食欲魔人日記 03年06月 第3週
6/16 (月)
Torattoria Vino(稲毛)にて、揚げ茄子入りジェノベーゼ (夕御飯)
海苔トースト
スクランブルエッグ
アイスカフェオレ

「今日は……トーストとスクランブルエッグって感じかな、うむ」
と、買い置きのパンを出し、フライパンにバターを落としてスクランブルエッグの準備。ぱたぱたと皿を出していたら、
「あー、卵ねぇ、スクランブルエッグが嬉しいなぁ〜」
と寝ぼけた表情のだんなが近づいてきた。いや、だからね、今日はスクランブルエッグのつもりで準備してるんだよー、とバター入りのフライパンをほれ、と指さす。今日も夫婦間電波は絶好調らしかった。

塩胡椒して、ちょっとだけ牛乳を加えた溶き卵で作ったスクランブルエッグと、海苔トースト(バタートーストに焼き海苔1枚乗せただけ、でも妙に美味しい)とアイスカフェオレ。
今日も平和だなぁ〜。

稲毛 「Torattoria Vino」にて
 ランチセット(揚げ茄子入りジェノベーゼ・サラダ・パン・アイスティー) ¥800
 本日のミニデザート(ミニパンナコッタ) \200

仕事したり、片づけしたり。
「昼御飯は、何を食べたいですかー?」
息子に聞いてみたところ、
「ちゃーはん!ちゃーはんが食べたいと思うなー」
と即答された。チャーハン……ですか。近所に美味しい店があったなぁ……と、仕事が休みの母を誘って親子3人で近所の中華屋に行ってみた。……が、店にはシャッターが閉められてその店頭には「本日は臨時休業致します」の無情の一言が。

「月曜日……やってるはずなのに……」
「運がなかったねぇ」
仕方なしに目指したのは、「じゃあパスタにでもする?」と、これまた近所にあるイタ飯屋さん。スパゲティとピザの他、前菜や肉料理もそこそこ揃っている可愛いお店だ。味もまぁまぁ。

一品料理のスパゲティは1000円前後だけれど、平日のランチはランチセットということで800円のパスタが3種類用意されている。パンとサラダとドリンクがついてくるけっこうお得なセットだけど、安いだけに使われる材料はショボいもの。それでもこれでいいね、と母も私も800円セットにした。母は小松菜とベーコンのオイルベースのスパゲティ、私は揚げ茄子のジェノベーゼソースのスパゲティ。息子は「ピザがいいなー」ということだったので4種のチーズのピザ。

パルメザンチーズをかけたレタスのサラダと、バターを塗ってトーストしたフランスパン、そしてスパゲティ。特に変わったものはないけれど、安心して食べられる味のものを出してくれるお店だ。角切りされた茄子を揚げたものと松の実がたっぷり入るバジルペーストのスパゲティをちゅるちゅると平らげ、ちと物足りなくて200円のミニデザートを1個追加注文して皆で適当につつく。
徒歩で料理店に行けるって、いいなぁ……(アメリカじゃどこに行くにも車だったしねぇ……)。

鰹のたたき
茹で鶏と水菜の棒棒鶏風サラダ
すじこ
しじみの味噌汁
羽釜御飯
ビール・麦茶

昼食後、駅ビル内商店街で肉屋と魚屋と八百屋をぷらぷら。
「あー、スイカが出始めてる〜」
「肉っ鶏の胸肉が100g35円って何事!?」
「スジコもある〜」
「鰹が大安売り中だー!」
と、つい浮かれてしまってあれこれ買ってきた。鰹は半身(2切れ)で500円。こりゃいいやー、と今日のメインディッシュは鰹のたたきに決定した。

鰹の他は軽くサラダか何かでいいやと思いつつ、調子に乗って鶏肉を大量に買ってきたので茹でて野菜を合わせることに。刻んだ水菜とキュウリを合わせ、上からは手で細かく裂いた茹で鶏を盛りつけ、練り胡麻と醤油と酢と砂糖などなどを合わせて棒棒鶏風のたれを作った。鰹は全面をフライパンで数秒ずつ焼きつけ、スライスしたら山盛りの刻み万能葱と薄切りにんにくをぶっかける。たれは煮きり味醂と煮きり酒に醤油と柚子の絞り汁を合わせたもの。
冷凍食品やレトルトパックにあまり抵抗はないものの(正確には、"抵抗はなくなってきた"ものの)、「かけるだけで棒棒鶏」とか、「合わせるだけで回鍋肉」系の合わせ調味料にはどうしてもどうしても抵抗がある。せっかく肉や野菜を切って下準備しても、市販のたれをかけちゃったらそれは「うちの味」じゃなくなってしまう気がする。ポン酢や胡麻ダレはまぁいいかと使っていたりするので、自分でもその基準はよくわからないのだけど、「それをかけたら味が決まり」みたいなものはどうやら苦手に思っているらしい。
で、棒棒鶏のたれも鰹のたたきのたれも、せっせと自作。棒棒鶏だれはちょっと醤油の味が濃いめにできてしまったけど、均一の味じゃないのも手作りの醍醐味だ(と言い訳してみる)。

「うぉー、何だか今日は御馳走だなぁ」
と、8時過ぎに帰ってきただんなは嬉しそうだった。大振りの皿に盛られた鰹と、鶏肉のサラダ。すじことしじみの味噌汁と御飯。まだまだ魚介に飢えているんだなぁという食卓だった。
鰹独特の生臭さが漂う赤身には、にんにくの香りがよく似合う。これでもかとかけた刻み葱に柚子の香りが漂って、購入した時には
「えー、これは多すぎるわよ、こんなに食べられないわよ」
なんて母に言われたたっぷりの鰹は、それでもほとんどがなくなってしまった。数切れ残った鰹は小皿に移して明日の朝御飯用にし、同じく少量残った鶏のサラダも冷蔵庫へ。
ここしばらく、「なんか、おかずを"いつもの分量"で作っても物足りないのよねぇ……」と思っていた事は、今日は多すぎるくらいに解消されたのだった。……って、今日は"主菜と副菜"というより"主菜2つ"という感じだったし、根本的な解決にはなっていないような気が。

6/17 (火)
この季節はスイカが美味しいねぇ〜
鰹のたたき(昨夜の残り)
納豆
ご飯
麦茶

蒸し暑くないのは良いけれど、今日は朝からじとじととイヤな雨が降ってくる。そうそう、梅雨よね梅雨なのよね、と少しだけ感慨を持ったりするのだけど、でも梅雨がないところに住む方が快適でいいなぁとも思う。
だんなの朝食は昨夜の残りのしじみ汁と、カマスの一夜干しと、ご飯。私も米飯の朝食だけど、私のは納豆と昨夜の残りの鰹のたたき。
「似ているようで微妙に違うね」
「残っているものが、どれもこれもビミョ〜な量だったからね」
と、静かにさらさらと朝御飯を食べる。

我が母は、圧倒的に「朝御飯はご飯よりパン」という人なので、母は母でトーストにコーヒーという組み合わせ。その母に育てられた私も、長らく「やっぱり朝はパンよねー」というポリシーだったりしたのだけど、だんなと結婚してからは、そして日本を離れてからはより一層、「朝食に米の飯ってすんばらしいじゃない?」と思うようになった。何しろ腹持ちがいい。充実感がある。焼き魚と生卵と海苔と納豆でもあったら、朝からご飯5膳は固いわねという気分になろうというものだ。いや、そんなには食べないけど、さすがに。

パンとバター
牛乳

現在我が家にない食料及び調味料は、玉ねぎ(現在0個)、瓶入りレモン汁及び柚子酢(どちらも無し)、片栗粉(残量僅か)、醤油(残量ヤバし)というところ。色々買わなきゃいけないものはあったのだけど、何しろ雨なので外に出るのがイヤになる。ていうか、昼御飯をどうしましょう〜っと昼過ぎて家の中をうろうろしたところ、数日前に買った食パンと目が合った。食パン、食パンはいいね。厚切りの食パンは更に良い。日本の食パンはアメリカでも買えるようでいて実は買えなくて、売られているのはえらく小ぶりなサイズの薄いもの(サンドイッチにするようなもの)ばかりだった。白くてふわふわした厚切りの食パンは、もちもちとしていてどこか御飯やうどんに似ているところもあるように思う。トーストも美味しいけど、ふわふわのやつをそのまま食べるのもこれまた美味しいのよねー、と、パンにバターこてこて塗って食べることにした。

「おかーさんおかーさん、パンをどうするの?」
息子は今日も目をくりくりさせて近寄ってくる(親のすることなすこと興味があるらしい)。
「やくの?オーブンで、チーンって、するの?」
「いや、今日は焼かないよー。そのまま食べるの」
「そのまま食べると、どうなるの?なんて、言うの?」
「そのまま食べるのは……いや、別にどうもならないよ。なんて言うのかというと……"素パン"とか"生パン"とか」
「すぱん?なぱぱん?」
「……いや、違うね。違うよね。忘れて」
「すぱん、すぱん」
「いや、だから忘れろっちゅーに」
子供にいい加減な事を言っちゃいかんね。

牛肉と舞茸の中華風炒め
キャベツのナムル
すじこ
じゃがいもと腸詰のスープ
羽釜ご飯
ビール・麦茶
スイカ

結局、買い物にも行かなかったのである。
「よし!牛肉の切り落としがあるからハッシュドビーフでも作るかぁ!」
と準備しようとしたところで、玉ねぎが1個もない事に思い至った。どうしようどうしようスープにも入れようと思ってたのに、とわたわたした後、洋風を目指そうと思った夕食は中華に路線変更することに。

牛肉は醤油や片栗粉、重曹などを揉みこんでおき、舞茸やピーマン、長葱と共に炒める。更にオイスターソースや醤油や砂糖を合わせたタレを回しかけつつ炒めたらできあがり。日本に置きっぱなしだった愛用の中華鍋は、1年近く誰にも触られていなかったことになるのだけど(母は中華鍋は使わないし)、久しぶりに眺めてみたらサビ1つついていなかった。スキレットやダッチオーブンなどの鋳鉄鍋も愛らしいけど、中華鍋もやはり愛らしい。あんなに重いと常々思っていた中華鍋は、鋳鉄鍋の重量感に慣れてしまったらやけに軽く感じられた。もういくらでも左手でぶんぶん振り回せるわよー、という感じ。

濃いめの味のおかずに合わせ、もう1品は塩味少なめのキャベツのナムル。千切りキャベツをざっと茹で、湯を切って塩と胡麻油とすり胡麻でじゃじゃじゃっと和えた。あとは腸詰とじゃがいもとピーマンを具にした中華スープ(湯に顆粒鶏ガラスープ入れて臭み消しに昆布も入れただけのもの)と、羽釜で炊いたご飯。そういえば、ここんところ毎日夕食にはご飯を炊いている気が。

ちょっとばかり濃すぎる味に仕上がってしまった中華炒めは、それはそれでご飯に似合って悪くなかった。ビール片手に中華炒めをつついた後は、ご飯に乗せて丼のようにして食べちゃう。ちなみに舞茸は、八百屋さんの見切り品コーナーで2パック50円だった素敵なシロモノだ。ちょっとクタっていたけど、全然問題ない舞茸が安く買えてちょっと幸せ。もとより私は賞味期限を気にしない(気にならない)人だったりするもんだから……。

6/18 (水)
ハッシュドビーフを作ってみた (夕御飯)
卵サンド
アイスカフェオレ

パンだ、ご飯だと、それなりに毎日変わった朝御飯を用意してはいるものの、それでもなんだか「違うものが食べたい」と思ってしまう。ピザトーストもいいな(でも材料ないし)、コンビーフ入れたホットサンドも食べたいな(でもコンビーフないし)、とうじゃうじゃ考えつつ、厚切りパンを使って卵サンドを作ることにした。パン4枚に対し、卵サンド。6枚切りのパンも厚いけど具はそれ以上に厚いような感じに、こってりとマヨネーズ和えゆで卵を挟んでみた。それを4等分にざくざく切って、だんなと私は3切れずつ、息子は2切れ。

鯖寿司
麦茶

午前中、ぷらりと近所のスーパーマーケットに買い物に行き、ピザトーストの材料やら何やらを買ってきた。昼御飯は家で適当に作る予定だったのだけど、最後に通りかかった総菜コーナーで鯖寿司が「私を食べて♪」と言っているのと目が合ってしまった。うわー、鯖寿司だよ鯖寿司、懐かしいなぁ久しく食べてないなぁ旨そうだなぁ398円だってさー、とふらふらふらと寿司コーナーに近寄って、無意識に1パック手に取り籠に突っ込んでしまった。息子は息子で、
「じゃあねー、ぼくはねー、おいなりさんが食べたいんなんだなー」
と、稲荷寿司のミニパックを一緒に籠に放り込んでいる。なし崩し的に、昼御飯はスーパーの寿司ということになった。……冷やし中華でも作ろうと思っていたのに。

独特の生臭さというか青臭さがある鯖の押し寿司。ご飯は冷えすぎてちょっと固かったし、しかも全体的に酸味が強めだったし、それでも厚めの鯖の切り身はアメリカで食べてきたものよりも遙かに美味しく感じられた。ああ、今度は鯖味噌も作ろう。

ハッシュドビーフ
鴨の燻製のカルパッチョ風
ビール・アイスティー

そろそろこってり肉味のものが恋しくなってきたところだったので、今日の夜はハッシュドビーフ。玉ねぎをバターで炒めて水煮缶のトマトをぎゅうぎゅう潰しながら加え、水とコンソメ、ワインビネガー少々と塩を投入。薄切りにしたピクルスを加えて軽く煮込んだら、別フライパンで牛肉をざっと炒めて、玉ねぎの鍋に放り込む。
「うーん……もうちょっと肉色になって欲しいのに、これじゃまんまトマト煮込み……」
と少々困りながら鍋の中身をぐーるぐーるとかき混ぜていたら、母が横から
「ハッシュドビーフ?……缶詰あるわよ。入れてみたら?」
と囁いてくる。それはそれでけっこう複雑な味になってくれちゃったりするかも?と、名も知らぬメーカーのそのハッシュドビーフをだばだばだ〜っと放り込んでみた。美味しそうな肉と不味そうな肉が混ざることになってしまったけど、色はなんだかいかにもなハッシュドビーフな感じのものに。

で、サラダかわりに用意したのは鴨の燻製(肉屋の安売り品)を薄くスライスしてイタリアン野菜のサラダパックの上に並べたもの。それらしくカルパッチョ風のソースでも用意しようと、マヨネーズを湯と顆粒コンソメで伸ばし、白ワインをちょろっと加えて粒マスタードをうりゃ!と放り込み、ぐるぐるかき混ぜてそれっぽいソースを作った。
ハッシュドビーフは肉肉してるのだから、よく考えたら魚介のカルパッチョにすれば良かったのだと気がついたのは、もう10分でだんなが帰ってくるというタイミングだった。あああ、油断するとつい肉料理ばかり作ろうと身体が動いてしまふ。

缶詰入りのハッシュドビーフは、かなりまともな味がした。ハヤシライスともちょっと違う、洋風な味。生クリームとかサワークリームとか使って作ると、今度はこれがビーフストロガノフになっちゃったりするのだ、多分。

6/19 (木)
これが日本のベニエなるものか……
厚切りピザトースト
UCCのラテプレッソ(ちょいヤバめ)

昨日ちらっと思った「ピザトーストが食べたいな」を実行すべく、昨日色々と材料を買ってきてみた。
実は昨日、新しい携帯電話をだんなが買ってきてくれたのである。「わー、着メロ」「わー、カメラつき」「わー、なんかいろいろついてる」と、昨夜は日付が変わる頃まで夫婦してピッピピッピとあれこれいじくりまわしていた。目覚まし時計に起こされてからも眠いったらなく、しばし布団の中でごろごろごろごろ。起きあがろうとして再び前のめりに突っ伏し、更にごろごろごろごろ。そろそろ起きなきゃヤバイという段になって、わたわたと懸案のピザトーストを作り始めた。

パンに軽くマーガリンを塗り、ピザソースを塗ってから刻んだ玉ねぎとピーマンとベーコンを散らす。上からたっぷりピザチーズを乗せたらオーブンで数分。焦って作ったら今ひとつ焼きが足りなかった。火は通ってるけど、もうちょっとこんがり焼けている方が良いかなという感じ。やっぱり余裕のない料理はあまりよろしくない。指切ったりとかするし。

で、飯の共にはちょっと(いや、かなり)ヤバめの瓶入り飲料。昨年の春頃にUCCの工場バーゲンで1ケース買って家に置きっぱなしにしてあった"ラテプレッソ"なるコーヒー飲料は、賞味期限が2002年9月頃に過ぎ去っている。さすがにちょっとヤバいと感じる賞味期限だったけれど、試しにと恐る恐る飲んでみた。夫婦だもの一蓮托生よね♪と私もだんなも1本ずつ。
「……な、なんかミルク分みたいなのが固まってふわふわしてるね」
「……まぁ、腐臭はしないから……大丈夫……かな」
「大丈夫だと……いいなぁ」
と、気分はロシアンルーレット。とりあえずお互い腹もこわさなかったし、なんとかセーフだったのだと思う。何気なくスリリングなものが並ぶ我が家の食卓。

千葉パルコ内 「Cafe du Monde」にて
 ディップベニエwithホイップクリーム
 ディップベニエwithカスタードチーズクリーム
 シュガーポップベニエ
 ケイジャンチキン ポーボーイ
 アイスカフェオレ
 カフェオレ
 コーラ
……を、親子孫3人で。

今日はちょっくら千葉パルコにある無印良品にお買い物。買ったばかりのスチール棚の追加棚板が買いたかったのだけど、そういえば千葉パルコにはダスキンが経営、展開している「Cafe du Monde」もあったはず。
「ベニエもあるらしいけど……見かけも味もちょっと違うとか……」
と、ニューオーリンズで食べてきたもっちりふわふわ粉砂糖どっちゃりの揚げドーナツを思い浮かべながら、昼御飯はそこに行ってみることにした。今日は仕事が休みの母も、「行く行く〜♪」と一緒についてきた。

同じフロアにあるスタバはかなりの混雑なのに、カフェ・ドゥ・モンドはえらく閑散としていた。カウンターの奥の店員さんはたったの1人。本店にはないはずのポーボーイ(フランスパンのサンドイッチ、メジャーな具は牡蠣フライ)も何種類かあり、揚げドーナツ"ベニエ"はシナモンシュガーがけあり、各種ディップあり、と何だかすごいことになっていた。よくわからないまま、
「えーっと、このベニエセットと、こっちのポップベニエと、ドリンクはこれとこれと、あとケイジャンチキンのポーボーイ……」
と適当に注文してみる。注文を済ませ金を払い、番号札を受け取って席に。数分待ったところで飲み物がやってきて、更に数分待ったところで揚げドーナツとポーボーイが並べられた。

ベニエは、馴染みのものの半分ほどの大きさだった(ディップベニエだから余計に小さかったらしい)。ほんの2口くらいで食べられそうなベニエの上には申し訳程度にお上品に粉砂糖がかけられ、ジャムだのクリームだの選べるディップが1皿につき1種類小皿に盛られてやってきた。つけてもらったのは、ホイップクリームと、チーズ風味のカスタードクリーム。どちらも似合わなくはなかったけれど、そのまま食べても美味しいベニエにいちいち色々つけてみなくても……とも思う。味は確かに懐かしい味のそれだったけれど、何しろ小さいし、それに比してやっぱり高く感じるし、砂糖の量は物足りないしで、海外で食べる吉野家のような、微妙な違和感を感じてしまうのだった(お茶が有料かよ!紅生姜もないのかよ!みたいな)。
ケイジャンチキンポーボーイも「……ど、どこがケイジャン?ていうか、どこがポーボーイ?」と思いつつ、でも胡椒の効いたチキンにチーズに野菜にが挟まるフランスパンのサンドイッチは、それはそれでなかなかな味。でもやっぱりなんというか物足りぬ……。

デパ地下で買ってきた
 八宝菜
 茄子の中華風マリネサラダ
枝豆
キャベツのナムル
牛肉とワカメの韓国風スープ
羽釜ご飯
ビール・麦茶

本日の本来の目的だった棚板は、無事に買えた。無事に買えたんだけど、がさばるは重いは持ちにくいわで、ふらふらしながらの帰り道。帰宅する頃には力尽きそうな予想があったので、デパ地下寄りついでにあれこれお総菜を眺めて買ってきてしまった。久しぶりに買ったJohanのパンに、その脇にあった聘珍樓の総菜屋で八宝菜を、更にその脇にあった洋風総菜屋さんで茄子の中華風サラダ。とどめに「銀のぶどう」で家族1人1個のケーキ。結果として、「買わなきゃ良かった……」と後悔するほどの大荷物になって我が家に戻ることになってしまった。私はあんまり後先を考えないで行動する。

数日前に作ったキャベツのナムルの残りと、あとは牛肉とワカメを入れた中華風スープ、それとご飯。
「全体的にやる気がなくてすみませんすみません」
と内心恐縮しながら、ちょっと遅めに帰ってきただんなと一緒に夕御飯。

料理をするようになるまでは、「家で作れるようなものがデパ地下の総菜より美味しいわけがないじゃない」という、よくわからない偏見を持っていた。デパ地下のサラダや総菜を買ってきても、何が入っているのか、なんでそういう味になるのかさっぱりわからなかったし自分の料理の腕も微塵も信用していなかったのがその理由だけど、今では「これなら私が作る方が美味しいかも……」と思えるものにもちょこりちょこりと出会うようになった。今日の八宝菜も、茄子のサラダも決してまずかったわけではないのだけど、ごくごく普通としか思えない味。炒め物はそんなにねっとりとろみをつけすぎなくても良いんじゃないかと思うし、さっぱりした味のサラダに刻んだオクラが入るのは、微妙にそぐわないような気がしないでもなかったり。
……やっぱりご飯はちゃんと自分で作ろう……その方が楽しいし、美味しい。

6/20 (金)
「太閤園」で、1年ぶりの茄子野菜炒め (昼御飯)
「Johan」の
 クリームパン
 マイース(コーンマヨネーズパン)
牛乳

昨日の夕方買ってきたのは、久しぶりの「Johan」のパン。三越デパートに行けばもれなくうじゃうじゃ買えるようなパンだけど、ここの食パン菓子パンフランスパンはくまなく美味しいと思う。もちもちした独特の食感が懐かしくて、菓子パン含めてあれこれ買ってきてしまった。

特製らしい、1個1個ラッピングされたクリームパンを家族1人に1個ずつ。あとはコロッケパンとか、マヨネーズ和えのコーンが詰まったパンとか。うっかりしていて自家製アイスティーもアイスコーヒーも切らしてしまっていたので、傍らには牛乳。朝から冷たい牛乳をかっぱかっぱと飲みながら、バニラビーンズが入ったクリームたっぷりパンを齧る。特製パンは確かに美味しかったけれど、なんだかちと高級すぎる味がした。クリームパンは、もっとこう庶民な味がしなければならぬ。

稲毛「太閤園」にて
 茄子野菜炒め定食
 焼き餃子

じゃあ昼御飯は「庶民な味」のものをということで(?)、近所の大好きな中華定食屋さんに行ってきた。「中華料理屋さん」ではなくて、「中華定食屋さん」。レバニラ炒めとかタンメンとか野菜炒め定食なんかがある、いかにもなコテコテの中華定食屋さんだ。全体的に油こってりな味つけで、しかも洗練されている味や材料というわけではないけれど、ここのチャーハンと茄子野菜炒め定食はだんなや私の心を鷲掴みにしている。ここ10ヶ月ほど、何度となく
「チャーハン……たいこーえんのチャーハンが食べたい……」
「ああ、あのナルトの入ったチャーハン……」
なんて密かに悶えた私たち。自分でも作れそうな外見だし味でもあるのに、不思議と再現できない味なのだった。

とりあえず、今日はチャーハンと同じく好物の茄子野菜炒め定食。同じ味のシリーズで「野菜」(野菜のみ)、「肉野菜」(肉と野菜)があったと記憶しているけれど、その最上級活用が「茄子野菜」。肉という文字はないけれど、肉と茄子と野菜が入った豪華版だ。野菜は、その時によってキャベツだったり白菜だったりするけれど、あとは人参が入ったり適当な野菜が入ったり。醤油味ベースの辛じょっぱい味で炒められていて、皿に溜まった合わせ調味料の周囲1cmに油の膜ができているような炒め物だ。茄子にも肉にもうっすらと油が膜を作っていて、それがテーブルに出された後も数十分は火傷する温度を保ち続けてくれちゃうような、急ぎの時にはちょっとつらい料理が出てくるのがこの店なのだった。ちなみにチャーハンも同様で、テーブルに出てきてもしばらくは恐ろしくアツアツだ。

久しぶりの太閤園の炒め物は、嬉しいことに変わらずしみじみと美味しかった。金魚のように口をぱくぱくさせながら、アツアツの炒め物をせっせと口に運んでいく。肉は少なめで、セットでついてきているスープの具は卵とほんの少しの三つ葉くらいしか入っていないのに、それでも懐かしく嬉しい味だった。今日も近所のサラリーマンたちで小さな店は大繁盛だ。

鶏肉のオーブン焼き
スティック野菜withマヨネーズ
「Johan」のチョコレート&カスタードパン
ビール

今日のだんなは飲み会だそうで、母と私と息子でまたーりと夕御飯。だんなのいない日には、なるべく手抜き……もとい、軽めの食事にしましょうということになっている。

買い置きの鶏むね肉に粗塩と黒胡椒をガーリガーリと散らしてオーブン焼きに。キュウリとプチトマトと人参は刻んで生のままマヨネーズつけて。甘いパンが夕御飯なのはいかがかと思いつつも、Johanのチョコを練り込んだパンとクリームを練り込んだパンが中央でくっついて一斤になったパンを両端から薄切りにしてココナッツ素材の皿に盛りつけた。すごく適当な夕御飯は、準備時間15分。だらだーらと母とおしゃべりしながら、だらだーらと食べた。飲んだビールもちょい多め。

6/21 (土)
龍天門(恵比寿ウェスティンホテル)にて、鴨と野菜の冷やしそば (昼御飯)
「Johan」のチョコレート&カスタードパン
アイスカフェオレ

夕方から、本日のだんなは友人の結婚式二次会出席なのだとか。
「うー、どっか行きたいよ。都会に行きたいよ。美味しいもの食べたいよー」
と、じたばたしてみたところ、
「いーじゃん、行こうよ。どうせ会は夕方からだし?」
と外出が決定した。

すっかり元気になって、うりゃーっと洗濯機を2回動かし、ベッドシーツ洗ったり布団を数時間日光干ししたりする間に朝御飯。私と息子は昨夜も食べた、「Johan」のチョコ練りこみ&カスタードクリーム練りこみのパンをざくざく薄切りにしてそれぞれ1枚ずつ食べる。もちもちにちゃにちゃした独特の食感のパンは、今日もしみじみ美味しかった。なんだかえらくあっというまに無くなってしまったので、今日外出したらまた買ってくることにしよう(買えたらねー)。

恵比寿ウェスティンホテル内「龍天門」にて
 鴨と野菜の冷やしそば \1600
 金魚芒布甸 ¥800
 エビスビール ¥950

「懐かしき日本の味訪問」ということで向かったのは、ちょっと思い出の店、「龍天門」。恵比寿のウェスティンホテル内の中華料理店であるこのお店、ホテルだからして決して安くはない。ていうか高い。

その昔々、友人と2人で初めての香港旅行をして、「マンゴプリンって、こんなに美味しいものだったのか!」と目覚めてから日本の中華料理店でマンゴプリンを探しはじめたのだけど、初めて「あ、ここのマンゴプリンの味は香港のそれに迫っているかも」と感じたのがこのお店のマンゴプリンだった。その後、この店より美味しいお店とも出会ったけれど、龍天門のマンゴプリンの美味しさは、それでも褪せることなく私の好みの味の1つになっていた。更に、このお店の担々麺も超好みだ。ちょっと独特だけれど、すごく美味しいと思う。で、
「龍天門の担々麺〜♪」
「龍天門のマンゴプリン〜♪」
と、各人うきうきしながら恵比寿に向かったのだった。

夏ということで、メニューには普通の担々麺の文字はなく、「冷やし担々麺」が掲載されていた。それでも
「普通の担々麺はありますか?」
と聞いてみたらば、問題なく出してくれるという。だんなは目当てのその担々麺、私はちょっと変わったものが食べたいということで鴨と野菜が乗っているという冷やしそば。息子には花巻(豚まんの皮だけ、みたいなやつ)。ここしばらくのうちで一番暑かった今日、ホテルに到達するまでにすっかり汗まみれになってしまっていたため、ついつい生ビールも注文。そば1杯が1500円以上するということよりも、デザートのマンゴプリンが800円するということよりも、ビールが1杯950円することにちょっと冷や汗。私たちだけ気持ちよくビールを飲むのも何だか悪い、ということで息子にもコーラを取ってやったのだけど、コップにさらっと1杯で600円だ。

「お代わりはないからね」
「これ飲んだら、終わりだからね」
「アメリカみたいに、お代わりぽんぽん出てきたりはしないんだからね」
と何度も何度も「こ・れ・だ・け・だ・か・ら・ね〜」と宣告して(自分にも言い聞かせて)、皆で乾杯。1杯950円(しつこい)のビールは、身も心も冷やしてくれた。ああ、恐ろしい値段だ。

密かに、このお店の制服が好きな私とだんな。女性の制服はチャイナ服なのだけど、ツーピース型の膝丈タイトスカートの他に、いかにもなチャイナ服スタイルのロング丈のものもある。赤紫色のそのチャイナ服は、ラインはやけに禁欲的なものなのに、ビシーッとスリットが深く入っていて、それがなんとも色っぽかったのだった。
「やっぱりここの制服、ステキだよね」
「目の保養よね」
「ある意味アンミラよりもこう、くるよね」
と、この店に来た目的がちょっと違っている私たち。

ここの料理長さんは、胡桃を使うのが好きらしい。担々麺も、すり胡麻ではなくて胡桃のペーストを主に使っているような感じのもので、とろとろ〜んとした白く濁ったスープの上に自家製ラー油が赤く模様を描いているような、かなりこってりした風情の外見の担々麺だ。その割に、痺れるほどの強烈な辛さはなく、胃もたれするようなくどさもなく、見た目とは裏腹にけっこう優しい味がする。私の冷やしそばをあげる代わりにだんなから担々麺も貰い、久しぶりのこの店の担々麺を堪能した。好みが別れる味だと思うけど、私とだんなは2人してこの店の担々麺がやっぱり大好きだ。胡麻をベースにしている冷やし担々麺も、それはそれで美味しかったりする。

そして私の前には、やけにスタイリッシュな一皿が。「塔ですか?」という、麺の盛りつけが少しも見えないうずたかいものが目の前にやってきた。
茹でた青梗菜に、コリコリしたクラゲに、クコの実に、揚げた甘い胡桃に、紫蘇の葉1枚。その上には皮つきのダックの細切りがこんもりと積まれ、白髪葱と唐辛子。一番上には香菜少し。かき分けるように箸を入れると、中央から黄色い麺がごそっと出てきた。小さな別添の容器に胡桃ベースのテレンとしたソースが添えられ、そこに更に別容器に入れられた自家製ラー油を混ぜ合わせて、麺の上からかけて食べるようになっている。崩すのがもったいなくなってしまいながらも麺を剥き出しにするように具を崩し、ラー油をだばだばだ〜っと多めに垂らした胡桃だれを上からたっぷりとかけた。蜂蜜でも入っているのか、粘度高めのテレテレとしたタレは甘くこってりした味なのに下品な風味はしない。皮パリパリのダックもたっぷりで、期待以上に美味しい麺料理だった。見た目を気にせず、うりゃーっと混ぜて色々な素材を一緒に口に放り込むとなんとも良い感じ。

相変わらず美味しいものが食べられて、デザートのマンゴプリンにも思いは膨らむ。
確か、ハート形の食べ応えがある、クリームたっぷり果肉たっぷりのプルプルプリンがこのお店のマンゴプリンの信条だった。が、メニューには「金魚型マンゴプリン」という、ちょっと不思議な品名が。
やってきたのはこんな感じの、それまでとは外見も味もすっかり変わってしまった、個性的ではあるけれど残念ながらあまり好きにはなれないデザートだった。凝っているのはわかるけど、すっごくよくわかるけど、外見よりもマンゴプリンをいかに美味しくするかを追求して欲しかったかな、みたいな……。

デパ地下のお総菜
 生ハムのシーザーサラダ
 卵とチーズのマカロニサラダ
「Johan」のチーズパリパリ・レーズンパン
ビール

昼食後はそのままパーティーに向かうというだんなと別れ、デパ地下ケーキ屋さん巡り。5月から9月頃まではマンゴーの旬。特に6〜7月あたりはマンゴーデザートがそこら中で花盛りとなり、ケーキショップの品揃えにも顕著に影響してくる。
「マンゴプリンはねぇが〜」
とナマハゲのごとく恵比寿と新宿をうろうろしてみたところ、手元にはマンゴプリンが8種類という不測の事態が。一体誰がどうやってこれを数日中に平らげるんだ……と頭を抱えつつ、呆然としながらお総菜をちまちま購入して帰宅した。だんなの帰りはきっと遅くなるだろう。2次会の2次会とか行っちゃうんだろうし。

生ハムがどっちゃり入った、ちょっと塩気が強めのシーザーサラダと、息子のリクエストによるマカロニサラダ。卵とチーズが入ったそれは、ここ1年さんざん息子が食べてきた"マカロニ&チーズ"そのままな外見で、息子のハートを鷲掴みにしてしまったらしい。そんなに好きなら今度マカロニ&チーズを作ってやろうと心に誓いつつ、今日の夕飯は激しく手抜き。恵比寿三越で買ってきた、今日もJohanのパン類にサラダ、そしてビール。
ピザっぽいパリパリの食感の薄焼きチーズパンと、レーズンがどっちゃり入ったフランスパンっぽい長細いパン。
「なんであんたはこんなにマンゴプリンばっかり買ってくるの〜!誰が食べるの、毎日食べるの?まったくもー」
と母に罵倒されまくりながら軽くさっぱりな夕食を終えた。いや、これから重くこってりなマンゴプリンが待ってるわけでして。

6/22 (日)
吉野家……好きなのよー

「ケーキがあるんです」
「ほぉ」
昨夜は終電で帰ってきた我が夫。

「でもね、選択肢はあるようであまりないんです。○○店のマンゴプリンと、××店のマンゴプリンと、更に□□と△△と……」
「要するに全部、マンゴプリンなわけですね……」
「そのとおり」
「夏だもんね……」
と、冷蔵庫の中を覗いて、やっぱりギョッとしているだんな。すみませんすみません。ほんっとーにマンゴプリンばっかりなんですこれでも昨夜息子と2人で2個食べたんですが、と謝ってみる。日曜の朝の食卓には、恵比寿三越で買ってきた"チョコアーモンドブレッド"と共に5種類ほどのマンゴプリンがずらりと並べられた。私はこれね、ぼくはこれね、と各自好みのものを1つ取り、互いに味見してこれが美味しいあれが美味しいと話しながらの朝御飯となった。

調子に乗って2斤も買ってきたチョコブレッド、数日はこれでもかと食べられそうだ。昔からの人気商品で、他のパン屋さんからも似たようなパンが発売されるようになったけれど、やはり本家本元のJohanのそれが一番好みだ。チョコたっぷりでいかにもカロリーが高そうなので、いつも1切れ2切れちまちまと食べている。……その後にマンゴプリンがつがつ食べてりゃちまちま食べる効果なんてたかが知れてるんだけど、そこはまぁそれとして。

息子が選んだマンゴプリンは、チョコレートの飾りがついている「アンテノール」のもの。だんなはシンプルなものがいいなと「La Pomme Verte」のものを取り、私は一番美味しそうだと気になっていた「Q.E.D. Patisserie」のもの。
久しぶりに新宿小田急デパートの地下を歩いたのだけど、随分派手に変わっていてめちゃめちゃ驚いてしまった。以前は「新宿のデパ地下なら、高島屋と伊勢丹、あとせいぜいハルクくらいが見どころよねー」という印象があったのだけど、今の小田急デパ地下の充実ぶりったらない。百貨店進出はそこだけ、とか、東京の進出はそこだけ、なんて珍しいケーキ屋さんがいくつも並び、美味しそうなものばかりが並んでいた。そこで見つけたマンゴプリンは5種類もあって、ヒーヒー言いながら(でも全部買って……)持って帰ってきたのだった。

事前の印象どおり、朝食後に食べた3種の中で一番美味しかったのは「Q.E.D.」のもの。最近のケーキにしては珍しいほどの巨大なデザートで、ガラスの容器に固められている。クリーミーでマンゴー風味たっぷり。ふわふわと柔らかめでマンゴーの果肉がたっぷり乗ったアンテノール製もなかなか美味しかった。果肉は入っているけど、その風味とか上のホイップクリームが植物性みたいなベタベタさがあったLa Pomme Verteのものはいまひとつ。
そして冷蔵庫の中にはまだうじゃうじゃと食べていないマンゴプリンが。

「吉野家」にて
 牛丼・並
 卵
 味噌汁

ちと早く目が覚めた私は、ぱらぱらと『吉野家!』なんて読んでしまったのである。店舗展開の歴史とか、バイトさんの仕事の流れが書いてあったその本は、吉野家を愛してやまないだんなが買った本だった。朝食前の空腹時に読んでしまったものだから、
「ああ〜牛丼……大盛……卵……つゆだくで……」
と口の中も脳味噌も涎だらけになってしまった。そういえば、帰国してからまだお店で食べていないではないか(自宅の冷凍庫に入っていたやつは食べたけど)。
「吉野家行きたい。牛丼牛丼牛丼」
と騒いだところ、買い物ついでに隣駅前にある吉野家に行くことになった。

だんなにとっては、学生時代からの馴染みの味である吉野家の牛丼。私にとっては、「ずっとずっと気になっていて食べたかったけど食べられなかった」憧れの味だった。高校大学と、吉野家の牛丼なるものを食べてみたかったのだけど、高校は女子校だったし一緒に行ってくれるような彼氏もできず、大学でゼミ仲間と行くのはもっぱら学食ばかりだったりして、行きたい行きたいと思いつつなかなか機会がなかったのだった。妙に憧ればかりがつのってしまい、「吉野家?ああ、もう俺、大好き」というだんなと知り合ってからは、しょっちゅうデートのついでに吉野家に。

「真の喰い道楽ならばファーストフードやレトルト食品などのジャンクフードを愛しちゃいかん!」みたいな流れも世の中にあるのは知っているけれど、私もだんなも悲しいことにハンバーガー屋や駄菓子やレトルト食品を美味しいと思っちゃうのである。マクドナルドでさえ、「あーもー、いつでもどこ行ってもこの味なんだよなぁ」と思いつつ、あの味はあの味で懐かしく思っちゃったりする。吉野家なんて最たるもので、自分に苦笑いしつつも時折無性に食べたくなる。

で、蒸し暑いなかわざわざ電車に乗って食べに行った吉野家。親子3人それぞれ「並」と味噌汁、私は卵つき。さすがに息子は並1人前を食べきることはできなくて、私とだんなで残りを分け合いつつ大盛級になった牛丼をわしわし食べた。実は、卵を落として食べるのは私は初めて。
「あれだよね。並に卵1個って、微量に多いんだよね。僕の経験では、特盛に卵1個が適正なバランスなんだよね」
卵ぐちゃぐちゃやって柔らかめなご飯をかっこむ私につぶやくだんな。そういう事は早く言ってください(でも卵かけてみたかったから言われてもきっとかけると思うんだけど)。

だんな特製ニラ入り焼き餃子
生野菜のマヨネーズ&味噌添え
かき玉汁
羽釜ご飯
ビール・麦茶

牛丼食べた帰り道。我が家最寄りの安売り肉屋さんで今晩の献立を相談しつつお買い物。
「……餃子、だな」
「確定ですか!?」
「いや……餃子がいいなー、いいかなーって。おゆきさん……餃子キライ?」
「いや、よろしいんじゃないですか餃子」
「うん、決まりだな餃子」
「じゃあ肉買って皮買って白菜も買って……」
夕御飯は、餃子。ここ数年は、焼き担当もタネ作り担当も、もっぱらだんな専任となってしまっている。包むのだけは、私の方が早いし得意。私が洗濯物を畳んだり、買い物してきたシャンプーだの洗剤だのを片づけている間に、だんながせっせと餃子のタネ作りをしてくれた。

餃子を包みはじめたところでご飯に火を入れる。包んで包んで包みまくって、途中でだんなは吸い物の準備もし始め、私は餃子に合うかなと生野菜の準備。マヨネーズと味噌を小皿にそれぞれ準備して、餃子食べながらキャベツやキュウリやにんじんをバリバーリと食べられるようにした。ご飯の蒸しが終わると同時にサラダも吸い物の準備も終了し、餃子もきっちり焼き上がる。
「おー、美しいね」
「こう、ビシッと全ての作業が同時に完了すると嬉しいよね」
と一息ついて、ビールだビールだと餃子が冷めないうちに急いで食卓につき、「いただきます」。

我が家の餃子は、茹でて刻んでぎっちぎちに水気を絞った白菜入り。今日のは更にニラ入りで、全部で52個の餃子ができた。だんなも私も母もよく食べたけど、息子は特に驚くほどよく食べた。
「ぼくはね、ぎょうざが大好きなんだよー」
と、3個を一気に食べた後、更に皿に取り分けてやった4個を即食いし、更に3個。スープもご飯もそっちのけでハフハフと10個の餃子を食べまくった挙げ句、満悦した表情でスープとご飯を片づけた。早く"包み要員"に息子が加わってくれないかしら。私、100個も200個も包むのはさすがにイヤだわよー。