食欲魔人日記 00年2月 第4週
2/21 (月)
あんまん
抹茶入り玄米茶

熱いあんこって、なぁ〜ぜ、こんなに熱いのだろうね。
舌と唇と上顎をちょいと火傷しての久々出社。ふ、不覚……。

フレッシュネスバーガーの
 ねぎみそバーガー
 オニオンリング
 じゃがいも&コーンのスープ

激ジョブである。超激ジョブである。
行っても行っても訪問予定は終わらないし、書いても書いても書類の山が片づかないのである。
昼休みもメール書きながら見積書を作っていたら終わってしまった。こ、この私が昼飯抜きなんて、そんなことはあってはならない。倒れる。干からびる。しーぬー(←オオゲサな)。

で、昼飯にありつけたのは午後2時半だった。次の訪問予定時刻まで20分の余裕が出来たので、ダッシュで最寄りのフレッシュネスバーガーの扉をくぐる。好物の「ねぎみそバーガー」(当然SサイズではなくRサイズ)を注文、ついでに季節のスープとこれまた大好物のオニオンリング。冬っぽくて良い感じのメニューである。

甘辛い和風の味噌だれが挟んである「ねぎみそバーガー」はその名のとおり、ネギたっぷりだ。油断すると、膝にネギを落としてしまうので要注意なのだ。……あ、落とした。膝の上に、ネギ。
オニオンリングには、やっぱりケチャップをつけて食べたい。ケチャップつきのオニオンリングはすこぶる旨いが、油断すると膝にケチャップを落としてしまうのでやっぱり要注意だ。……ああ、また落とした。膝の上に、ケチャップ。しかも両方右膝。いや、左右両方に落とした方がヒサンだったかもしれないから"しかも"は違うかもしれない。"幸いなことに"両方右膝。……あんまり幸いでもないんだが。ぬぅ……。

かくして右膝にちょっと気になるシミをつけてしまった黒いパンツを気にしつつ、午後のお仕事は続く。
なんか、全体的に不覚な日である。朝の火傷がいけなかったのか。

鶏肉のクリームシチュー
アスパラガスのアンチョビマヨネーズ
御飯
ニルギリアイスティー

こんなに風の冷たい日は、煮込み料理を食べるに限る。
というわけで、今日はシチュー。鶏肉のシチュー、じゃがいもたっぷり。

シチューの素で手抜きさせてもらおうと、買い置きのルウを探すと「北海道コーンクリーム」なるものが。ちょっと前、「気になる、気になるぅ〜」とか言いながら、自ら籠の中に入れて買ってきたやつだ、確か。
鶏肉をじっくり炒めて、玉ねぎとじゃがいもとにんじんも加えて炒めて、煮込むだけ。出来上がったのは、名前通り、何ともコーンコーンしたクリームシチューである。コーンのカップスープのような、チープでお子ちゃまの味だ。……なのに、妙に旨い。甘くて甘くて、何だか笑っちゃうようなシチューができた。

付け合わせは茹でアスパラ。
マヨネーズかけるだけじゃ芸がないので、そのマヨネーズに潰したアンチョビとオリーブを混ぜてみた。胡麻油と片栗粉を使えば大抵のものが中華料理になってしまうように、アンチョビとオリーブ(と、ケッパー)を使うと大抵のものがイタリアンになる。そして醤油と味醂と味噌を使えば大抵のものは日本料理だ。じゃあ、ナンプラーとパクチーを使えば大抵のものはタイ料理になるんだな、きっと。試したことはないけど。
シチューに合わせてアイスティーも用意して、いただきます♪

2/22 (火)
ベーコンエッグ
鶏肉のクリームシチュー
御飯
紅茶

ベーコン切ってこんがり焼いて、卵を落として半熟に焼いて、ベーコンエッグ。
昨夜の残りのシチューも小さなスープカップに入れたら、なんというか、ナイス洋朝食という感じ。御飯にベーコンエッグ乗せて、黄身崩しつつ醤油たらして食って、充実した朝御飯。

銀座 十石の
 おにぎり3個セット
 (いくら・ごまザーサイ・おかか)
緑茶

おにぎり屋さん「十石」でおむすびセットを購入。
日替わりのランチセットはおむすび2個入りと3個入りの2種類。小さなおかずがついて、ちょっとお得になっている。今日の3個セットは「いくら・ごまザーサイ・おかか」というラインナップで480円。2個入りはおかか抜き、値段は失念。

プラスチックの容器には、左に海苔が巻かれたイクラむすび、続いてビニールでカバーされた胡麻ザーサイむすび、んでもって同じくビニール包みのおかかむすび。右隅にはケチャップのかかった肉団子が1個と、手前にきんぴらごぼう。日本茶をマグカップになみなみと入れて、ネットサーフィンしながら一人うきうきと昼食。

イクラだのザーサイだのと今日も変わった具だが、相変わらずおにぎりは旨い。おかかは醤油とまぶされて御飯に混ぜこんであるし、胡麻ザーサイも、同じく胡麻が御飯にたっぷり混ぜこまれている。中央にざくざくとザーサイ。三角むすびの隅まで詰まったイクラも不思議と旨い。寿司飯でもないのにイクラというのが違和感ではあるけれど。

そして、今日も店内ケースには愉快なおにぎりがかいま見えた。
曰く、「ぶり照り」。
多分合うと思うんだ。ぶりを口に頬張りつつ御飯喰ったりするし。でもおむすびにするのはなぁ。ちょっと違うんじゃないか。でもないか。

バター風味すき焼き
大根とツナのサラダ
御飯
よなよなエール
メロン

「牛肉のバター炒め」なるレシピを見て、一度作ろうと思っていた。折良く冷蔵庫には「松坂牛切り落とし」なるブツも買い置きしてある。風の冷たい今日は鍋っぽいものが食べたいし、チャンスチャンスと作り出す。

作り方。バターで牛肉を炒めよ、とある。牛肉250gに対してバター50gがレシピの分量。そのバターのやたらな多さにめまいを覚えつつ、用意した牛肉300gに対して20gほどのバターに変える。軽く色が変わったところで砂糖をぱらぱら。つづいて砂糖と同量の醤油とたっぷりの酒を投入し、肉を煮つつ、鍋の隅に椎茸と白滝を落とす。ついでに手でざくざく割った豆腐もたっぷり。牛肉に火が通ったら完成、らしい。作ってみると、「牛肉のバター炒め」というよりは「バター風味すきやき」といった様相だ。ていうか、見た目はすきやきそのまんまである。

これが。分量少なくしたくせにバター臭がぷんぷんする愉快なすき焼きだった。そもそもバターと牛肉は親子みたいなもんだから相性はばっちりだ。バターくさくて甘辛い牛肉は結構いける。ビールが進むが御飯も進む。

そいでもって、おまけには大根とツナのサラダ。千切りにした大根と薄切りにした玉ねぎを酢と醤油と砂糖のたれで和えて、頂上にツナをてんこもりにしたもの。

肉たっぷりの豪華夕食の後は、豪華デザート、マスクメロン。
先日、義母がいろんな雑貨と一緒に宅急便で送ってくれたものだ。私の母もそうだが、何故親というものは息子娘に醤油だの米だの味噌だの野菜だの果物だの色々送るのか。何故、段ボールの隅から海苔だの缶詰だの高野豆腐だの漬物だのが出てくるのか。ここは僻地でも何でもないのに。
まるで配給物資のようなその段ボールは、でも実はとても有り難かった。息子娘は学生ではなく、とっくに稼ぎのある社会人であるのに、母たちからしてみれば、やっぱり息子であり娘であるのに他ならないのだろう。あれもこれもと送ってしまうのが古今東西の母なのか。私もいずれ、そうなるのかしらん。段ボールにメロン詰めて。

2/23 (水)
ころころベーコン入りオムレツ
鶏肉のクリームシチュー
御飯
麦茶

鍋底に少々残っていたクリームシチューを牛乳でちょいとのばして、家族全員用に増量。皆で食う。
卵料理は、だんな作成。私のリクエストにより、角切りベーコンがたっぷり入ったオムレツだ。このコロコロベーコンの塩味が、半熟のとろ〜んとした卵と合っちゃって、んもう美味しいのである。「オムレツ上手は愛情上手さ♪」なんて森高の歌にあったような気がするが、我が家の"オムレツ上手"は専らだんなになってしまう。だんなは愛情上手。オムレツ下手な私は、するってぇと愛情下手かい!?
……がーん。

銀座 Dear SOUP にて
 エビ包みとふくろ茸のディア.スープ風トムヤムクンスープ
 パン
 アイスティー

何でも、この銀座の新鋭スープ店は1週に1種類ずつ新作スープが出ているそうなのである(ダイレクトメール情報)。
「2月はトムヤムクンスープ!」なんて言われると、気になってついつい行ってしまうのである。絵に描いたような消費者な私。

トムヤムクンはパンかライスがついて700円。ドリンクセットにすると800円。税込み840円。
決して安いとは言えないが、それでもランチタイムになると行列ができてしまう店なのではあった。

「エビ包みとふくろ茸の」、とある。ふくろ茸は確かにトムヤムクン必須のキノコだ。だが「エビ包み」とは、一体。
ほどなく待って席に来た、丸い陶器のスープボール入りトムヤムクン。上にはちゃんとタイ料理必須のパクチーのみじん切りも乗っている。添えられたスプーンの上には櫛型レモンも乗っていて、これを絞って食えということらしい。赤い油の浮いた茶色いスープは確かにトムヤムクンの色をしていて、異国の香りがただよってくる。悪くない。
具は、海老しんじょの団子のような、つみれのような、"エビ包み"がふわふわと浮いている。たっぷりのもやしと、筍。そしてフクロ茸。固形物40%含有といった感じの具沢山なトムヤムクンだ。口の中がカッと熱くなるけど、辛いというほど辛くない。バターの匂いがするパンを片手にがつがつ食べる。

何というか、戦略的な店なのである。
メニューの感じ、インターネットでのバーチャル店舗展開、メールでのお知らせ、店のロゴマークの感じから内装に至るまで、「こうしたら人気が出る!売れる!」という香りがぷんぷんしちゃうのである。私は大抵、こういう匂いのする店を好きになることはあんまりないのが通例だ。んだが、この店にはどうやらはまりつつある。やばい。(なにがや)
そう、そもそも私はスープが大好きなんだあぁぁぁぁぁ。

まい泉の
 そぼろ弁当
 コーンクリームコロッケ
よなよなエール
麦茶

帰宅直後から、2つのガスコンロがフル回転しているのである。
明日と明後日にやってくる来客の為に、水炊き用のスープと牛筋肉煮込みを作るためだ。肝心の今晩の夕食を作るだけの火を確保する余裕もなく、だんなにお弁当入手を頼む。

その間、私は鶏ガラ肉と格闘していた。
「水炊きを作るの〜」
と築地の鶏肉専門店に言ったところ、肉がまだついたものを出してきてくれた鶏ガラだ。1羽80円。ナイス価格だ。
うきうきと2羽分のガラを抱えて帰宅し、生々しい肉の血色も鮮やかなニワトリのなれの果てと相対している私である。

首を切り落とした姿の鶏は、それでも
「このへんが肋骨です」
「このへんは羽がついてました」
と生前の姿を彷彿とさせる。肋骨と背骨の間には、怪しげなブヨブヨかつブツブツとした血の塊なぞもついていて、ちょっと猟奇的気分が盛り上がる。潰すと、ブシッと血が飛ぶ。ひえぇぇぇ。
「ほほほほほ〜。スープにおなり!スープにおなり!」
などと自分を鼓舞するべく唱えつつ、首の骨と骨の間に指を入れて首を分断し、肋骨を手で砕く。シンクに広がる血だまり。うーん、猟奇だ。たまらなく猟奇だ。

で、猟奇気分を満喫しきった頃、だんなが帰宅。手にはデパートで入手したらしいそぼろ弁当と、息子用のかつサンド。ついでに揚げ物パックも袋の中に入っている。私にはコーンクリームコロッケ、だんなには蟹クリームコロッケ、息子にはきのこのコロッケ。
「これが一番美味しそうだったんだよ〜」
というそぼろ弁当は、海老フライやら焼売やら唐揚げやらひじき煮やら南瓜の煮付けやら、おかずもたっぷり充実していた。
ビールを空けつつ、弁当を喰らう。
そして、台所では鶏と牛が煮えているわけである。なんというかケダモノくさい台所。やんぬるかな。

2/24 (木)
あんまん
プーアル茶
メロン

篠田節子の『死神』なる書物を図書館で借りてきて、読んでいるところである。
文中、さりげない一節に「10年変わらない朝食のメニュー」などというくだりがあった。10年変わらないメニュー。考えたこともなかったが、もしかしてそれは不思議でもなんでもないことなんだろうか。

熱意はあるけど時間と手間をかける根性がない我が家では、料理研究家が本で描く理想的な朝食の姿を再現することはまずムリだ。昨日の御飯に昨日の味噌汁。シチューも出るし、残り物なら大抵出す。でも、
「パンが食べたいし〜」
とか、
「そろそろ中華粥が恋しいし〜」
とか、
「んもう、ホットサンドが食べたくて食べたくて踊っちゃうくらいだし〜」
とかいう理由で、朝食のメニューは一定になりようがないのであった。そういうもんじゃないのか?ちがうのか?

てなわけで、本日の朝食はあんまん。
近所に出没する、中国人おばちゃんの屋台から買ってきたやつだ。結構大きく、ボリュームがある。朝っぱらからシュンシュンと湯気を立てる蒸篭を3つ重ねて、家族分の饅頭をふかしていると、台所に蒸篭の竹の匂いが漂って、なんとなく異国な空気になるのである。

スワンベーカリーの
 シチューパン
 ブランデーキャラメルパン
 シュークリーム
森永 深煎り珈琲牛乳

「シュークリームだ」
唐突に思い、近所のお気に入りのパン屋に出向く。ピカピカな店内には、今日もピカピカなパンが並んでいて良い感じだ。値段も高くはなく、銀座の片隅の良心の店はもっぱら私のお気に入り。

中央のトレーに並ぶ、「焼きたて!」の文字に惹かれてシチューパンをゲット。続いて「ブランデーにつけたレーズンがたっぷり。生地にはキャラメルを練り込みました」の文字に魅了されて"ブランデーキャラメルパン"をゲット。本命のシュークリームも冷蔵ケースからいただいて、うきうきと会社に戻る。

サクサクの、濃厚にバターが香るシチューパンは、デニッシュ生地の真ん中に給食で食べたようなどろりとしたクリームシチューが入っている。マカロニに人参に鶏肉、玉ねぎ。まだほんのりと温かくて、いや〜ん、美味しいじゃないか。
表面がカリリと焼けていて、中はふんわりしているキャラメルパンも悪くないし、シュークリームは相変わらずどっしりぼってりとしていて、何ともシアワセ。
「何、笑ってんの、○○さん」
と隣の席のMさんに言われてしまった。いや……カスタードクリームが美味しくて、つい。

スティック野菜のバジルマヨネーズ
アスパラとじゃこのサラダ
水炊き
 (軍鶏肉・キャベツ・春菊・かぶ・人参・長ねぎ)
うどん
よなよなエール
神亀 純米活性にごり酒

日本茶
いちご

だんなの大学時代の友人、M井さんとJさんが遊びに来る。昨日よりじっくり時間をかけて作った、白濁した鶏スープを使っての豪華水炊きにておもてなし。軍鶏肉使用である。なんとゴージャスなことだろう。

突き出しに、野菜も用意。毎度毎度我が家に来る度に、呆れるほど野菜をたいらげていく為に「うさぎさん」の称号を得たM井さんが来るのである。料理は野菜が主と決まっているのであった。茹でて千切りにしたアスパラを山葵と醤油入りのマヨネーズで和えて、上からナッツとじゃこを砕いて混ぜたものをぶっかけたサラダ。んでもって簡単にスティック野菜。バジルとアンチョビ入りのマヨネーズを用意してビールに備える。

てなわけで午後7時。客人も揃って宴の開始。
ビールにて野菜スティックとサラダを堪能し、続いて恭しく「純米活性にごり酒」の登場である。
埼玉の神亀(しんかめ)酒造の酵母が生きているにごり酒だ。美味しいらしいと聞いていて、新宿小田急ハルクに頼んだら取り寄せてくれた。4号瓶で約1200円。高くはない。

活性酵母のために大量の炭酸ガスが出るので、蓋をゆっくり緩めたり締めたりしてガス抜きをせよ、とある。
いざいざ飲もう、と意気込んでいるのにガス抜き作業で数分間、やきもきしながらだんなの作業を見守る私と客人二人。
そうこうして、四苦八苦してお猪口に注いだ酒は、見事に甘酒の如く濁っていた。しかもシュワシュワと細かい泡がたっていて、まるでシャンパンのよう。ほんのり甘く果物のような香りがして、何とも美味な酒だった。
これまで飲んできた日本酒で一番旨いと言ってもいい!サイコー!ブラボー!神亀にごり、なんて美味しいんだ、お前は〜っ!!!

酒も旨い。そして水炊きも旨かった。
蕎麦猪口にスープを入れて、ガリガリと胡椒をひいて飲み、肉は自家製の柚子醤油をたらして万能葱を散らして食べる。キャベツは甘いし、かぶはホロホロになっているし、何ともシアワセな水炊きだ。
手間かけたスープも皆に飲まれてガンガン無くなり、山のように用意したはずの肉も野菜も底をついた。最後は、濃厚に煮詰まった汁でうどんを4玉。それだけ喰った挙げ句、苺も1パック綺麗に無くなった。
そして、私は酔っぱらっているわけです。あ〜♪こりゃこりゃ♪

2/25 (金)
鶏スープのおじや
抹茶入り玄米茶

昨夜、結局我が家に泊まっているM井さん、なのであった。
Jさんの帰宅を家人のような顔をして見送り、そして
「よなよなエール、もう1本いただけませんでしょうか。いやいやいや、すみませんねぇ〜」
などとあつかましくも午後11時をまわらんとする我が家の居間でくつろぎまくっている。
……近々、我が家の居間におかんと、ソファー兼用のベッドを購入してくれるらしい。ほとんど"順家族"的扱いになっているM井さんなのであった。

というわけで、家族+M井さんの4人がテーブルについている金曜日の朝である。
わずかに残った昨夜の水炊きスープを温め、たっぷりの御飯を入れておじやにする。最後に卵を落として万能葱を散らせばできあがり。酔った日の朝にふさわしい朝食だ。

銀座 お米ギャラリー ごはん亭にて
 ランチセット700円なり
 (有機野菜と黒豚のコロッケ・卯の花・わかめと麩の味噌汁・御飯・漬物・日本茶)

なぜ、私はこうも貪欲なのか。毎日のように、昼休みが近づくと"今日はあれ食べたい"だの"これ食べたい"だの脳裏にヴィジョンが浮かんでしまうのだ。サンドイッチのときもあれば鶏の唐揚のときもある。今日のヴィジョンは御飯、なのであった。
飯。米の飯。白米。銀シャリ。
会社近くの弁当屋に出向いても良かったのだが、"どうせ米の飯を食うのなら、旨いところへ行こうじゃないか"とチャリこいで「お米ギャラリー」へ向かう。JAだ。農協だ。日本の米文化を世間に知らしめるべく、銀座の大通り沿いに位置する巨大なアンテナショップだ。

1階はお米クレープや和食器などを売るショップとイベントスペースが並ぶ。2階はセルフサービスのカフェテリアだ。
700円のランチセットは、メインのおかずを5〜6種類の中から、小鉢をこれまた5〜6種類の中から選び、味噌汁と御飯と漬物がついてくる。おにぎりセット、なんてのもある。
看板に掲げられた「本日のお米」は「秋田 あきたこまち」とある。秋田を郷里に持つ私にあきたこまちをぶつけるとは。やるわね、JA。

ともあれ、米の飯だ。おかずは、さば味噌、海老チリ、和風ハンバーグなどが並ぶ。「鶏肉と野菜のマリネーゼ」に激しく心惹かれるが、あいにく売り切れ。……やるわね、JA。
で、結局「有機野菜と黒豚のコロッケ」を選んでいる次第である。分厚くてごろりと丸いコロッケが2個。刻みキャベツにドレッシング。小鉢は「ハス入りきんぴら」だの「南瓜とチーズのサラダ」だのの中から「卯の花」を選択。おからを食べるのは久しぶりだ。ほろ甘くて、何やら懐かしい味がする。御飯をかきこみつつコロッケを齧り、合間に卯の花。何やら健康的な雰囲気が漂ってしまう今日の昼食風景だ。

昼ともなると、この店は大人気であるらしかった。次々と買い物袋をぶらさげたおばちゃんやら、スーツ姿のおじさんが入ってくる。客単価3000円をも簡単に超えてしまう店が多い銀座のランチタイムに700円かそれ以下で昼食を取れるのは重宝なのかもしれない。しかも待たずに食べられる。そこここで、おばちゃんやおじちゃんが握り飯を頬張っているのであった。シアワセそうに。

そして、1階の片隅では米粉を使ったお米クレープ"バナナチョコカスタード"に齧り付く女性がいたりするのだ。あ、お嬢さんお嬢さん、お米アイスをトッピングするとプラス100円で結構旨いんだよ。オススメだよ。……と呟く私を彼女は知るまい。
そして、昼食を終えた私がそのクレープ台に2〜3歩引き寄せられてしまった私を知る人もいないはずだ。……多分。

スティック野菜のバジルマヨネーズ
焼き茄子の胡麻だれ
牛筋肉の煮込み
豚味噌鍋
うどん
よなよなエール
日本酒 生一本 浦霞

緑茶

よしだやの
 うぐいす餅

金曜日。一週間で最も嬉しい夜である(明日は休み、明後日も休み♪)。
そして、今日も宴会なのであった。本日の来客はYさん。私の大学時代のゼミ1期上の先輩である。私的に「知り合い中最も美形」の称号を捧げられている先輩だ。眼福眼福。うん、今日も美しいわ。

彼のリクエストは、
「牛筋肉の煮込みが食べてみたい」
というものなのであった。一昨日から万全に、"牛筋肉担当"だんなの手によって整えられていた煮込みをもってお出迎えする。2日間くつくつと煮ていた煮込みである。若干、数時間、煮込みが足りずに肉の輪郭がまだはっきりしているものではあったが、濃厚に甘辛くホロリと崩れる。今日の仕上がりもばっちりだ。刻み万能葱と七味唐辛子をかけていただく。
「お、美味しいねぇ。うん、これ、美味しいわ」
と目を細める先輩。
よっしゃ、と我らガッツポーズ。

そいでもって、独身男性には野菜を多めに出すことになってしまっているので、昨日と同じくスティック野菜。ついでにオーブン焼きした茄子に醤油や味醂で練り胡麻をのばしたタレをかけたものも出す。ビールが進む。野菜も進むし、煮込みも進む。今日の宴会も非常に楽しい。
未だ未経験だった先輩に豚味噌鍋も供し、白菜と長ねぎと豚肉をたらふくたいらげて、最後はうどん。ほとんど定番となっているコースなのではあった。でも、旨そうだったから、まぁいいや。ていうか嬉しいや。

そして、彼は沢山の和菓子を土産に持ってきてくれたのであった。
「よしだや」という、しお大福が名物の店だという。件のしお大福におはぎ、うぐいす餅によもぎ餅、おかきに砂糖菓子に雛祭り仕様生菓子まで、紙袋の中には詰まっている。早速、茶を煎れてうぐいす餅をいただく。もっちり柔らかく、あんこもほっこりしていて久々に食べた和菓子だ。しかも旨い。うどんを控えめにしておけば2個はいけるところだが1個で我慢。

午後11時過ぎ。「せわしない人間で、だいたいお邪魔すると1時間強で退散する」のが常らしい先輩は、4時間近く我が家でだらだらとくつろぎつつ、息子と遊んで帰っていった。
どうです先輩。結婚って良いでしょう。子供がいるのも、悪くないでしょう。……と、"結婚はしたいと思わないんだもんね"症候群の先輩を洗脳しつつある次第である。

2/26 (土)
よしだやの
 しお大福
 うぐいす餅
抹茶入り玄米茶

目が覚めた途端、
「……何、食べよっか?」
などと話している土曜日の朝である。

「なんだかねぇ。モリモリ食べたい気分なんだわ」
と私のリクエスト。
「ファミレスか?ファミレスか?」
「いいねぇ、いいねぇ。だとすると、理想はデニーズでフレンチトーストだなっ!」
と途端に盛り上がる我が家であった。リクエストしなくても、いつもモリモリ食べているじゃないか、というツッコミはこの際控えていただきたい。
"いつもより一層モリモリ食べたい"と旺盛な食欲を露にしている私たちなのではあった。

洗濯機が止まるのを待つ為に、とりあえず日本茶をいれて昨夜Y先輩からいただいた大福なぞを囓ってみる。しお大福を半分囓ったところで息子にせがまれ残りを奪われる。しょうがなしに、続いてうぐいす餅を口に運ぶ。まだふんわり柔らかいうぐいす餅は、まだ楽しい口当たりだった。私の横で、しお大福を食べ終えた息子はおはぎに手を出している。……息子よ、今日も元気なようだね。
さー、今日は買い物だ買い物だ外出だ外出だ〜っ!

飯田橋 デニーズにて
 オニオングラタンスープ
 チキンシーザーズサラダ
 フレンチトースト
 アイスミルクティ

かくして、なぜか飯田橋のデニーズにてテーブルについている次第である。
私は念願のフレンチトーストのドリンクセット、だんなはハンバーグセット、息子には"おこさまミートソース"にコーンスープのセット。それにサラダを追加で取って、オニオングラタンスープまでつける。今朝の決意どおり、"モリモリ食べる"を実現するメニューだ。嗚呼、おなかがすいたおなかがすいた。

デニーズのフレンチトーストは、思い出の味だ。
小学生の頃、近所にあったデニーズに何度も何度も連れて行かれ、私はその度フレンチトーストを食べていた。薄切り食パンを三角に切ったフレンチトーストが4枚、こんがりとキツネ色に焼かれて大皿に盛られ、中央にホイップバター。メープルシロップをたらして食べるフレンチトーストはふわふわで甘くて、本当に美味しかった。家でやってみようとしても、どうも、このふわふわが実現できないのであった。

今日も勿論、このフレンチトーストに期待して来たのである。
だが、時は流れてメニューも変わる。フレンチトーストはかろうじてメニューに残っていたが、様相はずいぶんと変わっていた。フランスパン状の楕円のパンが4枚、厚切り。しかも"プレーン"と"シナモン"が選べるという。プレーンとシナモンが2枚ずつ入るミックスを注文。

パンの上に乗るホイップバターはプラスチックのケース入りになっていた。昔からプラスチックのケース入りになっていたメープルシロップもまた、相変わらずプラスチックケース入りなのであった。何もかも昔と変わっていたフレンチトーストだったけど、でもキツネ色のこんがり焼けたパンは、確かにフレンチトーストだ。シナモンシュガーがパラパラと振られたやつはなんだかすっかり今風な味になっちゃって、……でも、美味しかった。うん、確かにフレンチトーストだ。デニーズのフレンチトーストだ。

あのときフレンチトースト1皿でお腹いっぱいになってしまった私は、今ではサラダとスープまで一気に食べられるようになった。
横で旨そうにコーンスープをすすっている息子も、やっぱり20年後ぐらいに
「うおぉぉぉ、デニーズのコーンスープが食べたいぜっ!」
なんて悶えるようになってしまうんだろうか。

鶴見 翠華樓にて
 3種前菜の盛り合わせ
 アサリの葱生姜ソース炒め
 海老焼売
 大根餅
 花巻
 チャーシューまん
 湯葉巻きのオイスターソース蒸し
 咸水角
 小龍包
 蟹炒飯
 排骨麺
 マンゴプリン
 生ビール
 烏竜茶

だんなに臨時収入が入ったので夕刻、京浜東北線沿線、川崎より1つ横浜寄りの鶴見駅に向かう。
翠華樓。あの美味なる飲茶が忘れられなくての二度目の訪問だ。前回は昨年10月だったっけ。

午後5時を過ぎたところ、相変わらず店は"開店当時のまま、改装せずにやってます"という感じの少々古びた印象(控えめな表現で)だ。はっきり言って、初めてこの店に来る人は戸惑っちゃうような外見なのである。でも、味は美味しい。保証する。おそれず2階のグリルへ進まなければいけない。いざいざいざ。

時間も時間で、店内には大人数のグループが2組ほど宴会をしているくらい。テーブルについて、夕方も早いというのに生ビールにて乾杯。クラゲと蒸し鶏、チャーシューが乗った3種前菜をつつきながらアルコールが胃に染みわたる様を満喫する。
店と同様、料理の盛りつけも旧態依然という感じでそっけない。華美さはどこにもなく、盛りつけの斬新さも微塵もない。でも、美味しいのだ。
チャーシューは周囲がこんがりと焼けていて絶妙に甘辛く、蒸し鶏の上には塩の効いた刻み葱のソースがかかっている。
今日も美味しい。サイコーだ。

そして、次々に飲茶メニューがやってくる。息子用の大根餅に中国蒸しパンの花巻。焼売に、チャーシューまん。どれも歯ごたえがしっかりとあるものばかりで、もちもちねっちりと舌に乗ってくる。ビールが進んで止まらない。

そして今日のヒットは旬の料理だという「アサリの葱生姜炒め」。
てれ〜んととろみのついた塩味のスープが絡む殻付きアサリは唐辛子が入ってピリリと辛い。アサリは大ぶりでムチムチとしていて、口にする直前からふわりと生姜の香りがする。
「ま、またこんなにビールの進むものをぉぉぉぉ」
などと言いつつ、再び飲む。どうしようもない。

あっというまにここまでたいらげ、追加注文。
湯葉巻きのオイスターソース蒸しと咸水角、小龍包が次々とやってくる。
私たちも次々とたいらげる。
ちょっと厚めの自家製皮に包まれた小龍包は絶品だ。中に熱いスープがたっぷり入っていて、これをこぼさないように蓮華に乗せつつ囓りつく。酢に浸した針生姜と一緒に口にすると一層複雑な味になる。
「ああああ、美味しい」
「何食っても、美味しい」
「美味しいしか、言えない」
とそろそろ語彙が貧困になっている私たち。いや、本当に美味しいものを食べると"美味しい"としか言えなくなっちゃうのだ。

ここまで食って、なおも炭水化物を食す。
骨付き豚肉の唐揚げが乗った排骨麺(ぱいくうめん)と、蟹炒飯。蟹炒飯についてきた小さな卵入りスープがまた、鶏ベースの良い味で仰天し、蟹肉がたっぷり入った炒飯の600円という値段に嘆息する。
サラリとした淡泊な醤油味スープの排骨麺は、カラリと揚がった薄切り豚肉がざくざくと入っていて、そのくせ少しもしつこくない。たっぷりの青梗菜に、縮れのない黄色の麺。
「僕はもぅ、近所にこの店があったら毎日これを食べに通っちゃうよっ!」
とだんなが感動していた。

さすがに満腹を感じつつ、最後はマンゴプリンでシメ。
そもそもこの店、「マンゴプリンが美味しいですよ」と教えてもらった店なのだ。何をおいても、これを食べずに帰るわけにはいかないのだ。
7時をまわりつつあり、ふと見渡すと周囲の席はほとんど埋まっていた。いかにも地元の人、という感じの人々が楽しそうに歓談している。

「俺、おゆきさんのから2口くらい貰えばいいや」
というだんなに、
「絶対ダメ死んでもダメ!私のは私が全部食べるんだから、食べるならもう1つ取りなさい。残ったら私が食べるから。」
と2つ注文させる私。
今日のマンゴプリンは、これまた美味だった。詳細はマンゴプリンページに譲るけど、"2口でいいや"と言った筈のだんなが、少しも残さずにペロリとたいらげてしまったほどの美味だった。息子がまだ食べたそうな顔をしているのに、既にだんなの皿にプリンのかけらも残ってはいなかった。そして私のお皿にも。
も、もうひとつ取れば良かったかな、プリン……(まだ喰うかお前は)

2/27 (日)
クリームロールパン
コーンマヨネーズパン
カフェオレ

本日の朝食は、菓子パン。
筒状パイ生地にカスタードクリームが詰まったものと、コーンたっぷりのマヨネーズ味のパン。

マヨネーズ系のおかずパンは、やっぱりオーブンでこんがり温めてから食べたい。トーストする時くらいの長時間オーブンに入れて、パンの表面がちょっとカリリとなって具もアツアツになるくらいが望ましい。湯気のたつおかずパンは、冷めているときよりも数段旨い。……と思うのに、私の母はついぞ理解してくれなかった。

コーンマヨネーズパンを買ってきてはくれても、食卓に出てくるのはいつも冷めたまま。温めたとしてもレンジで30秒チン。電子レンジではパンがふにゃら〜と柔らかくなってしまって、どうも納得いかないのであった。「オーブンに入れて。オーブンオーブンオーブン」と唱え続けて十数年、結局、私は私の思うように菓子パンを自分で温める段に至った。早めにこうすれば良かったんだ、と思った二十歳の春だった……。

晴海 TOKYO−DO
 テリヤキチーズドック
午後の紅茶

「晴海埠頭にホットドッグを食べに行こう」
とチャリこいで晴海埠頭に向かう。風は少なく天気も上々、温かくて良い散歩日和だ。

晴海埠頭には平日の夜および週末の全日、ワゴン車を改造したホットドッグ屋台が出没する。メニューはホットドッグとクレープ。そして缶ジュース。ささやかな屋台でありながら、ぽつぽつと人の途絶えることのない、ちょっとした名物屋台なのである。
ここのホットドッグは、すこぶる旨い。プレーン、チーズから始まってチリ・チリチーズ・ミートチリチーズなど。大体1つ400円前後である。パンをオーブンで温め、こんがり焼かれたソーセージ。中には炒めキャベツがほんのりカレーの香りをさせて入っている。何というかささやかな仕事が沢山してある、手抜かりないホットドックなのであった。

久々に訪れると、見慣れぬメニューが増えている。「テリヤキ」と「テリヤキチーズ」。ホットドッグに"テリヤキ"とは異なものだが、これをいただく。だんなはミートチリチーズを。保温ケースに入る紅茶缶も1ついただき、白いスチロール皿を抱えて海の見える一角に座って食べる。
トマトのピリ辛ソースの入るミートチリチーズは、カレー味キャベツとも合っている。上にはとろりと大きめにチーズが溶けている。パンの表面はサクサクと歯ごたえがあり、中はふっかふか。
テリヤキチーズは、とろけたチーズの上にマヨネーズで格子模様が描かれている。プリプリとしたソーセージの下には、照り焼きソース味の玉ねぎ炒めがたっぷり入っていた。これまた甘辛くて妙に旨い。王道のホットドッグの味とは離れているが、なんとも旨い。

「旨い。旨すぎる。ここのホットドッグは絶対旨い。」
「も、もう1本喰うか?今度はプレーンで。」
「いや、だがクレープも捨てがたい捨てがたい」
と言いつつ、結局後ろ髪を引かれながらその場を後に。また来よう。来週にでも。

勝どき 徳寿にて
 タン塩、カルビ、ロース、骨付きカルビ、野菜、きのこ、葱焼き、にんにく
 牛刺し
 サンチュ
 石焼きビビンバ、ワカメスープ
 生ビール

私の母の元へご機嫌伺い。夜は一緒に寿司だ焼き肉だと騒ぎ合い、焼き肉屋に出向くことになった。
結婚前に数回行ったことのある地元の「徳寿」という店は小汚く、それだけに結構安く、そのくせ結構美味しかった記憶があった。だが、都営12号線の工事の影響を受けてか、ここ一体はやたらと最近綺麗になりつつある。この店も例外ではなく、何やら煌びやかな2階建てのビルに改装し、道路の向こう側にまで店舗を拡大しているのであった。

生ビールで乾杯しつつ、次々とやってくる肉と野菜をがつがつ食べる。タンに茄子ににんにくに玉ねぎ。ロースに南瓜にカルビに人参。
「たまにのことだから」
と母が景気良く注文してくれた特上カルビまでやってくる。常温に置いておくと脂がとろりと溶けていってしまいそうな霜降り肉は、卒倒しそうな程の美味だった。
「こ、こんな肉、あまりにも久しぶりかもしれない」
「美味しい。たまらなく美味しい。泣けてくる。」
とキャーキャー言いながらじゃんじゃん焼き続けていると、
「よっく食べるわねぇ」
と笑いながら追加の特上カルビまで頼んでくれた。嗚呼、親とはなんと素晴らしいものだ。

最後に石焼きビビンバを2つ取り、適当に分けつつ食べる。ジュージュー音立てる石鍋の中の飯と野菜と肉と卵をこれでもかとかき混ぜ、お焦げが出来る端から食べる。3人で2つのビビンバを片づけたところで、親子全員、満腹で動けなくなってしまった。
さすがの私も、ここ数日の飽食で胃がフォアグラ状態な予感。……あ、フォアグラは肝臓でした。呆けてます。満腹すぎて。