食欲魔人日記 02年04月 第1週
4/1 (月)
肉味噌うどん (夕御飯)
自家製"生クリームパン"
グレープジュース

今日から4月。学生じゃなくなると4月になった感慨というのは薄らいでくるものだけれど、子供がいると、あれやこれやとイベント盛りだくさんだ。息子は保育園で、今日から1つ上のクラスになる。

そして、これまでの完全給食から「主食だけ持ってこい」式になる。親は献立表を見て、パンとか御飯とか、主食だけを弁当箱に詰めて持たせなければならない。おかずはつけちゃダメ、パンにジャムやバターをつけてもダメ、御飯にふりかけかけてきてもダメ、とにかく他に味のついていない、白い御飯もしくは食パン、ロールパンなどを持ってくるように、と色々指導された。うへぇ、めんどくさい。ていうか、そんな方式、私が子供の頃には聞いたこともないものだったけど。

というわけでより一層、自家製パン作成に燃えることになりそうな新学期。でも、朝食に合わせて焼き上げると、冷める時間が間に合わない。で、前の晩からあれこれ工夫して焼くことになるのだった。パンにバターやジャム塗るのはダメでも、コーン練り込むのはOK?やっぱダメ?うーん。
本日は、懸案の「生クリームパン」にすることに。生クリームをだばだばだ〜と注いで作る、クリーミーなレシピのパンだ。焼き上がりはうっすらとごく薄いきつね色。ふわんとしたパンはモチモチとして、いかにも美味しそうだった。一晩冷ましたそれを、そのまま切ってお弁当箱に。「昼の主食もコレなのに、すまん息子」と思いつつ、朝御飯も生クリームパン。

自家製パンは、ジャムやバターやハチミツの購入が楽しくなってしまっていけない。輸入食材屋なんかに行っちゃったら最後、「うぉー、レモンバター」「うひょー、バラのジャムだって!」と買い込みそうになってしまうので大変危険だ。

簡単ホットドッグ
牛乳

仕事したりこちゃこちゃ作業したりの一日。
昼御飯は、今ひとつやる気のないまま簡単ホットドッグに。いつもやってるキャベツ炒める工程もパス、ソーセージも炒めない。パンにバター塗ってソーセージ挟んでチーズこんもり盛りつけて、焼くだけ。ケチャップを構えて焼き上がりを待つ。

準備時間が半分だったけど、味は1/4くらいだった、というか。
炒めていないソーセージは、温かくはあったけど、なんとなくグニャンとした食感で、バター炒めキャベツのない味は少々物足りなかった。とろけたチーズとたっぷりのケチャップは美味しかったけど、どこか1つも2つも物足りない。
「……やっぱ、手抜きは、いかん」
一人もきゅもきゅとホットドッグ喰いながら、「一人前でもしっかり作ろう」と密かに誓ったのだった。

肉味噌うどん
豆腐と大根の中華スープ
アイスウーロン茶

4月ということで、だんなは歓送迎会らしい。
「お父さんは、飲み会だそうです」
「のみかい〜?」
「いいねー」
「のみかい、いいねー」
「うどん、喰っちゃいますか?」
「うどん!うどんたべるよー」
と、自家製手打ちうどんを食べちゃうことにした。まだ6玉分くらいはあるので、そのうちの2玉分くらいを食べてしまうことに。

ちょっと変わった感じの、ボリュームがあるうどんが食べたいと、肉味噌うどんにすることに。
茄子を角切りに。胡麻油を熱してにんにくと生姜と豚ひき肉と茄子を炒め、回鍋肉に似た味付けをする。甜麪醤に豆板醤、醤油に砂糖に味醂に紹興酒。甘辛い味になるようにぽいぽいと入れていき、軽く煮詰めてできあがり。アツアツのこの肉味噌を、茹でた後水でキリッと締めた冷たいうどんにぶっかける。仕上げに角切りキュウリをぱらっと散らして、できあがり。
温度差のある食べ物ってのは妙に美味しい。あったかいスィートポテトにソフトクリームをかけたりとか、熱い焼きリンゴにソフトクリーム乗せたりだとか。あ、バニラジェラートにアツアツのエスプレッソかけるのも美味しいな、うん。

太めのぺたっとしたうどんに、ちょっと中華な味の肉味噌は良く似合っていた。細すぎるものよりはどっしりとした麺の方がこういう具には良く似合う。シコシコと強い弾力の麺はなんとも滑らかで、今日もやっぱり美味しかった。

実は、今日の夕方、ゲソ天(というかゲソの唐揚げというか)を買ってきたのだ。ゲソ天は、うどんのお供。
「だんながきっと喜ぶぞー」
ということで、明日の朝御飯はまたもやうどんになる予定。2食連続うどん予定、全く後悔なし。

4/2 (火)
ビーフストロガノフwithバターライス (夕御飯)
ゲソの唐揚げ
自家製手打ちうどん&自家製かけだし
アイスウーロン茶

昨日の夜のうどん喰った。で、今朝もうどん。2食続けてうどん。
仕方ないのだ。昨夜「今日はうどん」と心に決めてマーケットに行ったらゲソ天、というかゲソの唐揚げが安売りされていたのだ。これは、うどんにすごく似合いそうだった。ていうか、似合わないわけがない。

「うーん、明日の朝は、うどん」「今晩も、うどん?」「今晩を延期しても、明日の夜、うどん?」
頭の中をうどんうどんでいっぱいにした挙げ句、
「2食続いたから、なんだってんだ!高松じゃ12食連続うどんとかやってたじゃないか!」
とわけのわからない理由で2食連続うどん喰いを決意した。

で、今朝もうどん。
香川気分を味わうには、天ぷらを温めてはいけない。冷めちゃってる天ぷらを冷たいうどん(温かいうどんでも)に乗せて、いりこ味のだしぶっかけて食べる。こういことに快感を感じている私ら夫婦はそろそろ危ない領域に近づいているのかもしれない。

だしは、日曜日の午前中にだんなが作ってくれたものだ。いりこをたっぷり、前日の晩から水に浸しておき、火を通してからは丹念にアクをすくいまくっていた。えぐみや苦みの全然ない、スキッとした透き通った味のだしは、今まで我が家で作られてきたいりこだしの中で一番美味しかった。"つけ"用と"かけ"用のだしを作り、ボトルに入れて冷蔵庫に入れておいたのだった。キンキンに冷えただしは、冷たいうどんに染み渡るように美味しい。
かくして、10玉あったうどんは、この1食にて無くなった。
「並」じゃなく、「大」どころじゃなく、「特大」サイズだったことは……まぁ、気にしないということで。(だって半端に1人分くらい余りそうだったから、茹でてみたらこれが5人前くらいあって……)

エクセルシオールカフェの
 照焼チキンサンド
 アイスコーヒー

うどんは案外と腹持ちが悪い食べ物なのである。1玉くらいのうどんだったら、3時間もしたら空腹感を覚えはじめてしまうのである。が、「特大」喰ったとなったら話は別で、こりゃしばらく腹は空きそうになかった。

今日はお仕事、出勤途中にエクセルしオールカフェでサンドイッチ1個買って仕事場に向かう。いつもだったらパンもひとつ追加なとこだけど、今日はサンドイッチ1個で我慢。照焼チキンのサンドイッチと、卵のサンドイッチ1切れずつのセットだ。アイスコーヒーもラージサイズで購入し、紙袋ぶらさげての出勤。

すんごく美味しい!というわけじゃないけど、そこそこ安心して食べられる味がするので、エクセルシオールカフェはお手軽だ。その昔、高校時代の頃はこの道路をまだまだいった先の通学途中に、なかなか美味しいパン屋さんがあったんだけど(これまたチェーン店ではあったけど)、今はもうない。サブウェイだか小諸そばだかに化けてしまった。学校帰りに寄ったドトールも消え、人気のラーメン二郎もなくなった。なんとなく時代の流れをそこここに感じちゃったり。

ビーフストロガノフwithバターライス
自家製生クリームパン
ペルジャンエール、牛乳

先日、「ハヤシライスとビーフシチューの差はどないやねん」と調べたときにビーフストロガノフにも思いを馳せてしまい、食べたくなってしまったのだ。折良く、特売のを買ってきていた旨そうな牛バラ肉の薄切りがあったりして、いざいざと作ってみることに。

自作のレシピデータベースを調べたところ、「簡単ストロガノフ」だの「きのこのストロガノフ」だの、「ポークストロガノフ」だの色々と出てきたけど、ここは正統派のものを作ってみることに。ビストロフレンチのレシピ本あたりに書いてあったやつだ。
バターで牛肉炒め、薄切りマッシュルームを加える。ざっと炒めたらピクルスの輪切りを加え、塩胡椒、サワークリームをたっぷりぶちこんで、レモン汁垂らして完成。……って、何だか隨分酸味がありそうな。

基本的には「初めて作る料理は、そのレシピに忠実に作ってみるべし」と思っている私。勝手に味を決められるほどには、まだまだ調味料と仲良しでない。ましてや、サワークリームなぞは、まだまだ未知の物体だ。
だが、ピクルスにサワークリームにレモン汁って、それは酸っぱいものばっかりではないでしょうか、食欲の神様。
我が夫は酸味の強いものがあまり得意ではない。酸っぱい肉料理なんて、美味しく食べてくれないかもしれない。で、自分の中の掟を破って、サワークリームを少々少なめに。ピクルスも少なめに。レモン汁も……こらこら、それじゃレシピと大違いな事になっちゃうじゃないか。

ちょっとばかり焦りながら作ったストロガノフは、思ったよりは酸味が少なく美味しくできた。サワークリームのさっぱりした味が、なかなかどうして牛肉に似合う。ピクルスは減らして良かった、と思ったけど。
レシピどおりに(でも、本当は"鍋"とあったところを羽釜で作ったけど)作ったはずの、添え物のバターライスはかなり失敗。分量はともかく、やっぱり鍋と書いてあったら鍋で作った方が良かったらしい。水分が飛びすぎて固くなってしまったバターライスに後から水入れてみたり火を通してみたりとあれこれ工夫し、「やっぱ、ダメなものはダメ」という感じの味になってしまった。とほほほほ、だ。
ま、失敗もなきゃ成長もないわけでー……(←自分への励まし)

4/3 (水)
平目の中華風刺身 (夕御飯)
コンビニの
 まぐろおにぎり
 いくらおにぎり
アイスウーロン茶

明日、我が母が秋田から上京してくる。これから我が家で一緒に生活することになるのだ。
3月頭、へろへろになりながらピアノ運んだりベッド運んだりして大がかりな模様替えをしたのは、この、母がやってくることの布石だったりする。

おそろしく綺麗好きで口うるさい母がやってくるのだ。「太るからこれ喰うなー」とか「もっと掃除機かけろー」とか「だらだらするなー」とか、それはそれは言われるに決まってるのである。実際、私が結婚するまでは喧嘩ばかりだった。ちょっとばかり不安を感じる明日からの生活だ。

で、これが最後とばかりに寝坊した私と息子。「今日は早く行くから」と言っていただんなは、こっそりと朝早く出勤していった。私と息子は惰眠をむさぼり、8時半に起床。わたわたと息子を保育園に連れていった後、「さて、私の御飯はどうしましょう」と、やる気がないままコンビニに寄ってきた。いつもコンビニものを喰ってるわけじゃないのに、明日からは「また、そんなもの食べてー」と言われるかと思うと、何となく"食べておかねば"と思ってしまう。まぐろのおにぎりと、いくらのおにぎり。昼御飯も兼ねてしまって10時過ぎにもしゃもしゃと食べた。

わさびの香りが漂う、たたきになったまぐろが入るおにぎりと、いくらがうりゃ!と入ったおにぎり。しっとりと海苔にくるまれたそれは、案外と美味いものだった。
本日は、これが最後とばかりの友人M井さんの訪問。遊びに来ること自体は今後もできるだろうけど、M井さんが購入したソファーベッドは、これから当分の間は母の寝床になっちゃったりするもんで(スマン、M井さん)、宿泊はしばらく無理かな、という状況なのだった。せめて美味しいものを食べてもらおう。

M井さん来たりて、宴会
 ゆで豚肉のおろし和え
 平目の中華風刺身
 だんな特製モツ煮込み
 鶏肉とごぼうの吸い物
 羽釜御飯
 モルツ、アイスウーロン茶

 シューアイス
 コーヒー

忙しい仕事を抱えたM井さんは午後8時半過ぎに到着した。
「おばあちゃんよりー、おねぇちゃんよりー、M井さんがすきー」
という息子は大喜びだ。
今日のメインディッシュはモツ煮込み。週末にだんなが仕込んだ、豚味噌鍋用の味噌で煮込んだ豚モツの煮込みだ。毎日毎日じわじわと火を通していたら、ぷるんぷるんの、トロントロンの、何とも良い感じに味の染みたものになった。大根と人参と、こんにゃくが入っている。

刻み万能葱と七味唐辛子をかけて食べるモツ煮込みは、全員を魅了した。何度となく席をたっては、大鍋からお代わりをよそう。ビールにも合うし御飯にも合うしで、1kg買ってきたモツは100gほどしか途中で食べていなかったはずなのにほとんど無くなってしまった。茶色く染まった大根も、胡麻や酒粕の味がする練り味噌の味が奥の奥まで染み込んだモツも、何とも良い感じだ。

あとは、先日作った茹で豚肉の残りで簡単な前菜を。茹でられたその塊肉をスライスして1人分ずつの小皿に盛りつけ、スライスきゅうりを飾りに添える。大根おろしを盛りつけて、上からは醤油と胡麻油と豆板醤を合わせたタレをぶっかける。

更に、野菜不足のM井さんのためにと初挑戦した「平目の中華風刺身」。
昔、何度か親に連れていってもらった「海皇(ハイファン)」という店で食べて、「こんなに旨いものが世の中にあったなんて!」と感動した食べ物だ。美しく盛られた刺身と野菜に醤油味ベースのタレをかけて、全体をかき混ぜて食べるのだ。シャキシャキした野菜とか、パリパリとした揚げ生地の食感が何とも快感な食べ物だ。
レシピは良くわからなかったので、Webで探しつつ適当に自己流でやっちゃうことにした。

用意した野菜は、大根、人参、かいわれ大根、きゅうり、長ねぎ、香菜。全てを5cmくらいの長さに切りそろえ、香菜やかいわれ大根以外はできるだけ細く"白髪葱"状態に切っていく。鯛の刺身を盛りつけて、上からはカシューナッツを刻んだやつと、ワンタンの皮を少量の油でサッと揚げてパリパリにしたものをたっぷりかけておく。
タレは、胡麻油と醤油とレモン汁と砂糖と塩胡椒を適当に混ぜたもの。食べる寸前にこのタレを上からジャッとかけて、わさわさと全体をかき混ぜたらできあがり。胡麻油が香ばしく、大体思ったとおりの味になった。M井さんも気に入ったらしく、えらい勢いで大皿に作った野菜の山が消えていく。

「デザートは、イチゴか、シューアイスか(←今日、お義母さんからお裾分けしてもらった)、今川焼きか(←同左)、マンゴープリンがあります」
と宣言したところ、M井さんからもだんなからも「マンゴープリンください」と嬉しい返事が返ってきた。特売していたマンゴーを2個買ってきて作った自家製マンゴープリンだ……が、あいにくとまだちゃんと固まっておらず、マンゴープリンは明日まわしということに。

お義母さんからお裾分けしてもらったバニラとチョコとストロベリーと抹茶味のシューアイスを
「ぼくはぁ、いちごー」
「わたくしは、抹茶が良うございます」
「俺、バニラ〜」
「じゃあ、私はチョコ〜」
と平和的に分け合って喰いつつ、居間でごろごろごろ。M井さんは、現在3DCG作成に夢中の御様子で、毎回嬉々として「作品」を見せてくれる。いいなぁ、いいなぁ、と感動していたらソフトをあれこれ紹介してくださった。
よし、これでとりあえず3Dのマンゴプリンを!(作ってどうする)

4/4 (木)
肉詰めピーマン♪ (夕御飯)
M井さんとの朝御飯
 自家製食パン
 目玉焼き
 きのこのマリネ
 生ハム
   カフェオレ
 自家製マンゴプリン

昨夜我が家での宴会の後、いつも通りに宿泊していったM井さん。
事前に、「ところでうちの御飯、羽釜の御飯と、自家製手打ちうどんと、自家製焼きたてパンと、3種類選択できるけど何食べたい?」と聞いておいてみた。こうして並べると、なんかすごい選択肢だ。その事前やりとりの、お返事。

「主食選択が3つあるのに2回しかチャンスがないなんて不公平です。
羽釜ごはんはモツ煮込みとセットになるので、残るはうどんとパンですが、朝食にはゼヒ後者を試したいところで御座います。
あと一回、なんとか食するには、お昼のお弁当とゆー妙案が。
いや、何でもありません、独り言です。
でも削除はせずに送る。」

……だ、そうである。じゃあ、何ですか、茹でたうどん(すうどん?)をタッパーに詰めて弁当に持たせろと……?
それじゃせっかくの手打ちうどんが"うどんのゾンビ"になってしまう。いや、ていうか、だしはどうする。葱も刻んで持たせるか?
……真面目に考えるとアホウな感じなので、このメールは流し読みするにとどめておいた。M井さんのメールは、いつもほのかに面白い。いや、本人はもっと面白い。

そういうわけで、起床に合わせて食パンを焼いてみた。ごくごくシンプルな、ふつうの食パン。
「寝ている間、パン焼き機がうるさくなかったですか?」
と寝癖でポワポワ頭のM井さんに聞いてみたところ、
「いや……うるさくは、なかったです。ただし、30分ほど前からの香りに眠りをさまたげられましてございます」
という返事が。何だか嬉しそうだ。

我が家でもっとも大きい部類の皿を出し、買い置きの生ハムと、昨日のうちに作っておいたきのこのマリネを盛りつける。目玉焼きと、まだ湯気の出ている焼きたての厚切りパンも1皿に盛りつける。カフェオレに、昨夜食べられなかった自家製マンゴープリンも。なんだか豪華な朝飯になった。

今川焼き
アイスウーロン茶

今日の午後、母が秋田新幹線に乗って我が家にやってくる予定になっている。
綺麗好きの母は、来るなり掃除機や雑巾を持って家中を掃除し始めるに決まっている。で、いろいろぐちゃぐちゃ言われるのは目に見えているけれど、せめてその"いろいろぐちゃぐちゃ"を軽減しようと、朝から必死で掃除してみた。そりゃもう、食事するのも忘れるくらい真面目に掃除した。

で、午後3時半、母到着。大量の"いぶりがっこ"(←秋田名物、桜のチップでいぶした沢庵)と共にやってきた。
「あらもー、床がざらざらよー」
と、やってくるなり、想像通りに"いろいろぐちゃぐちゃ"言い始めたが、とりあえず「おなかがすいたわー」なんて言うので今川焼きを出した。昨日、だんなのお母さんからお裾分けしてもらった今川焼きだ。あんこがぎっちり詰まったやつが5個、我が家にやってきていた。冷め切って、水分含んでちょっとグシャッとしていたので、オーブンでこんがり焼いちゃう。水分を飛ばすようにトーストするように温めると、良い感じに表面がサクサクになった。ほぼ1年ぶりの母と久しぶりに顔を合わせて、今川焼き。
どっかの本で読んだけど、買って時間が経ったカステラなんかも焼いてみると美味しいらしい。ブランデー垂らすと美味しいとか美味しくないとか。

食べてから、案の定怒濤の掃除モードに入った我が母。
「ほらほら、2回拭いてもこんなにタオルが汚れるわよー」(私も拭いたもん、一度だけだけど)
「ほらもう、床がジャリジャリじゃないー」(だって誰も文句言わないもん)
……これからしばらく、我が家は大層綺麗な状態が保たれそうなのであった。

モツ煮込み
肉詰めピーマン
ローストビーフのサラダ
鶏肉と舞茸の吸い物
羽釜御飯
いぶりがっこ
モルツ、抹茶入り玄米茶

本来、肉が大好物だった母だけど、秋田にひっこんでからは長らく肉だの油ものだのからは遠ざかっていたらしい。
「今日は、買い置きのピーマンで肉詰めピーマン作るの」
と肉屋に寄ったら、嬉々としてローストビーフとか買っていた。「サラダなんて久しぶり〜」と何だかうきうきしているようなので、ご要望通り、レタスと玉ねぎ、パプリカをたっぷり刻んだサラダを作り、上にローストビーフをこれでもかとてんこもり。

合いびき肉には刻み玉ねぎと、牛乳、パン粉を適当にぶちこんで、ねりねりねりねり。ピーマンをざくざくと切っては母に渡し、一緒に肉を詰めていく。
「なにこれ、炊飯器ないじゃない、なに、羽釜!?」
「え、おひつ?なんか秋田よりも田舎っぽい食生活ねー」
と笑われながらの食事の支度。1人増えただけなのに、妙に賑やかな我が家になってしまった。

肉厚のピーマンにびっちり肉を詰め、肉の面からこんがりと焼いていく。焦げめがついたらひっくり返し、ピーマンの面を蓋をして蒸し焼きにしていく。途中、30ccくらいの水をジャッと入れて更に蒸し焼きに。今日はなかなか良い感じに火が通った。肉はふっくら、ピーマンはシャキッと。その昔はピーマンは大嫌いなものだったけど、今はこの苦みがたまらなく好物だ。息子は……やっぱり苦手らしい。口をへの字にしながら、肉だけ速攻食べた残りのピーマンをもそもそと囓っている。
だんなは嬉しそうに、いぶりがっこをパリポリパリポリ囓っていた。なんか、1年分くらいありそうな大量のいぶりがっこだ。

肉詰めピーマンには、やっぱりとんかつソースが一番似合うと思う。が、ズラズラと色々なソースを並べて好き勝手につけて食べるのがまた楽しい。とんかつソースに、名古屋「コーミ」のウスターソース、同じく名古屋の味噌ソース、そして神戸のどろソース。「この味噌味噌感がたまらぬよね」などと言いつつ味噌ソースをたっぷりかけちゃったりなんかして。

4/5 (金)
金目鯛のアクアパッツァ (夕御飯)
自家製食パンのトースト
目玉焼き
カフェオレ

母と同居開始の、初めての朝。
元来、パン食が好きでコーヒーが好きで肉料理が好きだった私の母だが、郷里にひっこんでからは米と麦と野菜と魚で構成された禁欲的な生活をしていたらしい。「肉よ、お肉」「美味しいパン食べるわ、パン、パン」と、昨日到着早々に何だか弾けているのであった。

で、自家製パンの朝御飯。冷凍保存しているものがけっこうあるので、今日のところは焼きたてパンじゃなくて冷凍パンをトーストしたもの。それはそれでサクサクとした良い感じの歯ごたえになるので、なかなかいける。
バターをこてこて塗った後に、半熟に焼いた目玉焼きを乗っけてかぶりつく。トロトロと流れてしまいそうな黄身を制御しつつ、一気にがふがふとパンと卵を食べていく。コーヒーはちょっと濃いめのキリマンジャロブレンド。

今日は本当は出勤日だったけど、なんでもゼミ旅行だとかで先生不在のため、お休みなのである。……今日は一日母につきあってあげることにしよう。

千葉そごう内「サファイア」にてBランチ\3,000也
 オードブル盛り合わせ
 黒胡椒ソースのステーキ
 サラダ
 パン
 デザート盛り合わせ
 紅茶
 +グラスビール、グラスロゼワイン

「100円ショップに行きたい」という母につきあって千葉に行ったり、そういや枕もないねとお買い物したりの1日。

今日は私の誕生日なのである。起き抜け早々にニヤニヤするだんなに「お誕生日おめでとうおめでとう、XX歳の誕生日おめでとう」と散々言われた。ニヤニヤされるのにはわけがある。数年前に私もだんなに「いよいよだねぇ」と散々言って悔しがらせた記憶がある。ええ、私まだ10代です。16進数でなら。

ともあれ、母も夫も(多分息子も)お祝い心はいっぱいあるらしかった。
「何か昼御飯、御馳走するわよー」
と母は言ってくれたけど、大荷物を抱えての千葉駅前周辺、いまひとつ思い当たる「行きたいお店」もない。まぁ無難なところで、とデパートの上を結局目指しちゃったのだった。千葉そごうの上階では、ホテルオークラが運営する和食と中華と洋食のレストランが1フロアを占拠している。和食と中華は経験済だ。悪くはないが絶賛するほどでもなく、そこそこまぁまぁ満足できるかなというお店だ。枕の入った巨大な無印良品の袋と、様々な物体を詰め込んだ100円ショップの巨大な袋を抱えての入店。す、すんません……。

で、3000円のランチセット。
盛り合わせオードブルかスープ、スパゲッティのうちから1皿を選択し、メインディッシュとサラダとパンとコーヒー、デザートがついてくる。
「私、オードブルで〜」
「わたしも〜」
「生ビール、グラスでね♪」
「わたしも〜」
と、昼から女二人でささやかに酒盛り宴会。ビール飲み干した後は「オークラワイン」なるハウスワインのロゼをくぴくぴと。

魚のマリネやスモークサーモン、薄く切ったテリーヌなどが盛り合わされた前菜は、見た目は綺麗だったけど「あまり手間はかかってませんね、もしかして」というのが何となく見てとれる外見だ。甘味のあるドレッシングが全体にさらさらとかかっている。洋食を食べること自体が久しぶりな母は、それでもすごく嬉しそうだった。「美味しいわー、美味しいわー」と私が1切れ喰ってる間に2切れのフランスパンをもりもりと囓っている。
薄めにスライスされた2切れの肉には、生クリームベースに黒胡椒をきかせたソースがかかっていた。粒のままの黒胡椒がごろんごろんごろんと入り、ピリリと辛い。クレソンに、いんげんに、じゃがいも、にんじんの添え物つき。

デザートも、盛り合わせ。ポットでやってきた紅茶を3杯ほど飲みまくりつつ、大皿に盛られた壮観なデザートを母も私もたいらげた。どれも小さくカットされているけど、洋梨のタルトにパッションフルーツのムースのケーキ、アイスクリームにはカスタードクリームが糸状に垂らされて、スポンジとカスタードクリームのシンプルなケーキなんかもあった。

「そういえばね、私ね」
母、還暦を過ぎているはずなのに、良く喰う。
「お寿司もしばらく食べてないんだわー」
「ふんふん」
「焼き肉なんかも、もう何年食べてないんだろう、って感じ」
「……うん」
「そうそう、パンもね、"東京行ったら美味しいのいっぱい食べるんだー"って思って来たのよ」
「あ……そう……」
お母さま、もしかしてこれからしばらく食べ歩くおつもりなのですか?

金目鯛のアクアパッツァ
きのこのオイルマリネ
母製ポテトサラダ
刻み野菜のコンソメスープ
羽釜御飯
ビール、アイスウーロン茶

ドゥリエールのモンブラン
カフェオレ

誕生日なのである。
「ステーキ焼いて、マッシュポテトとにんじんのグラッセと……」
と思っていたのに、まんまそのようなものを昼飯に喰ってしまったのである。夜も肉、という気分にはなれなかった。で、デパ地下の鮮魚コーナーで小ぶりの金目鯛3匹パック1000円ちょっと、というものを買ってきた。アクアパッツァをじゃかじゃかっと作ってお祝い御飯にすることにしよう。

母がポテトサラダとスープを作り、私は御飯とアクアパッツァの準備を。まずはプチトマトを横に両断してそれをオーブンで1時間ほど焼き、天日で半日ほど干して自家製ドライトマトを作ることから。魚はウロコと内臓を取り、表面と腹の中に塩を多めにまぶしておく。

フライパンにオリーブ油を少量熱し、魚を並べてこんがりと両面焼き付けていく。こんがり焼けたらアサリをどばどばと投入し、続いて先のドライトマトとオリーブ、アンチョビ、ケッパーなども適当にどばどばと放り込む。水を100ccほど上からジャーッと回しかけ、あとはその煮汁をこまめに魚にかけつつ全体に火を通せばできあがり。
魚は香ばしく、具在の味がスープに溶けてこれがまた旨味たっぷりで良い感じの料理だ。レストランじゃ絶対できないけど、この煮汁と崩した身を御飯にかけて食べると超旨い。今日もやっぱり旨かった。

早めに帰宅しただんなが持って帰ってきてくれたのは、日本橋で途中下車して買ってきてくれたドゥリエールのケーキだった。
かつて、5年ほど前はプランタン銀座にも銀座三越にも、あそこにもここにもあったドゥリエールだ。が、気がつくとほとんどのデパートからは撤退してしまって、今は新宿伊勢丹と日本橋三越にしか残っていないのであるらしい。
「ミルクレープはなかったんだよ〜」
と、だんなが買ってきてくれたのはチョコバナナケーキ、マーブルシフォン、ミモザ、モンブラン。相変わらず巨大でクリームたっぷりだ。誕生日人権利ということで、私が最初に「わたし、モンブラン〜」と選択させていただく。薄い色のマロンクリームがにょろにょろとたっぷり絞られたケーキ、それでもやっぱり生クリームのホイップもたっぷりと。
うへへへへ、昼も夜も、大変美味しい楽しい誕生日でございました。

母と我が夫、「上手くやっていけるのかしらん」と思っていたものの、昨今の阪神連続勝利にすっかり意気投合している模様。
だんなは物心ついた時からの熱烈な阪神ファンで、当然、熱烈なアンチ巨人。そいでもって我が母は、昔っからの超アンチ巨人で、ゆえに阪神あたりはかなり前向きに「がんばれ」と思っている模様。
私が風呂入って、「次の人どうぞ〜」とか言っているのに、だんなと母はテレビの前で「この阪神のニュース、見たら、ね」なんて言っているのである。平和な我が家なのだった。

4/6 (土)
さらっと、とんこつラーメン (夕御飯)
フォートナムメイソンの
 プレーンスコーン
 レーズンスコーン
クロテッドクリーム、ジャム各種
ロイヤルミルクティー

母との同居、2日目の朝。
「スコーン食べたいわ、スコーンスコーン」
と騒ぐ母のために、昨日はデパートのフォートナムメイソンコーナーでスコーンを買ってきてみた。勿論、ナカザワ乳業製クロテッドクリームも忘れない。

クロテッドクリームは、生クリームに熱を通して煮詰めて煮詰めて作る濃厚なクリームだ。乳脂肪分は恐怖の63%。生クリームと同じ感覚でつけてしまうと、そのカロリーの多さに愕然としてしまうことになる。けど、美味しいのよね。スコーンには、これがなくては!と思っちゃうのよね。

かつてイギリスで食べたクリームは黄色みがかっていて、それはそれは美味しかった。どことなくふわりとした食感で、ミルクの香りがふわふわと立ち上ってきた。それを日本で現在、唯一生産販売を行っているのが、ナカザワ乳業だったりする。ねっとりしたクリームは、それはそれはスコーンに良く似合う。ホイップクリームでもそこそこその気分は味わえるけど、やっぱりスコーンには乳脂肪分たっぷりのミルクの風味豊かなこのクリームをこれでもかとなすりつけて食べるのがサイコーに幸せな気分なのだ。

実は、だんなはそれほどスコーンがお好きでない。スコーンに限らず、クッキーとかビスケットとか、"口の中がもさもさする"系の菓子は今ひとつ好きじゃないということだ。ま、ここ数日は母サービスデーとなっているのですまん、ということで。

合わせるのは、たっぷりの濃厚ミルクティー。少量の熱湯で茶葉を鍋にて数分煮出し、そこに牛乳をだばだばだばだ〜と加えて温める、水:牛乳の比率が1:5くらいの濃厚ミルクティーだ。かつて、このミルクティーをよく飲んでいた喫茶店では、これを「ロイヤルミルクティー」と称していた。だから私と母の中では「これはロイヤルミルクティー」ということになっているけど、実際はちゃんとした定義がないらしい。「煮出し紅茶」という方法は、イギリスというよりはインドの「チャイ」に近いものがあるようにも思うし。

で、この「ロイヤルミルクティー」は、ちょっと甘くした方が好みだ。ほんのり甘い牛乳たっぷり紅茶をだばだばだ〜と飲みながら、乳脂肪たっぷりクリームをなすりつけて食べるサクサクのスコーン。休日っぽいちょっと幸せな朝御飯(って、ホントはスコーンってアフタヌーンティーに出すもんだよね、普通)。

稲毛海岸「銚子丸」にて
 うずらねぎとろ
 生サバ
 カツオ
 大トロ
 カニサラダ
 ウニ
 ズワイガニ
 いくら巻き
 ビール、あら汁
などなど、たらふく食べる。

「誕生日だし、土曜か日曜、どっかで御馳走してあげる」
と母に言われ、少々悩む。明日はだんなと2人で外出する予定になっているし、今日の外出は近場で済ませたいところ。数駅先に、美味しいらしい焼き肉屋があるらしい。近くの駅前には、つい1ヶ月ほど前に鶏肉料理専門店がオープンした。で、寿司も良い。息子にお伺いをたててみた。
「焼き肉と、鶏肉と、お寿司、どれが食べたい?」
「んとねー、おすし。いくらとー、たまごを食べるよー」
速攻で答えが返された。そうですかそうですか、イクラと卵ですか。それじゃ回転寿司に行っちゃえ。

かくして、お気に入りのチェーン回転寿司屋「銚子丸」に向かった私たち。私と母は、その昔々に一度だけ回転寿司に入っている。そこのイクラは糸をひいていたような最悪の店で、それ以来私も母も回転寿司に足を向けることはなかった。私は最近になってだんなに連れてきてもらって開眼したけど、母はあの時以来の訪問だ。
「回転寿司って、あまり新鮮じゃないんじゃないのー?」
「そんなこと、ないって」
「お茶って、自分で運ばなきゃいけないの?」
「違うよー、テーブルにお湯が出る蛇口がついていてね、ふっふっふ」
回転寿司に目覚めた私、先駆者として母に語る語る。
ボックス席に陣取った我が家4人、昼下がりにビールを飲みつつたらふく食べた。

母のおごりということで、おおいに食べる。大トロも人数分取っちゃう。カニとか取っちゃう。ウニも食べちゃえ。大トロ皿は500円。でも、白みがかった紅色の大トロは室温で溶けてしまいそうな柔らかさで、口に入れるなりトロントロンと溶けていく。手軽に味わえる幸せな美味だ。
「あ、あれ美味しそうだわー」
「サバ、好きよ好き」
「ビールもう1本ね〜♪」
と、母は母で回転寿司を満喫した模様。って、なんで茶碗蒸し取ってますか、母。いや、茶碗蒸しはいいけど、なんでイチゴとかメロンとかコーヒーゼリーとかもりもり喰ってますか、母。

私とだんなは、な〜んとなく暗黙のうちに
・茶そばとか茶碗蒸しとかは、1回につきせいぜい1個くらいにとどめておこう
・カニサラダとかツナサラダなんかの"イロモノ系"も、やっぱり1回につき1個くらいにとどめておこう
・すぐ満腹になっちゃうから、ビールはなるべく避けておこう
とか思っているのである。デザート類も味に比して高く感じるので、せいぜい息子用にだけ1皿、という感じ。
目の前でビールをお代わりし、次々と「口直し」とか言いながらデザート皿を取ってる母は、「すっげぇなあ」という感じだったのだった。ま、美味しそうだったし楽しそうだったし何よりだ。私も充分堪能させていただきました。御馳走さまでございました。げぷ。

とんこつラーメン
アイスウーロン茶

遅めの昼御飯、ものすごい満腹状態になったあと、隣接するショッピングエリアでお買物。花の苗買ったり雑貨買ったり、大荷物で帰宅した。元々私もベランダであれこれ花やハーブを栽培していたけど、更に花好きの母が加わり、ベランダはじわじわと大変なことになりつつある。あと数ヶ月もしたら花だらけになりそうだ。

で、腹が全然空かないまま、夕方になり夜になった。昼間っからビール2本を空けてしまって、なんとも心地よい倦怠感に身体中を満たされたまま夕食を作る気力もなく
「……ん〜、お腹すかないけど、これで寝るには物足りないというか……」
「……ラーメンとか、うどんとか?」
「おぉぉ〜、いいねぇぇ〜……」
「あ、私はいらないからね」(←母)
と、全体的にだらだらしたまま、結局だんなが近くのマーケットにラーメンを仕入れに行ってくれた。

「行列のできるラーメン屋」のとんこつ味。茹でもやしとチャーシュー、ゆで卵と刻み葱のトッピングつき。
こってり味のスープはそこそこ美味しく、でもなんだかバターに似た匂いがした。縮れのない麺をつるつると啜りつつ、とろんと半熟のゆで卵を一口で食べちゃう。
明日は久しぶりの人と、会うのは初めての人と会って一緒にお食事の予定。息子をだんなの実家に預け、だんなと2人のお出かけだ。
夫の実家の至近に住み、しかし同居は妻の母と、という家族はちょっと珍しいような気がしないでもない。ま、良い距離感かなと思う。一番楽な思いをしているのは私のような気も……しないではない。

4/7 (日)
Andyさん宅にて「梅菜[火屯]猪肉」 (昼御飯)
冷凍海老ピラフ
アイスウーロン茶

ホームページを開設して、そろそろ5年というところ。嬉しいことに、趣味を同じくする様々な方向にディープな方々と知り合う機会が一気に増えた。今日、会いに行くAndyさんという人も、それはそれはディープな人であるらしい。

すきすきまんごぷりん」を通して知り合ったAndyさんは、「逍遙自在区」というサイトを運営している。元は中華の料理人。決まったメニューを作り続けることに嫌気がさして職業料理人を辞め、現在は他の仕事をしながら趣味として料理を作り続けているということだ。美味しいものを愛し、中国茶を愛し、ほぼ毎週のように、週末には自宅で「お茶会」を開いているらしい。

共通の友人がいることが発覚し、意気投合して昨年夏に自家製マンゴープリンを送っていただいたことがある。それから後、何度か「おいでおいで、お茶会においで」と誘っていただいて、今日、だんなと2人で初めて行ってみることにしたのだった。"共通の友人"は、私とだんなが結婚することになったきっかけを作った人でもある。だんなの高校の同級生であり、私の大学の先輩でもあり勤めていた会社の先輩でもある。色々と繋がりの深い人なのであった。

で、目的地は横浜方面。我が家からは1時間半はかかる距離で、ちょいと早起きの日曜日の朝だ。
いつもよりは念入りにお化粧し、ちょっとだけお洒落し、髪の毛もいそいそとドライヤーをかけまくる。わたわたしている間に、「何かちょっと食べていこう」とだんなが冷凍ピラフを温めてくれた。1袋100円のチープなチープな海老ピラフだ。
何だかひからびたような感じの海老がパラパラと入る海老ピラフ。不味いというほど不味くはなかったけど、美味しいと思えるものでもなく。半端に食べたら余計に腹がへってしまい、初対面の人のところにお邪魔するというのに、
「はらへったー、へったー」
「がつがつ喰うぞー、もりもり喰うぞー」
と餓鬼のような状態で待ち合わせ場所へ。とほほほほー。

逍遙自在区 Andyさん宅「春季茶宴」
 麻醤拌海[折虫]〜クラゲのねり胡麻マヨネーズ和え
 鹵味香[又鳥]珍〜砂肝の紹興風味五香スパイス煮
 黒猪小龍包〜黒豚入りショーロンポー
 鮮帯[火畏]腐竹〜帆立貝とゆばの金華ハムシャンタン煮
 熱灼生菜〜レタスの湯引き香港風タレかけ
 梅菜[火屯]猪肉〜温州特産漬け物と豚肉の蒸し煮
 冬菜炒飯〜天津白菜のニンニク漬け入り炒飯
 芒果布丁〜マンゴプリン
 豆腐花〜トウフファー
 阿媽糖醋排骨〜Andyお母さんのスペアリブの煮込み
 雪耳老眼〜白キクラゲと龍眼のココナッツミルク煮
 杏仁豆腐〜アンニン豆腐

 台湾高山茶(四季春)
 霧社高山茶
 文山包種茶
 凍頂コンテスト茶
 広東烏龍茶(黄枝香)
 凍頂烏龍熟茶
 凍頂早春茶

正午過ぎ、無事に待ち合わせ場所でお互いを見つけることができ、Andyさん宅に案内していただいた。だんなより数歳上、といったところの、人なつこい顔のお兄さんだ。痩身だけど腕の筋肉は綺麗についていて「お、料理人だ」という感じ。
話はずれるけど、料理する男の人の姿は何ともいえずセクシーだ。鍋をふるう腕や包丁を扱う指の動き、後ろ姿なんかにメロメロになる私。以前、だんなとM井さんが2人並んでラーメンを作ってくれたことがあって(私は座して待っていただけ)、あれは最高に嬉しかったし、2人はとてつもなく格好良かった。料理する男の人はステキだ。その料理が美味しかったらなおステキだ。

で、話戻してAndyさん宅。これがもう、驚くような空間だった。見事なまでの、人をもてなすためにある空間があった。
ダイニングスペースの中央にはガラスのテーブルが置かれ、桜の花びら模様のテーブルライナーが中央を走っている。背もたれが高い椅子はシックなもので、それが4脚。テーブルの短い辺にあたるところには背の低い茶色の椅子が、一見ちぐはぐな感もあるのに妙になじんで置かれている。テーブルの隅には使い込まれた功夫茶のセットがあり、その横にはワインボトルにいけた花が。雑然とした感じが少しもなく、かといって肩肘はったものでもなく、センスの良い雑貨に囲まれた空間は何とも居心地が良かった。そこら中にお手本にしたいようなものがいくつも転がっている。手作りのレースの電話カバー(←こういうのが私は苦手……)みたいな押しつけがましいアイテムは1つもなく、すっきりして、でもあったかくて、何とも良い感じなのだった。

今日のための、綺麗に印刷された葉書サイズのお品書きが渡される。ずらっと並ぶ料理名は11種類もあった。
「今日はね、せりあさんが来るから"メインディッシュはデザートだなー"って4種類も作っちゃったよ」
と笑っている。
「でもしっかり食べてもらおうって、おかずもいっぱい。あははははー」
って笑ってるけど、台所はごくごく普通の家庭のもの。ガスコンロは2口。広さも普通。何故か冷蔵庫は大きいやつが2個も鎮座ましましていたけど、この設備で11種類も料理を出そうという事に(しかも、この凝ったメニュー名、どうよ)まずびっくりする。その後もびっくり続きだったりしたけれど。

少しして一人、そして更にもう一人、Andyさんのお友達の女性がやってきた。最終的には5人でおしゃべりしながら楽しく6時間ばかりを過ごすことに。

1つ料理を出してはパタパタと厨房に戻り、次々とAndyさんは腕をふるってくれた。スタンダードな"中華料理"っぽいものはほとんどなくて(クラゲの前菜くらい?)、「こういう味のもの、初めて」と思うようなものが多かった。どれもこれも、恐ろしいほど美味しい。はっきり言って、そこらの店より(どころか、私が好きだ!と思っている店よりも)美味しいものばっかりだった。最初の皿で目の色を変えただんなは、「是非、チャーハンを教えてください」と厨房に貼り付いてしまったり。並ぶ調味料の配置とか、その手際の良さとか、私もだんなも網膜に焼き付ける。

今まで、「中華料理は火力がね、家庭のじゃね」なんて、味の不足を火力で言い訳していた部分があったけど、そんなことは今日限りで言えなくなってしまった。同じような家庭用コンロなのに、アツアツ炒飯はパラッと軽い食感で、小龍包にはスープがたっぷり詰まっていた。香港で食べたのより美味しく感じた豆腐花。いちいち書くと誰も読んでくれないんじゃないかくらいに長くなっちゃいそうなので別ファイルにしてしまうほど、そのくらい美味しかった。。

メインディッシュたるデザートの前まで(つまり、それまでのは全部前菜?)、次々と皿を空け、何とも幸せなデザート4種類攻撃。「凍頂烏龍」を主にして7種類ものお茶を功夫茶の作法で味あわせてもらいながら、熱かったり冷たかったりする美味なる甘さを堪能した。途中には、Andyさんのお母さんからの宅急便が届いちゃったりして、しかも中には美味しそうなスペアリブの煮込みなんかが入っていたりして、突如皆で肉を囓ることになっちゃったり。それもまた楽しかった。

午後6時。美味しいお茶と料理でぽわんぽわんに腹一杯になった状態でAndy邸を辞する。
これまで、自分は家庭料理としてはそこそこ美味しいものを作れてるんじゃないか、盛りつけもそこそこ上手いんじゃないか、と思っていた。

でも、プロのテーブルセッティングとか、プロの鍋の扱いとか、プロの手際とか、今日はとことん見せつけられた。「がんばらなくちゃ」と何だか燃えた。「負けてたまるか」というよりは、「この域まで達せたら毎日がすっごく楽しいだろうなぁ」という。
こんなもてなし、自分もできたらサイコーだ。せめて味の一片でも、この洗練さを漂わせることができたらな、と思う。
今日は色々勉強させていただきました。Andyさんに、心から感謝。