃんは言ってくれた。どうも、いつもいつもお世話になります……。

ほんと、秋田じゃどこのスーパーに行ってもいぶりりがっこは当たり前のように売られているのに、こっちじゃ全然見かけない。どこかのビヤホールで「美味!薫製たくあん!」なんてメニューがあって、試しに注文したらまさに「いぶりがっこ」そのまんまで笑ってしまったこともあった。

いいかげん、息子用におにぎりを毎日作るのもめんどくさく思えてきてしまい、今日は
「お弁当は食べやすく、おにぎりやサンドイッチなどにしてくださいね」
という幼稚園からの通達を無視して子供用弁当箱に御飯を普通に詰めてしまった。だんなの弁当と、私のと息子のは、単にサイズが違うだけで詰め方はまるで一緒、という光景に。
「幼稚園児向けにしては、またしても渋いものになってしまった……」
と、これまた良心チクチクしながら息子を送り出したのだけど、今日もそれはそれは美しく空っぽな弁当箱が返ってきた。今度は子供向けに愛らしくオムライス弁当でも作ろうかな。

オーブン焼きの"エピ"と羊乳チーズ
牛肉と茄子のソテー
大根とツナのサラダ
野菜とソーセージのコンソメスープ
羽釜御飯(新米!)
ビール

現在、わくわく新米ウィーク。いつもは1膳で抑えている御飯が2膳3膳と重ねたくなってきてしまう危険な週間だ。
「これ、ビールのつまみになるんじゃない?」
と、母が"エピ"なるパン(わさわさと愉快な形状に枝分かれしたフランスパンで、中にベーコンが入ってる)を買ってきてくれたので、冷蔵庫内に残っていた羊乳チーズなど出しておつまみにすることに。あとはおかず1品にサラダと汁物、という、いつものパターンだ。

多分、作るのは今日が初めての大根とツナのサラダをまず準備。千切りにした大根と、薄切り玉ねぎ、ざく切り三つ葉を適当に合わせて水にさらし、醤油と酢と砂糖を同量ずつ混ぜたドレッシングでざっと和える。皿に盛りつけたら、上にツナ缶の油をきって軽くほぐしたものを乗せるだけ。りんご酢があったのでそれを使ってみたところ、米酢よりも柔らかく美味しくできた……ような気がする。

おかずは、以前作ってだんなに好評だった牛肉と茄子のソテー。最初に少量の油で薄切りにんにくを揚げてにんにくは除けておき、同じ油で茄子を炒め、牛肉を炒め、器に盛る。空になったフライパンに酒を注いでアルコールを飛ばし、にんにくを戻し入れて醤油と砂糖も入れたら煮つめてタレに。それを茄子と牛肉の上からぶっかけて、できあがり。にんにくをこれでもか、と効かせると美味しいのだけど、それをやったら母に逃げられてしまいそうなので、にんにくは極力調味料に混ぜ込まない方向で料理した。最初の素揚げもごくごく微量の油で行い、茄子を炒めるのは別の油を使用し、調味料には合わせずに最後にトッピングしただけ。それでもやっぱりにんにく臭さはなかなか強くなってしまい、母はもっぱらサラダをメインにつつく事になってしまった。……ごめん……(でも、時々無性にこういうのも食べたくなるのよー……)。

母、そろそろ秋田に帰っちゃう。
明日の夜はだんなが遅く、母の仕事は休みということで、どこかに食べに行こうかねー、ということになりそうなんだけど……さて、どうしよう。

11/5 (水)
稲毛でフォアグラのステーキが食べられるとは思わなかった……
コンビーフとチーズのホットサンド
カフェオレ

今日は「気合い抜き弁当」の日。だんなは外出の多い日ということで弁当不要、母が仕事休みなので私のも不要、息子の分だけという状態だったので、以前大量に炊いて冷凍してあった栗御飯をチンしておにぎりにし、冷凍グラタン1個詰め、あとは温野菜や果物でごまかすという体たらくだ。ごめんね息子。でも栗御飯だよー。

「そろそろホットサンドの季節ですね」
「ですね」
と、寒さ募る今日この頃、数日前にそんな会話をしていただんなと私。昨日あたりになって、台所の食料棚を見ていただんなが
「コンビーフがあるじゃん!これはホットサンドをせよという神様のお導き……?」
などとうるうるしていた。神のお導き、違う。それは妻のお導き。数週間前に「そろそろホットサンドの季節だから」と先見の明で特売コンビーフをごろごろ購入しておいたのは私。神様に感謝せずに私に感謝しなさい。

で、今朝はたまたま残りものの食パンがあったことだし、と今シーズン初のホットサンド。寒くなると朝食には俄然ホットサンド。毎年飽きずにホットサンド。我が家初代のホットサンドメーカーは、だんなの嫁入り(婿入り?)道具のひとつだったので、結婚してからずーっとホットサンドメーカーと共に我が冬は在る。……あ、去年はホットサンドメーカーとは(物理的距離が)遠い関係にあったので、初めての冷えた関係の私たちとなったんだっけ。

私はあまり具にこだわらない……ていうか、ツナでも卵でもカレーでもピザ風でもどんとこーいなのだけど、だんなの好物はもう一点集中の「コンビーフチーズ」。具はほぐしたコンビーフと、ピザ用チーズという、なんともアメリカ人っぽいというか、割とチープというか、そういうものなのだった。薄切りパン片面にマーガリン(バターでも良いけど、やっぱりここはマーガリンが似合うような気がする)をこてこてと薄く均一に塗り、塗った面を鉄板側になるようにセット。具を乗せたらもう1枚のパンを同様に"鉄板側にマーガリン面"としてセットしぎゅうと蓋を閉めたら、あとは数分加熱する。我が家初代のホットサンドメーカーは1組しか焼けないものなので、現在はそれにプラスして、2組焼きの新マシンも鋭意操業中だ。もしかしたら、いや、もしかしなくても焼き肉プレートなどより大活躍している我が家のホットサンドメーカーだった。

久しぶりのホットサンドは、そりゃもうしみじみ旨かった。マーガリンが染みたところを圧縮されて焼かれたパンはあちこちがサクサクカリカリとなんともいえない心地よい食感になっていて、中からはアツアツのコンビーフと共にチーズがみよーんと溢れてくる。その美味しさは確かにツナサラダや卵サラダのホットサンドを越えるものかもしれなくて、
「あちー」
「うまー」
「サイコー」
と言葉少なにふがふがしながらホットサンドを平らげたのだった。ああ、冬はいいなぁ。

千葉 「銚子丸」にて
 関サバ
 中トロ
 ツナサラダ
 生さんまあぶり
 イクラ
 穴子天にぎり
 銚子伝統手作り玉子
 とろ中おち手巻き
 コーヒーゼリー

我がママン、いよいよ来週頭あたりに秋田に帰ることにしたらしい。もう明日あたりで仕事を辞めてくるのだそうだ。母の中では、着々と「東京に未練を残さないために」プロジェクトが組み上がりつつあるようだ。午前中には突然、
「あーもー、横浜とか行きたいわねぇ!」
と絶叫され(じゃあ金曜日に行く?という話になった)、続いて
「秋田に帰ったら、どうやってインターネットに繋げばいいの?」
という質疑応答が始まった。

母の携帯電話から、ノートパソコン経由でメールやりとりとかネットサーフィンとかをしたいのだそうだ。じゃあ接続用のケーブル買わなきゃダメじゃん、やっぱりヨドバシカメラとか行かないと……という話になったのは、あと15分で12時というところ。息子の幼稚園お迎えまであと2時間という、今日も切羽詰まった行動をとらなければならない状況になった。んもー、あと1時間前に言ってくれれば、もうちょっとバタバタせずにすんだのにー、とバタバタしまくりながら準備して電車に飛び乗る。

めでたく目的のケーブルが購入できたのは12時半。昼食には40分程度しか時間はとれず、どこか手軽なところは……としばし考えた後、結局回転寿司屋の「銚子丸」に足は定まった。味はさほどの変化はないけれど、この店、なんだか行くたびに覇気がなくなっていってるような気がする。今日もやっぱり、ぼそぼそといまいち聞き取れない声でしゃべる板前さんの前に案内された。注文の声、ちゃんと届いているのか不安になる。首も動かさずに目線を上下するだけの頷きはやめて、せめて「はい」の一言でも言ってくれー……という感じ。けっこう気軽に、回っていない品を頼めるのもこの店の良いところだったのに、なんだか行く度に注文するのがイヤになってきてしまうような……。

うじゃうじゃ言ったり思ったりしつつ、でもやっぱりここのお寿司は好きなのである。そこそこ美味しくそこそこ安い寿司を腹一杯食えるし、回転寿司ならではの怪しいメニューも揃っている。ランチタイムはあら汁が無料。
今日も、関サバとか中トロとかイクラといった好物をもりもり食べつつ「穴子天にぎり」などという激しく怪しい品ももりもり食べてしまった。夕食も外食を予定しているので軽めにしとこうね、と言っていたにも関わらず、母と二人で20皿近く食べているのは一体どういうことだろう。

穴子がけっこう脂っこいところを更に天ぷらにして寿司にした「穴子天にぎり」は、「やっぱり穴子の天ぷらは穴子の天ぷらとしてだけで食べる方が良いかもしれない……」とほんのり思う味だった。"ネタ"として美味しかったけど、でも、穴子は普通の穴子にぎりがやっぱり美味しい。母も私もどこかのタガがゆるんでいたようで、
「茶碗蒸しも食べちゃえー」(これは結局やめた)
「コーヒーゼリーも食べちゃえー」(これは結局食べた)
と、なんだか大変な事になった昼御飯。

急いで帰宅する道すがら、小さな雑貨屋さんで1000円の特売品だった小さなオーナメントがうじゃーっとついた木製のクリスマスツリーを買ってみたり、しおれてしまった玄関の花瓶の花の替えを買ってみたり。1000円の雑貨と300円の花で、今日はなんだか一日中楽しかった。

稲毛 「プティ・アリサ」にて\7,000ディナーコース
 スモークサーモンの前菜
 フォアグラのステーキ
 きのこのスープ
 オマール海老のグリル ポテトのピュレ
 ピンクグレープフルーツのグラニテ
 仔羊の粒マスタードソース 葉野菜のサラダ
 パン
 フルーツのタルトとバニラアイスクリーム
 ミルクティー
ビール・グラス白ワイン

母が、食事時のほんの数十分前に
「中華が食べたい」とか、
「塩ラーメンが食べたい」とか、
「杏仁豆腐をお腹いっぱい食べたい」とか、
「美味しいフランス料理もいいわねぇ」とか、
しょっちゅう無体な事を言ってくれるので、ここ数ヶ月私はしょっちゅう「近くに美味しそうな店はないかなぁ」と探していたりした。人が必死で調べてるのに、「まったく、あんたは、食べることばっかりー」とイヤミを言われてしまうので、母がいない平日の昼間などにしこしこ調べてみたり。

で、つい数日前に、ものすごく気になる店を見つけた。「プティ アリサ」というフレンチレストラン。稲毛の駅からバスに乗らなきゃいけないような場所にあるけど、その内容はかなり本格的なフランス料理であるらしい。土地柄、値段も目玉が飛び出るほどのものではないし、フォアグラのステーキが美味しいらしい、というところも気に入った。さっそく今日の午前中のうちに母にお伺いをたててみた。

「美味しそうなフランス料理の店、みつけたよー。バスで行くの」
「ふーん」
メニューの説明などをしても、いまいちピンと来ないらしい母。何しろちょっと不便な場所にあるというのが、彼女の「めんどくさい」ツボを刺激してやまないらしい。それが、
「ああ……んとねー、料理記者歴40年の岸朝子が、誉めてるらしいよ」
の一言で、「まぁ!?」と瞳が輝いた。そう、我が母は、ほんのりミーハーだった。確実に、私の舌より会ったこともない岸朝子の舌を信じているフシがある。

ともかく、岸朝子さまさまということで、お店に「6時に3人でうかがいたいんですけれども……あの、でも、幼児が1人いるのですが、問題ございませんでしょうか?」と連絡を入れてみる。子連れで他のお客の迷惑にならないように、とちょっと早めの予約にしてみたのだけど、
「ええ、今日は……大丈夫ですよ。どうぞお子さまとご一緒に」
と言っていただいた。いざいざ、と駅前からバスに乗り、8駅ほど先のその店に向かってみる。

店内、どことなーく山小屋の雰囲気が漂う、あったかみのある空間だった。テーブルの数は10個くらい……だろうか。こぢんまりとしていて、テーブル間の余裕もあって、良い感じ。ちゃっかりとホームページのクーポンを印刷して持参し、ワインやジュースを1杯ずつサービスしてもらった。夜のコースは3800円から15000円まで。魚料理も肉料理も食べられる5000円のコースで充分かな、と思っていたのだけど、ターボエンジン稼働中の母が、高らかに
「やっぱりフォアグラも食べなきゃね!グラニテもついてくるし!」
とワンランク上のコースを注文した。かくして、豪勢な夕食に。

値段もけっこうな夕食になったけれど、内容もかなりゴージャス。手始めに、といった風に出てきた前菜は、スモークサーモンをセルクルに固めた前菜。玉ねぎや香草、ケッパーなどと叩いて型に詰め、上には大きな一枚のスモークサーモン。息子にはスープだけを注文して、おかずは私たちのを分けてやろうということになっていたのだけど、
「あ!スモークサーモン〜」
とめざとく皿を観察し、私の皿からも母の皿からもたっぷりもらってもりもりと食べ始めた。スモークサーモンと生ハムが好きな5歳児なんて、つくづくいかがなものかと思う。

どの料理も、未知の味のものはさほどなく、でも逆に安心して「そうそう、こんな感じがフランス料理」(と語れるほどにフランス料理を食べつけているわけではないんだけど)と感じながら食べられる、地に足のついた美味しいものばかりだった。中がふわんとろん、表面はカリッと、絶妙に焼けたフォアグラのステーキは想像以上のボリュームがあり、フォアグラの下には美しくイチジクが敷かれていた。イチジクは果物としても美味しく、肉や野菜にも絶妙に似合う不思議なフルーツだ。

サーモン、フォアグラときて、次は息子が一気飲みする勢いで平らげたきのこのスープ。エリンギと舞茸と……あと、もしかしたらポルチーニも入っているんじゃないかなという、香り豊かな白いクリームスープだった。スープはひたすら滑らかでとろんとろんとしており、その底にはざっくりとした大きさのきのこがたくさん沈んでいる。私たちは軽くカップに一杯、息子のそれはボウルに一杯。なにやら満足気だ。

魚料理はぶつ切りの海老のソテーにたっぷり香草類を乗せたもの。海老の土台になるかのようにふわっとしたマッシュポテトが敷かれていて、海老味噌が入っていると思われる濃厚な茶色いソースが皿を飾っている。
そして肉料理は仔牛、牛フィレ、仔羊、鴨のどれかから選べるもの。母は鴨で私は仔羊。どちらも数種類の野菜が使われたサラダが添えられてきた。コースの中の一品にしてはかなりのボリュームがあって、これがもう、やたらと嬉しい。仔羊の火の通り具合も、断面が見事なバラ色。脂は甘くジューシーで、「い、稲毛でこんな仔羊が食べられるなんて……」とかなりびっくりしてしまった。適度に酸味の利いた粒マスタードのソースも、洗練されているのにとんがった主張はない、優しい味。

そしてデザートはフルーツがこれでもかと乗ったタルトだった。大きくはないタルトはアーモンドの香りがして、上部には葡萄にラズベリーにブルーベリーにリンゴに苺にイチジクにキウイに柿に……と、大変なことになっている。大きな皿にはそのタルトと、バニラアイスクリームにカラメルのソースを添えたものが乗せられていた。最後にはミルクティー。

紅茶を注文するとき、大抵「ミルクかレモンか?」と聞かれるので、よほどレモンティーが恋しい時を除いては「ミルクティーで」と答えている。ブラックで飲みたい時でもミルクティーを注文しておけばまず間違いなくミルクは別容器でやってくるから、おおむねそれで問題はなかった(だったら最初から「ブラックで」と言えば良いんだろうけど、「ミルクかレモンか?」と聞かれたら、なんとなくどっちかを答えなきゃいけないような気になっちゃうもんで……)。

だから今日もついいつものノリで「ミルクティーを」と答えてしまったのだけど、やってきたのは見事なまでのロイヤルミルクティー。ていうか、少量のお湯で煮出してからミルクを加えたような、それはもう「チャイ」に近いミルクティーだった。
「うっわ、食後に、マジもんのミルクティーがきた……」
とびっくりしてしまったのだけど、これがもう、濃厚でめちゃめちゃ美味しくて。食後の一杯まで、こういうものを準備してくれちゃったところがまた嬉しくて気に入ってしまい、私たちはすっかり御機嫌で店を後にしたのだった。我が母はターボエンジン入りっぱなしで、帰宅はタクシー。この分じゃ、明後日の横浜もきっと豪遊モード……。

11/6 (木)
合羽橋での戦利品、レンゲ一口サンプルシリーズ。もうこれ、大好き。
おばあちゃんのお赤飯 ごましおだばだば
緑茶

昨日は喰い倒れ的一日を過ごしてしまったし、横浜に行く予定になっている明日もきっとあまり変わらない状況になるような気がする。
「今日は一日、さらっとさらっと過ごすことにしよう……」
と心に決め、それを決行。昨日は日付が変わってから帰ってきただんなとしばらくおしゃべりしてから寝たものだから、眠くて眠くて仕方がない。8時過ぎに全員で起きてバタバタと活動を始めたので、朝御飯も非常にいい加減な感じで各々家を出ることになったのだった。

で、寂しい料理写真を撮るよりは、と、先日の合羽橋での戦利品を撮影してみたり。
レストランのショーケースを飾るサンプルを作成販売するお店がいくつかあるけれど、私が大好きなのは「まいづる」というお店。

1個1800円前後というそれは、決して安くはないのだけど、中指ほどの長さのレンゲに一口分ずつの料理が盛られたマグネットやキーホルダーのシリーズが、それはそれはお気に入りだったりした。前々回の合羽橋訪問の折に初めて購入に踏み切り、ラーメンと炒飯を買ってきたのだけど、行く度に1個ずつ増やしていってみようと心に決めている。で、前回買ってきたのがオムライス。ツヤツヤしたグリンピース入りのケチャップライスも相当見事なのだけど、ふわっと仕上がった卵の具合が涎が出そうなほどすばらしい。次回は海老チリを買おうかなぁ(中華好き)。

一人の朝御飯兼用昼御飯は、茶碗1.5膳分ほど残っていたおばあちゃん手製のお赤飯。蒸籠で十数分かけて蒸し、ごましおをざかざかかけていただいた。お供は緑茶オンリー。

牛しゃぶのおろし醤油&茹でアスパラ
レタスと玉ねぎときゅうりのサラダ
菊花のおひたし
バターバゲット
ビール

「Mitsu Tea」の紅茶(ディンブラ)
自家製かぼちゃのプリン

だんなの帰宅は遅いらしい。で、母と息子3人の夕御飯は、母好みのサラダやシンプルな味の肉料理にすることにした。すき焼き用の安売り牛肉はしゃぶしゃぶにしてしまい、大根おろしを添える。肉だけじゃ彩りもいまいちなので、茹でたアスパラも一緒に皿に盛りつけた。これはおろし醤油を添えたり、マヨネーズをちろりとかけたりして食べる。

あとはレタスと玉ねぎときゅうりを使っただけのサラダ。少量残っていた菊花のおひたしもテーブルに出し、あとはビールとバター風味のフランスパン。シンプルな料理をビール片手にちょこちょこと楽しんだ。じっくりと手間暇かけて作ったソースを添えた絶妙の焼き加減の肉料理をレストランで楽しむのもすごく幸せなことだけど、家でだらだらーんとした格好でだらだら〜んとおろし醤油で茹で肉を食すのもまた、幸せなことだ。

「なんか、あったかいものを最後に飲みたいわねぇ」
という母のおぼしめしだったので食後に淹れたのはミルクティー。先日Sちゃんが遊びに来てくれたときに、「ここのお茶、美味しかったからー」とお裾分けしてくれた紅茶は、Mitsu Teaというお店のディンブラなるもの。ミルクティー向きの、細かく細かく砕かれた紅茶葉で、牛乳を加えても少しも負けない深い味のすんごく美味しいお茶だった。甘さすら感じられる紅茶で、久しぶりにめちゃめちゃ気に入ったお茶っ葉だった。なくなったら今度注文してみよう。ありがとうSちゃん。

11/7 (金)
ママンと中華街。上海蟹入り小龍包を食べてきた〜
卵サンド・プチウィンナーサンド
みかん
紅茶(ウバ)

息子に昨日、正直に相談してみた。
「お母さんとおばあちゃんはね、明日横浜に遊びに行こうかなって思ってるのね。一緒に行きたいなら、幼稚園はお休みして一緒に行こう。幼稚園に行くなら2時にはお迎えに行けないから、先生と一緒に夕方まで待っていてもらわないといけないのね。待っててくれる?どうしたい?」

遊びのために幼稚園の延長保育の制度(ありがたいことに、通常2時までのところ1回300円を払えば5時まで幼稚園でみていてくれる)を使うのは正直申し訳ないのだけど、あと数日で秋田に帰ってしまう母にはなるべくつきあってあげたい気分なのだった。
「うん。ぼくねー、ようちえんで先生と待ってるよ。おやつ、いーっぱい、いれといてね?」
延長保育の日は、弁当の他に適当なおやつも持たせなければいけない。彼が好きなクッキーを何枚か小袋に入れて持たせてやった。なるべく早く帰ってくるからねー。

朝御飯は、息子の弁当に作ったサンドイッチの具の残りを使い、私とだんなはミニサンド、息子にはコーンフレークバー。小さな卵サンドと、小さなウィンナーサンドを皿に盛りつけ、温かい紅茶を淹れた。昨夜飲んだのと同じくMitsu Teaというお店の、今回はウバ。こちらも香り豊かでしっかりとした味の、とても好みな味と香りのお茶だった。このお店のお茶、美味しいなぁ……。

横浜中華街 「聘珍樓」にて、\3500ランチコース
 前菜盛り合わせ(海老・巻き貝・チャーシュー・鴨と茎ブロッコリーの和えもの)
 クコの実と白きくらげ入りふかひれスープ
 アーモンドまぶし蟹爪フライ
 牛テールのやわらか煮
 点心(蝦餃・香菜入り蒸し餃子・うずら卵入り焼売)
 腸粉
 マンゴープリン

 上海蟹入り小龍包
 蛋撻
 ビール・烏龍茶

9時に息子を保育園に置いてきて、ダッシュで帰ってからすぐに母と出発。我が町から横浜までは、電車一本で1時間10分ほどの道のりだった。中華街のある石川町まで、更に3駅ほど。中華街の門をくぐったのは、もう11時を回ろうとしていた頃だった。この分では、午後3時には横浜を出なければならないという感じ。動ける時間はあまりなかった。

母の主な目当ては、「インド綿系の綺麗な布」と、美味しい中華料理。私もインドネシアのろうけつ染めとかバティックを始めとした各国の布製品は私も大好きで、家の各所にべろべろと張ったりぶら下げたり敷いたりしているのだけれど、母もやっぱり同じ嗜好がある。母の方が、ほんのりメルヘン思考。横浜中華街にはチャイハネという巨大なアジア雑貨屋があり、布類の充実ぶりはけっこうなものだったはず。学生時代の頃には怪しい壁かけや鈴なども買い求め、私の私室は大変なことになっていた。友人曰く、「せりあちゃんの部屋、黒魔術とかできそうね」というくらい。(さすがに今はそこまでの事はしていない……)

以前から中華街内に何店舗もあったチャイハネだけど、久しぶりに来てみればその店舗数は更に増大していた。衣類専門店とか、食器がたっぷり、とか、店ごとの傾向がある。母は中華街到着直後から布製品の棚を眺めては溜息をつきまくっている。結局、黄色地に同色で象の柄が描かれたベッドカバーサイズのタイの布を購入していた。

「昼御飯は美味しいのがいいわねー。飲茶はちょっと違うかなって感じで……小汚い店はイヤよ」
と、お母様。うーん、好きな店とか気になる店はけっこうあるんだけど、割と小汚い系が多いかなって感じで……困りながら、まずは「大珍樓」をどう?と眺めつつ前を通り、続いて「萬珍樓」の店頭でメニューを眺めて「けっこういい感じ?」と悩み、大通りを更にてくてく歩いて「聘珍樓」本店に。安くはないお店だ。ていうか、けっこう高い。高いけど、それゆえ安心して食べられる味のものが食べられる、はず。シックな雰囲気の店内も、多分に母好みだ。

頼んだのは3500円のランチコース。他に更に高価なコース、点心類だけのコースなどもあったのだけど、これが一番手軽な価格の充実した内容のものに思われた。同様に思う人は多かったようで、これを注文する人がやたらと多かったようだ。食後に化粧室に立ったところ、すれ違ったワゴンの上には牛テールのやわらか煮の皿が10個くらい乗っていた。すご……。

内容は、前菜、スープ、魚料理、肉料理、点心、御飯or汁もの、デザートというもの。数種類から選べるのは御飯とデザートで、あとは決まったものになっている。
前菜の盛り合わせは、よくある"くらげと蒸し鶏とチャーシュー"とかではなく(それはそれでけっこう幸せだったりするんだけど……)、ちょっと独特なもの。紹興酒の香りがふんわりと漂う海老に、コリッと歯触りの良い"プチさざえ"といった感じの巻き貝。北京ダックのような甘辛ダレで鴨と茹でブロッコリーを和えたものも、割とシンプルな味なのに洗練された印象のある味だった。次なるスープはふかひれ入り。くこの実と白きくらげも入った薄〜く褐色がかった透明なスープもとても上品な味。正直、「ふかひれの美味しさ」というものはあんまりよくわからなかったりするのだけど(なにしろそんなもの食べつけてないから……)、ツルツルプリプリとしたふかひれと、ふわっこりっとした白きくらげと、色鮮やかなクコの実のバランスはなかなか心地よかった。母、ますます上機嫌。

次なる揚げ物は、アーモンドスライスをまぶしてカリッと揚げた蟹の爪。土台には美しいオニオンリングのフライも敷かれ、脇には片面だけに衣をつけて揚げたしその葉。衣にも素材にもさして塩味はついておらず、卓上で甘酢か赤く色味のついた塩をかけていただくようになっている。蟹の身たっぷり。

肉料理が本来続くところ、追加注文した料理がここでやってきた。頼んだものは「上海蟹入り小龍包」。11月の今、中華街は上海蟹一色となっている。ほとんどの店の店頭には「上海蟹特撰コース」なんて文字が踊っていたりして、食材を扱う店では生きている上海蟹(100g650円だった)を紐でくくって売っていたりもする。
「あぁ〜カニ〜上海蟹〜。茹で蟹揚げ蟹、カニチャーハン……」
と、ポスターや看板を見るたびに涎が出そうになっていたのだけど、母は私とポスターを一瞥して
「ふーん、蟹ねぇ。そんなに必死に食べなきゃいけないもの?私は蟹なんて嫌いだわ」
とつれない一言。ああ、でも、蟹……と諦めきれずに「これなら母も食べてくれるに違いない」と小龍包を頼むことにしてしまったのだ。

1個400円弱という、気合いの入った値段の小龍包。上部にふわふわと蟹の身が積まれ、スープがじゅくじゅく詰まった小龍包はプリプリと美しく輝いていた。……でも、なんかちょっと、蒸しすぎみたいな。なんか、ちょっと、皮が破れそう、みたいな。「ひーい、破れちゃダメ、破れちゃダメダメ……」と必死の思いで小龍包をすくい上げ、黒酢を添えてツルリと食べた。ケダモノ臭少なめの上品なスープ、同じく上品な具、薄く艶やかな皮。ふわっと漂う蟹の味と香り。それは確かに「美味しい」ものだったのだけど、野性味が足りなさすぎて、ほんのりつまらない味でもあった。そこらへんが、やっぱり聘珍樓ならではのところというか。

けっこう胃袋に充実感を感じ始めたところで、ドカンとやってきたのは牛テール。八角特有の甘い香りがぷんぷんと漂う甘辛味の煮込み料理で、スナップえんどうと赤ピーマンをピュレ状にしたようなものが美しく飾られている。骨もごろりと大きなテールは、いかにも美味しそうな太めのもの。それが2切れ皿に盛られ、かなりの食べ応えがあった。ゼラチン質もぷるぷると良い感じに煮込まれきっていて、旨い。まだデザートまで2皿もあるというのに、すっかり充実感溢れた気分になってしまった。

続く点心は3つ。蝦餃と、香菜がたっぷり入った魚介入りの蒸し餃子。茹でたうずらの卵がごろりと入った大きめな焼売。海老のプリプリ感は申し分なく、焼売の肉のジューシー感もたまらなかったけれど、私の大好物の香菜餃子だけ皮が破れていて、それだけが残念。「美味しいけれど、ちょっと淡泊」な傾向の味が、ここでもやっぱり少しばかり感じられた。こってり味のテール煮込みの次の料理だから、淡泊でも良いんだけど……なんかこう、ほんのりモニョモニョ。

日本料理の「お食事」にあたる、最後の品は白飯かおこわか汁麺か腸粉かを選べるものだった。母はおこわで私は腸粉。おこわは蓮の葉にくるまれた、ころりと小さなものだったのだけど、私の前にやってきたのはどどーんと3巻の腸粉。具は1つが腸詰、1つが海老、1つは多分……くわい?とろんと蒸し上がり、甘めのこってりダレが底にたゆたっている。よく「中華風クレープ」などと紹介されたりする腸粉だけど、その実物は、「薄餅ぐるみ甘辛ダレ」という感じ。モッチモッチした独特の食感は、クレープというよりも「餅」に近い。主張のあまりない味のその皮に、タレと具が絡む独特の調和が大好きだ。素朴な味の腸粉で、これは大満足。

そしてデザートはマンゴプリン。メニューに「蛋撻」の文字もあって、母に食べさせてみたいなとこれも注文した。焼きたて、といった風にアツアツのものが出てきた蛋撻(エッグタルト)に、初めて食べたらしい母は大喜び。「プリンだわー、サクサクだわー」と、母念願の「美味しい杏仁豆腐」をややそっちのけにした状態で蛋撻を満喫しまくっていた。マンゴプリンも、「高級店の風格」といった、堂々とした味のもの。さすがに季節が季節なので生の果肉はちょっとすっぱめだったのだけど、適度なミルク感にねっとりした口当たり、マンゴーの存在感の強さがとても嬉しい。カスタードパウダーの鮮やかな色が効いた生地は、香港で食べるそれをちょっと思い出させるもので、久しぶりに美味しいマンゴプリンが食べられて、もう2ヶ月も更新していないあっちのページもそろそろ更新しなけりゃなぁ……と思いながら店を後にした。

茹で枝豆
「有昌」のチャーシュー
「萬珍樓」のチャーシューまん
レタスと玉ねぎとキュウリのサラダ
豚肉と白菜の巻き煮 刻み生姜乗せ
豆腐と青梗菜のスープ
羽釜御飯

「菜香」の蛋撻
プーアル茶

昼食後、残された時間はほんの1時間。これが最後とばかりにせっせとお買い物して、4時半には息子を迎えに幼稚園にたどりつけた。
「おみやげはね、おもちゃがいいなぁ〜」
とリクエストに対して、中華街内の雑貨屋さんで買ってきたのはタバコの箱くらいのサイズの「親指ピアノ」。親指でペンペン弾いて音を出す怪しい音階の楽器で、アフリカンな外見。へ、へんなお土産ですんません……。

久しぶりにだんなも夕飯時に帰ってきてくれた今日の晩御飯は、中華街での戦利品あれこれと、少しばかりの手作りもの。チャーシュー専門店「有昌」で買ってきた赤くテラテラ光るチャーシューを少しばかり薄切りにし、「萬珍樓」で買ってきたチャーシューまんをふかす。たまたま通りかかってみつけた蛋撻は、「菜香」というお店のもの。
茹でた白菜で薄切り豚肉をくるりと巻いてから醤油と味醂と砂糖を入れただしでことこと煮込み、刻み生姜を散らしたおかずを一品と、中華風の青梗菜と豆腐のスープをちゃちゃっと作った。

油条と香菜を買ってきたことだし、明日の朝は中華粥に決定〜。

11/8 (土)
中華街での戦利品で、朝粥作り
中華粥
 (刻み葱・香菜・油条・皮蛋)
アイスウーロン茶

「油条と香菜を中華街で買ってきたので、朝粥が作れます。きっと美味しいです」
「……で、僕に中華粥を作れと、そう言ってるわけだね君は」
「ざっつらいとー。作ってー作ってー作ってー中華粥作ってーおねがいー」
どういうわけか、我が家の中華粥作成担当は我が夫ということになっている。別に秘伝でもなんでもないのだけど、前日のうちから米と干し貝柱を水につけておき、翌朝にことことと1時間ほど煮込んで塩と胡麻油で調味するというだんなの作る中華粥は、分量やらなにやらはけっこういい加減であったりするので、だんな本人以外にはなかなかそのとおりの味にできあがらなかったりするのだった。干し貝柱かなり多め、がポイントらしい。

今日は本来の日取りより1週間ばかり早いけれど、息子の七五三のお参りに行こうということになっている。私が9時半頃にだらだらと起き出すと、すでに早く起きていただんなが中華粥の仕上げに取りかかっていた。起きるとコーヒーの匂いがする朝というのも、なんとも優雅な感じがして憧れてしまうけれど、起き抜けに中華粥の煮える匂いがするというのも、それはそれで風情がある。だんなー、どうもありがとー。

具は刻んだ油条(揚げパンみたいなの)、ピータン、私の大好きな香菜、そして香菜苦手な人用の刻み葱。それぞれを粥の上にぶわーっぶわーっと散らして、混ぜながら食べる。ピータン入りのお粥は、私の大好物な食べ物のひとつだ。黄身が怪しくとろ〜んとなった皮蛋の独特な香りや甘みがたまらない。ピータン豆腐も大好物だけど、ピータンを美味しく食べるという意味では粥に入れる方が好みだなぁと思っている。
「ぼくはねー、パン(油条のことらしい)が好きなー」
「とーちゃんは葱をいっぱい入れて食べるぞー」
と、それぞれ好みな具合にあれこれ突っ込み、がつがつ食べた。……でもお粥って、今ひとつ腹持ちが悪いのよね。

GooTa(具多)の雲呑担担麺

お昼過ぎ、だんなの実家へ。息子の七五三の着物は、ン十年前にだんなが着て、だんなの弟が着て、更に従兄弟も着て、という年代もの。だんなのおばあちゃんが仕立ててくれた、青地に白く小紋が散った着物に金糸の袴という上品な柄の着物だ。お義母さんに着付けを頼み、近所の神社に出かけていった。

「神社に行くよ。"こんなに大きくなったよ、どうもありがと、今後ともよろしく"って神様に挨拶しに行くんだよー」
「じんじゃ?……ジンジャーエール?」
「いや、それ飲み物だから。違うから」
息子と掛け合い漫才しながら安産と子育ての神様でもあるその神社に向かうと、そこは七五三客で大繁盛中だった。もう流れ作業でお祓いがされている。はーい、1時半の回の方はこちらでーす、とか、七五三の方はお子さまを、もしくは御祈祷される御本人を一番前に縦に並んでください、はい詰めて詰めて、とか、もうノリはディズニーランドあたりのアトラクションとさして変わらない感じ。

初めての足袋と草履に歩きにくそうな息子を連れて手続きを終え、十数分ばかりの簡単な祈祷。それでも「健やかに成長なんちゃらうんちゃら……かしこみかしこみまもぉす〜」という祝詞を聞くと、なんとなく晴れやかな気分にはなった。でも20℃を軽く越えてるんじゃないかという今日の気候に羽織袴姿はきつそうだ。私たちもスーツ姿で汗みどろ。

だんなの実家でちょっと休憩させてもらった後、帰宅するともう午後3時になろうかという頃合いになっていた。お菓子はつまんだけど、朝粥を食べただけだったからかなり空腹。
「ラーメンでも食べたいけど……」
「今からラーメン屋行ったら、夕飯食べられなくなるよ」
「じゃあ今は軽く済ませて、夕飯は早めにということで」
と、食料庫から出したのは日清のカップラーメンGooTa(具多)。

だんなはチャンポン、私はワンタン入り担々麺。カップ麺の価格としては高めの価格設定なこのカップ麺、種類によって麺もスープも具も全部が違っていて、なかなか楽しい。だんなのそれと比べて
「おおー、麺まで違う!」
とはしゃぎながらツルリと食べた。ギラギラとラー油的な赤い油膜が表面に浮かび、最後に投入するすり胡麻もたっぷり。割合とちゃんとした担々麺の味がするラーメンだった。ワンタンもちゃんとワンタンだし。

このシリーズ、新商品は「味玉叉焼麺」という、味つけ卵が1個まるまる入ったものなのだとか。きっとまた買っちゃうんだろうなぁ……。

すき焼き
 (肉・焼き豆腐・しらたき・春菊・人参・長ねぎ・椎茸)
お赤飯
ビール

「FLO」のマロンシュークリーム
アイスウーロン茶

七五三お祝いということで、夕飯はすき焼き。母が外出ついでにと祝いに買ってきてくれた赤飯もあったりして、すき焼きと赤飯という微妙な組み合わせになった。すき焼きは関東風(事前に割り下を作っておく)か関西風(鍋の上で醤油や砂糖や味醂を混ぜ合わせる)かという、特にポリシーはなかったりするのだけど、我が家はどちらかというと関西風が多いような気がする。具は定番の焼き豆腐とかしらたきとか春菊、人参に長ねぎに椎茸。肉はたっぷり800g。

最初に牛脂を鍋にこすりつけ、そこで軽く葱を炒めててから隅にどけ、肉をべろべろと敷いていく。適当に炒まったら砂糖や醤油や味醂をどばどばと投入し、野菜や豆腐を加えていく。
「なんかねー、お店ですき焼き食べても、なんか緊張しちゃって味がわかんなくなっちゃったりするよね」
「すき焼きは、家で食べるに限るよねー」
とか言いながら、肉や野菜を食べては次々に放り込む。息子は「白いちゅるちゅるが好きなー」としらたきと豆腐をメインに溶き卵に沈め、肉ももりもり食べていた。赤飯もお代わりして2膳。七五三らしい(?)見事な食べっぷりだった。

すき焼きは普段それほどには「あーもう、すき焼き食べたいなぁ!」という気分にはならなかったりするのだけど、食べ始めるとしみじみ美味しいし、箸も止まらなくなる。肉は少々余ったものの、春菊1束長ねぎ3本などなどは綺麗に消え去った。ああ、しっかし今日は暑かったなぁ……。

11/9 (日)
久しぶりの焼き肉。ホルモンホルモン〜♪ (夕御飯)
卵とベーコンとチーズのホットサンド
カップスープ(粒コーン)
牛乳

目覚めると、8時半。
「そーいや、マーケットの朝市は9時からだっけー……合わせたように目が覚めてるな私……」
と、自分の珍しいほどの寝起きの良さにびっくりしながらこそこそっと準備して近所のスーパーに出かけていった。

今日は卵が1パック88円、牛乳が1本138円。何しろ私はズボラなので、普段は全然「今日はサランラップが○○スーパーで底値ね。あと××スーパーじゃサラダ油が安いから……」なんて買い物はしていない。ていうかできない。なんとなーく買い物に行って、なんとなーく安くなっているものを買ってきているだけだ。時々だんなの方が
「サランラップが驚くほど安かったよー」
なんて、消耗品を買ってきてくれるので、多分だんなの方がそういった値段については詳しいものと思われる。本日の卵と牛乳のセールを教えてくれたのも、だんなだったりした(ダメじゃん……)。

ともあれ、お買い物は楽しいのである。まず売り切れてしまう卵を最初に籠に入れ、レタスや小松菜、かぼちゃやキュウリなどの野菜類も「これは安い……?安いかも?」と適当に判断して籠に入れていく。肉も少し、牛乳は3本。あと、ビール(だんなと私が好きなのはモルツ、最近黒モルツが販売されて、これもまたけっこう好み)も少し。スーパーで売られているメーカーものの食パンはあんまり好きじゃないんだけど、ホットサンドが食べたい気分だったので1袋突っ込んできた。
「うう……強がって一人でこっそりこないで、だんな起こして連れてくるんだった……」
と少しばかり後悔しながら、大きなビニール袋3枚をパンパンにしてよれよれと帰ってきた。

朝御飯は、買ってきた品々を使ってホットサンド。更に同じく買ってきたばかりの特売品インスタントスープも準備する。ホットサンドの具はゆで卵をマヨネーズで和えたものと、ベーコン、とろけるバター。だんなのスープはポタージュで、私と息子はコーンスープ。久しぶりのカップスープはなんだかやたらと美味しかった。あのビミョ〜な粉っぽさとか、ビミョ〜なトロトロ加減や甘ったるさが、実は大好きだったりする。カップスープ飲み始めると、もう冬なんだなぁという感じ。

「万葉軒」の
 菜の花弁当
ほうじ茶

「ちょっとヨドバシカメラに買い物行ってくる……」
とだんなは買い物に行ってしまった。
「ぼくもー、ぼくもー、いっしょに行って、でんしゃに乗るー」
と息子も一緒に行ってしまった。私が一緒に行ったら昼御飯は外食だだのあっちも寄ろうだのと大事になってしまうのが目に見えてるので、私は一人お留守番。

1時間後くらいに帰ってきただんなは、「はい、昼御飯」と、駅弁の包みを手にしていた。千葉駅構内で売られている、「千葉の駅弁と言ったらこれ」という弁当屋はその名を「万葉軒」という。「やきはま弁当」「菜の花弁当」あたりが、けっこう有名。千葉で産まれ育っただんなは、昔からの馴染みの味のお弁当であるらしい。昔々から変わっていないような、素朴〜な感じの弁当だ。

私に買ってきてくれたのは、菜の花弁当。小さめサイズの可愛らしい弁当だ。箱の中に薄く御飯を敷き、炒り卵と鶏そぼろを対角線で区切って美しく散らし、境界線上にアサリの串焼きが1本、紅生姜が少々。あとは漬物が少しという、今時の駅弁の中ではシンプルきわまりない部類に入るだろう、かわいいかわいいお弁当だった。

「駅弁って美味しいのよね」
「なんか知らないけど、美味しいのよね」
「でも電車の中で食べたらもっと美味しいのよね」
なんて言いながらばくばく。うまー。

稲毛「牛角」にて、焼き肉もりもり夕飯
 たっぷり玉葱スライス
 サンチュ
 にんにくのホイル焼き
 ねぎタン塩×2
 中落ちカルビ(タレ)
 熟成ハラミ(タレ)
 ガーリックバターちゃっく
 王様ソーセージ
 とろチャーシューの炙り焼き
 ホルモン4種盛り
 壷漬けピートロ
 ロース(塩ダレ)
 ごはん(小)
 ビビンバ
 牛角風盛岡冷麺温泉玉子付
 もなかアイスバニラ
 モンブランアイス
 生ビール×2
 グレープフルーツライチソーダ
 赤いオレンジジュース
 コーラフロート
を、家族で。よく食べました……。

母は朝から、秋田に帰ることの挨拶回りに親戚の家にお出かけしている。夕食もいただいてくるという話だったので、
「じゃあ、焼き肉行ってくるかー!」
「がっちょりニンニク食べてくるかぁ〜!」
と、久しぶりの焼き肉に行くことにした。御飯類、デザートも充実、息子が大好きなソーセージなどのメニューもある、という理由から、毎度行くのは近所にあるチェーン焼き肉屋「牛角」。そこそこ安いし、そこそこ美味しい。サービス向上を常に心がけているような雰囲気があるのだけど、実際のサービスにはけっこうムラがあるかなー、みたいな店だ。

最近タン塩にご執心の息子は、ソーセージも御飯もよく食べた。タン塩もそりゃもうよく食べた。私もだんなも負けじとよく食べた。ホルモンは嫌いじゃないのだけど、いつもは「やっぱり肉が食べたいのよね」とロースだカルビだ、せいぜいハラミだと食べまくってしまう。今日は、なんとなくホルモンものが食べたい気分だったので、盛り合わせを注文してハチノスやらなにやらをコリコリと楽しんだ。おろしにんにくをこってりまぶした肉を焼き、焼けたところで溶かしバターに絡めて食べる"ガーリックバターちゃっく"なんて怪しげなものも平らげた。

すっかり満腹になってデザートの注文をすると、いつものように
「お茶とおしぼりをおもちします。どちらも温かいもの、冷たいものご用意できますが……?」
と店員さんが聞きに来たのだけど、伝えたは良いけどそれが一向にやってこない。十数分経って、
「あ、今、お茶おもちしますね」
同じ店員さんが声をかけてはくれたけど、またそのまま何分も放置プレイ。更に別の店員さんが、
「お茶とおしぼり……」
と声をかけてくれたのだけど、それでもやっぱりお茶とおしぼりはやってこなかった。

「きっとさー、お茶汲み場の前に立つと、宇宙人に誘拐されちゃうんだよ。数分後に記憶を消されてまたフロアに帰される、と」
「……おゆきさん、それ、X-ファイルの見すぎ」
「だってそうでも理由をつけないと納得できない」
プープー言いつつデザートを平らげて数分、諦めて帰ろうかなというところでやっと冷たいお茶がやってきた。冷たいおしぼりで口や手のギトギトも取れてすっきり気分で帰宅できたのだけど、できないサービスだったら口にしないでもらいたいなー、なんてなー……。
牛角は、いつもどこかほのかにビミョ〜。(でもまたきっと行くのよ)